数理最適化とは?AIで意思決定を自動化するメリット・ビジネス導入事例8選徹底紹介!
最終更新日:2024年09月23日
数理最適化とは、最小化や最大化を目的とする問題を解くための数学的方法です。ビジネスにおいては、生産スケジューリングやロジスティクスの最適化、マーケティング戦略の立案など、様々な場面で活用されています。また、AIを使用することで、より複雑で大規模な最適化問題を短時間で解決できます。
そして、さまざまな要素が絡み合う経営上の意思決定においても、最適化AIによる支援を得られるようになっています。しかし、数理最適化の概念を複雑で難しいと感じている経営者も多いようです。また、導入しなくても「どうにかなる」と感じて導入をためらう方もまだ多いようです。
この記事では、数理最適化とは何か、導入のメリットは何かを説明し、AIを用いた最適化のビジネスへの導入事例について解説します。
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数理最適化とは
数理最適化とは、ある目的関数を最大化または最小化するような解を求めることを目的とする数学的手法です。目的関数とは、ある問題を解くうえで最終的に最適な状態を表す関数を指します。様々な制約があるなかで、その目的関数を最大化または最小化するような解を求めることが数理最適化の目的です。
数学的手法と聞くと難しく感じるかもしれませんが、私たちは個人としても生活の中で数理最適化を行っています。例えば、レストランで、予算の範囲内でできるだけ多くのメニューを注文しようとするときには、値段と満腹度(満足度)のバランスを最適化する計算を行っています。重要なポイントは「予算に上限がある」つまり制約があることです。制約があるなかで最適な結果を得られる解を求めるのが数理最適化です。
ビジネスでの意思決定自動化に利用
数理最適化は、数学的手法なので一度定式化すれば、新たなデータが与えられても最適な変数の値を自動で算出できます。人間が毎回データを見てからおこなっていた意思決定の自動化手法として、ビジネスや社会で幅広く利用されるようになりました。例えば、以下のような分野で活用されています。
- 製造業や輸送業
生産ラインでの作業時間や原材料の入手状況を考慮した最適な生産計画を立てることができます。また、輸送ルートや倉庫配置を最適化することで、物流コストを削減できるでしょう。 - 金融や保険業
資産配分やリスクマネジメントなどに活用されます。 - マーケティング戦略の立案
顧客のデータを分析してターゲット層を特定し、より効果的なマーケティングキャンペーンを立案できます。
数理最適化は、ビジネスにおいて様々な問題を解決する上で欠かせないツールとなっています。
最適化になぜAIを使う?
現在、ビジネスで必要とされる最適化問題の多くを解くためにAIの力が欠かせません。それは以下の3つの理由によります。
- データが多くなるほど計算が困難
- 実際の最適化問題は制約条件が複雑
- リアルタイムの解でないと実用性が低い
最適化問題では、目的関数や制約条件を満たすような解を求めることが必要です。しかし、データが多い場合には、手作業で解を求めることが困難である場合があります。また、制約条件が多く複雑に変化する問題を解くにはAIを使う方が有利です。
さらに、ビジネスでの最適化問題は刻々と変わる状況へのリアルタイムでの対応が求められます。そのため、高速に解を求めることができるAIが必要です。
数理最適化の導入目的
数理最適化をビジネスに導入することで得られるメリットを解説します。
- コストを削減できる
- 品質を向上できる
- 最適な戦略を立てることができる
それぞれのメリットについて説明します。
コストを削減できる
数理最適化はコストの削減に貢献します。生産や輸送などのスケジュールを最適化できるため、生産や輸送などのコストを削減することができる可能性があります。制約条件を満たしつつ、コストが最小となるよう最適化可能です。
また、人間の意思決定に基づいた生産計画やシフト作成などを、数理最適化のAIによって高速に正確に処理できるので時間を大幅に削減できるでしょう。
品質を向上できる
数理最適化を用いることで、品質管理、生産や輸送などのプロセスを最適化できます。そのため、品質を向上させることができる可能性があります。
さらに、顧客からの要求に対するレスポンスを最適化できます。そのため、顧客からの要求に対するレスポンスがスムーズかつ迅速になり、品質が向上するでしょう。
最適な戦略を立てることができる
数理最適化を導入することで、ビジネスのデータを可視化することができるようになり、データに基づいた意思決定ができるようになります。数理最適化を用いることで、あらゆる状況下でリスクを最小化した最適な戦略を立てることができます。そのため、意思決定の際に、最適な戦略を選択することができるようになります。
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AIを活用した最適化の導入事例8選
数理最適化のAIによるビジネスへの活用事例を見ていきましょう。
- AIによる生産計画や要因計画の最適化(ニチレイフーズ/日立製作所)
- コンテナへの積付け最適化(ネットロック)
- エネルギー設備の最適運用・設計(東京ガス)
- AIによる需要予測から人員配置の最適化の実現(グルーヴノーツ)
- フリーペーパーの配送ルートの最適化(リクルート)
- 収益最大化のための需要予測をもとにした在庫最適化(ブレインパッド)
- ギフト券配信の割り当て(ホットペッパービューティー)
- >石炭輸送の配船計画(ALGO ARTIS/東北電力)
AIによる生産計画や要因計画の最適化(ニチレイフーズ/日立製作所)
冷凍食品メーカーの株式会社ニチレイフーズでは、生産計画の自動化システムを用いることで国内4拠点での食品工場での計画立案にかかる時間を10分の1に短縮できました。ニチレイフーズでは一つの工場で、生産計画や要因計画は以下要素で決定されていました。
- 工場、ライン、設備
- 納期
- 作業者のスキル
- 勤務シフト
- 過去の計画履歴
上記を組み合わせると最大16兆通りの組み合わせがあります。従来は、業務を熟知した熟練者が立案するしかありませんでした。
導入したのは、株式会社日立製作所が開発した「Hitachi AI Technology 計画最適化サービス」です。「Hitachi AI Technology 計画最適化サービス」は、従来熟練者がさまざまな制約条件を踏まえながら策定していた計画立案をAIで可能としました。熟練者の計画パターンを可視化、数値化し、現場での各種データを掛け合わせたことで実現しました。「Hitachi AI Technology 計画最適化サービス」の導入によって、生産計画・要因計画の策定時間の短縮が可能となっただけでなく、今後の需要変化に即応できる生産体制の構築、業務効率の向上につなげていくということです。
製造業支援に強いAI開発会社をこちらの記事で特集していますので併せてご覧ください。
コンテナへの積付け最適化(ネットロック)
ネットロック株式会社では、積付けの最適化計算システム「バンニングマスター」を開発・提供しています。積付けとは、貨物輸送で使用するコンテナやパレットに、限られた空間で余すことないよう荷物を効率よく積み込むことです。縦・横・高さのサイズ情報をもとにアルゴリズムによる計算で積み付けを最適化し、結果を3D表示して確認や修正が可能なシステムです。
3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)を手掛けるネットロックでは、配送会社や倉庫会社を含めた物流改善の企画や提案を手掛けています。3PLとは、一般的に荷主に対して物流改革を提案し、物流業務を包括的に受託し遂行することです。荷主企業に代わり第三者が効率的な物流システムの構築を提案し、物流業務における企画・設計・運営全体を包括して請け負う業態です。
大量の物流を扱う企業にとって、使用するコンテナの削減や積み下ろしに必要な人員の人件費削減などに大きく貢献しています。
物流・ロジスティック業界での他のAI活用事例についてはこちらの記事で特集しています。
エネルギー設備の最適運用・設計(東京ガス)
東京ガス株式会社では、地域冷暖房などの大規模なエネルギー設備において、年間を通じての最適運転計画を自動で作成できるソフトウェア「オプトパス」を開発しました。都市ガスを中心としたエネルギーの販売や供給を手掛ける東京ガス株式会社では、エネルギー設備の最適運転の計画立案ソフトウェアの開発とコンサルティングサービスもおこなっています。
東京ガスのシステムでは、エネルギー需要、電力・ガス契約情報、使用機器関連情報などを入力すると、年間全体で最適となる各機器類の運転計画を月、日、時間ごとそれぞれに提示可能です。料金など入力条件を変化させたシミュレーションで、年間でのランニングコストを最小とする運転計画を含めた料金契約やメンテナンスの期間を提示可能としました。
年間のランニングコストは数百万円から数千万円ほどの削減が可能となったということです。
AIによる需要予測から人員配置の最適化の実現(グルーヴノーツ)
株式会社グルーヴノーツでは、AIと量子コンピュータを活用した組み合わせ最適化ソリューションのラインナップの一つとして「スケジューリング最適化パッケージ」を提供しています。グルーヴノーツが開発する汎用的な最適化問題解析クラウドプラットフォーム「マゼランブロックス」の組合せ最適化ソリューションの製品版です。AIによって高精度に需要予測した結果を量子コンピュータによって最適化するまでを、一貫としたサービス活用を可能としました。
AIによる需要予測の仕組み、他の導入事例についてはこちらの記事で特集しています。
スケジューリング最適化パッケージは、企業でのシフト最適化や、サプライチェーン最適化への活用が可能です。シフト最適化は、さまざまな業種の勤務シフトの作成に適材適所の最適な配置を実現します。サプライチェーン最適化は、製造業での生産計画、建設業での人員・工程計画、物流業でのサプライチェーンマネジメントなどへの活用が可能です。
既に、キユーピーやマックスバリュなどでのシフト最適化に導入されています。コールセンターで活用されているケースでは、入電数予測からオペレーターのシフトの最適化までを実現しました。AIで過去の入電実績データから入電数を予測し、量子コンピュータを使った最適化で労働条件や勤務希望といった制約条件と合わせて最適なシフトが作成可能です。
フリーペーパーの配送ルートの最適化(リクルート)
株式会社リクルートでは、フリーペーパー配送のより効率的なルートを提案できるよう数理最適化を活用しています。リクルートでは、「タウンワーク」「ホットペッパービューティー」など複数のフリーペーパーを全国各地の駅およびコンビニエンスストアなどのラックに配置しています。各拠点のラックへの配送は、複数の配送会社へ委託し、多くの拠点を複数の車両で巡るため、配送ルートの最適化はたいへん重要です。しかし、従来は人手によって配送ルートを決定するしかありませんでした。
リクルートでは、最適化問題の典型問題と言われる「配送計画問題」を参考にして、以下の要因を考慮して最もコストを抑える配送ルートを求めました。
- 配送する荷物の量や重さ
- 配送先までの距離
- 車両の種類や容量
上記の要因を考慮して基本的な問題設定からはじめ、適した問題へとカスタマイズしていきました。数理最適化の手法を活用し、従来よりも効率的なルート発見が可能となり、より少ない車両台数でも配送できるようになったということです。
収益最大化のための需要予測をもとにした在庫最適化(ブレインパッド)
株式会社ブレインパッドは、小売流通業者の収益最大化を図るための適切な在庫量の決定支援を商品ごとにおこなっています。収益を最大化するには、需要予測をもとに欠品の低減、陳列棚の売れ筋商品への入れ替えなど売上の拡大とコスト低減の両立が必要です。そのため、ブレインパッドの支援では過去の販売データと在庫データに基づいたアプローチを実施します。
具体的には、過去の販売実績に基づいて需要予測をおこない、シミュレーションを組み合わせて在庫量を改善しました。また、在庫不足による機会損失や余剰によるスペースの占有といった課題も解決したということです。データ分析に基づいた在庫最適化により、適切な在庫量の算出作業、仕入れ作業において客観的な指標に基づいて作業できるようになりました。
適切な在庫量の算出のために、店舗・商品の属性まで考慮できるようになりましたし、最適化ロジックの適用で売上額の改善が見られたとのことです。
AIによる在庫管理の仕組み、他の導入事例についてこちらの記事で解説していますので併せてご覧ください。
ギフト券配信の割り当て(ホットペッパービューティー)
