点群データとは?取得方法・メリット・デメリット・AI活用企業事例を徹底紹介!
最終更新日:2024年11月10日
点群データは、3次元空間内の多数の点で構成されるデジタルデータです。
物理的な世界をデジタルで正確に表現する強力なツールであり、AIによる画像認識と組み合わせて様々な産業分野で活用されています。精密な3Dモデルを作成できることから、
本記事では、
点群データの導入を考えている企業担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
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点群データによる外観検査システムに強いAI開発会社をご自分で選びたい場合はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
点群データとは?
点群データ(Point Cloud Data)は、空間内の物体や環境を大量の点の集合で表現した3次元データです。各点には、座標(X, Y, Z)に加えて色情報や反射強度の情報が含まれており、これにより物体の形状や位置を正確に再現できます。
大量の点が集まることで画像として視認可能であり、密度が高いほど高精度なデータとなります。
点群データは、その高精度と詳細な情報により、地形や構造物の精密な3Dモデル化に利用されており、特に現実世界をデジタル化するための重要な技術です。
建築・土木分野、都市計画、最近は製造業での外観検査など幅広い分野で活用されています。
点群データの取得方法
点群データの取得方法は、主に以下のようなものがあります。
- ステレオカメラを含む3Dカメラ:複数の視点からの画像を元に得られる深度情報から点群データを生成
- ハンディレーザースキャナー・LiDAR:広範囲を計測可能
- 地上設置型3次元レーザースキャナー:建物や地形の精密な3次元計測が可能
- 航空レーザー測量:ドローンや無人航空機にレーザースキャナーを搭載し、広範囲の地形を効率的に計測
- 車載型移動計測システム(MM):車両にレーザースキャナーを搭載し、道路や周辺環境を移動しながら計測
- ハンディ型計測器:手持ち型のレーザースキャナーを使って、比較的小規模な物体の3Dデータを収集
- 水中計測:水中に設置したり移動型で計測したりして、水中環境の点群データを取得
- 地上型レーザースキャナー(TLS):地上から高精度な点群データを取得
- 写真画像をSfM技術で点群化:複数の写真画像をSfM(Structure from Motion)技術で解析し、3D点群データを生成
点群データの取得方法には上記のように多様な方法があり、対象物や環境、必要な精度に応じて最適な方法を選択することが重要です。
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点群データを使うメリット
点群データには、データ化できる内容や活用時においてさまざまなメリットがあります。以下では、点群データのメリットを紹介します。
短時間で広い範囲の測量ができる
手計測で数百メートルにわたる広い範囲を測量する場合には、相当な時間や人手が必要です。例えば、ノギスやメジャーなどを使用した手動測定は、小規模な対象物の寸法計測などで今でも行われています。しかし、点群データに比べると時間がかかり、人為的ミスも発生しやすいです。
一方、レーザースキャナーを活用する場合には、数百メートルを超える360度の範囲を一度で計測できます。
また、ステレオカメラなど計測技術の中には、リアルタイムで点群データを取得し処理できるものもあります。これにより、自動運転や外観検査などデータに基づいた迅速な意思決定が求められる分野での利用が促進されます。
複雑な設備や部材の3D情報も高精度で計測できる
点群データであれば、従来手法による測量では困難であった複雑な部材や設備の詳細な3D形状を立体的に高精度に記録できます。例えば、配管が複雑に入り組んだプラント設備や、異なる角度からの計測が求められる大型の構造物でも点群データを利用することで奥行きなども含めて簡単に精密な計測が可能です。
建築・土木分野では長らく2D CADが使用されてきました。しかし、3D点群データに比べると情報量が少なく、3次元的な把握が難しいデメリットがありました。また、複数の写真から3Dモデルを生成するフォトグラメトリ技術は、コストが低く、簡易的な3Dモデル作成に適しています。しかし、精度や詳細さでは点群データに劣ります。
点群データを活用することで、細かな部材の寸法を正確に把握できるため、実物との測量誤差を最小限に抑えた設計変更や修理が行えます。
関連記事:「寸法検査とは?従来手法の限界・AIを導入するメリットまで徹底解説!」
非接触で安全に計測できる
レーザースキャナーを使用すれば、離れた場所からでもスキャンできるため、安全な場所からの計測が可能です。例えば、高所や人の立ち入りが困難な危険な場所のデータを取得でき、作業者の安全を確保しつつ効率的にデータ収集が行えます。
また、狭い空間やアクセスが困難な場所での計測においても、非接触でデータ取得が可能であり、危険を伴う作業に伴うリスクを低減できる点もメリットです。
シミュレーションに活用できる
点群データは、点群編集処理ソフトを使用した作図や3Dモデル化が可能で、3DシミュレーションやVR体験へ活用できます。これにより、建設プロジェクトの事前検討や環境再現が容易になり、より正確なシミュレーションによる計画立案が可能となります。
また、点群データを用いたシミュレーションは、設計段階での課題の早期発見やリスクの評価にも役立ち、プロジェクトの品質向上とコスト削減に貢献します。
2D図面への変換に対応
点群データから2D図面を作成することも可能です。対応したソフトウェアを使用すれば、点群データから線を抽出したりトレースすることで2D図面の作成が行えます。
これにより、従来の2D図面ベースの作業フローにも対応可能であり、既存の設計資料や管理資料との統合が容易です。
プライバシーへの配慮
点群データはいわゆる画像データと異なり、画像内の人物の顔などを認識することはできまず、あくまで点の集まりとして表現されます。
そのため、例えば浴場などプライバシーに配慮する必要がある場所で、転倒検知など、人の動きをプライバシーに配慮しつつ検知したい場合などに利用も検討可能です。
点群データを使う際の注意点
点群データは安全面等において多くのメリットがある一方で、デメリットもいくつかあります。以下では、点群データのデメリットを紹介します。
データ量が大きい
点群データは非常に大きなファイルサイズを持つことが多く、ストレージや処理能力に対する要求が高くなります。これにより、大規模なプロジェクトではデータの保存や管理が難しくなります。
また、点群データをそのまま使えるソフトウェアは限られているため、多くの場合CADなど他のソフトで使用するには変換が必要です。大規模データの変換は、システムに大きな負荷をかける可能性があります。
特に、リアルタイム処理やクラウド上での共有が必要な場合、データの容量がボトルネックとなることもしばしばです。データの転送やバックアップにも多くの時間とコストがかかるため、効率的な方法の検討が必要です。
大規模データを効率的処理するために、以下方策が開発されています。
- 分散処理技術の活用
- エッジコンピューティングの活用
- 点群の圧縮技術の開発
ノイズによる不正確さ
スキャン時の環境条件や機器の性能によっては、ノイズが混入することもあります。このノイズは後処理で除去する必要がありますが、その過程で重要な点群データが失われてしまうこともあるため注意が必要です。
また、ノイズ除去のプロセスには、高度なアルゴリズムや専門知識が必要であり、ノイズ除去を担当する人材によってデータの正確さや精密さが変わることもリスクとして挙げられます。
レーザーが届く範囲しかデータを取得できない
レーザースキャナーを使用した点群データ取得方法は物体から跳ね返ってきたレーザーで計測する仕組みなのでめ、レーザーが届く範囲しか点群データを取得できません。
例えば、物体の正面から計測する場合には、側面や裏面などにはレーザーが届かないため、必要なデータを十分に得られないこともあります。
したがって、3Dレーザースキャナーなどレーザー系の取得方法を利用する場合には、複数の位置からスキャンを行う必要があります。
導入コストが高い
3Dレーザースキャナ、専用ソフトウェア、高性能PCなど、初期投資が大きくなります。ただし、長期的な視点で見ると、このコストデメリットは多くのメリットによって相殺され、むしろ大きな利点となる可能性があります。
例えば、点群データを活用することで、従来の手法と比較して作業時間を大幅に短縮できます。効率化は人件費の削減に直結し、長期的には導入コストを上回る節約につながります。
また、高精度な3Dモデルを使用することで、設計ミスや施工エラーを事前に発見し修正できます。これにより、実際の建設段階での手戻りや修正作業が減少し、大幅なコスト削減につながります。
さらに、危険な場所や立ち入り困難な場所のデータ取得が可能になり、作業員の安全確保につながります。これは労働災害のリスクとそれに伴うコストを低減させます。
初期の導入コストは確かに高額ですが、適切に活用することで、それを上回る価値を生み出す可能性が高いと言えるでしょう。
点群データが活用されている事例
