姿勢推定AIとは?仕組み・活用事例・使われるアルゴリズムを徹底解説!
最終更新日:2024年10月27日
画像や動画から人の動きを自動的に分析する姿勢推定AI。製造現場での作業改善から、医療・介護におけるリハビリ支援まで、その活用領域は着実に広がっています。
本記事では、姿勢推定AIの仕組みから最新のアルゴリズム、そして医療、セキュリティ、スポーツなど多岐にわたる業界での活用事例を徹底解説します。AIによる業務効率化や新たな価値創造の可能性を探り、貴社の競争力強化につながるヒントを提供します。
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姿勢推定AIとは?
姿勢推定AIは、画像や動画から人間の体の姿勢や動き、骨格や関節の位置を自動的に認識し、解析するAI技術です。人の動きを定量的に分析できるため、スポーツ分析・フォーム改善、リハビリ、工場での作業分析・安全管理など様々な分野で活用されています。
コンピュータビジョンと機械学習の融合によって実現され、近年急速に進化を遂げています。精度と処理速度の向上により、今後さらに応用範囲が広がると考えられます。
画像認識の仕組みや種類についてはこちらで詳しく解説していますので、ご参考ください。
姿勢推定の仕組み
姿勢推定の基本的な仕組みは、カメラ映像から人体の主要な関節や特徴点(キーポイント)を検出し、それらの位置関係を分析することです。AIモデルは、大量の人体画像データで学習され、様々な姿勢や角度から人体のキーポイントを正確に識別できるようになります。
一般的に、頭部、肩、肘、手首、腰、膝、足首などが重要なキーポイントとして扱われます。
画像が入力されると、AIモデルはまず人物の検出を行い、次に各キーポイントの位置を予測します。これらのキーポイントを結ぶことで、骨格構造が推定され、人体の姿勢が再現されます。
この過程では、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などのディープラーニング技術が活用され、高精度な推定が可能となっています。
2Dモデルと3Dモデルの違いと特徴
姿勢推定AIには、2Dモデルと3Dモデルの2つの主要なアプローチがあります。
2Dモデルは、単一の画像や動画フレームから人体の姿勢を平面上で推定します。このモデルは計算コストが比較的低く、リアルタイム処理に適しています。
ただし、奥行きの情報が欠如しているため、複雑な動きや重なりがある場合に精度が低下する可能性があります。
一方、3Dモデルは人体の立体的な姿勢を推定します。これには複数のカメラからの映像や深度を把握できる3Dカメラのデータを使用することが多く、より詳細で正確な姿勢情報を提供できます。
3Dモデルは、バーチャルリアリティやモーションキャプチャなど、より高度なアプリケーションに適していますが、計算コストが高く、特殊な機器が必要になることがあります。
姿勢推定技術の最新トレンド
姿勢推定技術は急速に進化しており、いくつかの注目すべきトレンドが浮上しています。
- マルチパーソン姿勢推定
- リアルタイム処理
- 動作予測
- 新たなモデルの開発
まず、マルチパーソン姿勢推定の精度向上が挙げられます。群衆や複数の人物が重なり合う複雑なシーンでも、個々の姿勢を正確に推定できるようになってきています。
次に、リアルタイム処理の高速化が進んでいます。エッジコンピューティング(データ処理をクラウドではなく、ユーザーの近くのデバイスで行う技術)の発展により、スマートフォンやウェアラブルデバイスでもリアルタイムの姿勢推定が可能になりつつあります。これにより、AR(拡張現実)アプリケーションやインタラクティブなゲーム体験の幅が大きく広がっています。
さらに、時系列データを活用した動作予測も注目されています。過去の姿勢情報を学習することで、未来の動きを予測し、よりスムーズで自然な姿勢推定が可能になっています。これは、スポーツ分析やリハビリテーションなどの分野で特に有用です。
最後に、少量のデータでも高精度な推定を可能にする転移学習や自己教師あり学習の技術も進展しています。これにより、特定の用途や環境に特化した姿勢推定モデルの開発が容易になり、応用範囲がさらに拡大しています。
これらのトレンドにより、姿勢推定AIは今後ますます精度を高め、より多様な分野での活用が期待されています。
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企業における姿勢推定AIの活用事例
