Amazon Transcribeとは?日本語対応の音声認識機能・料金・活用事例・使い方を解説!
最終更新日:2024年09月23日
Amazonが提供しているサービスの1つとして、Amazon Transcribeという音声認識サービスがあります。日本語にも対応した文字起こしツールとしても知られ、AWSアカウントがあれば利用できます。
音声認識機能は、生成AI(特にLLM)と組み合わせて利用することで、解析した音声(テキスト情報)を解析したり、要約したりすることもできるため、より多くのニーズに対応することができるようになります。
この記事では、Amazon Transcribeの機能や料金・メリット・使い方・活用事例を解説していきます。Amazon Transcribeの概要について網羅的に理解できる内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
Amazon Transcribeとは?
Amazon Transcribeは、Amazon Web Services(AWS)が提供するAIによる自動音声認識(ASR)サービスです。音声ファイルをテキストに変換することで、高精度な文字起こしを実現します。日本語、英語はもちろん、韓国語、中国語やスペイン語など、100以上の言語に対応しており、さまざまな言語の音声をテキストに変換できます。
Amazon Transcribeはディープラーニング技術を利用して、さまざまなオーディオデータからトレーニングを重ねたモデルとなっており、音声データの複雑なパターンを学習し、さまざまな音響特性(音量、ピッチ、発声速度の変化など)を処理できるように設計されています。これにより、バックグラウンドノイズやアクセントのあるスピーチにも対応可能です。
また、Amazon Transcribeはリアルタイムでのストリーミング処理と、録音された音声ファイルを処理するバッチ処理の両方で利用可能です。ユーザーがカスタムすることも可能で、特定の業界用語や固有名詞の認識率を向上させることもできます。
Amazon Transcribeで利用できる機能
多機能な自動音声認識サービスとして、Amazon Transcribeでは以下のような機能を利用できます。
機能名 | 機能の詳細 |
---|---|
録画音声の文字起こし | 録音された音声ファイルをテキストに変換します。 |
リアルタイム文字起こし | ライブオーディオストリームをリアルタイムで文字起こしします。 |
多様な音声入力 | ライブ音声や録音された音声、動画入力を処理して、高品質の文字起こしを提供します |
カスタム語彙 | 特定の業界用語や固有名詞をカスタム語彙として追加 |
タイムスタンプ | すべての単語にタイムスタンプが付与され、音声の再生や動画の字幕作成が容易になります |
語彙フィルター | 不適切な言葉や個人情報を識別し、マスキングする |
自動句読点 | 句読点や数値の形式が自動的に追加され、読みやすいテキストが生成 |
話者分離 | 複数の話者を自動で識別し、それぞれの発言を正確にテキストに反映 |
個人情報の自動編集 | 個人情報を自動的に識別し、マスキングする |
通話要約 | 生成AIを活用して通話要約を行う |
Amazon Transcribeの機能は、音声コンテンツの管理と利用を効率化し、よりスムーズな文字起こしが可能です。機能の豊富さと精度の両方において、Amazon Transcribeは優秀なツールと言えるでしょう。
Amazon Transcribeの料金
Amazon Transcribeの料金体系は、利用者が使った分だけ支払う従量課金制です。1カ月間で文字起こしに使用した音声データの秒数に基づき、料金がかかるようになっています。初期費用や最低費用が必要ないため、Amazon Transcribeの導入時に費用を準備しなくても始められます。
料金は音声の時間に応じて変動し、段階的な価格に従って請求額が決定されます。スタンダードバッジで文字起こしをする場合、料金体系は以下のようになっています。
音声ボリューム (分/月) | スタンダードバッチ文字起こし (USD/分) |
---|---|
最初の25万分まで | 0.02400USD |
次の75万分まで | 0.01500USD |
次の400万分まで | 0.01020USD |
500万分超過分 | 0.00780USD |
例えば100,000分の音声データを使用した場合、100,000×0.02400USDが料金となります。500,000分の音声データの料金は、(250,000×0.02400USD)+(250,000分×0.01500USD)です。このように、使用した分だけ料金が発生し、金額は段階的に変わっていきます。
また、無料利用枠として最初の12カ月は1カ月あたり60分の音声データが無料です。
Amazon Pollyとの違い
Amazon TranscribeとAmazon Pollyは、どちらもAmazon Web Services(AWS)が提供する音声関連のサービスです。Amazon Pollyが、テキストを自然な音声に変換する音声合成(TTS)サービスです。音声コンテンツの生成、ナレーションの作成、インタラクティブな音声応答システムの構築などに利用されます。
一方、Amazon Transcribeは逆に音声をテキストに変換する自動音声認識(ASR)サービスです。
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Amazon Transcribeを利用する5つのメリット
