【10製品比較】AI-OCRを徹底理解!AI-OCR活用のメリットとは?
最終更新日:2024年11月12日
紙に印刷された文字を機械で読み取り、デジタルのテキストデータに変換するOptical Character Recognition(光学文字認識、以下OCR)は、ビジネスシーンでも日常生活でもなくてはならないIT技術です。
例えば、画像データであるPDFに記載された文字が、デジタルデータの文字として認識できるのはOCRのお陰です。
OCRは画期的な技術ですが、時代の流れとともに、誤認率の高さや手書きに完全には対応できないことなどが目立つようになりました。
そこでOCRに AI(人工知能)を搭載した「AI-OCR」が開発され、すでに実用化が進んでいます。AI-OCRを使えば、企業のデジタルトランスフォーメーション化(DX化)は加速度的に進んでいくでしょう。
この記事では、OCRの歴史を振り返ったうえで、AI-OCRがどれほど便利なツールになったのか、またメリットについて解説します。
さらに、提供されているAI-OCRから10社を厳選し、「識字率、オンプレorクラウド、RPA対応、価格」などを比較します。
目次
OCRの歴史と便利さと限界
まずは、AIが活用される前のOCRを紹介します。
OCRはどのように生まれ、どのような利便性をユーザーに提供してきたのでしょうか。この章を読めば、OCRがいかに優れた技術であるかがわかるはずです。
そしてAI化の引き金になった、非AIのOCR限界とはどのような状態を指すのでしょうか。
OCRの歴史
OCRは、1900年代初頭に、視覚障害者の人たちが文字を読むための技術として開発されました。
1929年にはドイツで、紙に書かれた数字とアルファベットを機械が識別する技術の特許が出願されました。当時はまだ、デジタルデータに変換することはできませんでした。
それからしばらくはOCRの進化は遅々としていました。1953年に開発されたOCR「Gismo」は、英語のアルファベット26文字のうち23字しか読み取れませんでしたが、それでも開発者は特許を取得しています。
日本では、郵政省の郵便業務自動化の流れの中で、1968年に東芝が開発した「TR-3」「TR-4」まで遡ります。
その後、日立、三菱電機、富士通、NECなど、名だたる企業がいくつものOCRを開発しています。
開発スピードが加速したのは1980年代で、このころからコンピュータ(ハードウェア)の価格が下がりOCR(ソフト)の普及が進みました。
ただし、特に手書きの文字認識精度や、FAXを経由した文字認識精度などに課題があり、一般企業に受け入れられるというよりも、データ入力業務などを専門に行なっているアウトソーシング企業などが活用することが一般的な、あくまで業務用システムの位置付けでした。
OCRが優れているのは業務の自動化の幅を広げたから
人類がコンピュータを愛用するのは、業務を自動化できるからです。コンピュータに仕事をさせることができれば、人はその分、楽をすることができます。
コンピュータは便利な道具ですが、不便なところもあります。それはアナログデータを利用できないことです。人が紙に書いた手書きの文字はアナログデータの典型ですが、その状態ではコンピュータは理解できません。
そして世の中のほとんどの情報はアナログデータの形で存在しています。
つまり、コンピュータによる業務の自動化という果実をより確実に獲得するには、世の中のアナログデータをデジタル化する作業が必要になります。
アナログデータのデジタル化の作業は、コンピュータができない以上、人がやらなければなりませんが、実際に人がその作業をしていたのでは効率的ではありません。
そこでOCRが開発されました。OCRがあれば、人が手書きの帳票を目視しながら、手でキーボードを打って、アナログデータをコンピュータに入力しないで済みます。
