3Dカメラとは?種類、メリット・デメリット、画像認識での活用事例を徹底紹介!
最終更新日:2024年10月19日
3Dカメラは、物体の奥行きや形状を正確に捉え、立体的な三次元画像を生成できるカメラです。従来の2Dカメラでは取得できない奥行きなどの情報を扱えることから、製造業や自動運転など多くの分野で高精度な画像認識が必要な際に活用されています。特に、外観検査の効率化や自動化において欠かせない技術となっています。
本記事では、
AI Marketでは
画像認識に強いAI開発会社をご自分で選びたい場合はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
3Dカメラとは?
3Dカメラとは、物体の奥行きや距離を正確に捉えて撮影し、対象物の奥行き情報も含めた3Dモデル情報を生成できる深度カメラの一種です。
従来の2Dカメラでは横と縦の情報しか取得できず、平面的な画像しか生成できませんが、3Dカメラは奥行き(=深度)の生成が可能なため、よりリアルかつ詳細な視覚データを提供します。
3Dカメラで取得したデータは、点群データなどで出力されます。点群データは、X, Y, Zの3次元座標で表される無数の点の集合体です。
関連記事:「点群データとは?取得方法・メリット・デメリット・活用企業事例を徹底紹介!」
産業用ロボットの視覚センサーや、自動車の自動運転システム、スマートフォンの顔認証まで幅広く活用されています。Grand View Researchが2024年に発行した「3Dカメラの世界市場」では、3Dカメラ市場は2024年~2030年までに年間平均成長率(CAGR)は17.3%で成長し、2030年には市場規模が185億6,000万米ドルに達すると報告されています。
3Dカメラにより、物体の位置や形状を高精度に把握できるため、自動化や効率化のプロセスにおいて大きな効果を発揮します。
3Dカメラの主な種類
3Dカメラは、以下のカメラに大きく分けられます。
カメラの種類 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
ステレオカメラ |
| 自動運転車などの屋外使用向け |
ToFカメラ(Time of Flight) |
| ピッキング作業やロボットの距離測定 |
構造化照明 |
| 工業製品の精密測定 |
光切断法 |
| 産業用途 |
LiDAR |
| 自動運転、ドローン、地形測量、建築物の3Dマッピング |
上記のように3Dカメラにはさまざまな種類があるため、自社の業務プロセスに最も適したカメラを選択することで、効率化や自動化を推進できます。産業分野では高精度な測定が求められるため、光切断法やステレオカメラが多く採用されています。
AI Marketでは
3Dカメラのメリット
3Dカメラには取得できる情報やスピードなどにおいて、さまざまなメリットがあります。以下では、そのメリットについて紹介します。
奥行き情報を取得できる
3Dカメラは、物体の奥行き情報を取得し、立体的なデータを生成することが可能です。これにより、物体の形状や位置を正確に把握できることから、特に製造業や物流業界での自動化プロセスにおいて大きなメリットといえます。
また、複雑な形状や表面テクスチャを持つ物体でも、高精度な3D測定が可能なため、距離だけでなく、位置情報、物体の大きさ、体積など様々な情報も得られます。
これにより、従来の2Dカメラでは困難だった精密な再現や解析が可能となります。
リアルタイムの距離測定
3Dカメラの中でも、特にステレオカメラやToFカメラなどはリアルタイム性に優れています。ステレオカメラではリアルタイムで物体までの距離を測定でき、即座にフィードバックを得ることが可能です。
そのため、自動運転やロボット制御などリアルタイムなデータが重要なシーンで役立ち、動的な環境下での物体認識や障害物回避といった高度なタスクもスムーズに行えるようになります。
近距離で高精度
3Dカメラは、特に近距離での測定において優れた性能を発揮します。実際に多くの3Dカメラでは、1センチ未満の距離精度を実現しています。
特に構造化照明方式は非常に高精度な測定が可能です。
近距離での高精度な奥行き情報を取得できるため、例えばピッキングロボットや工場の組立ライン、精密な作業が必要とされる生産現場など、ミリ単位での正確な動作が求められるシーンで活用できます。
3Dカメラのデメリット
3Dカメラにはいくつかの課題や制限があり、導入に際して考慮すべき点が存在します。以下に、主なデメリットについて紹介します。
屋外で使いにくいカメラもある
3Dカメラは、深度情報を正確に取得するために環境条件に大きく影響を受けます。特に、太陽光などの強い光源がある屋外では、光の反射やセンサーの精度に影響を与えることが多く、使用が困難です。