Amazon Transcribeに搭載された機能を利用することで、さまざまなメリットがあります。代表的なメリットとして、以下の4つについて解説します。
高精度な文字起こし
Amazon Transcribeでは最先端のAIアルゴリズムによる機械学習によって、高精度な文字起こしを実現しています。AWSの提供する音声認識技術は、その精度と信頼性で広く評価されています。リアルタイムでも文字起こしも、録音データを活用した文字起こしも可能なため、幅広い利用ニーズに対応することが可能です。
ディープラーニング技術を駆使した音声データの解析と文字起こしで、雑音の多い環境や複数の音声データでもテキストに変換できます。そのため、音響条件を考慮し、効果的にノイズを除去しながら正確にテキストを出力することが可能です。
また、さまざまな言語や方言、アクセントにも対応し、微妙なニュアンスの違いをキャッチして正確なテキスト変換に反映することもできます。
カスタム語彙機能を利用すれば、特定の業界用語や固有名詞の認識精度を向上させることができます。これにより、専門用語が多い会話でも高精度な文字起こしが可能です。
これまで手間がかかっていた文字起こし作業を、迅速かつ正確に行うことができるのがAmazon Transcribeの特徴です。
コストの削減
Amazon Transcribeを利用することで、従来の時間や労力を削減できます。文字起こしのプロセスが自動化され、作業時間の短縮・人件費のカットに貢献します。
Amazon Transcribeは従量課金制であるため、30分の音声データであればその分の料金しかかかりません。従来の手動文字起こしに比べてコストを大幅に削減できます。特に大量の音声データを扱う場合に有利です。このように、Amazon Transcribeはさまざまな面でコストの削減に役立ち、かつ効率的な文字起こしを実現できます。
特化分野にカスタマイズ可能
Amazon Transcribeは、音声データのトランスクリプション機能をカスタマイズすることが可能です。特定の業界や使用状況に合わせて、最適な形式で文字起こしができるということです。
Amazon Transcribeにはカスタム語彙機能があり、自社固有の専門用語や固有名詞を事前に登録できます。これにより、一般的な音声認識システムでは認識できない言葉を正確に文字に起こし、修正の手間を省きます。医療や法律など特定の専門用語が頻出する業界で、カスタム語彙は特に効果的です。
幅広い業界や会社で活用されているのは、豊富な機能をカスタマイズできるメリットがあるからです。
信頼性の高いセキュリティ
Amazon Transcribeは、ユーザーのプライバシーとデータのセキュリティを優先する設計となっています。それにより、文字起こしデータを安全に管理できます。
機密性の高い単語や不適切な単語については、文字起こし結果から削除したりフィルタリングも可能です。特に、医療や金融などの厳格なセキュリティ基準を必要とする業界にも有効です。
データ保護のセキュリティも高く、暗号化プロコトルによって転送中のデータを暗号化します。これにより、外部からの不正アクセスを防止できます。
Amazon Transcribeの使い方
Amazon Transcribeで文字起こしを行うには、AWS(Amazon Web Services)のアカウントを持っている必要があります。AWS公式サイトからアカウント作成のページに進み、連絡先や支払い情報などを入力することでアカウントをまず作成しておいてください。
S3バケットを作成する
Amazon Transcribeを利用するには、音声ファイルを保存するためのS3バケットを作成する必要があります。S3バケットとは音声ファイルの保存場所のようなもので、これがないとAmazon Transcribeで音声を文字起こしできません。
S3バケットの作成方法は、以下の通りです。
- AWSマネジメントコンソールから「S3」を選択する
- 「バケットを作成」をクリックします。
- バケットの設定
- アクセス権限の設定
文字起こしデータのコンテンツを公開する場合は、「パブリックアクセスを全てブロック」のチェックを外すようにしましょう。S3バケットはデフォルトとして設定されているもので問題ありません。
アクセス権限の設定まで完了したら、作成ボタンをクリックしてバケットの作成が完了となります。
音声ファイルのアップロード
作成が完了すると新しいバケットがS3のバケット一覧に表示され、作成したバケットをクリックして音声ファイルをアップロードします。対応する音声ファイル形式は、MP3、MP4、WAV、FLAC、AMR、OGG、WebMなどです。
新規のジョブを作成
S3バケットが完成したら、ジョブを作成して文字起こしの設定を行わなければいけません。まず、サービス一覧から「Amazon Transcribe」を選択します。
Amazon Transcribeのダッシュボードが表示されたら、「ジョブの作成」というボタンをクリックして、新しいジョブを作成します。
ジョブの設定が完了したら、文字起こしの対象となる音声ファイルを選択します。これによって文字起こしが開始されます。
作成が完了すると新しいバケットがS3のバケット一覧に表示され、作成したバケットをクリックして音声ファイルをアップロードします。
結果を確認する
ジョブのステータスが「Complete」になると、文字起こしが完了したという合図で、結果を確認することができます。文字起こしを行ったジョブをクリックすると、文字起こしの結果を閲覧することが可能です。