OCRがある場合とない場合をイメージ図にしてみました。黄色がアナログ領域で、青が自動化領域です。
<OCRなし>
世の中のアナログデータ
手作業でデジタル化する
コンピュータで業務を自動化する
<OCRあり>
世の中のアナログデータ
OCRでデジタル化する
コンピュータで業務を自動化する
OCRの登場で、自動化の領域が格段に増えたことがわかります。
自動化の領域が増えたということは、結果として、人の手間が減ったことを意味します。
なぜ「OCRは限界」といわれていたのか
最新のOCRならAIを搭載していなくても、「ある程度までなら」手書き文字を読み取ります。
しかし、文字の崩れ具合がはなはだしいと、非AI・OCRでは適切に読み取ることが困難です。
理由として、非AI・OCRは、文字のパターンをいくつか認識しているだけだからです。そのパターンから外れた手書き文字が現れると、それが文字であると認識できません。
OCRに代わるAI-OCRとは
AI-OCRは、従来のOCR(非AI・OCR)の欠点を解消する形で開発されました。
ディープラーニング(深層学習)技術が発達したことにより、AI-OCRの文字認識精度が格段に上がり、また、同時に日本での活用が大きく広がった「RPA」と連携することで、業務自動化範囲を大きく拡大することができるということで、2018年頃より急激に一般企業にもAI-OCRが浸透するようになってきました。
こちらで文字認識を含む画像解析の種類と導入方法を詳しく説明しています。
では、AI-OCRの特徴をみていきましょう。
従来型OCRの欠点をAIが解消した
AI-OCRは、従来型OCRの前に立ちはだかっていた「難解手書き文字の壁」を超えることができました。
人は、難解手書き文字に出会っても、その文字の形がどの文字を表現しているのかを理解すれば、次から理解できるようになります。社長のひどい癖字を、秘書だけ読み解くことができる、といったことはよく聞く話です。
AI-OCRは、優秀な秘書と同じように難解手書き文字の癖を覚えて、読み解いていきます。
またAI-OCRは、文字を単語で理解することもできます。例えば「横浜」を「横シ兵」としか読めないほど、癖のある手書きの文字があったとします。
人は「横」と「兵」があれば、その間のシのような文字はさんずいであると理解して「横浜」と読みます。しかし非AI・OCRは、「横シ兵」とデータ化してしまう可能性があります。
AI-OCRの場合は、学習した教師データを元にして、「横シ兵」を「横浜」と認識することができます。
これはAI-OCRが、人が「これまで見てきた文字から推測して、横と兵があれば、その間のシのような文字はさんずいだろう」と推測できるのと同じように、過去の教師データを元に推測するからです。
ディープラーニングの技術が登場して以降、このように手書き文字をAIが何万通りと学習することができるようになり、結果として飛躍的に精度が向上しています。
また、同時にノイズ除去の精度が上がり、文字情報ではない汚れなどを検出したり、前後で認識できた文字と組み合わせて適切な文字を推測するといったことも識字率の向上に繋がっています。
このようにしてAI-OCRは識字率を格段に向上させることに成功しました。
ソフトウェア・ロボット「RPA」との連係
AI-OCRの利便性として重要な点は他にもあります。
それはAI-OCRとRobotic Process Automation(RPA)を連係させることです。RPAは、パソコン作業をするソフトウェア・ロボットのことで、業務を自動化するツールの1つです。
RPAもパソコン同様、デジタルデータしか理解しないので、人がRPAに作業をさせるには、RPAにデジタルデータを提供しなければなりません。
そこでAI-OCRとRPAを連係させれば、アナログデータのデジタル化と、デジタルデータを使った事務作業の自動化を一貫して行なえます。
AI-OCRはどのような帳票でも対応できる?
一般的にOCRを活用するためには、事前設計と呼ばれる帳票定義が必要です。帳票定義とは、「紙のこの部分にある文字をOCRで読み取る」と設定することです。
帳票は、大きく分けて次の2種類があります。
A)定形帳票と呼ばれる、同一目的且つ同一レイアウトで作成される帳票
例)アンケート、クレジットカード申込書 等
このような帳票では、帳票定義はする必要がありますが、AIが手書き文字を認識するAI-OCRサービスが提供されています。
B)非定形帳票と呼ばれる、同一目的で複数のレイアウトが発生する帳票
例)請求書(取引先の帳票のため、レイアウトが不明)、レシート 等
これらの帳票は、一般的に活字(手書きではなく、印刷されたフォント文字)で作成されていることが多く、帳票定義をAIが自動で行ってくれるAI-OCRサービスが提供されています。
非定形帳票に対応したAI-OCRでは、文字認識を行う座標位置は事前の帳票定義を行わず、一度帳票全体に対して文字認識を行います。
そして「住所」と書かれている文字を認識した場合に、その右横や下の文字列を住所情報として文字データ化を行うことが可能な技術です。
このように、非定形帳票に対応した機能を提供するAI-OCRサービスでは、特定のキー(「住所」という文字列など)を発見することで、必要な文字列(この場合は「東京都・・・」などの住所情報)を文字認識することができるため、レイアウトは指定できないものの、記載されている項目が同じ帳票において非常に有効なサービスです。
AI-OCRには、手書き文字の認識を得意とするサービスと、帳票定義をAIが自動で行ってくれるサービスがあることは、AI-OCRを理解する上で押さえておきたいポイントです。
文字認識結果と人間の共同作業が重要
AI-OCRの識字率が格段に上がったことは事実ですが、データ自体の信頼性の観点からも、そのままデータとして活用する、というところまでは至っていないことが現状です。
AI-OCRサービスでは、文字認識精度をスコア情報(AIの認識結果の自信度)としてアウトプットするサービスもありますが、基本的には、AI-OCRが読み取った文字認識結果を人間が最終的にチェックする形で精度の確認を行うことが一般的です。
ただし、中にはAI-OCR結果を出力する前に、AI-OCRサービス提供会社が用意した人間によって並行入力が行われ、その結果が一致した結果を出力する、といったサービスもあります。
データ入力業界では一般的な品質向上を目的として取られている手法(コンペア)ですが、これによって、アウトプット時に認識精度をより高めることが可能です。
AI-OCRを導入するメリット(デメリットはほとんどない)
企業がAI-OCRを新たに導入したり、非AI・OCRを使っている企業がAI-OCRに切り替えたりすることには、メリットしかないといっても過言ではありません。
唯一のデメリットはコストがかかることくらいです。しかしそのデメリットも、AI-OCR導入によって人件費を削減できますし、生産性が上がれば売上高や利益を押し上げるので、すぐに解消できるでしょう。
AI-OCRを導入するメリットを紹介します。
業務効率が上がる
まず第一に、業務効率の向上が挙げられます。
AI-OCRを活用する企業は、多くのケースにおいて業務効率化を目的として据えています。
これまでは、取得した帳票を、自社の社員やアルバイトが何十分、何時間とかけてシステムに転記入力していた作業を、AI OCRを活用することで、文字の入力作業が大幅に削減され、結果として1枚の処理時間を大きく削減することが可能になります。
人件費の削減
一人ひとりの業務が効率化されることで、結果として入力作業に充てていた人件費を削減することもできるでしょう。
月間の帳票枚数が何千、何万という企業も日本には多くあり、人件費がどうしても負担となってしまっていた企業にとっては、AI-OCRを活用することで自社の事業構造の改善にも繋げることができます。
RPA効果が一段と高まる
RPAを導入したものの、作業効率がそれほど上がっていないと感じている企業もあります。それはやはり、アナログデータのデジタル化に手間がかかるからです。
RPAは便利なツールですが、事務作業を全自動化できるほど進化しているわけではありません。
しかし先述の通り、AI-OCRを導入すれことで、全自動化に近づけることができ、RPAはその実力を発揮することができます。
BCP対策
AI-OCRの活用においては、業務効率化や人件費の削減が多く目的として挙げられますが、BCP対策も重要な目的の一つです。
BCP対策とは、事業継続計画(Business Continuity Plan)と呼ばれ、テロや災害などが発生した際でも、重要な業務が継続できる状態を構築する対策や計画を指します。
AI-OCRは、社内の人間が文字入力作業を行う代わりに、コンピュータが作業を行ってくれるため、地震などの災害が発生した際でも、AI-OCRサービスにアクセスし、APIで自社システムと連携することができれば、出社しなくても業務を遂行することができるようになります。
ただし、そのためには帳票を紙原本だけでなく、PDFで取得したり、自社システムとAPI連携を行うなど、前後工程での業務改革も必要となります。
データの無形資産構築
AI-OCRを活用することで、これまで労力が多くかかるということで行っていなかった帳票の入力業務を行い、そのデータを自社の無形資産として有効活用することもできます。
実際に活用することができるかわからないデータに対して、ギリギリのリソースの人員の時間を削ることができない、ということで二の足を踏まざるを得ない企業も、AI OCRを活用して、労力をそこまでかけずにデータ化することで、ビジネスに活用できるデータの構築ができるかもしれません。
ペーパーレス化が進む
AI-OCRを導入するとペーパーレス化も進みます。
3,000枚のアンケート回答用紙の記載内容を、3人で分担してパソコンに入力するという作業があったとします。
このとき、それぞれの担当者に1,000枚ずつ渡すことになりますが、担当者が紛失してしまったときに備えて、コピーを取ることがあります。
AI-OCRを導入すれば、手書きのアンケート回答用紙も正確に読み取ることができるので、原紙をスキャンして画像データにするだけで済みます。
コピーを取る必要はありませんし、そもそも3人の入力担当者も要りません。
提供されているAI-OCRの選び方
AI-OCRは、ITソリューション企業やシステム会社などが提供しています。すでに1万社以上に使われているAI-OCRもあります。
ただ、経営者や企業のITインフラ責任者がAI-OCRを選ぶとき、実績だけで選ばないほうがよいでしょう。なぜなら、他社にマッチしたAI-OCRが自社にマッチするとは限らないからです。AI-OCRは道具なので、利用する人が「使いやすい」と感じることができるものを購入しましょう。
AI-OCR選びでは、クラウド型にするのかオンプレミス型にするのか決めることもポイントです。トレンドはクラウド型ですが、セキュリティ面でオンプレミス型のほうが優位であるという意見は根強いようです。
また利用料も調べる必要があります。アナログデータの入力作業を外注している会社は、AI-OCRの見積もりを取って、外注費と比べてみてください。
そしてすでにRPAを導入している企業は、自社のRPAとAI-OCRの相性を調べてください。まだRPAを導入していない場合は、AI-OCRとRPAの両方を活用する観点で、サービスを比較してみましょう。
認識率の高さ(誤認率の低さ)も重要なチェックポイントです。AI-OCRサービス企業によっては、認識率を公表していません。問い合わせをしたり、無料体験を試したりするときに認識率を尋ねてみてください。
10社のAI-OCRを「認識率、対応文字、RPA対応、価格など」で比較
10社が提供している10種類のAI-OCRを、識字率、オンプレミスorクラウド、RPA対応などの観点から比較してみます。
10製品の比較の概要は以下のとおりです。
サービス名 | 公開識字率 | 手書き文字対応 | オンプレ/クラウド | 特徴 | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
DX Suite | 非公開 | 可能 | 両対応 | 「シェアNo.1」をうたい契約件数12,900件 | 月3万円〜 |
LAQOOT | 理論上100% | 可能 | クラウド | 人との協働で理論上100% | 非公開 |
SmartRead(旧:Tegaki) | 99.22% | 可能 | 両方 | 手書きの読取を得意とする | 非公開 |
