組み込みシステムとは?特徴・コンポーネント・エッジAIとの統合メリットを徹底解説!
最終更新日:2025年01月08日
スマートフォンやIoT機器の普及により、組み込みシステムの重要性が高まっています。製品開発における組み込みシステムの重要性が高まる中、エッジAIの導入により新たな可能性が広がっています。
本記事では、組み込みシステムの基本的な仕組みから、AIとの統合による最新の活用事例まで、実務に役立つ情報を徹底解説します。リアルタイム処理や省電力化といった技術的課題に対し、エッジAIと組み込みシステムの融合がどのように解決策を提供するのかも解説します。
製品開発責任者やエンジニアの方々に、次世代の組み込みシステム開発の指針としてご活用いただける内容です。
関連記事:「エッジAIとは?メリット・外観検査などの活用事例・エッジコンピューティング活用を徹底解説」
AI Marketでは
エッジAIに強いAI開発会社をご自分で選びたい場合はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
目次
組み込みシステムとは?
組み込みシステムは、家電製品や産業機器などに搭載され、特定の機能を実現するために設計されたコンピュータシステムです。一般的なPCとは異なり、限られたリソースの中で効率的な動作を実現することが求められます。
組み込みシステムは、以下の3つの主要な要素で構成されています。
- 入力装置
- 制御装置
- 出力装置
センサーなどの入力装置からデータを受け取り、マイクロコンピュータによる制御装置で処理を行い、モーターやスピーカーなどの出力装置を通じて動作を実現します。組み込みシステムの特徴として、ハードウェアとソフトウェアを密接に連携させた協調設計が重要となります。
また、 コストや省電力の観点から、必要最小限のメモリと安価なCPUで動作するよう設計されています。
組み込みシステムの設計フロー
組み込みシステムの設計は、以下段階を経て進められます。
- 要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
- 実装
- テスト
要件定義では、システムに必要な機能や性能、制約条件を明確化します。基本設計では画面構成や遷移先などの外部仕様を決定し、詳細設計ではプログラムの内部構造を具体化します。
テスト工程では、単体テスト、結合テスト、システムテストを通じて、各段階での設計要件が満たされているかを確認します。特に組み込みシステムでは、実際の使用環境での受け入れテストが重要で、ハードウェアとソフトウェアの両面から検証を行います。
組み込みシステムにおけるAI処理
従来の組み込みシステムは単純な処理のみを行っていましたが、AI技術の統合により、画像認識や音声認識といった高度なタスクをリアルタイムで処理できるようになりました。AIと組込みシステムの融合により、以下のような利点が得られます。
- リアルタイムでの意思決定:データを即座に分析し、その結果に基づいてシステムの動作を変更
- 自律的な動作:AIがシステムを学習させ、必要に応じて自律的に最適な行動を選択
- カスタマイズ性の向上:ユーザーごとに最適なサービスを提供するためにAIがデータを基にシステムをカスタマイズ
組み込みシステムでは、限られたリソース環境でも効率的なAI処理を実現するため、最適化されたアルゴリズムとハードウェアの組み合わせが不可欠です。
▼累計1,000件以上の相談実績!お客様満足度96.8%!▼
組み込みシステムのコンポーネントと設計プロセス
組み込みシステムは、ハードウェアとソフトウェアの緊密な連携によって成り立っています。それぞれの要素が適切に組み合わされることで、効率的なシステムが実現されます。
マイクロコントローラ
マイクロコントローラ(MCU)は組み込みシステムの中核となる部品です。マイクロコントローラには以下要件に応じて適切な製品を選択することが重要です。
- 処理能力:アプリケーションの要求に応じて、8ビット、16ビット、32ビットのMCUから選択します。
- メモリ容量:プログラムとデータを格納するためのフラッシュメモリとRAMの容量を考慮します。
- 消費電力:バッテリー駆動のデバイスでは特に重要です。スリープモードやクロック制御機能を持つMCUを選択します。
- 周辺機能:ADC、DAC、タイマー、通信インターフェース(UART、SPI、I2Cなど)の有無を確認します。
2012年の登場以来、産業用途でも大いに活用されているラズベリーパイは、従来のマイクロコントローラとは異なり、System-on-Chip (SoC) を搭載した単一ボードコンピュータです。ラズベリーパイは、特に中小企業(SME)向けの産業用アプリケーションにおいて、従来のマイクロコントローラに代わる選択肢として注目されています。
関連記事:「ラズベリーパイができること!ChatGPTとの組み合わせは?活用例・注意点を徹底解説」
センサーとアクチュエータ
センサーは外部環境の変化を検知し、アクチュエータはシステムの出力を物理的に実現するインターフェースとして実現します。
センサーには、温度センサー、湿度センサー、加速度センサー、光センサーなど、様々な種類があります。
アクチュエータには、モーター、リレー、ソレノイド、LEDなどがあります。PWM制御やDAC出力を介して制御されることが多く、高電流を必要とする場合はドライバICを介して接続します。
GPIO(汎用入出力)ピン
GPIOピンは汎用入出力ピンと呼ばれ、外部機器との電気的な接続を可能にする端子です。マイクロコントローラをセンサーやアクチュエータと接続し、以下のようにシステム全体の制御を実現します。
- デジタル入力:スイッチやボタンの状態を読み取ります。
- デジタル出力:LEDの制御やリレーの駆動に使用します。
- 代替機能:UART、SPI、I2Cなどの通信インターフェースとして使用できます。
GPIOの電圧レベルはMCUによって異なり、3.3Vや5Vが一般的です。異なる電圧レベルのデバイスを接続する場合は、レベルシフタが必要になります。
