リバースエンジニアリングとは?目的・手法・生成AIで効率化する方法・関連法令を徹底紹介!
最終更新日:2025年07月12日

- リバースエンジニアリングは仕様書のないシステムの保守、競合分析、セキュリティ強化など企業の多様な課題解決に活用できる
- リバースエンジニアリングは、仕様書のないシステムの保守、競合分析、セキュリティ強化など企業の多様な課題解決に活用できる
- 生成AIの活用でコード解析やドキュメント生成が効率化する一方、著作権や特許などの法的リスクも伴う
リバースエンジニアリングは、既存の製品やソフトウェアの内部構造を解析し、設計情報や動作原理を明らかにするうえで欠かせない技術です。近年では、ブラックボックス化したレガシー資産の保守・再設計の重要性が増しており、企業が競争力を維持するための手段として、その必要性が年々高まっています。
本記事では、リバースエンジニアリングの目的から、ハード・ソフトそれぞれの代表的な解析手法まで徹底解説します。また、近年注目を集める生成AIのコーディング能力を活用した方法や関連法令も紹介します。
自社の技術資産を最大限に活用し、競争力を高めるためのヒントを提供します。
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目次
リバースエンジニアリングとは?
リバースエンジニアリングとは、既存のソフトウェアやハードウェアの動作や構造を詳細に分析し、設計図やソースコードがない状態でも、もとの仕様や仕組みを推定・再構築する技術です。
通常の開発プロセス(フォワードエンジニアリング)が「設計→製造」という流れであるのに対し、その逆のプロセスを辿ることから「リバース(逆)」エンジニアリングと呼ばれます。
かつては競合分析のイメージが強かったこの技術でした。しかし、近年では開発者が設計した内部情報を外部から明らかにするため、ブラックボックス化したシステムの保守や相互運用性の確保、競合製品の機能分析において活用されています。
特にレガシーシステムや仕様書が失われた機器の再利用・改良においては、リバースエンジニアリングは不可欠です。
さらに、生成AIを活用したリバースエンジニアリングが注目を集めています。特に、生成AIのコード解析・生成能力を活かした、コードの構造把握や動作推定の自動化が進展しています。従来は高度な専門知識と多くの時間を要した作業が、より効率的かつ高精度に実現できるようになりつつあります。
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リバースエンジニアリングの主な目的
リバースエンジニアリングの目的は、製品やシステムの内部構造を理解するほか多岐にわたります。本章では、リバースエンジニアリングの主な目的を紹介します。
マニュアル化
リバースエンジニアリングは、設計図や仕様書が失われた古い製品やシステムに対して動作原理を解析し、ドキュメントやマニュアルを再構築する目的で活用されます。
活用することでエンジニアの属人化を防ぎ、保守や引き継ぎが円滑に進められます。特に人材の入れ替わりが多い現場では、作業の標準化と業務の可視化に大きく貢献します。
レガシー資産の保守性向上
古いシステムはブラックボックス化しやすく、保守や改修のたびに多大な手間がかかります。長年の運用により、設計資料(ドキュメント)が失われ、担当者も退職してしまいブラックボックス化することも多いです。
リバースエンジニアリングを活用することで、内部構造を可視化し、保守性・拡張性を高められます。結果的に、システムの寿命延長やコスト削減につながり、レガシー資産の有効活用が可能です。
相互運用性の確保
既存製品との互換性を確保するためにも、対象機器やソフトウェアの仕様を把握する際にも有効です。他社が提供する製品やサービスと自社システムを連携させる際、公開されているAPIだけでは情報が不十分な場合があります。
リバースエンジニアリングによって非公開の仕様を解析し、スムーズなデータ連携や機能統合を実現できるケースがあります。特に周辺機器やシステム間の接続性が必要な場合は、互換性のある設計を実現するうえで欠かせません。
代替ソリューションの開発
リバースエンジニアリングは、競合製品の機能解析やサポートが終了したシステムの置き換えのために代替ソリューションを開発するケースでも活躍します。
既存製品の動作原理を理解したうえで、自社のニーズに合った互換性のある製品やシステムを再構築可能です。開発期間の短縮や市場ニーズへの迅速な対応が期待できます。