FlexiCapture | 非公開 | 可能 | 両方 | 世界的なIT企業が運営 | 非公開 |
AI よみと~る | 96.71% | 可能 | クラウド | 大規模帳票処理が得意 | 月33,000円〜 |
AIスキャンロボ | 非公開 | 主に活字 | クラウド | テンプレートの自動判別が可能 | 月3万円〜 |
スマートOCR | 非公開 | 可能 | 両対応 | AIによる歪み補正に対応 | 非公開 |
Deep Percept for AI-OCR | 非公開 | 可能 | クラウド | 非定型帳票にも対応 | 非公開 |
DynaEye 10 | 非公開 | 可能 | オンプレ | 原則非AIのOCRだが、オプションにAI版あり | 非公開 |
JSOL SmartPRAS | – | – | – | 10社以上のAI-OCRを比較し、最適な製品を選定 | – |
それでは1つずつ詳細を確認していきます。
DX Suite(AI inside株式会社)
AI inside 株式会社(本社・東京都渋谷区)の「DX Suite」は、KDDI、アフラック、みずほ、JALなど超大手企業が採用しています。同社はDX Suiteの契約件数が12,900件に達し「AI-OCR市場シェアNo.1」であるとアナウンスしています。
手書き対応には自信を持っていて、クライアント企業の帳簿や帳票の文字をAIで学習させることで、ズレた文字でも認識したり、罫線の内側の文字と外側の文字を認識したり、文字以外の情報を除去したりできます。FAXや写真に写った文字も読み取ります。
GPU(画像処理装置)を最適化することで分散処理を可能にして、高速処理も実現しました。
DX Suiteは、読み取り以外にもAIを使っていて、読み取った文字データを書類の種類ごとに仕分けていきます。事務作業は文字を読み取ったあとも続くので、業務を総合的に効率化できるのは大きなメリットになるでしょう。
LAQOOT(株式会社ユニメディア)
株式会社ユニメディア(本社・東京都千代田区)の「LAQOOT」は、紙の帳票の読み取りに特化したAI-OCRです。
紙であれば、申込書、注文書、アンケート用紙、作業依頼書、勤務表など、帳票の種類は問いません。1社あたり、1日2万枚以上の処理能力を誇ります。
クラウド型で提供しており、クライアント企業は24時間365日いつでも文字をアップしてデータ化することができます。
識字精度は、AI-OCRだけでなく、「人の手」をハイブリッドで活用(分散処理)することで、データ化した文字のチェックを自動で行います。一般的にはAI-OCRの結果を、利用企業が確認する必要がありますが、あえてAIにまかせっきりにしないことで、利用企業の作業工数を最大削減していることが、LAQOOTの強みになっています。
また、APIを通してデータの送受信も可能です。
SmartRead(株式会社Cogent Labs) ※旧:Tegaki
株式会社 Cogent Labs(本社・東京都港区)の「SmartRead」は、定型・非定型文書などが読み取り可能なAI-OCRからさらに発展したIDP(Intelligent Document Processing)サービスです。Tegakiで培ってきた独自のエンジンを継承し、手書き・活字含めて高い読み取り精度を有しています。
SmartReadの前身のTegakiでは、ファンケル、仙台銀行、トッパン・フォームズなどで導入されており、各種申込書類や注文書、図面をはじめ、様々な書類の読み取りに対応しています。
チェックボックスのなかのチェックの有無や、丸囲い文字などの認識に加え、英語の読み込みも可能です。また、文書の仕分けも可能です。
FlexiCapture(ABBYYジャパン株式会社)
「FlexiCapture」を提供するABBYYジャパン株式会社は、世界的な総合IT企業、ABBYYの日本法人です。ABBYY にとってAI-OCRは、総合的なITサービスの1つという位置づけになるでしょう。
FlexiCaptureは単純な固定帳票から、複雑な書き込みがされている非定型帳票まで対応します。例えば、契約書やEメールといった、1枚1枚フォームが異なる文章でも、文字データに起こしていきます。
さらにRPAとの連係を得意としていて「あらゆる規模の作業に対応できる」としています。