ステータスには「Failed」「Progress」もあり、文字起こしが失敗したか、まだ文字起こしが完了していないかをチェックできます。文字起こしに失敗した場合、音声ファイルや設定に問題がある可能性が考えられるため、再度設定しましょう。
これらの4段階を踏むことで、直感的な文字起こしが可能です。複雑な操作もないため、初心者でも簡単に利用できるでしょう。
Amazonan Transcribeの活用シーン
Amazon Transcribeはその機能性と利便性から、さまざまなシーンで活用されています。ここでは、Amazon Transcribeの代表的な活用事例を5つ紹介します。
会議の議事録作成
会議中に録音した音声ファイルをAmazon Transcribeにアップロードすると、自動的に音声をテキストに変換してくれます。これにより、会議終了後すぐに文字起こしされたテキストを取得できるため、議事録作成に手間がかかりません。
発話者を識別する機能を活用すれば、誰がどの発言をしたのかを正確に記録することができます。会議では複数人が発言するため、これらの機能は非常に有効です。
動画の字幕
動画コンテンツを作成する機会が増加する中で、字幕の重要性は高まっています。聴覚障害者への対応や騒がしい環境でも内容を理解できるようにするために、動画コンテンツでの字幕は不可欠です。そのため、Amazon Transcribeは文字起こしによる字幕作成にも貢献します。
リアルタイムの変換によって音声とテキストの同期が簡単に行え、正確な字幕を作成することが可能です。視聴者は聞き逃したり理解が難しい部分を再確認するために字幕を利用できます。
医療現場での会話の文書化
医療現場では、医師と患者との会話やカウンセリングセッション、診療記録などを正確に文書化することが重要です。これにAmazon Transcribeを活用することで、患者の情報を正確に把握し、適切な治療やフォローアップを行うことが期待されています。
AWSにはAmazon Transcribe Medicalというサービスもあり、これは医療音声のテキスト変換に特化したサービスです。医療専門用語や薬品名、病状の詳細などを含む会話は一般的な音声認識システムでは難しいですが、これらの専門用語も正確に文字に起こします。
これにより、医師の診察や治療記録が迅速かつ正確に文書化され、医療チーム全体で共有することが可能になります。また、診療記録の作成や更新が大幅に効率化されます。ただし、現状は主に英語のみの対応です。
不適切な表現の自動検出
Amazon Transcribeは機械学習モデルを活用することで、音声データ内の不適切な内容を識別します。暴力的・差別的・卑猥な言葉や表現を検知できるように、会社や業界の基準に沿ってカスタマイズすることが可能です。
Amazon Transcribeの自動検出機能は、音声データのリアルタイム処理とバッチ処理の両方で利用可能です。
不適切な内容は企業のブランドイメージを損なう可能性があり、また、法的な問題を引き起こすリスクもあります。何より顧客に対してマイナスのイメージを抱かせるため、Amazon Transcribeの自動検出機能は不適切な音声の公開を防ぐために有効です。
コールセンターの通話分析
Amazon Transcribeを利用することで、コールセンターの通話をリアルタイムで文字起こしできます。また、オペレーターの発言内容や顧客の要望を正確に記録した上で、LLM(大規模言語モデル)を活用して後から詳細に分析することが可能です。
例えば特定のキーワードやフレーズを検出することで、顧客が抱えている問題やよくある質問を特定し、迅速に対応できます。また、オペレーターのパフォーマンスを評価することも可能で、文字に起こすことで丁寧な言葉で対応しているかチェックできます。
コールセンターの通話分析は、顧客満足度の向上やサービスの改善に貢献します。通話内容の文字起こしは膨大な作業量となるため、Amazon Transcribeが活躍するでしょう。
Amazon Transcribeについてよくある質問まとめ
- Amazon Transcribeとはどんなサービスですか?
Amazon Transcribe機械学習AIモデルによる自動音声認識サービスで、音声からのテキスト文字起こしが可能です。
- Amazon Transcribeは文字起こし以外にどんな機能がありますか?
Amazon Transcribeでは、効率的な文字起こしをサポートするために以下のような機能も搭載されています。
- 音声入力
- カスタム語彙
- タイムスタンプ
- フィルタリング機能
- Amazon Transcribeの使い方は?
Amazon Transcribeは以下の手順で文字起こしが可能です。
- AWSアカウントを作成する
- S3バケットを作成する
- 「Amazon Transcribe」から音声ファイルをセットする
- ステータスが「Complete」になったら結果を確認する
まとめ
AWSの1つとして多くの企業に利用されているAmazon Transcribeは、文字起こしサービスの中でも優秀なツールと言えます。周辺環境に左右されない精度や豊富なカスタマイズ機能によって、国内外の企業に利用されています。
社内で扱う音声データを文字に起こしたいという方は、Amazon Transcribeを検討してみるのがおすすめです。
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