点群データは、自動車やロボティクス、リバースエンジニアリングなど、さまざまな分野で幅広く活用されています。以下では、点群データの主な活用方法について紹介します。
【オプトコム】外観検査
自動車や電子部品などの幾何形状に近い製品は、3D点群データを使用すれば効率的かつ高精度に外観検査が可能です。
例えば、株式会社OptoComb(オプトコム) (旧社名 株式会社XTIA)の外観検査ソフトウェア「OptoComb Elements」では、光コムセンサーで取得した高解像度の3D点群データを可視化し、複雑に入り組んだ製品の詳細構造を明確に確認できます。
これにより、微細な外観形状情報を高精度で定量評価でき、さらに多様な幾何学フィッティング機能を利用すれば微小欠陥の可視化が可能です。
外観検査へ点群データを活用することで、検査プロセスの効率化と品質向上が実現し、製造業における生産性の向上とコスト削減に大きく寄与することが期待されます。
関連記事:「外観検査とは?目的・見逃しを防ぐ手法・手順・チェック項目」
【ダイナミックマッププラットフォーム】自動運転
自動運転技術において、環境認識や障害物回避システムは極めて重要な役割を果たしています。自動運転車が安全に走行するためには、高精度な環境データが不可欠であり、これを支えるデータの一つが点群データです。
例えば、ダイナミックマッププラットフォーム株式会社の高精度3次元地図データ(HDマップ)は、膨大な容量の高精度3次元点群データを基に、地物を収録しているデータです。自動走行や先進運転支援システム(ADAS)に必要とされる「cm級」の絶対精度を実現しています。
これを活用し、区画線や道路標識などの実在地物のデータを参照することで、車両の自己位置推定の精度を高められます。
このように点群データを自動運転技術へ活用することにより、さまざまな側面で自動運転技術の快適性と安全性の向上に貢献しています。
関連記事:「自動運転にAIが欠かせない理由とは?仕組みとメリット・デメリット」
【国土交通省】ロボティクス
ロボティクスの分野において、自動配送ロボットなどの移動ロボットは、自己位置を正確に推定するために3次元点群データを活用しています。
移動ロボットが正確に自己位置を把握するには、以下2つの点群データを照合する必要があります。
- 事前に取得したベースマップとなる3次元点群データ
- 自機に搭載したセンサーでリアルタイムに取得する3次元点群データ
このプロセスにより、移動ルートの障害物検知や環境認識を効果的に行うことが可能です。
例えば、国土交通省の「人・ロボットの移動円滑化のための歩行空間DX研究会」では歩行空間における移動支援サービスの普及・高度化に向けて実証実験を行いました。この実験では、LiDARから得られる3次元点群データを自動配送ロボットの走行に活用しました。
一部の点群データでは、目標として掲げていたJR川崎駅周辺から川崎市役所までの走行経路を完走することに成功しています。
点群データを活用した自動配送ロボットは、操作に関する研修時間の短縮と同時に、運用の正確さと安全性を向上させることで、より快適な移動支援サービスを提供することが可能です。
【木村鋳造所】構造物の図面を作成するリバースエンジニアリング
リバースエンジニアリングとは、既存製品の構造や仕組み、製造方法を明らかにするために行われる3Dデータ化のことです。リバースエンジニアリングへ点群データを活用することで、製品の正確な形状をデジタル化し、設計の復元や再構築を効率的に行うことが可能です。
例えば、木村鋳造所では3Dスキャナーを使用して製品やモックアップ、クレイモデルを読み取り、得られた点群データを3DCADデータに変換するリバースエンジニアリングサービスを提供しています。これにより、図面がない製品でも正確に形にでき、新たな設計や修復に活用できます。
この例にあるように点群データは、構造解析はもちろん、製品と設計図面の照合や文化財の再現など、幅広い用途で活用することが可能です。
【イメージワン】ドローンデータから森林情報解析
ヘルスケアや地球環境のソリューションを提供する株式会社イメージワンでは、ドローンデータから森林情報を解析するソフトウェア「DF LAT」と「DF Scanner」を販売しています。
「DF LAT」はレーザードローンで取得した三次元点群データを基に、森林解析用のデータを作成するソフトウェアです。地形データや標高データの作成も可能で、林内の作業道や微地形などを確認することができます。
「DF Scanner」はAIによる森林状況の解析が可能で、60種の識別と各樹木の幹材積・樹高・DBH(樹木の胸高直径)の推定を一元的に解析します。
関連記事:「AI×林業の可能性は?課題・メリット・活用方法・森林DXの事例を徹底解説!」
災害査定