姿勢推定AIは、様々な産業分野で革新的な解決策を提供し、業務効率化や新たな価値創造に貢献しています。以下では、各分野における具体的な活用事例を紹介します。
医療分野でのリハビリ支援とオンライン診療の革新(ソニー)
医療分野では、姿勢推定AIがリハビリテーションとオンライン診療に改善をもたらしています。
例えば、ソニーグループが開発した在宅リハビリ支援サービス『リハカツ』は、姿勢推定技術を用いたアプリによるトレーニングとリハビリの専門家によるオンラインサポートを組み合わせています。
このサービスは、脳梗塞をはじめとした疾患の後遺症者や加齢に伴い身体機能が低下した方を対象に、自宅での日々のトレーニングをサポートします。
また、オンライン診療においても姿勢推定AIは重要な役割を果たしています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、遠隔医療と遠隔監視ソリューションの採用が加速し、遠隔理学療法と患者評価を可能にしています。
これにより、患者は自宅にいながら専門家の指導を受けることができ、医療アクセスの向上と感染リスクの低減に貢献しています。
このように、姿勢推定AIは医療分野において、患者の自宅でのリハビリテーションの質を向上させ、オンライン診療の可能性を広げています。より効果的で安全な医療サービスの提供を支援しています。
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介護施設での転倒予防と見守り支援(Rehab for JAPAN)
介護施設では、姿勢推定AIが高齢者の転倒予防と見守り支援に活用されています。高齢者の転倒は要介護状態になる主要な原因の一つであり、その予防は極めて重要です。
姿勢推定AIを用いたシステムは、高齢者の動きを常時モニタリングし、転倒リスクの高い動作を検出することができます。
例えば、株式会社Rehab for JAPAN(リハブフォージャパン)の『Rehab Cloud モーションAI』は、高齢者のバランス能力を評価し、適切な転倒予防メニューを提供します。このシステムにより、介護事業所は客観的なバランス評価に基づいて、高齢者の転倒予防対策に取り組むことが可能となりました。
また、AIによる24時間の見守りにより、夜間の転倒など緊急事態にも迅速に対応できるようになりました。介護スタッフの負担軽減と入居者の安全確保に貢献しています。
関連記事:「AIを介護に活用した場合のメリットやデメリット、そして具体的な介護サービスについて解説」
製造業での品質管理と作業効率化(富士通)
製造業では、姿勢推定AIが品質管理と作業効率化に活用されています。作業者の動作を解析することで、無駄な動きを省き、効率的な動きを見出すことが可能になりました。
これにより、生産性の向上と作業者の負担軽減を同時に実現しています。
また、姿勢推定AIは作業者の危険な動きを識別することで、安全性の高い作業環境づくりにも貢献しています。例えば、重量物の持ち上げ方や機械操作時の姿勢など、労働災害につながりやすい動作を検出し、リアルタイムで警告を発することができます。
例えば、富士通では、ミリ波センサーで収集した点群データをAIで解析して人の姿勢を高精度に推定する新技術を開発しました。この技術は工場などの製造現場での作業分析や安全管理に活用できます。
カメラを使わないので、プライバシーに配慮した姿勢推定が可能です。また、暗所や遮蔽物がある環境でも高精度な姿勢推定を実現できます。
この技術により、工場内の作業者の動きをリアルタイムで把握し、危険な姿勢や動作を検知することで事故防止につながります。また、作業の効率化や自動化の検討にも活用できます。
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小売業における顧客行動分析と店舗最適化
小売業では、姿勢推定AIが顧客の行動分析と店舗レイアウトの最適化に活用されています。店舗内の監視カメラ映像から顧客の動線や滞留時間を分析することで、商品配置や店舗レイアウトの改善に役立てられています。
例えば、顧客が特定の商品棚の前で立ち止まる時間や、手に取る動作などを分析することで、人気商品や改善が必要な商品陳列を特定できます。
また、混雑状況の把握や待ち行列の管理にも活用され、効率的な店舗運営と顧客満足度の向上に貢献しています。さらに、姿勢推定AIを用いた非接触型の決済システムの開発も進んでいます。
姿勢推定AIの活用によって、より快適なショッピング体験の提供が期待されています。
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セキュリティ業界での異常行動検知と防犯
セキュリティ分野では、姿勢推定AIが異常行動の検出や防犯に活用されています。監視カメラの映像から不審な行動を検出したり、行方不明者を探すための人物識別にも利用されています。
特筆すべきは、姿勢推定AIが顔や特定の特徴を認識することなく、人間の動きだけを解析できることです。
これにより、プライバシー保護と高度なセキュリティの両立が可能となっています。
例えば、公共空間や商業施設での異常行動の早期発見や、立ち入り禁止区域への侵入検知などに活用されています。これにより、セキュリティ担当者の負担軽減と、より効果的な監視体制の構築が可能となっています。
関連記事:「AIが警備・セキュリティ業界をどう変えているのか、直面している課題からAIを活用する方法、具体的な活用事例などを徹底解説」
スポーツ界でのパフォーマンス分析と技術向上
スポーツ分野では、姿勢推定AIが選手のパフォーマンス分析と技術向上に大きく貢献しています。例えば、トランポリン競技では、姿勢推定AIを使用して選手の体の運動情報を計算し、コーチングに役立つ情報の取得や可視化が可能になっています。
トランポリン演技に特化した姿勢推定AIは、適したモデルの選定と独自データセットによる学習により、非日常的な動作でも約95%の認識精度で姿勢推定できます。
このような技術は、ゴルフスイングや野球の投球、体操の技など、様々なスポーツで活用されています。選手の動きを詳細に分析し、改善点を見つけ出すことが可能です。
これにより、コーチングの質が向上し、選手のパフォーマンス向上に大きく寄与しています。
関連記事:「スポーツでのAI活用事例完全解説!企業が事業参画する際の注意点は?」
エンターテインメント業界でのモーションキャプチャと演出
エンターテインメント業界では、姿勢推定AIがモーションキャプチャと演出に改善をもたらしています。ビデオゲームやアニメーションのモーションキャプチャに姿勢推定技術を積極的に採用しています。
この技術により、俳優や演者の動きを正確にデジタル化し、CGキャラクターに反映させることが可能になりました。
また、リアルタイムの姿勢推定技術の進歩により、ライブパフォーマンスやインタラクティブな展示など、新しい形のエンターテインメントの創出も可能になっています。
これにより、より没入感のある体験やコンテンツの制作が可能となり、エンターテインメント業界に新たな可能性をもたらしています。
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最新の姿勢推定アルゴリズム比較
姿勢推定技術の進歩は目覚ましく、様々なアルゴリズムが開発されています。ここでは、代表的な姿勢推定アルゴリズムを比較し、それぞれの特徴や強みを解説します。
各アルゴリズムにはそれぞれ特徴や強みがあることがわかります。用途や環境に応じて適切なアルゴリズムを選択することで、より効果的な姿勢推定システムを構築することが可能となります。
OpenPose
OpenPoseは、2016年にカーネギーメロン大学の研究チームによって開発された、リアルタイムで複数人の姿勢を同時に推定できるアルゴリズムです。
OpenPoseの特徴は、ボトムアップアプローチを採用していることで、画像内のすべての人物の姿勢を一度に推定できる点にあります。このアプローチにより、人数が多い場合でも処理時間が大幅に増加しないという利点があります。
OpenPoseは、Part Affinity Fields (PAFs)という独自の手法を用いて、身体の各部位間の関連性を学習します。これにより、複雑な姿勢や重なり合った人物の姿勢も高精度で推定することが可能となりました。
また、OpenPoseは顔や手の細かい動きも検出できるため、表情認識やジェスチャー認識にも応用可能です。
DeepLabCut
DeepLabCutは、主に動物の行動解析に特化した姿勢推定アルゴリズムです。OpenPoseが人間の姿勢推定に特化しているのに対し、DeepLabCutは様々な動物種に適用可能な汎用性の高いアルゴリズムとなっています。
DeepLabCutの最大の特徴は、少量のトレーニングデータで高精度な姿勢推定が可能な点です。これは、転移学習を効果的に活用しているためです。