クラウドでもオンプレミスでもAI-OCRを提供しています。
AI よみと~る(NTT東日本)
東日本電信電話株式会社(NTT東日本、本社・東京都新宿区)の「AI よみと~る」は、大量の書類をデータ化することで、クライアント企業の帳票処理業務の大幅削減を目指します。認識率の平均値は96.71%と公表しています。
AI よみと~るのユーザーはまず、帳票や書類など、書かれている文字をデータ化したい対象物の画像データをアップロードします。
AIよみと~るのAIがその画像データから文字だけを抽出して、文字データにします。文字データをファイルにして、ユーザーに納品します。
文字データをRPAで、ユーザーの自社システムに入力することもできます。
千葉市はAIよみと~るとRPAを導入して、住民税の申請処理の業務時間を年600時間削減しました。住民税の手書きの申請書類の認識率は96.25%でしたので、平均値(96.71%)に近い成績となりました。
AIよみと~るはクラウドで提供しています。
AIスキャンロボ(ネットスマイル株式会社)
ネットスマイル株式会社(本社・東京都文京区)の「AIスキャンロボ」は、三菱食品、JCB、ネスレ日本、東京大学、三菱総合研究所などが導入しています。
これらのユーザー企業は「スキャンしてフォルダに入れるだけで簡単」「紙業務を減らして半自動化を目指す」「ほしい機能がリーズナブルな価格だった」と、AIスキャンロボを高く評価しています。
AI-OCRを導入しても、ユーザー企業がテンプレート設定しなければならないことがあり、それで作業効率がなかなか上がらないことがあります。
そこでAIスキャンロボは、ユーザー企業が自社でテンプレート設定しなくても、すぐに読取作業に着手できるようにしました。
手書き文字は、最大5度まで傾いていても読み取ることができます。
RPA対応で、外国語は、英語、中国語、韓国語、タイ語に対応しています。
料金は非公表ですが、トライアル利用は月3万円からとなっています。
スマートOCR(株式会社インフォディオ)
株式会社インフォディオ(本社・東京都文京区)の「スマートOCR」は、1)事前定義や位置定義が不要、2)文字以外のノイズ情報を除去、3)文字データ化したあとのチェック作業がしやすい、4)マスター情報と結合させることで、会社コードから社名を表示させることができる、5)RPA対応、6)クラウド対応、という特徴があります。
スマートOCRの「得意技」は、白文字、網掛け文字、透かし文字、離れ文字もしっかり読み取ることです。
またAIは文字列単位認識を実行するので、処理工程が少なくなり、その分作業時間を短くすることができます。
文字列単位認識とは、例えば手書きの「人工知能」という文字を読み取るとき「人工知能」として読み取る技術です。「人」と「工」と「知」と「能」わけて読み取ると、「工」をカタカナの「エ」と誤認することがありますが、そのような間違いを防止できます。
JSOL SmartPRAS(株式会社JSOL)
株式会社JSOL(本社・東京都中央区)は、ユーザー企業に業務の自動化ソリューションを提供する会社です。
その中で、AI-OCRソリューションを提供しています。同社にとってAI-OCRは、業務の自動化という大きな目標を達成するためのツールという位置づけで、RPAと連動させることも得意にしています。
なおJSOLが自社でAI-OCRを開発しているわけではありません。
JSOLは業務自動化サービスをパッケージで提供しており、そのパッケージのなかに他社製のAI-OCRを組み込んでいます。JSOLは「10社以上のAI-OCR製品を比較し、ユーザー企業に最も適した製品を選定する」としています。
クラウド版を選ぶかオンプレミス版を選ぶかは、ユーザー企業が決めることができます。
料金は非公開です。
JSOLは、企業が抱える次のような課題を解消することをミッションにしています。
・パンチ入力作業に人手と時間がかかる
・大量に発生する紙文書の保管場所に困る
・過去帳票のデータが活用できていない
・業務をさらに効率化したい
DynaEye 10(株式会社PFU)
Scansnap等、非常に人気の高いスキャナを提供する株式会社PFU(本社・石川県かほく市)の「DynaEye 10」は、原則非AIのOCRですが、オプションでAI機能を追加できます。