ホットペッパービューティーでは、デジタルギフト券を配信する対象者の決定問題を、予算制約のもとでユーザーの新ジャンルへの利用機会を最大化する最適化問題として解決しました。
株式会社リクルートが運営するホットペッパービューティーでは、ヘア、まつげ、ネイル、リラクセーション、エステなど複数ジャンルがあります。しかし、ヘア領域でのサービス利用経験者は多いものの、リラク&ビューティー領域の利用経験ユーザーが少ない課題がありました。そこで、利用経験がないジャンルが多いユーザーに対して、特定ジャンルで利用できるギフト券を配信することになりました。予算という制約条件の中で、個人ごとの予約周期や、最終予約からの経過日数などの行動情報を基に数理最適化を行ってギフト券を配信しました。これまでの配信ロジックと比較し、同じ予算当たりの新規ジャンルユーザーを全てのジャンルで増加させることができたということです。
最適化AIを活用した石炭輸送の配船計画(ALGO ARTIS/東北電力)
株式会社ALGO ARTISは、東北電力株式会社がおこなう石炭の海上輸送に関する配船計画の最適化ソリューションを導入し運用をおこなっています。石炭の配船計画を作成する業務では、石炭輸送船でサプライヤーから石炭を受け取って火力発電所に届ける一連の計画を作成する業務です。
この最適化ソリューションでは、さまざまな制約条件や、コスト、リスクといったものを全て定式化し、経験やノウハウをAIのアルゴリズムに組み込むことで、配船計画の最適化を実現できました。計画の作成時間の大幅な削減に寄与し、速やかな計画修正や業務負担の軽減が可能となったということです。検証では、数億円の年間でのコスト削減や船舶の稼働率向上が試算されています。
電力システムでのAI活用事例についてはこちらの記事で特集していますので併せてご覧ください。
数理最適化についてよくある質問まとめ
- 数理最適化にAIを活用するメリットは何ですか?
数理最適化へのAI活用のメリットは以下の通りです。
- 大量のデータを扱う複雑な問題を解決可能
- 複雑な制約条件を考慮した最適化が可能
- リアルタイムでの解の算出が可能
- 人間の経験や勘に頼らない客観的な意思決定
- コスト削減と品質向上の両立
- 戦略立案の効率化と精度向上
- 数理最適化AIのビジネスでの具体的な活用事例にはどのようなものがありますか?
数理最適化AIの主な活用事例は以下の通りです。
- 生産計画の最適化(ニチレイフーズ)
- コンテナ積付けの最適化(ネットロック)
- エネルギー設備の最適運用(東京ガス)
- 人員配置とシフトの最適化(グルーヴノーツ)
- フリーペーパーの配送ルート最適化(リクルート)
- 在庫最適化による収益最大化(ブレインパッド)
- ギフト券配信の最適化(ホットペッパービューティー)
- 石炭輸送の配船計画最適化(ALGO ARTIS/東北電力)
- 数理最適化AIを導入する際の主な目的は何ですか?
数理最適化AI導入の主な目的は以下の通りです。
- コスト削減: 生産、輸送、在庫などの最適化によるコスト低減
- 品質向上: プロセスの最適化による製品・サービス品質の改善
- 戦略立案: データに基づいた最適な意思決定と戦略策定
- 業務効率化: 人手による計画立案時間の大幅短縮
- リスク最小化: 様々な制約条件を考慮した最適解の導出
- 収益最大化: 需要予測と組み合わせた在庫・販売戦略の最適化
まとめ
事業での戦略決定では、従来では考えられないほどのスピードと正確さが求められています。より良い決定を行うためには顧客、競合、自社に関する様々な変動要素の収集と正確な解析が欠かせません。
意思決定の負荷を軽減し、よりクリエイティブ、抽象的な領域でリソースを活用するためにAIの力を借りる経営者がますます増えています。ビジネスの意思決定に強い数理最適化を活用したAIを自社ビジネスで使いたいとお考えかもしれません。しかし、AIを導入するためにはどのような業者やパートナーと組むのがいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
AIの専門用語、システム要件はわからないし、見積もりの内容チェック方法もわからない方がほとんどではないかと思います。
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