日本電信電話株式会社、超高精細4K映像からのリアルタイムAI推論を可能にする低電力LSIを開発
最終更新日:2025年04月11日

2025年4月11日、日本電信電話株式会社(NTT)は、4K等の超高精細映像に対するリアルタイムAI推論処理を、電力制約の厳しいエッジ/端末上でも実行可能にするAI推論LSIを開発した。
従来技術では困難だった解像度制約を4K映像にまで拡張し、低電力での処理を実現することで、ドローン目視外飛行や人流分析などの用途において大幅な性能向上が期待される。
- 4K超高精細映像のリアルタイムAI処理を低電力で実現するLSIの開発により、エッジデバイスでの高度な映像解析が可能に
- 開発されたLSIをドローンに搭載することで、従来の5倍となる高度150mからの広域監視や設備点検が実現し、産業用途での効率化に貢献
- NTTイノベーティブデバイス株式会社が2025年度内に製品化予定で、ドローン目視外飛行や人流分析など様々な産業応用に期待
近年、映像AI技術を活用した業務や生産の効率化がますます重要となっている中、特にドローン目視外飛行、人流・交通分析、自動被写体追跡などのエッジ/端末アプリケーションにおいて、4Kなどの高精細カメラ1台で広範囲の物体をリアルタイムかつ低電力で検出することが求められている。
電力制約が厳しいエッジ/端末アプリケーションでは、サーバ等で利用されるGPU(数百W)よりも、電力が1桁以上低いAIデバイス(数十W)が利用されているが、従来技術では解像度に制限があり、4K映像を活用できていなかった。
例えば、物体検出のAI推論モデルであるYOLOv3の公式モデルの最大サイズは608×608ピクセルであり、4Kサイズ(3840×2160)に比べると大幅に低い解像度となる。そのため、4Kカメラで撮影した映像も小さい画像サイズに縮小してAI推論を行う必要があり、小さな物体が潰れて検出困難になるという課題があった。
これらの課題を解決するため、NTTは高精細映像AI推論ハードウェアの研究開発に取り組み、4K映像のリアルタイムAI推論処理を実行可能にするAI推論LSIを開発した。
このLSIを用いることで、一般的なエッジ/端末向けAIデバイスと同等以下の消費電力(20W以下)で、4K解像度でのリアルタイム物体検出処理(30fps)が可能となった。特に注目すべき技術的特徴として、「AI推論高精細化技術」と「独自の映像AI推論エンジン」の2点が挙げられる。
AI推論高精細化技術では、入力画像を分割して各分割画像に対して推論を行うと同時に、画像全体を縮小した推論も行い、これらの結果を合成することで、大小様々な物体の検出を実現している。
また、独自開発した映像AI推論エンジンでは、フレーム間相関を利用した演算効率化などにより、検出精度を確保しつつ、演算量の削減を実現し、低電力での4Kリアルタイム実行を可能にした。
本技術の実用例として、ドローンへの搭載が挙げられる。従来のドローンでは目視外飛行の際、飛行経路下の人・モノの検出は高度30m程度が限界だったが、本LSIを搭載することで、航空法で定められた上限である高度150mからでも検出が可能となる。
これにより、広域に渡る設備点検やインフラ監視などの用途において、大幅な効率化とコスト削減が期待される。また、公共空間における人流分析や交通分析サービスにおいても、より広範囲での検出が可能となり、自動被写体追跡では、より高精度な追従が実現できる。
NTTは2025年4月9日~10日にアメリカ・サンフランシスコで開催された「Upgrade2025」において本技術を展示し、NTTイノベーティブデバイス株式会社にて2025年度内に本LSIの製品化を予定している。
AI Market の見解
NTTが開発した4K映像リアルタイムAI推論LSIは、エッジコンピューティングにおける重要な技術的ブレイクスルーと位置付けられる。従来のAI推論技術では解像度の制約から高精細な映像処理が困難だったが、本技術により20W以下という低電力環境でも4K映像のリアルタイム処理が可能になった点は特筆に値する。
産業応用の観点では、特にドローンを活用したインフラ点検市場に大きな影響を与えると想定される。従来は人間による目視や低高度からの撮影に依存していた点検作業が、高度150mからの広域監視によって大幅に効率化される。
また、スマートシティ構想における人流分析や交通監視システムにおいても、1台のカメラでより広範囲をカバーできるようになるため、設置コストの削減と分析精度の向上が同時に実現される。
半導体市場においては、エッジAI専用チップとして新たな市場セグメントを形成する可能性があり、今後類似技術の競争が活発化すると想定される。
参照元:NTT
4K映像AI推論LSIに関するよくある質問まとめ
- このAI推論LSIを搭載したドローンはどのような用途に活用できますか?
主な用途としては、高所にある設備の点検やインフラ監視が挙げられます。
従来は30m程度の高度からの監視に限られていましたが、本LSIにより150mの高度から広域に渡る人やモノの検出が可能になります。
これにより、電力線、橋梁、ダム、太陽光パネルなどの大規模インフラの点検が効率化され、人手による点検と比較して大幅な省力化とコスト削減が実現できます。
- 従来のAIデバイスと比較して、このLSIの技術的な優位性はどこにありますか?
最大の優位性は、4K映像(3840×2160ピクセル)をリアルタイム(30fps)かつ低電力(20W以下)で処理できる点です。
従来のエッジAIデバイスでは、YOLOv3などの物体検出モデルを使用する場合、608×608ピクセル程度の低解像度に縮小して処理する必要がありました。
本LSIは独自の高精細化技術と効率的な推論エンジンにより、画像を分割処理しながらも全体像を失わない検出を実現し、小さな物体から大きな物体まで精度良く検出できます。

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