例えば、ToFカメラはイメージセンサーが太陽光に反応してしまうため、光の反射を正確にキャプチャできなくなり、測定が不安定になります。同様に、構造化照明方式のカメラも太陽光の影響を大きく受け、屋外での利用が制限されます。
そして、周囲の光環境への依存性が強いため、以下対象物は正確に測定できない場合があります。
- 透明な物体
- 光を強く反射する物体
- 黒い物体
そのため、3Dカメラを活用する際には、車載カメラとして使用できないなど「屋内利用」に限定されるものがある点に注意しましょう。
なお、ステレオカメラやLiDARなどは光の影響を受けにくいことから、屋外での使用も可能です。
導入コストが高い
3Dカメラは、2Dカメラと比較して得られるデータ量が多くなる分、導入コストが高くなる傾向にあります。また、機器本体の価格だけでなく、関連するソフトウェアやメンテナンス費用も考慮する必要があるため、全体的なコストが高くなりがちです。
特に中小企業やスタートアップにとっては、初期コストが導入障壁となり、導入を進められない場合があります。
長距離で精度が下がる
一般的に、3Dカメラは近距離に強い一方で、長距離での精度は劣る傾向にあります。特に、構造化照明方式は近距離測定に適しており、長距離測定には適していません。
ToFカメラ、ステレオカメラは比較的中長距離の測定が可能です。
とはいえ、数百メートル以上先の測定は難しいため、長距離測定が必要なケースでは基本的に3Dレーザースキャナなど他の測定方法を検討する必要があります。
撮影後の処理に手間がかかる
3Dカメラで撮影した画像の後処理には時間と手間がかかります。主な理由と処理内容は以下の通りです。
画像の後処理 | 処理の内容 |
---|---|
歪み補正 | 3Dカメラのレンズによって生じる歪みを補正する必要があります。 特に広角レンズを使用した場合、画像の周辺部分に樽型や糸巻き型の歪みが生じやすい。 |
平行化処理 | ステレオカメラの場合、2台のカメラの光軸を完全に平行にすることは難しい ソフトウェア上で画像を平行化する処理が必要です。 |
画像の正規化 | 撮影時の照明条件や露出の違いによって生じる明るさのばらつきを補正し、画像全体で一貫した明るさとコントラストを得るための処理 |
ノイズ除去 | センサーノイズや環境光の影響によるノイズを除去する 特に低照度環境下での撮影時にはノイズが目立ちやすくなります |
これらの処理は、データ量が多いほど時間がかかります。また、高精度な結果を得るためには、各処理でのパラメータ調整が必要になることもあり、経験と専門知識が求められます。
さらに、処理の多くはCPUやGPUに負荷がかかるため、高性能なコンピューターが必要になります。
3Dカメラの活用方法
3Dカメラは、物体や環境の正確な3Dモデルを作成するため、製造・自動運転・医療・ロボティクスなど幅広い分野で活用されています。以下では、具体的な企業の活用例を紹介しつつ、各分野での活用方法を解説します。
【オプテックス・エフエー】食品製造ラインの外観検査
製造現場や食品工場では、3Dカメラを製品の外観検査に導入し、欠陥検出や精密測定などへ活用できます。
例えば、オプテックス・エフエー株式会社の「3D-Eye5000シリーズ」では、食品の割れや欠けなど2D情報のほかに、ヒビ・凹み・体積の検査に対応できるため、食品の体積計測や冷凍食品の潰れ検査で利用可能です。
- 2Dカメラ:「割れ」「欠け」「面積」「色」の検査が可能
- 3Dカメラ:上記に加え、「ヒビ」「凹み」「体積」の検査も可能
3Dカメラを外観検査へ導入することで、詳細な製品や食品の詳細な3D情報を取得でき、効率的かつ高品質な検査が可能となります。
関連記事:「外観検査の効率と精度を向上させるための最新の手法と技術、画像処理技術やAIを活用した自動化など、新たなトレンドを理解」
ロボティクス
3Dカメラは、ロボティクス分野においても活躍しています。特に、ピッキングロボットや自動化された製造ラインで、物体の正確な位置や形状をリアルタイムで把握し、精密な動作制御を可能にしています。
例えば、HMS株式会社の3D検査用のAIカメラ「SiNGRAY Rシリーズ」は、2Dと3Dのデプス画像を組み合わせた高精度な検査が可能で、ピッキングロボットなどでの目標物検出に利用されています。
AI技術と3Dカメラを搭載したロボットは、複雑な環境でも適応性を持ち、柔軟に作業を行えるため、製造現場における生産性の向上に貢献します。
【ソニー】自動運転
自動運転車には深度を検知できる3Dカメラが不可欠です。物体や人、その他の車を認識することで、車の周囲の認識を支援し、安全なナビゲーションを可能にします。