災害査定の現場でも点群データは活用されています。例えば、小規模な土砂崩れなどの災害現場で、発災後すぐに簡易な機器で現場を計測し、災害現場の点群データを作成します。
計測作業は少人数かつ短時間で完了し、取得したデータは事後的な状況把握や横断図の作成、土砂流出量の概算などに活用されます。これにより、迅速かつ効率的な災害対応が可能になります。
点群データとAI技術の可能性
近年、高度な分類や分析が可能なAIを点群データへ活用する動きが増えてきています。以下では、点群データとAI技術の関係について2つの視点から紹介します。
画像認識AIによる点群データの処理
ディープラーニングによる画像認識AIモデルを使用して、点群データ内の物体や構造を自動的に分類・セグメンテーションすることが可能です。これにより、大量のデータから必要な情報を効率的に抽出できます。
PointNet/PointNet++などの点群専用のニューラルネットワークアーキテクチャを使用します。また、3D畳み込みニューラルネットワーク(3D CNN)による特徴抽出も行われています。
点群内の各点にラベル(建物、樹木、地面など)を割り当てるセマンティックセグメンテーションで、詳細な分類も可能になっています。
画像認識・画像認識に強いAI開発会社はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
点群データの前処理をデータ分析AIで効率化
AIによるデータ分析のアルゴリズムを活用することで、点群データ内のノイズや外れ値を自動的に検出・除去し、データの品質を向上できます。
AIを使って点群データから重要な特徴を抽出し、物体認識や形状分析を行えます。そのため、データ処理の工数が大幅に削減され、効率的なデータ活用が可能となります。
例えば、クモノスコーポレーションが共同開発した「ANJU」では、数十億点以上の大規模な3D点群データにある車やほこりなどのノイズをAIで自動的に除去できます。
従来手作業でノイズを削除していたためデータ取得から提供までに平均10日かかっていましたが、ANJUにより最短4日で提供が可能になり、50%以上の工数削減を実現しています。
AIを点群データの処理に活用することで、災害査定など点群データを利用するプロジェクトの迅速な立ち上げが期待されます。
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AIによる点群データの活用
完成した点群データの活用においても、AI技術は有効なツールです。AIを用いることで、点群データ内の物体を自動的に検出・認識できます。
AIの活用により、膨大な点群データから必要な情報を抽出する作業が効率化され、作業時間の短縮が図れます。
点群データとAIを組み合わせれば、高精度な3Dモデルを自動生成でき、より現実的に構造物の劣化予測や災害シミュレーションが可能です。また、数カ月間取得し続けた点群データをAIで比較・分析することにより、構造物の変形や地形の変化を時系列に沿って効率的に把握できます。
例えば、三信建材工業株式会社の港湾インフラ施設の定期点検支援技術では、自律飛行可能なUAVの撮影画像から3次元点群モデルを構築しています。そして、画像解析AIで作成した損傷画像を点群モデル上で一元管理できます。
これにより、経過監査が容易となり、メンテナンスの効率化と精度向上に寄与しています。
AI技術を活用することで、点群データの分析と管理がより効率的かつ精密に行えるようになり、予防保全やリスク管理を最適化することが可能です。
点群データについてよくある質問まとめ
- 点群データとは何ですか?
点群データとは、物体や環境の表面を構成する無数の点の集合からなる3次元データです。各点には座標情報(X, Y, Z)と色情報や反射情報などが含まれ、物体の形状や位置を正確に再現できます。
- 点群データはどのように取得できますか?
点群データは、地上型レーザースキャナー、ドローン搭載の航空レーザー、ハンディスキャナー、ステレオカメラなど、さまざまな方法で取得可能です。対象物や環境に応じて適切な取得方法を選択します。
まとめ
点群データは、物体や環境を正確に3Dで再現するための強力なツールです。
しかし、その高精度と引き換えに、データ量の大きさや処理の難しさといった課題も存在します。これらのメリットとデメリットを理解し、適切な用途で活用することで、さまざまなビジネスや研究分野で大きな価値を提供できます。この機会に、点群データの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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