Amazon Bedrockとは?料金・メリット・利用できるモデルや活用事例を解説!
最終更新日:2024年11月12日
Amazon Bedrockという名前は聞いたことがあっても、「Amazon Bedrockで何ができる?」「どんなモデルが使える?」など、できることや自社への活用方法をいまいち把握できていない方は多いのではないでしょうか。
Amazon Bedrockを使えば、
生成AIとは?何ができる?こちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
本記事では、
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目次
Amazon Bedrockとは?
Amazon Bedrockとは、生成AIの基盤モデルをAPIを通じて利用できるようにする完全マネージド型サービスです。2023年4月に公開され、同年9月からAWS(Amazon Web Services)内で日本国内でも一般利用できます。
Amazon Bedrockは、Anthropic、Meta、Stability AI、そしてAmazonなどの大手AI企業が提供するさまざまな高性能な生成AIモデルに簡単にアクセスできます。大量のデータで事前に学習された汎用的な基盤モデル(FM)を単一のAPIで選択できるので、さまざまなタスクに適応できます。
自社のユースケースに最適なモデルを簡単に評価したり、ファインチューニングや検索拡張生成(RAG)などの手法を使用してデータに合わせてカスタマイズしたり、会社システムとデータソースと連携してタスクを実行するエージェントを構築したりできます。
多くの企業ですでに使い慣れているAWSサービスを使用して、生成AI機能をアプリケーションに安全に統合してデプロイできます。
Microsoft Azureの「Azure OpenAI」やGoogle Cloudの「Vertex AI」などが競合ですが、他社の生成AIモデルを含めて多様な選択肢を提供しているのが特徴です。
関連記事:「AWSとAzureを徹底比較!強みや弱み、適したケースなどを徹底解説」
Amazon Bedrockの料金体系
Amazon Bedrockは有料のサービスであり、モデルの使用とカスタマイズに料金がかかります。支払い形態は2つあり、モデルの使用回数に応じて支払う「オンデマンド」と、契約期間に応じて支払う「プロビジョンドスループット」があります。
Amazon BedrockはAWS公式HP「Amazon Bedrock の料金」で公開されています。以下に、主な基盤モデルの料金を紹介します。(為替レートは2023年2月5日時点)
オンデマンド料金
標準品質の画像 1枚当たりの価格 | プレミアム品質画像 1枚当たりの価格 | |
Titan 画像ジェネレーター (512×512) | 1.19 円 (0.008USD) | 1.48 円 (0.01USD) |
タイタン画像ジェネレーター (カスタムモデル)(512×512) | 2.67 円 (0.018USD) | 2.97 円 (0.02USD) |
モデルのカスタマイズ料金
Amazon Titan | 各カスタムモデルの 1か月当たりの保存料金 | モデルユニットの 1時間当たりの利用料金 |
Titan Text Lite | 289.57 円 (1.95USD) | 1,054.46 円 (7.10USD) |
Titan Text Express | 289.57 円 (1.95USD) | 3,044.56 円 (20.50USD) |
プロビジョンドスループットの料金
Amazon Titan モデル | 1モデルあたりの時間料金 (1か月契約の場合) | 1モデルあたりの時間料金 (6か月契約の場合) |
Titan Text Lite | 950.50 円 (6.40USD) | 757.43 円 (5.10USD) |
Titan Text Express | 2,732.86 円 (18.40USD) | 2,198.17 円 (14.80USD) |
Titan Embeddings | 950.50 円 (6.40USD) | 757.43 円 (5.10USD) |
Titan Image Generator | 2,406.10 円 (16.20USD) | 1,930.82 円 13.00USD |
Titan マルチモーダル埋め込み | 1,255.04 円 (8.45USD) | 1,002.54 円 (6.75USD) |
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Amazon Bedrockの6つのメリット
Amazon Bedrockを利用するメリットは、以下です。
- 幅広いシステムの構築が可能
- 様々なモデルを単一の環境下で利用できる
- エージェントの構築まで可能
- モデルを簡単にカスタマイズできる
- 保守・管理業務を大幅に削減できる
- AWSサービスとの統合が容易
それぞれについて解説します。
幅広いシステムの構築が可能
Amazon Bedrockでは、以下の機能を有したモデルが利用できます。
- テキスト生成
- バーチャルアシスタント
- テキストおよび画像検索
- テキスト要約
- 画像生成
これらの機能を組み合わせることで、目的に応じたシステム構築が容易になるでしょう。様々なモデルを簡単に利用して評価できるため、少ない労力で多くの施策が可能です。