例えば、ソニーの「Safety Cocoon」コンセプトでは、車内にあるToFカメラセンサーが乗員の状態をモニタリングしながら、読み取った表情やしぐさから疲労度を判定し、必要に応じてアラートを発します。
この例のように、3Dカメラを採用した車は、3D情報をドライバーや乗員にリアルタイムでフィードバックでき、安全かつ快適な車内空間を実現します。
関連記事:「自動運転の仕組みからAIの役割の重要性、そして自動運転がもたらすメリット・デメリットを徹底解説」
【GEヘルスケア/聖路加国際病院】医療
詳細な画像情報を取得できる3Dカメラは医療分野で幅広く活用されており、特に手術ナビゲーションやポジショニングにおいて活用が進められています。
例えば、AI搭載3Dカメラを使用した GEヘルスケアの「Workflow」は、ディープラーニングカメラを使用して患者の位置を自動で調整するオートポジショニングが可能なシステムです。聖路加国際病院で活用されています。これにより、医療従事者が患者との接触時間を短縮できます。
3Dカメラによって取得される詳細な解剖学的情報は、患者との接触時間を減らす際や医療従事者が精度の高い判断を下す際に役立ちます。
【LIPS】顔認証
3Dカメラは、顔認証技術にも欠かせない存在です。従来の2Dカメラに比べて、3Dカメラは奥行き情報を活用し、より正確な顔認証を提供します。
例えば、LIPSの「LIPSFace™ HW120/125」は3D顔認識と活性度検出により、1秒以内に正確な顔認証を実現します。さらに、99.76%の精度と0.1%未満のなりすまし検出率を誇ります。
この例のように、3D顔認証を活用すれば、類似認定される人物が多数いるなど従来の2D顔認証システムでは認証が困難な条件下でも、信頼性の高いセキュリティを実現できます。
関連記事:「顔認証システムとは?どんな仕組み?導入手順・注意点・ディープフェイク対策を徹底解説!」
【TOPPAN】AR・VR
3Dカメラは、仮想オブジェクトを現実世界とシームレスにブレンドし、ユーザーの動きをリアルタイムで追跡することが可能です。そのためAR(拡張現実)やVR(仮想現実)アプリケーションにおいても、3Dカメラはユーザー体験を向上させるうえで不可欠な技術です。
例えば、TOPPANが開発した「ジェスチャUI入力システム」は、ユーザーが拡張画面に手をかざすと、ToFカメラが手の位置や動きを認識し、画面を操作できます。セイコーエプソン社のスマートグラス(光学エンジン搭載)を使用しています。
手の動きをリアルタイムで認識することにより、直感的な操作が可能になり、ARやVRの没入感をさらに高めています。
今後、3Dカメラのさらなる発展に伴い、ビジネスやエンターテインメントにおける積極的な活用が期待されます。
AI技術と3Dカメラの統合
3DカメラとAIの組み合わせは、コンピュータビジョンの分野で大きな可能性を秘めており、今後以下の側面でさらなる発展が期待されています。
- 3Dカメラで取得した情報をAIが解析することで、より精密な物体認識や環境理解が可能になります。
- 3Dデータに特化したAIモデルで、点群データや深度マップを直接処理できる新しいアーキテクチャが登場しています。
- エッジAI技術の進歩により、3Dカメラで取得したデータをその場で高速処理することが可能になっています。
- LiDARやレーダーなどとAIを組み合わせるセンサーフュージョンで、より包括的な環境認識が可能になります。
特に、製造業・医療・物流など精度とスピードが求められる業界では、3Dカメラが収集した膨大なデータをAIが即座に解析することで、リアルタイムでの意思決定やプロセスの最適化が可能になります。
AIと3Dカメラの統合により、精密なデータ解析をリアルタイムで行えるようになるため、企業が競争力を高めるための不可欠な要素となり得ます。
3Dカメラについてよくある質問まとめ
- 3Dカメラは屋外でも使用できますか?
一部の3Dカメラは屋外での使用が難しい場合があります。特にToFカメラや構造化光方式のカメラは、強い太陽光や反射によって精度が低下することがあります。
- 3Dカメラはどのようなビジネス分野で活用されていますか?
3Dカメラは、製造業の外観検査やロボティクス、自動運転など、さまざまな分野で活用されています。
正確なデータをリアルタイムで取得できるため、業務効率化や自動化を支援する重要なツールです。
まとめ
3Dカメラは、物体や環境の立体的な形状や奥行きを捉える技術で、ステレオカメラやToFカメラなどの種類があります。近距離かつリアルタイムの距離測定に強みを持ち、外観検査やロボット制御、物流管理など幅広い分野で活用されています。
近い将来、
AI Marketでは
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp