最終更新日:2024-10-07
スポーツでのAI活用事例9選完全解説!企業が事業参画する際の注意点は?
日本政府はスポーツ産業を重要と位置付け、2016年の報告では2012年時点で5.5兆円だった市場規模を2025年には15.2兆円に拡大する目標を掲げました。
人々とスポーツの関係性も変化し、スポーツとテクノロジーを掛け合わせた「スポーツテック」とも呼ばれる事業分野が注目されています。AI(人工知能)の活用がますますスポーツ分野にも広がり、多くのスポーツシーンでAIが活用しています。
スポーツと、AIをはじめとしたテクノロジーの融合で可能になる未来と既に導入されている事例を紹介します。
AI Marketでは、
目次
なぜスポーツ分野でAI導入が注目されるのか?
オリンピックやワールドカップなど世界的な大会が数々開催され、ますますスポーツ人気は高まっています。そして、健康志向の高まりからスポーツをすることによる産業拡大が大きな後押しとなっています。
確かに2020年以降、新型感染症の流行などで、スポーツを含めた余暇市場は落ち込みました。しかし、2021年から大きく復調しています。ただし、人々のスポーツに対するかかわり方は、単にスポーツをテレビで観戦したり、スタジアムに行って応援したりと言った従来の関係性から変化が起こっています。上図が示すように、多くの人が、より主体的に自分がスポーツにかかわることを望んでいることが見て取れます。
ひいきのチームを応援する際も、より詳細なデータと照らし合わせながらゲームを観戦し、自分なりの見方や楽しみ方を造り出して楽しむのがこれからのスポーツとのかかわり方でしょう。それを実現するためにテクノロジーの活用が必要となっています。それが、スポーツとテクノロジーを掛け合わせた「スポーツテック」と呼ばれる分野です。
AIをスポーツに取り入れる5つのメリットとは?
AIをスポーツに取り入れるメリットを以下に紹介します。
- 動的シーンやリアルタイムデータで新しい観戦体験を提供
- 戦略立案、戦術の高度化に貢献できる
- 会場の混雑状況の予測
- プレイヤーのコンディション・メンタル・トレーニングのサポート
- 審判、採点支援で公平なジャッジが可能
それぞれのメリットについて説明します。
動的シーンやリアルタイムデータで新しい観戦体験を提供
試合の見せ方の部分にAIを活用することで、新たな観戦体験の提供につなげられます。例えば、選手や試合状況のデータをリアルタイムで反映させることが可能です。これまでは感覚的に捉えていたプレイの迫力や運動能力を、客観的なデータと視覚的にわかりやすい映像と融合させて表現できます。
また、動きが激しくスポーツ中継が難しいものや、従来撮影できなかった場所にAIが活用できます。AIを活用した自動追尾が可能なドローンを導入すれば、選手の細かい動きも全体的に見られるでしょう。よく知られているスポーツでも新しい見方が生まれるかもしれませんし、今までさほど大衆的な人気を得られなかった競技にスポットライトが当たるかもしれません。
関連記事:「テレビ・ラジオ業界のAI活用方法は?活用事例・導入事例徹底解説!」
戦略立案、戦術の高度化に貢献できる
経験や勘に依存しないデータに基づいた戦略策定が可能です。これまでは監督やコーチなどが戦略をたてることが一般的でした。対戦相手のデータから、AIの活用でデータドリブンな戦略の策定が可能です。全く新しい観点から競技を見直すきっかけになりますし、戦術の高度化も期待できるでしょう。
データドリブン経営が必要とされる背景と事例をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
会場の混雑状況の予測
AIは過去に蓄積された大量のデータから、競技会場の当日混雑状況を分析して予測できるようになるでしょう。会場の混雑状況の予測ができれば、観戦者は事前にそれに合わせた行動の予定を立てられます。より多くの人がストレスを感じることなくスポーツを楽しめるでしょう。会場運営者にとっても警備員の数の増減や、適切な配置で対応できます。
AIによる未来予測の仕組み、種類についてこちらの記事で詳しく解説しています。
プレイヤーのコンディション・メンタル・トレーニングのサポート
選手個々の身体データや医療データから、ケガやメンタルの不調を予測できるようになるでしょう。予測できれば未然に防ぐことが可能です。従来は選手自身、もしくは監督やコーチなどが主観的に判断するしかありませんでした。しかし、AIの力を借りて、コンディションの調整や、メンタルのサポートをおこなえるようになるでしょう。客観的な視点からコンディションの把握が可能です。
審判、採点支援で公平なジャッジが可能
多くの競技で、審判や競技の採点は人間が目視で判断するため、採点者の主観による部分が大きく誤審の源となっています。選手の体力や体格の向上によって、高難度や高速の技やプレイを瞬時に正しく判断することはますます難しくなっています。AIの目を使えば、審判の判定基準や、演技の採点基準を明確化し公平なジャッジが可能となるでしょう。
人の感覚に依拠した定性的な部分が多かった判定でしたが、AIとの融合で定量的なデータとなります。観客や視聴者にとってもわかりやすくなるので、スポーツをより楽しめる効果も期待できます。オリンピックやサッカーのワールドカップ、テニスの四大大会など世界的なビッグイベントで既に活用されています。
AI Marketでは、
プレイヤーの能力・戦術を向上させるAI活用事例4選
AIをスポーツに活用した事例を紹介します。
- AIで食をトレーニング(オンキヨースポーツ)
- 自分の泳ぎを確認できるスマートスイミングシステム(コナミスポーツ)
- バレーボールでリアルタイム分析による戦況把握(ブレインパッド)
- AI・画像解析でカーリングを強化(北海道北見市)
プレイヤー・選手の能力・スキルを向上させるためのトレーニングやサポートのためにAIを活用した事例です。
それぞれの事例について説明します
AIで食をトレーニング(オンキヨースポーツ/至学館大学)
AIを搭載した食事トレーニングアプリとして開発されたのが、オンキヨースポーツ株式会社が手掛ける「food coach」です。スポーツ栄養士の食事指導が受けられ、アスリートレベルに応じた食事メニューを提案してくれます。レスリングの世界的プレイヤーを数多く輩出した至学館大学との開発です。
食べたものを一覧から選び、栄養価の計算が簡単にできます。食トレ結果や将来的な予測から、3段階のレベルに合わせた的確なアドバイスを定期的に通知してくれます。栄養素の過不足をグラフや点数でわかりやすく表示します。食事・サプリに加え、身体状況、競技種目、ポジションなどのデータをAIが総合的に判断可能です。
自分の泳ぎを確認できるスマートスイミングシステム(コナミスポーツ/ソニー)
コナミスポーツ株式会社が活用するAIシステム「スマートスイミング」は、レッスン中の生徒が泳いだ直後に自分の映像を確認できます。
独自開発のAIアルゴリズムにより対象人物を自動追従して、複数のカメラから最適なアングルを組み合わせた動画を生徒ごとにAIが自動編集します。
コナミスポーツでは、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が展開しているスマートスイミングレッスンシステムを活用しています。コナミスポーツクラブのインストラクターによる指導技術との相乗効果で、楽しく学び続けることをサポートできます。
動画はレッスンに活用したり、進級テストの映像は保護者も見たりするのも可能で、対象レーン以外にはモザイクがかかりプライバシーにも配慮しているということです。
AIによる動画解析について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参考ください。
バレーボールでリアルタイム分析による戦況把握(ブレインパッド)
株式会社ブレインパッドでは、AIの機械学習を活用してバレーボールの試合でのリアルタイム分析環境を構築しました。スポーツの戦況を示すデータから、戦況の予測を可能とします。
選手・監督に大きなプレッシャーとストレスがかかる試合中であってもデータドリブンな傾向をつかめるので、監督やコーチの知見と組み合わせることにより総合的な判断が可能です。人間では扱いきれない情報量を処理できることで戦術の高度化が期待できます。
AIによる画像解析でカーリングを強化(北海道北見市)
カーリングが盛んな北海道北見市では、人気のカーリングでスポーツテックが活用されています。画像解析を活用した姿勢推定で、選手の姿勢や動きを分析してフォームの研究を重ねています。北見市では、オリンピックに出場しメダルを獲得したロコ・ソラーレが本拠地を置いています。
北見市が建設した先端拠点の「アルゴグラフィックス北見カーリングホール」で、北見工業大学などが10種類の競技力向上のためのシステムを導入して、ショット成功率や試合展開などを客観的なデータで示せるようになったということです。
北見工業大学では、AIで作戦を考える「デジタルカーリング」の開発に取り組み、AI同士で対戦させ学習データを蓄積し、最善手となる選択肢を増やす手法で作戦を立てられます。また
試合観戦に新体験を提供するAI活用事例3選
スポーツを見る人のためのAI活用事例です。
- 試合情報をリアルタイム表示する新しい観戦体験(Xリーグ)
- AIカメラを活用したスポーツ映像ソリューション(NTT/SPLYZA)
- AIによる公平な審判を実現(Hawk-Eye)
それぞれの事例について説明します
試合情報をリアルタイム表示する新しい観戦体験(Xリーグ)
日本社会人のアメリカンフットボールトップリーグであるX1 SUPER(Xリーグ)で、AI技術を活用した動画クリップサービスの「CLIP-LIVE」で実証実験しました。試合時間に沿ったプレイ単位で自動クリップでき、簡単にリプレイ再生を行えます。AIによってリアルタイムで処理できるのが特長で、プレイ終了から数秒後には、観客は自分のスマホで再度見たいシーンをリプレイ再生可能です。気に入った映像をSNSに投稿することもできます。
スタジアムやテレビでのスポーツ観戦に新しい観戦体験による価値の向上で観客や視聴者により楽しんでもらえるような取り組みの事例でしょう。
AIカメラを活用したスポーツ映像ソリューション(NTT/SPLYZA)
株式会社NTTSportictが提供するスポーツ中継ソリューションの「STADIUM TUBE」は、無人撮影カメラでAIによる自動撮影や編集などの機能を備えています。アマチュアスポーツ向けの映像分析ツールを手掛ける株式会社SPLYZAの「SPLYZA Teams」と協業を開始し、アマチュアスポーツ現場の映像活用の包括的サポートを手掛けています。スマートフォンやタブレットなどのデバイスを使用し、選手のコンディションやチーム内の状況を把握できるアマチュアスポーツ向けの映像分析ツールです。
独自アルゴリズムのAIカメラ「Pixellot」は撮影・収録・編集・ライブ配信までを自動で実行可能です。AIカメラで撮影した映像を送信して、コーチングやデータ分析に役立てたいアマチュアスポーツの現場ニーズに対応して開発されました。プロのカメラマンの腕がなくても、試合を簡単に映像化できるのがメリットです。高品質の映像データを基にコーチングやデータ分析をすることが可能となりました。
AIによる公平な審判を実現(Hawk-Eye)
Hawk-Eye Innovations Ltd.はソニーグループの企業で、ボールトラッキング技術を活用したテニスのイン・アウトや、サッカーのゴールなど判定オペレーションサービスを手掛けています。
また、ビデオリプレイ技術による審判判定補助サービスも提供し、現在では、世界中で20種類のスポーツ競技に、サービスや放送映像のビジュアル効果を追加するサービスを展開しています。
スポーツマーケティングに関わるAI活用事例2選
スポーツの試合を運営する側がAIを活用している事例です。
- ダイナミックプライシングによるチケット価格決定
- AIを活用した会場周辺の混雑予測
それぞれの事例について説明します。
ダイナミックプライシングによるチケット価格決定(ダイナミックプラス)
需給に応じて入場料が変わるのが「ダイナミックプライシング(価格変動性)」です。AIによってリアルタイムの需要予測をして、価格を柔軟に変更していきます。
AIによる需要予測の使える範囲、活用の注意点についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
スポーツ観戦のチケットで導入が広がっており、サッカーのJリーグ、プロ野球、バスケットボールBリーグなどでダイナミックプラス株式会社が開発するダイナミックプライシングサービス導入が進んでいます。
需要に合わせて価格を変動させることで、収益と動員数の最大化を目指せるでしょう。不当な高額転売への抑止力となることも期待されています。
ダイナミックプライシングとは何か、メリット、デメリットをこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
AIを活用した会場周辺の混雑予測(NTT/unerry)
過去のデータから未来を予測できるAIは、人流を分析して混雑や渋滞対策にも活用されています。株式会社NTTデータと株式会社unerryは、人流情報を推計する技術を共同で開発しており、東京オリンピック・パラリンピックの「明日の混雑予報ポータル」に活用されました。
人流解析の基本的な仕組み、導入の注意点についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
明日の混雑予報ポータルは、イベント当日と前後1日の混雑予報と実績を地図上に表示し、イベントの混雑回避を目的に運用されました。NTTドコモが提供する人口統計情報とunerryが提供する位置情報データをもとに、混雑を予測します。
スポーツ分野でのAI導入デメリット・注意点
スポーツ分野にAIを取り入れる点で注意しておかなければならない点、デメリットを解説します。
- 学習データの質が低いと高精度の分析や予測ができない
- データの活用法や目的を明確にしないと意味がなくなる
- 思考のプロセスがわかりにくくブラックボックス化してしまう
それぞれの事例について説明します。
学習データの質が低いと高精度の分析や予測ができない
AIが高精度で分析や予測をするためには大量の学習データが必要です。さらに重要なことはそのデータの質です。スポーツ分野に限らずAIのデータは、質と量ともに充実していなくてはなりません。もともと競技人口が少ない競技種目であれば、フォームや戦術の参考にできる高品質の映像データの入手がネックになるかもしれません。
AIは多くのデータを学習してパターンモデルを生成します。データが使えないものばかりであると、高精度の分析や予測はできません。
どのようなデータが重要で活用できるか、不足するデータをどのように入手できるかは、データ収集の専門家に相談できるいでしょう。
データ収集に特化した専門ベンダーの選び方、おすすめ会社についてこちらの記事で特集しています。
データの活用法や目的を明確にしないと意味がなくなる
大量のデータを必要とするAIですが、何のために取得するのか、どのように活用するのかをあらかじめ明確にしておかなければなりません。たくさんのデータを取得できたけれど、一体何のために取得したのかわからないと、プレイヤー側からも協力を得にくくなってしまうかもしれません。導入の初期段階で、取得したデータをどのように活用するのかという目的を明確にしておきましょう。
思考のプロセスがわかりにくくブラックボックス化してしまう
AIの思考プロセスはわかりにくいため、導き出された結果がブラックボックス化する危険性がある点は注意しなくてはなりません。人間の理解力を超えた推奨結果が導き出されることもあります。人間の直観に反するような結論を、現場の監督やコーチ、プレイヤーがどの程度受け入れるべきかという問題が生じるでしょう。AIの判断は中立であるかという議論がされており、説明可能なAIモデルを取り入れる動きも広まっています。
スポーツ分野でのAI活用についてよくある質問まとめ
- スポーツ分野でAIを活用するメリットは何ですか?
スポーツ分野でAIを活用する主なメリットは以下の通りです。
- 動的シーンやリアルタイムデータによる新しい観戦体験の提供
- データに基づいた戦略立案と戦術の高度化
- 会場の混雑状況の予測
- プレイヤーのコンディションやメンタル、トレーニングのサポート
- 審判や採点支援による公平なジャッジの実現
- スポーツ分野でのAI活用事例にはどのようなものがありますか?
スポーツ分野でのAI活用事例には以下のようなものがあります。
- AIを用いた食事トレーニングアプリ(オンキヨースポーツ/至学館大学)
- スマートスイミングシステム(コナミスポーツ/ソニー)
- バレーボールのリアルタイム分析(ブレインパッド)
- カーリングの画像解析による強化(北海道北見市)
- 試合情報のリアルタイム表示システム(Xリーグ)
- AIカメラを活用したスポーツ映像ソリューション(NTT/SPLYZA)
- ダイナミックプライシングによるチケット価格決定(ダイナミックプラス)
- 会場周辺の混雑予測(NTT/unerry)
- スポーツ分野でAIを導入する際の注意点は何ですか?
スポーツ分野でAIを導入する際の主な注意点は以下の通りです。
- 学習データの質が低いと高精度の分析や予測ができない
- データの活用法や目的を明確にしないと意味がなくなる
- AIの思考プロセスがわかりにくくブラックボックス化してしまう可能性がある
まとめ:スポーツ分野のAI導入のご相談はAI Marketへ
スポーツでもさまざまなことにAIが採用されています。これからニーズはますます高まるでしょう。またスポーツAIの技術を活用し、他のビジネスでも応用でき自社のサービスにも取り入れられるかもしれません。
しかし、AIを導入するためにはどのような業者やパートナーと組むのがいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。AIの専門用語、システム要件はわからないし、見積もりの内容チェック方法もわからない方がほとんどではないかと思います。
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AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
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