競合製品の分析
リバースエンジニアリングを通じて競合他社の製品を解析することで、機能や構造の差異、設計思想を把握でき、自社製品の改善や差別化に役立ちます。
他社の優れた製品を解析することで、その技術的な強みやノウハウを学び、自社製品の改善や革新的な新製品開発に繋げることができます。市場のトレンドを的確に捉え、一歩先を行く製品を生み出すための重要なインプットとなります。
脆弱性の早期発見
リバースエンジニアリングによりソフトウェアやファームウェアを解析すると、既知または未知のセキュリティ脆弱性の早期発見が可能です。特に、外部から取得したアプリケーションや第三者製のコンポーネントに対しては内部コードを解析することで、不正アクセスや悪意ある挙動を未然に防げます。
したがって、セキュリティ対策やリスク評価の一環としても、リバースエンジニアリングは重要な役割を担います。
開発工数の削減
既存製品の動作や構造をベースに解析を行うことで、ゼロからの設計に比べて開発期間や試行錯誤の手間を大幅に削減できます。特に仕様書が不十分なレガシー資産を再利用する際は、リバースエンジニアリングによって設計情報を取得し、既存の資源を活かすことで効率的な開発が可能です。
また、近年は生成AIとの組み合わせにより、設計書の自動生成やコード再構築の省力化も進みつつあります。
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ソフトウェアのリバースエンジニアリング手法
ソフトウェアのリバースエンジニアリングでは、プログラムの動作原理や内部構造を明らかにするために、コードの解析や実行環境の観察が行われます。解析対象は、バイナリファイルから実行ファイル、ライブラリ、仮想環境上で動作するソフトウェアまで多種多様です。
以下では、ソフトウェアのリバースエンジニアリングで用いられる手法を紹介します。
静的解析 (Static Analysis)
静的解析では、プログラムのソースコードやバイナリを直接解析し、制御フローや関数の構造、変数の関係性などを明らかにします。解析の際は、逆コンパイルや逆アセンブラ、コード解析ツールが主に用いられます。
逆アセンブル (Disassembly)は、コンピュータが直接実行する機械語(バイナリコード)を、人間が理解しやすいアセンブリ言語に変換する作業です。これにより、プログラムの低レベルな命令の流れを把握できます。
逆コンパイル (Decompilation)は、逆アセンブルからさらに一歩進んで、アセンブリ言語をC言語やJavaといった、より抽象度の高い高級言語のソースコードに変換することを試みる手法です。代表的なツールは、Javaの「JD-GUI」やC言語向けの「Ghidra」、マルチプラットフォーム対応の高度な逆アセンブラ兼デバッガ「IDA Pro」などがあります。
完全に元のソースコードを復元することは困難ですが、アルゴリズムの全体像やロジックを理解するのに非常に有効です。
実行を伴わないため、安全性が高く、ウイルス感染やシステム環境への影響を避けつつ調査が可能です。正確な処理フローの記述が必要なマニュアル作成や、危険なコードや未使用関数の検出が必要なセキュリティ評価で活用されます。
動的解析 (Dynamic Analysis)
動的解析はプログラムの実行中の挙動をリアルタイムで監視・記録し、APIの呼び出し状況やメモリ使用状況、コールスタックを調査する手法です。デバッガやトレーサ、仮想マシン環境を活用します。
デバッガは、プログラムの実行を任意の箇所で一時停止させたり、メモリやCPUレジスタの値を監視・変更したりします。これにより、特定の条件下でプログラムがどのように動作するのかを詳細に追跡できます。
脆弱性の原因特定や、特定の機能が呼び出される条件の解明などに使われます。
プロトコル解析は、ネットワーク通信で使用されるパケットをキャプチャし、通信内容やフォーマットを解析することで独自プロトコルや暗号アルゴリズムの構造を明らかにする手法です。Wiresharkなどのプロトコル解析ツールを用いて、通信のヘッダー構造やデータ形式を解析します。
実行環境における挙動をリアルタイムかつ正確に把握できるため、コードに現れない動的な依存関係や条件分岐を可視化できる点がメリットです。実際に発生する脆弱性や不具合の原因を特定しやすく、セキュリティ解析や不具合調査において特に有効です。
ハードウェアのリバースエンジニアリング手法
ハードウェアのリバースエンジニアリングでは、実物の電子機器や機械部品を対象に、物理的な構造や内部の回路設計、部品構成を分析します。
以下では、ハードウェアのリバースエンジニアリングで用いられる手法を紹介します。
X線イメージング・CTスキャン
X線や産業用CTスキャンを用いると、基板や電子機器の内部を非破壊で可視化できます。そのため、チップのレイヤー構造や配線パターン、BGAのはんだ付け状態などの詳細な解析が可能です。
実装密度が高いハードウェアや分解が難しい精密機器に対し、内部構造を損なうことなく調査を行えるため有用な手法とされています。
3Dスキャナー
3Dスキャナーを用いたリバースエンジニアリングは、物体の外形を高精度に測定して三次元モデルとしてデジタル化する手法です。CADデータが存在しない機械部品などでも、スキャン結果から設計情報を再構築可能な点が特徴です。
形状の再現性が求められる製造業や、部品の修理・再製造を目的とした逆設計に活用されています。
CMM
CMM(Coordinate Measuring Machine)は、対象物の各寸法・位置情報を高精度に測定する装置です。プローブを用いて物体の表面を計測し、ミクロレベルでの寸法データを取得します。
製品の精度検証やCADモデルとの照合、リバース設計など厳密な寸法精度が必要な場面で広く使用されています。
通信解析
オシロスコープやロジックアナライザといった測定器を使い、デバイスの信号ピンから出力される電気信号を観測し、通信プロトコル(I2C, SPIなど)を解析します。
生成AIで加速するリバースエンジニアリング
生成AIの活用により、このリバースエンジニアリングのプロセスが自動化・効率化され、企業のDX推進や競争力強化を後押ししています。生成AIがリバースエンジニアリングをどう支援するのかを解説します。
ドキュメントの自動生成
既存のソースコードをAIに読み込ませることで、フローチャート、シーケンス図、クラス図、ER図といった設計書を自動で生成します。システムのマイグレーション(移行)を検討する際の重要な第一歩となります。
これにより、システムの全体像や処理の流れが可視化され、担当者が変わっても迅速に仕様を理解できます。
コードの解読とコメント自動付与
複雑で解読が困難なコードや古い言語で書かれたレガシーコードに対して、AIがその機能やロジックを自然言語で解説したり、適切なコメントを自動で追記したりします。これにより、エンジニアのコード理解度が深まり、解析時間が大幅に短縮されます。
脆弱性の特定と修正案の提示
AIはコードパターンを学習しているため、潜在的なセキュリティ脆弱性を高速で特定して修正方法を提案することが可能です。これにより、開発プロセスの早い段階でセキュリティを確保できます。
レガシーシステムのモダナイゼーション
COBOLや古いバージョンのJavaなどで書かれたシステムを、AIが解析して新しい言語やフレームワークに変換するモダナイゼーション支援も行います。これは、システムのブラックボックス化を解消し、将来的なメンテナンス性や拡張性を確保する上で極めて重要です。
リバースエンジニアリングと法律
リバースエンジニアリングを行う際は、知的財産法だけでなく、不正競争防止法や国際法など複数の法令に抵触する可能性があります。そのため、事前に法的リスクを洗い出しておくことが大切です。
本章では、リバースエンジニアリングで注意すべき法律とその対策を紹介します。
著作権法上の許容範囲
著作権法において逆コンパイルが認められるのは、特定の条件下に限られています。例えば、ソフトウェアに対して、バグの修正や他のシステムとの相互運用性を確保するためなど技術的・業務的に正当な目的がある場合は著作権法第47の6条に基づき合法とされています。
(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
出典:著作権法|e-GOV
一方、得られた情報を第三者に無断で開示・販売・配布する行為は、たとえ解析自体が合法でも著作権侵害に該当する可能性があるため注意しましょう。
リバースエンジニアリングを行う際は、目的の正当性や実施範囲を総合的に判断し、慎重に対応する必要があります。
特許権侵害リスク
特許権は、発明に対して一定期間、独占的に実施できる権利です。特許が登録された技術については、特許権者の許諾なしに製造・販売・使用・譲渡などを行うと、自力で技術を導き出した場合でも特許権侵害に該当します。
そのため、リバースエンジニアリングによって得られた技術情報を用いて類似の製品や技術を開発・商用化する場合、既存の特許に抵触するリスクがあります。特にソフトウェアやハードウェア分野ではアルゴリズムや回路設計などのコア技術に関する特許が多数存在し、無意識のうちに侵害する可能性も否定できません。
特許権侵害を防ぐには、リバースエンジニアリング前後に特許調査を行い、対象技術の出願・登録状況を確認することが不可欠です。
意匠権によるデザイン保護
意匠権は、製品の形状・模様・色彩といった外観デザインを法的に保護する制度です。登録することで、第三者による模倣や類似品の製造・販売を防げます。
図面や写真に記載されていない部分など登録された意匠の範囲外については保護対象外となるため、リバースエンジニアリングそのものは違法となりません。
一方、リバースエンジニアリングによって得られた外観情報をもとに、意匠登録された範囲と実質的に同一または類似する製品を製造・販売した場合は、意匠権の侵害に該当する可能性があります。特に、意匠権は視覚によって認識されるデザインに着目して保護されるため、構造解析の結果を製品化する際には注意が必要です。
意匠権を侵害しないためには、解析対象の意匠登録状況を事前に調査し、得られた情報を商用利用する前に専門家と確認することが重要です。
不正競争防止法における営業秘密の扱い
不正競争防止法では、営業秘密を不正に取得・使用・開示する行為は違法と見なされます。
そのため、リバースエンジニアリングにより取得した情報が営業秘密に該当する場合、入手経路や使用方法によっては不正競争行為と見なされるリスクがあります。例えば、秘密保持契約に違反して入手した情報を利用した場合や外部から不正に入手されたソフトウェアを解析した場合は違法性が問われます。
一方で、製品を合法的に入手し、公開情報のみをもとに行うリバースエンジニアリングは原則として合法とされており、営業秘密侵害には該当しません。
ただし、営業秘密の存在や管理状況が不明瞭な場合は判断が難しくなるため、実施前の法的リスク評価と対策が必要です。
リバースエンジニアリングについてよくある質問まとめ
- リバースエンジニアリングとは何ですか?
既存の製品やソフトウェアを分析し、設計図やソースコードがない状態から、その仕様や仕組みを推定・再構築する技術のことです。通常の「設計→製造」とは逆のプロセスを辿るため、このように呼ばれます。
- リバースエンジニアリングは違法ではありませんか?
条件を満たせば合法です。たとえば、自社で正規に入手したソフトウェアを、バグ修正や相互運用性確保といった正当な目的で解析する場合、著作権法の範囲内で認められています。
ただし、得られた情報の第三者提供や無断利用は著作権侵害となる可能性があります。
- リバースエンジニアリングは何のために行うのですか?
主に以下の目的で活用されます。
- 仕様書がないシステムのマニュアル化
- レガシー資産の保守性向上
- 他社製品との相互運用性の確保
- サポートが終了したシステムの代替ソリューション開発
- 競合製品の分析
- セキュリティ脆弱性の早期発見
- 開発工数の削減
- 生成AIはリバースエンジニアリングにどう活用できますか?
生成AIは、特にソフトウェアの解析を大幅に効率化します。
- ソースコードからフローチャートなどのドキュメントを自動生成する
- 複雑なコードのロジックを自然言語で解説し、コメントを付与する
- コード内の脆弱性を特定し、修正案を提示する
- 古い言語で書かれたレガシーシステムを新しい言語へ変換するのを支援する
まとめ
リバースエンジニアリングは、既存製品やソフトウェアの構造・動作を解析し、保守や再設計、互換性確保などに活用できる重要な技術です。静的解析・動的解析・プロトコル解析・逆コンパイルなど多様な手法があり、対象や目的に応じて使い分けることで、業務効率の向上や技術資産の再利用が可能です。
近年では、生成AIの進化により、コード構造の自動解析や仕様書の自動生成といった高度なリバースエンジニアリングが実現しつつあります。特に、従来手法では難しかったレガシーシステムの再構築やドキュメント整備にも活用が進んでおり、技術継承の課題解決にも貢献しています。
しかし、その手法は専門的で、著作権や特許といった法的な配慮も欠かせません。どの手法が最適か、法的に問題はないかといった判断は、自社だけで行うにはリスクが伴います。
リバースエンジニアリングの導入を具体的に検討する際は、その目的設定から技術選定、リスク管理までを総合的にサポートできる専門家への相談が成功の鍵となります。
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