最終更新日:2024-09-23
デジタルツインとは?メタバース・シミュレーションとの違い・導入メリット・事例5選徹底解説!
「デジタルツインって我が社にも関係ある?」
「デジタルツインで何ができるの?」
AI(人工知能)や5Gといった様々な先端技術によって可能になった、デジタルツインやメタバースが次世代の事業に欠かせないコンセプトとしてメディアを毎日騒がせています。しかし、まだ多くの企業では「自社にはまだ関係ないスタートアップのお祭り」という感覚の方が多いようです。
確かにメタバースは、まだいまいち地についていないふわふわ感があります。一方、デジタルツインは既に製品開発の分野では目に見える成果をもたらしています。デジタルツインを活用すれば、天井知らずですぐに予算を食い尽くす試作品の製作とテストを驚くほどの低コストでまわすことが可能なのです。
本記事では、デジタルツインと、シミュレーション・メタバースの違いから、デジタルツインの導入メリット、事例を解説します。
デジタルツインは業界によって活用方法が大きく異なります。本記事を読んでいただければ、具体的な導入事例を知ることができ、目的に応じた適切な活用方法のヒントを得ることができます。
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デジタルツインとは?
デジタルツインは「現実世界から得た情報を基に作り上げたデジタル仮想空間」です。名前の通り、デジタルで作り上げた双子(ツイン)のことです。ミシガン大学のマイケル・グリーブス博士とNASAのジョン・ヴィッカーズ氏が提唱したアイデアがもとになって「デジタルツイン」と表現されました。
デジタルツインを使えば、自由に指定した条件下でシステム、機械や設備のシミュレーションや試運転が可能になります。試作品を製作することなく、実世界に限りなく近い環境でテストが可能です。
起源は1970年に月面調査を試みたアポロ13号とも言われており、半世紀以上も前から有用性が見出されてきた技術です。現在は、AIや5G、VRなどの先端技術を組み合わせて活用されており、製造業をはじめとする多くの業界で利用されています。
デジタルツインとメタバースの違い
最近話題のメタバースは、現実世界とリンクしていないデジタル空間です。デジタルツインとよく混同されますが、大きな違いは「現実世界とリンクしているか」と「デジタルであるか」の2つです。
メタバースは、仮想空間の「別世界」を指します。現実世界で起こったことはメタバース空間に影響しません。それで、物理距離の制約を受けないコミュニケーションや会議を行うツールとしてよく用いられています。
デジタルツインは、現実世界とリンクしているデジタル空間です。現実世界とリンクしているデジタル空間で様々なシミュレーションを行えます。
デジタルツインとシミュレーションの違い
シミュレーションは、現実世界とある程度リンクしているが、デジタルとは限らないモデル検証システムです。リアルタイムで状況を反映することはできず、デジタル上で行われるとも限りません。時には物理的なモデルでシミュレーションするることもあります。
デジタルツインもシミュレーションの一種と考えることもできます。しかし大きな違いとしてデジタルツインは、現実世界とリアルタイムでリンクしています。IoTセンサーやAIカメラによって集めた現実世界の膨大なデータを基に、AIでリアルタイムで分析やシミュレーションを行うことができます。
デジタルツイン5つのメリット
デジタルツインのメリットを5つ紹介します。
- 実世界に近い試運転・試作品テストが可能
- 現場の状況を遠隔地で確認できる
- 予知保全でリスクを事前に発見
- データ解析による品質向上
- 適切な人員配置によりコスト削減
それぞれのメリットについて詳しく説明します。
実世界に近いシミュレーション・試作品テストが可能
デジタルツイン空間では、自由で指定した条件下でのシステム、機械や設備のシミュレーションや試運転が可能です。製造業では、デジタルツインを活用すれば試作品を作る必要はありません。そして、実世界に限りなく近い環境で試作品のテストが可能です。または実世界でめったにありえないような厳しい環境を想定してテストができます。試作コストが大幅に抑えられるだけでなく、運用時のリスクも正確に知ることができます。非製造業でも、システムや建造物、特定の作業プロセスをデジタルツインでシミュレーションすることで事前に正確なリスク評価を行う企業が増えています。
AR・VRを用いれば、試運転を行っている様子を担当者自身の目で確認することができるので、改善点や問題点を正確に察知できます。
現場の状況を遠隔地で確認できる
デジタルツインのデータは、通信デバイスさえあればどこでも確認できます。現場の状況やシミュレーション結果の確認がオンラインで完結するため、出張にかかる経費や時間を大幅に削減可能です。
さらに、現場の大まかな状況だけでなく、作業員の手元の確認まで行うことができます。熟練作業員の手元との違いを解析して個人に合ったフィードバックが可能となります。それで、より質の高い技術研修ができ、作業の品質を向上させることが可能です。
予知保全でリスクを事前に発見
デジタルツインでは試運転時のリスクだけでなく、実運用時のリスクも事前に知ることができます。製造業であれば、IoTセンサーで部品の劣化具合や使用期間に関するデータを収集すれば、デジタルツインの中でAI解析によって故障や不具合のリスクを予測可能です。実世界で機械や部品が故障していない状態から、適切な対策を打つことができます。
「一つの部品が壊れただけなのに、レーン全体が動かせない」「復旧までに時間がかかってり納期に間に合わない」と言った現場で起きがちな状況も事前に察知可能です。
データ解析による品質向上
IoTセンサーやAIカメラ、他のソースから集められた膨大なデータをデジタルツインで処理・解析することによって、従来は気づけなかった問題点や改善点を洗い出し、品質向上に役立てることができます。工程にボトルネックが見つかった場合でも、現地に出向かうことなく原因究明することが可能です。さらに、複雑な多因子の解析もAIが行ってくれるため、解析知識やツールがなくても容易に原因を特定できます。
適切な人員配置によりコスト削減
デジタルツインでは、各作業の工数や手間などを数値として確認できるため、人員配置を適切に行うことが可能です。これにより、不要な人員をなくしてコストを削減し、特定の作業員の負担が大きくなることも防げます。
曜日や作業内容、納期までの日数によっても必要な人員は異なるはずです。それらを人が正確に判断するのは難しいですが、AIを使うことによって適切な判断を容易にできます。
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デジタルツインを構成する5つの技術
「デジタルツイン」は様々な技術を組み合わせることによって成り立っています。ここでは、最新のデジタルツインに用いられる主要技術を5つ以下に紹介します。
- IoT
- 5G
- AI
- AR・VR
- CAE
イメージは、IoTセンサーによって集められたデータが5G(高速通信)でサーバーに送信され、AIが解析してデジタルツインを作り出す流れです。デジタルツイン上では、CAE(コンピューター上で試作や実験を行うシステム)による試作や改良が可能で、AR・VRを使用すれば実際にデジタル空間に入り込むこともできます。
IoT
IoT(Internet of Things)は、従来インターネットが接続されていなかったものやデバイスがインターネットへ接続できるようになることです。現場にある設備や機械にIoTセンサーを内蔵(または後付け)してインターネットを接続し、データを収集する役割を持ちます。
データの解析や予測は、IoTセンサーによって集められたデータを基に行われます。データ収集の役目を持つIoTは、デジタルツインにおいて欠かせない技術です。
AI
AI(人工知能)は、IoTによって収集したデータを処理・解析します。AIは、現状の把握から、問題点の発見、未来の予測までを高い精度で行います。計算能力・速さともに優れているため、リアルタイム性が求められるデジタルツインには不可欠な技術です。
5G
一般の消費者層にも使われるようになった高速通信の技術が5Gです。IoTから送られる膨大な情報を、高速・低遅延で送信するために必要な技術となります。
規模の大きい工場や現場では扱うデータが非常に大きくなります。そのため、データ送信に遅延が起こればリアルタイム性・正確性が欠けてしまい、状況判断や危険予知の精度が下がります。速く、多くのデータを届けるためにも、デジタルツインには欠かせない技術です。
AR・VR
AR(Augmented Reality)は日本語に訳すと「拡張現実」です。ARを搭載したスマホカメラやゴーグルを通して現実世界を見ると、デジタルツインのデータを重ね合わせて観察できます。VR(Virtual Reality)は「仮想現実」です。ARを搭載したゴーグル一式を着用するとデジタルツインに入り込んで、自由に移動や作業を行えます。
ARやVRを使うと、AIによって予測されたデジタル仮想空間に入り込むことができます。AR技術はAIによって予測した未来を3Dデータとして現実世界と重ね合わせて表現でき、VR技術は3Dデータの中に入り込み、実際に様子を見ることが可能です。
CAE
CAEとは、コンピューター上で試作や実験を行うシステムです。CAEを使うことによって、デジタルツイン上で様々な調査をすることができます。
デジタル上でシミュレーションができれば、コストや人員を大幅に削減することができます。CAEやAIを駆使することで、デジタル上でのシミュレーションが可能になり、より低コストで精度の高いトライアンドエラーが可能になります。
デジタルツインの導入事例4選
製造業・建設業・金融業におけるデジタルツインの導入事例を紹介します。
- 調達・製造・出荷のすべてをトレースして品質管理(サントリー)
- 建造物の設計・施工・維持管理をデジタルツイン化(鹿島建設)
- VRラウンジでの接客(東京スター銀行)
- 鉄道での最適ダイヤの作成
調達・製造・出荷のすべてをトレースして品質管理(サントリー)
サントリー食品インターナショナル株式会社では、調達・製造・出荷過程における全てのデータをIoTに集約してデジタルツイン空間を作り、製品1つ1つと対応データを紐づけることで、高度なトレースを実現しました。
これにより、製品一つに対する問い合わせに対しても正しい説明を迅速に行うことが可能になっています。さらに、生産設備や機器のエラー原因を瞬時に特定できるようになったため、生産性も向上しました。設備に流量計や導電率などのIoTセンサーを取り付け、製造設備の状態などをダッシュボード画面に表示しています。蓄積したデータに基づいて、製造設備の異常を予測するシステムです。