さらに、AWSにローカル環境を構築しておけば、本番環境に影響を与えることなく開発を進められます。このように、Amazon Bedrockは幅広いシステムを安全に開発できるような作りになっています。
様々なモデルを単一の環境下で利用できる
Amazon Bedrockでは、様々なモデルを同一のプラットフォームで利用できます。Amazon BedrockではAmazonだけでなく、AI21 Labs、Meta、Stability AIなどが提供するモデルを利用できます。
これらのモデルは、それぞれに特徴や強みを持っており、ユースケースに応じて最適なものを選択できます。また、Amazon Bedrockは、単一の環境下で複数のモデルを利用できるため、モデル間の比較や組み合わせが容易になります。
用途に応じたモデルをそれぞれ構築する手間がかからないため、システム開発をスムーズに進められます。
エージェントの構築まで可能
Amazon Bedrockでは、生成AIモデルを使用して、会社内システムやデータソースと連携するエージェントを構築できます。エージェントとは、ユーザーのリクエストや状況に応じて、自動的にタスクを実行するAIのことです。
例えば、チャットボットやバーチャルアシスタントなどがエージェントの一種です。Amazon Bedrockを利用することで、エージェントの開発や運用が簡単になります。
モデルを簡単にカスタマイズできる
Amazon Bedrockでは、モデルを用途に応じて簡単にカスタマイズできます。2023年12月にはファインチューニング可能なモデルが増えたことに加え、「Knowledge Bases for Amazon Bedrock」によりRAGが可能になりました。
RAG により、外部情報を取得してLLM(大規模言語モデル)によって生成された応答を拡張することができます。これにより、自社に合わせたシステムが容易に構築できます。まだ対応していないモデルやリージョンもありますが、今後のアップデートで更新されていくでしょう。
サーバーレスで保守・管理業務を大幅に削減
Amazon Bedrockでシステムを構築するということは、AWSで開発作業を行うことになります。AWSはサーバーレスであるため、システムの保守や運用が不要です。よって、管理にかかる手間を大幅に削減することができます。
管理業務に充てていた労力をシステム構築業務に充てることにより、効率的なシステム開発が可能になります。また、保守や管理はAWSの水準になるため、企業によってはセキュリティ性能を向上できるかもしれません。
AWSサービスとの統合が容易
Amazon BedrockはAWSの一部であるため、他のAWSサービスとの統合が容易です。すでに他のAWSサービスを利用している場合でも、スムーズに連携できるでしょう。
AWSには、200種類以上のサービスがあるため、目的に応じて商品を組み合わせることで、多様なシステムを構築できます。
例えば、Amazon S3やAmazon DynamoDBなどのデータソースを使用して、AIモデルにデータを供給したり、モデルの出力を保存したりできます。また、Amazon API GatewayやAWS Lambdaなどのサービスを使用して、生成AI機能をアプリケーションに安全に統合してデプロイできます。
さらに、Amazon SageMakerやAmazon ComprehendなどのAIサービスとも連携できます。これにより、生成AIアプリケーションの開発や運用がスムーズになります。例えば、Amazon Bedrockで選択した基盤モデルをAmazon SageMakerでカスタマイズすることができます。Amazon SageMakerでは、自分のデータやコードを使用して、基盤モデルのパラメータを再学習したり、新しいレイヤーを追加したり、モデルのアーキテクチャを変更したりできます。
ほかの機械学習サービスや生成AIサービスと統合することで、想定よりも優れたシステムを構築できるかもしれません。
Amazon Bedrockで利用できるモデル
Amazon Bedrockで利用できるモデルは、以下の企業から提供されています。
- Amazon
- AI21 Labs
- Anthropic
- Cohere
- Meta
- Stability.ai
それぞれの企業が提供するモデルと用途を解説します。
Amazon
AWSの開発元であるAmazonは、以下の2つのモデルを提供しています。
- Titan Text G1 – Express
- Titan Embeddings G1 – Text
Titan TextはLLM(大規模言語モデル)の一つで、テキストの生成や要約などのタスクを実行できます。Titan Embeddingsは画像検索などにも活用できるモデルであり、テキストと画像を組み合わせたタスクが実行可能です。
AI21 Labs
イスラエルの開発会社であるAI21 Labsは、以下の2つのモデルを提供しています。
- Jurassic-2 Ultra
- Jurassic-2 Mid
Jurassic-2はLLMの一つで、テキストデータを処理します。Jurassic-2 MidはAI21 Labsの中型モデルであり、Jurassic-2 UltraはAI同社の上位モデルです。
どちらのモデルでも、質問への回答や文章の要約、情報抽出が可能です。Jurassic-2 Ultraでは、複雑な推論や論理的なタスクにも対応しています。
Anthropic
Anthropicは、OpenAIに所属していた人物らが立ち上げたスタートアップです。Amazon Bedrockでは、以下の3つのモデルを利用できます。
- Claude Instant
- Claude 1.3