リアルタイムOS(RTOS)
ソフトウェア構成の中核となるリアルタイムOSは、厳密な時間制約の中でタスクを処理する能力を持っています。主な特徴は以下です。
- タスクスケジューリング:優先度ベースのスケジューリングにより、重要なタスクを確実に実行
- 割り込み処理:外部イベントに対する迅速な応答
- タスク間通信:セマフォ、ミューテックス、メッセージキューなどの機能
- メモリ管理:限られたメモリリソースを効率的に管理
例えば、FreeRTOSは広く使用されているオープンソースのRTOSで、多くのMCUプラットフォームをサポートしています。
ミドルウェア、アプリケーション
ミドルウェアは、OSとアプリケーションの間に位置し、Ethernet、Wi-Fi、USB、GUIなどの機能をパッケージ化して提供します。例えば、STM32CubeAIは、STM32マイクロコントローラ上で機械学習モデルを実行するためのミドルウェアを提供しています。
アプリケーションソフトウェアは、システムの具体的な機能を実装します。これにより、開発者はアプリケーション開発に注力できます。
▼累計1,000件以上の相談実績!お客様満足度96.8%!▼
エッジAIと組み込みシステムの融合
エッジAIと組み込みシステムの組み合わせにより、データ処理の効率化と即時性が実現できます。エッジAIは、クラウドではなくデータが生成されるデバイスやその近く(エッジ)でAI処理を実行する技術です。
エッジAIと組み込みシステムの融合には、以下のような特徴があります。
- リアルタイム処理:データをクラウドに送信せず、デバイス上で直接処理することで、レイテンシーを大幅に削減
- 省電力化:クラウドへのデータ送信が不要になり、エネルギー消費を抑える
- プライバシーとセキュリティの向上:センシティブなデータをデバイス上で処理することで、データ漏洩のリスクを軽減
- 帯域幅の効率化:必要な情報のみをクラウドに送信することで、ネットワーク負荷を軽減
- 自律的な動作:AIモデルがデバイス上で学習し、環境に適応
特に産業機器や医療機器など、即時の判断が必要な場面で大きな効果を発揮します。
リアルタイム推論を実現
リアルタイム推論では、データの収集から処理、結果の出力までを瞬時に行う必要があります。このため、データモジュールでセンサーからのデータを処理し、アルゴリズムモジュールで複数のAIモデルを管理しながら、推論モジュールでリアルタイムデータの処理を実行する構造が採用されています。
このアーキテクチャにより、製造ラインでの品質管理や交通システムでの監視など、即時の判断が必要な場面での活用が可能になります。
省電力化
省電力化は組み込みシステムの重要な課題です。ハードウェアアクセラレータの活用により、従来のデバイスと比較して5〜100倍の電力効率を達成することが可能になっています。
また、ソフトウェア面では、CPUのアイドル状態を適切に制御し、処理の必要がない時間帯の電力消費を抑える技術が実装されています。これらの技術を組み合わせることで、高性能な処理能力を維持しながら、消費電力を大幅に削減することができます。
応用分野
エッジAIと組み込みシステムの融合は、様々な分野で活用されています。
- 自動運転車:リアルタイムでのセンサーデータ処理と判断
- 産業用ロボット:生産ラインでの自律的な制御と品質管理
- 医療機器:内視鏡システム、連続血糖モニタリングなど
- スマートホームデバイス:ユーザーの行動パターン学習と最適化
- 農業:AIを活用した自動受粉ロボット
例えば、医療分野では組み込みシステムを活用した遠隔患者モニタリング(RPM)が普及しています。ARBOR Technology社のRPMソリューションでは、スマート血圧モニターを通じて血圧、心拍数、体温などの情報を定期的に記録し、クラウドを介して医療関係者がリアルタイムで患者の状態を監視できます。
また、ベッドサイドインフォテインメントシステムとナースステーションを統合することで、患者の容態急変時にも迅速な対応が可能となっています。これらのシステムにより、医療の質と効率性が大きく向上しています。
関連記事:「エッジAIを導入し、活用している事例・応用例やユースケースを紹介」
まとめ
組み込みシステムは、特定の機能を実現するために設計されたコンピュータシステムとして、私たちの生活や産業に深く浸透しています。AIとの統合により、製造ラインでの品質管理や医療機器での患者モニタリングなど、その活用範囲は急速に拡大しています。
特に、エッジAIとの組み合わせによって、リアルタイム処理と省電力化を両立した新しいソリューションが実現可能になりました。
特に製造業では予知保全システムによる生産性向上、医療機器分野では遠隔モニタリングによる効率化など、具体的な成功事例が増えているので、導入を検討してみてください。しかし、ハードウェアとソフトウェアの協調設計や最適なマイクロコントローラの選定など、専門的な知識と経験が必要です。
貴社の製品特性に合わせた具体的な実装方法については、組み込みシステムの専門家や実績のあるソリューションベンダーにご相談ください。
AI Marketでは
組み込みシステムについてよくある質問まとめ
- 組み込みシステムにAIを統合するメリットは何ですか?
AIの統合により、データのリアルタイム処理と自律的な判断が可能になります。画像認識や音声認識といった高度なタスクをリアルタイムで処理できるようになり、クラウドへのデータ送信を必要とせず、機器自体で高度な判断を行うことができます。
- 組み込みシステムの設計プロセスはどのように進められますか?
設計は要件定義から始まり、基本設計、詳細設計、実装、テストという段階を経て進められます。要件定義でシステムの機能や性能を明確化し、基本設計で外部仕様を決定、詳細設計でプログラムの内部構造を具体化します。最後にテスト工程で各段階の要件が満たされているか確認します。
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp