AIの開発環境に必要なのは?必須のハードウェア・ソフトウェア、構築手順を徹底解説!
最終更新日:2025年02月13日
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自社でAI開発を行うためには、オンプレミス、クラウド環境問わず適切な環境を構築しなければいけません。ハードウェアやソフトウェアを含め開発環境を整備することで、効率的に作業を進め、最適なAIモデルを開発することが可能です。
この記事では、AIの開発環境に必要なハードウェア・ソフトウェア、環境の構築手順について解説していきます。GPUやCPU、クラウドサービス、ライブラリではおすすめのツールも紹介しています。
AIの開発環境を構築する流れと、それに必要な技術を網羅的に理解できる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
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AIの開発環境に必要なハードウェア
オンプレミスでAIの開発環境を構築するにあたっては、ハードウェアの選定は不可欠です。
尚、近年ではAWSやAzure等のクラウドサービスを活用した開発環境の運用も主流となっていますが、ここでは、それぞれのハードウェアについて、AI開発における役割を見ていきましょう。
GPU
AIの開発環境を構築する上で、GPU(グラフィックス処理装置)は計算処理において重要な役割を果たすハードウェアです。グラフィックスレンダリングを目的として設計されました。
しかし、大量のデータを並列で処理する能力から、AIモデルのトレーニングにおいて不可欠になっています。
特にディープラーニングの分野では、大量のデータを用いた並列計算が求められるため、従来のCPUでは処理が追いつきません。そのため、多数のコアを備えたGPUが活用されるのが一般的です。ニューラルネットワークの学習速度を大幅に向上させる役割を果たします。
NVIDIAのCUDA対応GPUやAMDのROCm対応GPUがm高性能GPUとしてさまざまなAIの開発環境で活用されています。
GPUを選択する際には、メモリ容量や演算性能(TFLOPS)、消費電力などを考慮し、AIのタスクごとに適したGPUを選ぶことが必要です。
最近は、AIの演算処理に特化したNPU(Nural Network Processing Unit)が導入されることもあります。特にニューラルネットワークの演算に適した技術で、AIの処理を高速化する役割を担います。
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CPU
GPUが計算処理を担う一方で、CPU(中央処理装置)はデータの前処理や並列処理の制御など、システム全体のパフォーマンスを最適化する上で欠かせないハードウェアです。
コンピュータが登場した当初、CPUはすべての計算処理を担う中心的な存在でした。その流れで、初期のAI開発では十分な性能を発揮していました。
しかし、2000年代に入って、より複雑な数学計算を並列で行えるGPUがディープラーニングの分野で重宝されるようになっています。現在では、CPUは主にデータ前処理やシステム管理、シーケンシャルな計算タスクを担当します。
例えば、データの読み込みや前処理はCPUによって行われ、その後GPUへデータが送られます。大規模なデータセットを扱う際には、マルチスレッド性能の高いプロセッサを選ぶことで、GPUの演算能力を最大限に引き出せます。
IntelのXeonやAMDのEPYCなどのサーバー向けCPUが多く採用されていますが、開発用途によっては高性能なデスクトップ向けCPUも検討しましょう。
RAM
RAM(メモリ)はデータの一時的な処理やキャッシュの役割を担い、学習や推論のパフォーマンスに直結する要素です。ディープラーニングでは大量のデータをメモリ上で処理するため、十分な容量が求められます。
AIモデルの規模やデータセットのサイズは異なるものの、一般的には32GB以上のRAMが推奨されます。大規模なAIプロジェクトでは、128GB以上のRAMを搭載することで、処理落ちを防ぎ、スムーズに作業が進められます。
メモリは帯域幅が広いほど処理速度が向上するため、高速なDDR4やDDR5、サーバー向けのECCメモリを選択することで、より安定した運用が可能となるでしょう。
ストレージ
AI開発では大量のデータセットやモデルファイルを扱うため、適切な性能と容量を備えたストレージが必要です。機械学習やディープラーニングにおいては、大規模なデータを学習するため、高速なストレージが不可欠となります。
一般的に、OSやソフトウェアを動作させるためのメインストレージにはNVMeを使ったSSDが推奨されます。一方、長期的なデータ保存やアーカイブ用途には、HDDやクラウドストレージの活用が効果的です。用途に応じたストレージを選定することで、開発作業の効率とデータ管理を最適化できます。
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AIの開発環境に必要なソフトウェア
AIの開発環境を整えるには、ハードウェアとソフトウェアの両方が重要です。適切なソフトウェアを活用することで、データ処理やモデル構築、学習プロセスの最適化がスムーズに進められます。
以下では、AI開発に必要なソフトウェアについて解説していきます。
プログラミング言語
AIの開発には、用途に応じたプログラミング言語を活用します。機械学習やディープラーニングの分野ではPythonが最も広く使用されており、豊富なライブラリやフレームワークと組み合わせることで効率的な開発が可能です。
一方で、処理速度が求められる場面ではC++やRustが選ばれ、高性能なAIアプリケーションの実装に活用されることも多いです。またエッジAIやモバイルの開発には、JavaやSwiftといった言語が用いられることもあるなど、開発目的に応じた選定が重要となります。
統合開発環境(IDE)
統合開発環境(IDE: Integrated Development Environment)は、ソフトウェア開発に必要な複数のツールをまとめたソフトウェアです。IDEを使用することで、開発者は効率的にアプリケーションを構築できます。
使用するプログラミング言語やフレームワークに対応していること、そして、操作性とカスタマイズ性の高さで最適なIDEを選びましょう。
効率的なコーディングを行うためのIDEとして、以下が人気です。
- Visual Studio Code:軽量で拡張性が高く、AI開発に適した多数の拡張機能を提供
- PyCharm: Python専用のIDEで、AI開発に特化した機能を多数搭載
- Jupyter Notebook: 対話的なコーディングと可視化が可能で、データ分析やモデル開発に適している
フレームワーク・ライブラリ
AIの開発では、適切なフレームワークやライブラリを活用することで、モデルの構築や学習プロセスを大幅に効率化させることができます。代表的なものとして、TensorFlowやPyTorchがあり、ディープラーニングの分野では特に広く利用されています。
関連記事:「PyTorchとTensorFlowのパフォーマンスやカスタマイズ性、他ツールとの連携性」
これらのフレームワークは、ニューラルネットワークの設計や最適化に必要な機能を提供し、計算の並列処理やGPU活用にも対応します。
また、機械学習全般にはScikit-learn、自然言語処理にはTransformers、データ前処理にはPandas、ディープラーニングモデルにはKerasといったライブラリが役立ちます。
開発するAIの用途に応じて適切なフレームワーク・ライブラリを組み合わせることで、作業効率とモデルの精度を高めることが可能です。
クラウドサービス
クラウドサービスでのAI開発には、自社独自のハードウェアを用意する必要がありません。ローカル環境での構築にはコストや管理が課題となりますが、クラウドサービスはこうした点を解消します。
以下のようなクラウドプロバイダーが提供する高性能なAI向け開発プラットフォームを活用すれば、初期投資を抑えつつ、必要に応じたリソースを確保することができます。
- Google Vertex AI:様々な生成AIモデルのデータ準備からモデルのトレーニング、AutoML、デプロイまでをサポート
- Google AI Studio:Geminiモデルによる生成AI開発
- Amazon SageMaker:機械学習モデルの構築、トレーニング、デプロイを簡単に行えるフルマネージドサービス
- Amazon Bedrock:LLM(大規模言語モデル)などの基盤モデルを簡単に利用できるサービス
- Microsoft Azure Machine Learning:データ準備からモデルの運用まで、機械学習のライフサイクル全体をカバー
また、クラウド上のストレージやデータベースと組み合わせることで、効率的なデータ管理と分散処理が可能となり、開発のスピードや柔軟性も向上させることが可能です。
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AI開発環境の構築手順
AIを内製開発するための開発環境を構築するには、適切なハードウェアとソフトウェアを揃えた上で、それらを組み合わせて最適な環境を整える必要があります。具体的な手順は、以下の通りです。
- 準備
- ハードウェアを搭載したサーバーを用意する
- ソフトウェアをサーバーに導入する
- データセットを作成する
- AIモデルを開発する
- 開発したAIに学習させる
それぞれの手順について解説していきます。
関連記事:「AIの内製化とは何か、内製化が進む理由やメリット・デメリット、阻害要因、内製化のポイント」
準備
ハードウェア、ソフトウェアをそろえる前に以下の準備を行います。
準備ステップ | 重要な理由 |
---|---|
導入目的の設定 | AIプロジェクトを開始する前に、明確な目的と戦略を定義することが重要です。ビジネス目標、期待される成果、リソース配分などを検討します。 |
導入コンサルティングの活用 | AI開発環境の構築は複雑で専門的な知識が必要なプロセスです。そのため、外部の専門家による導入コンサルティングを活用することも有効な選択肢です。 |
AI人材の育成・確保 | プロジェクトの成功には適切なスキルを持つ人材が不可欠です。社内での育成プログラムの実施や、外部からの採用を計画的に行います。 |
PoCの実施 | 有効性を検証するため、小規模な環境でPoCを実施します。本格的なインフラ投資や大規模な開発を始める前に、選択したアプローチの実現可能性を確認する。 |
必要に応じて、活用できる補助金の情報収集、選定も始めておきましょう。
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ハードウェアを搭載したサーバーを用意する
AIの開発環境を構築するには、まずハードウェアを備えたサーバーを準備します。GPUを活用するディープラーニングの開発では、高性能なグラフィックボードを搭載したサーバーが必要です。
用途によっては、以下の2つの方法があります。
- ローカル環境にワークステーションを設置する
- クラウド上でサーバーを利用する
ローカル環境では自由に設計を変更できますが、高額な初期投資が必要です。一方、クラウド環境では初期コストを抑えつつ、必要に応じて計算リソースを増減できる柔軟性を備えています。
金融機関や官公庁など、超高セキュリティ環境下でのAI運用を必須とする場合以外では、クラウド環境で構築するケースが一般的になってきていると言えるでしょう。(金融機関や官公庁などでもクラウド環境利用が増えつつあります。)
活用するデータセットの規模や開発するAIの用途に応じたサーバー環境を選ぶことで、開発環境を安定させることができます。
ソフトウェアをサーバーに導入する
次に、サーバーに必要なソフトウェアを導入します。インストールが必要なソフトウェアは以下の通りです。
- OS:Linux(Ubuntu等)が多いですがWindowsやmacOSも選択肢です
- プログラミング言語
- フレームワーク・ライブラリ
特に、TensorFlowやPyTorchなどのディープラーニングに適したフレームワーク、データ処理に役立つPandasやNumPy、データの可視化に最適なMatplotlibなどを導入することで、開発の効率を大幅に向上させることが可能です。
上記の工程までが、いわゆる開発環境の構築と言えるでしょう。
データセットを作成する
ここからは、実際のAIモデルの構築について、流れを紹介します。
まず、AIモデルを構築するには、学習する教師データが必要となります。
データセットの作成方法としては、以下の2つの方法があります。
- 自社で独自に収集
- 既存のオープンデータを活用
独自データは用途に最適化しやすいですが、収集やラベリングに手間がかかるため、アノテーションツールやデータ管理システムの活用が必須です。
一方、オープンデータは即座に利用可能ですが、開発するAIの用途に合うかどうかを精査しなければいけません。
データが揃ったら、欠損値の処理や正規化、ノイズ除去などの前処理を施し、AIが効率よく学習できる形に整えます。適切なデータセットを用意することで、モデル開発をスムーズに進行できます。
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AIモデルを開発する
AIモデルの設計においては、解決したい課題や利用するデータの特性に応じて、適切なアーキテクチャを選択することが必要です。以下に挙げるようなモデルが多く用いられます。
- 画像認識:CNN(畳み込みニューラルネットワーク)
- 自然言語処理:Transformerベースのモデル
- 物体検出:YOLO
- データ分析:ランダムフォレスト
- 時系列データ分析:RNN(Recurrent Neural Networks)
- 画像生成:GAN(Generative Adversarial Networks)
- マルチモーダルAI:Gemini
AIモデルの開発には、データの前処理や特徴量の選定、適切なハイパーパラメータの調整が不可欠です。また、開発の初期段階ではシンプルなモデルから試し、精度や計算コストを考慮しながら段階的に改良していくのが効率的なアプローチとなります。
適切なモデル設計とチューニングを行うことで、目的に応じた高性能なAIを実現することが可能です。基盤モデル(Foundation Model)の活用も考慮に入ってくるでしょう。
関連記事:「AIモデルとは何か、アルゴリズム、LLMとの違い、種類、作成手順」
開発したAIモデルに学習させる
AIモデルを設計した後は、データを用いて学習させるプロセスに移ります。用意したデータセットをモデルに入力し、学習アルゴリズムを適用することで、パターンを抽出し予測精度を高めます。
一般的に、学習には以下のような手法があり、用途に応じて適切な方法を選択します。
学習時には、最適されたアルゴリズムを用いてパラメータを調整します。学習の進行状況を評価する際は、訓練データとは別の検証データを用い、過学習が発生していないかを確認することが必要です。
モデルの評価
学習が完了した後は、テストデータを用いてモデルの精度を評価し、必要に応じてチューニングを繰り返します。精度が十分なレベルに到達したら、本番の環境へ展開し、実際のデータで推論を行う準備を整えます。
本番環境へのデプロイとライフサイクル管理(MLOps)
十分な性能が確認されたモデルを本番環境にデプロイします。実際のデータを用いた推論を開始し、パフォーマンスを監視します。
モデルの開発から運用までのライフサイクルを効率化するため、MLOps(Machine Learning Operations)を導入します。LLM(大規模言語モデル)を活用する場合はLLMOpsの導入を検討します。MLOps、またはLLMOpsによって継続的なモデルの改善とデプロイメントの自動化を実現します。
AIの開発環境についてよくある質問まとめ
- AIの開発環境を構築するには、どんなハードウェアが必要ですか?
AI開発には、GPU、CPU、RAM、ストレージが必要です。特に、ディープラーニングを行う場合は、計算処理能力の高いGPUが重要になります。CPUはデータの前処理やシステム全体の制御、RAMはデータの一時的な処理、ストレージはデータセットやモデルの保存に用いられます。
- AIの開発に適した環境はどうやって作成しますか?
AIの開発環境を構築するには、以下の手順で進めるのが一般的です。
- ハードウェアを搭載したサーバーを用意する
- ソフトウェアをサーバーに導入する
- データセットを作成する
- AIモデルを開発する
- 開発したAIに学習させる
- AI開発におすすめのプログラミング言語は何ですか?
AI開発で最も広く利用されているのはPythonです。Pythonは、機械学習やディープラーニングの分野で豊富なライブラリやフレームワークが利用可能であり、効率的な開発をサポートします。その他、処理速度が求められる場合はC++やRust、エッジAIやモバイル開発ではJavaやSwiftなどが用いられることもあります。
まとめ
AIの開発環境を構築するには、適切なハードウェアとソフトウェアを選定し、それらを効果的に組み合わせることが必要となります。GPUやCPU、RAM、ストレージといったハードウェアは、モデルの学習速度や処理能力に直結するため、用途に応じた構成が求められます。
また、クラウドサービスを活用することで、初期投資を抑えながら開発環境を整えることが可能です。自社にリソースがない場合は、クラウド環境での開発も検討してみましょう。
特に、AIモデルの精度や開発効率は、初期の環境構築に大きく左右されます。本記事で解説した内容を参考に、自社の状況に合わせて最適なAI開発環境を構築してください。さらに詳細な情報や、個別の状況に応じた専門的なアドバイスが必要な場合は専門家への相談も検討しましょう。
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