DynaEye 10の売りは豊富な実績です。さまざまな機関がさまざまな業務でDynaEye 10を活用しています。
<DynaEye 10の納入実績と利用実績>
●自治体:介護保険事業、認定審査、意見書の入力、税と公共料金の納付書
●流通業、製造業:ギフト申込書、注文書、輸送伝票、出荷伝票
●金融:営業店のシステム、保険契約申込書、住所変更届
●医療・福祉:問診票、初心申込書、検査依頼書、訪問介護実施記録、介護アセスメント票
●出版業:資料請求はがき
DynaEye 10は定型帳票と準定型帳票に対応しています。
DynaEye 10はオンプレミスで、ユーザー企業は社内のパソコンにソフトをインストールして利用します。RPA対応可能です。
AI版のDynaEye 10は、日本語の手書き書類を文字データにできます。
例えば、低機能のOCRだと、先述の通り、手書きの「浜」を読み取るとき、その字が大きく崩れていると「さんずい」をカタカナの「シ」と誤読することがありますが、AI版のDynaEye 10はいわゆる「汚い字」にも対応します。
Deep Percept for AI-OCR(Deep Percept株式会社)
「Deep Percept for AI-OCR」を開発したDeep Percept株式会社(本社・東京都港区)は、金融業界のIT化コンサルティングと金融AI開発を得意とする会社です。
同社は、企業がDeep Percept for AI-OCRを導入するメリットとして次の項目を挙げています。
●業務量の大幅削減
システムへの入力作業が不要になる
●継続することで読取精度が向上する
ユーザー企業がDeep Percept for AI-OCR を使えば使うほど、AIが帳票を学習するので正読率が向上する
●デジタルデータの活用の幅が広がる
紙文書をデジタル化することで、文書検索やデータ活用、PRAとの連動が可能になる
AI-OCRについてよくある質問まとめ
- AI-OCRと従来のOCRの主な違いは何ですか?
AI-OCRと従来のOCRの主な違いは以下の通りです。
- 識字率の向上: AI-OCRは手書き文字や崩れた文字もより正確に認識できる
- 非定形帳票への対応: AI-OCRは事前の帳票定義なしでも様々な帳票を処理可能
- 学習能力: AI-OCRは使用するほど認識精度が向上する
- ノイズ除去能力: AI-OCRは文字以外の情報をより効果的に除去できる
- RPAとの連携: AI-OCRはRPAとの連携がより容易で効果的
- AI-OCRを導入することで得られる主なメリットは何ですか?
AI-OCRを導入することで得られる主なメリットは以下の通りです。
- 業務効率の大幅な向上
- 人件費の削減
- RPAとの連携による自動化の促進
- BCP(事業継続計画)対策の強化
- データの無形資産構築
- ペーパーレス化の推進
- デジタルトランスフォーメーション(DX)の促進
- AI-OCRを選ぶ際に考慮すべき主な要素は何ですか?
AI-OCRを選ぶ際に考慮すべき主な要素は以下の通りです。
- 識字率(認識精度)
- 手書き文字への対応能力
- クラウド型かオンプレミス型か
- RPAとの連携可能性
- 非定形帳票への対応能力
- 処理速度と処理可能な帳票量
- 価格と導入コスト
- セキュリティ対策
- 導入実績や事例
まとめ~DX化はここから始めることができる
政府が企業に対し、盛んにDX化を推奨していますが、「どこから取り組んだらよいのか」と戸惑っている経営者は少なくないと思います。
自社のOCRをAI-OCRにアップデートすることは、DX化の重要な一歩になりえます。
OCRは優れた技術「でした」。長年愛用され続けた結果、ユーザーはその利便性に慣れ、むしろOCRの欠点を気にするようになりました。
そのニーズをIT企業やシステム開発会社がとらえて、AI-OCRが誕生しました。
DX化をコストととらえる企業は少なくありません。しかし、DX化は、人類の英知を結集したITの果実を自社のものにする絶好の機会と考えたほうがよいでしょう。
AI-OCRを導入することで、ぜひその果実を自社のものにしてみてください。
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