事前学習済みの深層ニューラルネットワークを用いることで、研究者は数十フレームの手動ラベリングだけで、高精度な姿勢推定モデルを構築できます。
リアルタイム処理に強みがあり、複数の人物を同時に追跡する能力に優れているOpenPoseと比較すると、DeepLabCutは特定の研究目的に合わせてカスタマイズしやすい柔軟性を持っています。
また、DeepLabCutはオンライン学習機能を備えており、時間の経過とともにモデルの精度を向上させることができます。
AlphaPose
AlphaPoseは、人物検出を先に行い、その後各人物の姿勢を推定するトップダウンアプローチを採用した姿勢推定アルゴリズムです。一方、OpenPoseはボトムアップアプローチを採用しています。
AlphaPoseの特徴は、Symmetric Spatial Transformer Network (SSTN)を導入していることです。これにより、人物検出の精度が低い場合でも、高精度な姿勢推定が可能となっています。
さらに、SSTNにより、AlphaPoseは混雑したシーンでの姿勢推定に強みを持っており、人物が密集している状況でも高い精度を維持できます。
OpenPoseと比較すると、AlphaPoseは個々の人物の姿勢推定精度が高い傾向にあります。一方で、OpenPoseは複数人の姿勢を同時に推定するので画像内の人数に関わらず、処理時間はほぼ一定です。
一方、AlphaPoseは画像内の人数が増えるにつれて処理時間が線形的に増加する傾向があります。各検出された人物に対して個別に姿勢推定を行うためです。
用途に応じて、これらのアルゴリズムを使い分けることが重要です。
Lightweight OpenPose
Lightweight OpenPoseは、OpenPoseの軽量化版として開発されたアルゴリズムです。エッジAIデバイスやモバイル端末など、計算リソースが限られた環境でのリアルタイム姿勢推定を可能にすることを目的としています。
Lightweight OpenPoseの特徴は、モデルサイズを大幅に縮小しながらも高い精度を維持していることです。これは、ネットワーク構造の最適化や効率的な畳み込み演算の採用によって実現されています。
具体的には、Lightweight OpenPoseはCPU上でもリアルタイムの推論が可能で、精度の低下を最小限に抑えつつ処理速度を大幅に向上させています。このアルゴリズムにより、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどでの姿勢推定アプリケーションの実装が容易になりました。
AR(拡張現実)やモーションキャプチャなどの分野での応用が期待されています。
まとめ
姿勢推定AIは、人の動きを定量的に把握・分析できる技術として、様々な業界で実用化が進んでいます。特に製造業での作業分析や、医療・介護分野でのリハビリ支援など、具体的な成果が表れている分野も出てきました。
ただし、導入に際しては以下の点に留意が必要です。
- 目的に応じた適切なアルゴリズムの選択
- プライバシーへの配慮
- 現場のワークフローとの整合性
各業界特有の課題や規制への対応も重要となるため、導入を検討される際は、業界に精通したAIベンダーや専門家への相談をお勧めします。
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姿勢推定AIについてよくある質問まとめ
- 姿勢推定AIの基本的な仕組みは何ですか?
姿勢推定AIは、画像や動画から人体の主要な関節や特徴点(キーポイント)を検出し、それらの位置関係を分析します。AIモデルは大量の人体画像データで学習され、様々な姿勢や角度から人体のキーポイントを識別します。画像が入力されると、AIは人物を検出し、各キーポイントの位置を予測して骨格構造を推定します。
- 2Dモデルと3Dモデルの姿勢推定AIの違いは何ですか?
2Dモデルは単一の画像や動画フレームから平面上で姿勢を推定し、計算コストが低くリアルタイム処理に適していますが、奥行き情報が欠如しています。3Dモデルは人体の立体的な姿勢を推定し、複数のカメラや深度センサーを使用してより詳細で正確な情報を提供しますが、計算コストが高く特殊な機器が必要になることがあります。
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