デジタルツイン導入の副産物として、報告書作成や単調なルーティン作業をAIに任せることができるようになったため、人員削減による働き方改革の推進も可能にしました。製造業でのデジタルツイン活用は、比較的長い歴史を持つ王道的な活用事例ですが、製造プロセスに留まらず調達や出荷まで包括的にデジタルツインでシミュレーションして効率化を狙っている斬新な事例です。
デジタルツインだけでなく、製造業でのAIシステム導入を喫緊に検討されている方はおすすめ開発会社を特集したこちらの記事をご覧ください。
建造物の設計・施工・維持管理をデジタルツイン化(鹿島建設)
鹿島建設株式会社では、建物の企画・設計・施工・竣工後の維持管理・運営の全てデジタルツイン化を実現しました。デジタルツインを導入することにより、工事プロセスや進捗管理がデータ上で完結し、業務の効率が改善しています。進捗状況はAR・VRを使用して遠隔地でもリアルタイムに確認できます。AR・VRの活用によって、進捗管理の手間・コストが削減が可能となりました。
また、完成後のビル風による周辺環境への影響調査や、詳細なモジュールプランニングも高い精度で実施できるため、業務の効率化だけでなく、顧客満足度へも寄与できました。
デジタルツインだけでなく、建設業界でのAIシステム導入事例を特集したこちらの記事もご覧ください。
VRラウンジでの接客(東京スター銀行)
株式会社東京スター銀行は、デジタルツインで作り出した「VRラウンジ」をオープンし、実店舗に行かなくても取引できる仕組みを作りました。担当オペレータの画面を利用者のPCに表示できる仕組みを採用するなど、金融業界としては新しいデジタルツインの導入を試みています。
VRラウンジでは、ATMや窓口、セミナーといった実店舗と変わらないサービスを受けることが可能です。VRゴーグル等は必要なく、スマホ1台で簡単に口座開設や相談など行うことができる仕様になっています。
銀行業界でのAIの活用事例についてはこちらの記事で特集していますので、業界の方はぜひご覧ください。
安定的・経済的なAIによる発電計画の立案(グリッド/四国電力)
株式会社グリッドは、四国電力株式会社と共同で開発を進め、電力需給計画の立案システムを運用しています。このシステムはデジタルツインとAI最適化開発プラットフォーム「ReNom Power」で構成されます。電力の需要予測や電力市場の価格変動などを考慮しつつ、特定の条件下において利益が最大化となるような発電計画を自動で作成可能です。仮想空間上の発電所のシミュレーションモデルと、電力需要や気象情報など将来の予測データにもとづいて電力需給の最適化AIと連携させたものがベースとなっています。
発電計画を自動化で計算し、計画立案にかかる時間も大幅に減らすことが可能です。さらに、複数のシナリオを比較検討し、期待収益を最大限高められる発電計画の採用も可能とします。
「電力システムにおけるAIの活用事例についてはこちらの記事」も併せてご覧ください。
鉄道での最適ダイヤの作成
鉄道業界では、線路の運行や勾配、車両の状況などを精密にモデル化したデジタルツインを作成し、デジタルツイン内でAIを用いてシミュレーションやリスク分析することで最適なダイヤの作成が可能になっています。従来のダイヤ作成は職員のノウハウを頼りに作成されていました。しかし、車両が増えたり、急行/準急/特急などの種類が増えてきたのでノウハウだけに頼るのが難しくなってきました。また災害時などにおいては、迅速に運休や運転区間の調整するなどが必要になってきます。
IoTセンサーから収集された膨大なデータを元に、現実に近い物理的なシミュレーションを用いて複数パターンのダイヤを試行運転できています。
鉄道業界でのデジタルツインだけでないAI活用事例についてはこちらの記事で解説していますので、業界の方はぜひチェックしてください。
デジタルツインについてよくある質問まとめ
- デジタルツインとメタバース、シミュレーションの主な違いは何ですか?
主な違いは以下の通りです。
- デジタルツイン: 現実世界とリアルタイムでリンクしたデジタル空間
- メタバース: 現実世界とリンクしていない独立したデジタル空間
- シミュレーション: 現実世界とある程度リンクしているが、リアルタイム性がなく、必ずしもデジタルではない
- デジタルツイン導入の主なメリットは何ですか?
デジタルツイン導入の主なメリットは以下の通りです。
- 実世界に近いシミュレーションや試作品テストが可能
- 現場の状況を遠隔地でリアルタイムに確認できる
- 予知保全によるリスクの事前発見
- データ解析による品質向上
- 適切な人員配置によるコスト削減
- デジタルツインを構成する主な技術は何ですか?
デジタルツインを構成する主な技術は以下の通りです。
- IoT
- AI
- 5G
- AR/VR
- CAE
まとめ
製造業を中心に発展してきたデジタルツインですが、最近では建設業や金融業でも活用され始めており、今後は幅広い業界で使用されるものと予想されます。導入コストこそかかるものの、運営コストを抑えることができ、長期的にはコスト面・業務の質の改善が期待できるでしょう。
でも、自社での導入を検討し始めたとしても、どこに見積を依頼すればよいのか、どのように見積を評価すればよいのか、仕様をどう決定すればよいのかわからないことも多いでしょう。
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