- Claude 2.0
- Claude 2.1
ClaudeはLLMの一つで、テキストの生成や要約、コーディングなどが可能です。Amazon Bedrockでは、同社の最新モデルであるClaude 2.1も利用できます。Claude 2.1では、テキスト情報からトレンドを予測したり、複数の文書を比較・対比・分析したりできます。
Claude2の料金体系、使い方をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
Cohere
Cohereは、企業特有のテキスト処理に特化したLLMを開発するスタートアップです。Cohereは以下の4つのモデルをAmazon Bedrockで提供しています。
- Command v14.7
- Command Light v14.7
- Embed English v3.0
- Embed Multilingual v3.0
Command、Command Light、Embed Englishの対応言語は英語ですが、Embed Multilingualでは100以上の言語に対応しており、日本語のタスクも処理できます。
Meta
AI開発で高い技術力を持つMetaは、以下の2つのモデルをAmazon Bedrockに提供しています。
- Llama-2-13b-chat
- Llama-2-70b-chat
13bと70bはパラメータの数(それぞれ130億、700億)を示しています。テキスト分析や感情分析、チャットアシスタントなどの用途に適しています。100万件以上の人手によるアノテーションで学習されており、対話に最適化されています。
Stability.ai
Stability.aiは、オープンソースの画像生成モデルを開発するAI企業です。Amazon Bedrockには、以下の2つのモデルを提供しています。
- Stable Diffusion XL 0.x
- Stable Diffusion XL 1.x
Stable Diffusionは、テキスト情報を基に画像を生成します。広告やマーケティング、SNSなどに活用可能です。
Amazon Bedrockの活用事例
ここでは、Amazon Bedrockの活用事例を2つ紹介します。
- デジタル棟梁の構築で現場を見える化(竹中工務店)
- コードの自動生成で開発生産性を向上(アクセンチュア)
デジタル棟梁の構築で現場を見える化(竹中工務店)
株式会社竹中工務店は、Amazon Bedrockの導入で生産性の向上を目的としたデジタル化を推進しています。具体的には、デジタルツインやBIMモデルの活用により現場を見える化し、業務ノウハウを学ぶためのアプリケーション「デジタル棟梁」を実現しています。
同社は、Amazon Bedrockの既存機能を使うだけでなく、RAGにより社内文書をモデルに学習させ、自社に最適なモデルを構築しています。
RAGを活用することで、現場におけるコンクリートの取り扱い方など、建設業界の専門的な質問にも回答できるようなモデルを構築できているようです。
コードの自動生成で開発生産性を向上(アクセンチュア)
アクセンチュア株式会社は、生産性向上のために生成AIを活用しています。その一環として組織全体の業務改革や開発者の業務効率化をAmazon Bedrockで実施しています。
具体的には、プログラミングを学習した大規模言語モデルを活用して、開発者のコーディングをサポートすることにより、開発の効率化を図っています。
例えば、AWSに不慣れな開発者でもコーディングのサポートシステムにより開発速度を向上できたり、定型的な作業をAIに任せることにより省力化できたりします。他にも、多言語へのコード変換や脆弱なセキュリティの検出などを活用することで、品質も高められているようです。
Amazon Bedrockについてよくある質問まとめ
- Amazon Bedrockとは?
Amazon Bedrockとは、生成AIの基盤モデルをAPIを通じて利用できるようにする完全マネージド型サービスです。Anthropic、Meta、Stability AI、そしてAmazonなどの大手AI企業が提供するさまざまな高性能な生成AIモデルに簡単にアクセスできます。自社のユースケースに最適なモデルを簡単に評価したり、ファインチューニングや検索拡張生成(RAG)などの手法を使用してデータに合わせてカスタマイズしたり、会社システムとデータソースと連携してタスクを実行するエージェントを構築したりできます。
- Amazon Bedrockを利用するメリットは?
Amazon Bedrockを利用するメリットは、以下です。
- 幅広いシステムの構築が可能
- 様々なモデルを単一の環境下で利用できる
- エージェントの構築まで可能
- モデルを簡単にカスタマイズできる
- 保守・管理業務を大幅に削減できる
- AWSサービスとの統合が容易
- Amazon Bedrockの競合は?
Microsoft Azureの「Azure OpenAI」やGoogle Cloudの「Vertex AI」などが競合ですが、他社のAIモデルを含めて多様な選択肢を提供しているのが特徴です。
まとめ
Amazon Bedrockを活用すれば、単一の環境下で様々なモデルを開発できます。複数の環境でモデルを開発している企業は、一つにまとめることで業務効率化が図れるでしょう。
まだ生成AIを活用していない企業は、効率的に開発を進めることができず、競合他社に後れを取ってしまうかもしれません。
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