AWSとAzureを徹底比較!強みや弱み、適したケース、選択方法などを徹底解説
最終更新日:2024年11月14日
クラウドサービスは、現代のビジネスにおいて不可欠な技術となっています。特にAmazonのAWSとMicrosoft Azureは、この分野での二大巨頭として知られており、AIシステム開発を行う際など必ずと言って良いほど選択肢として挙げられます。しかし、これら2つのプラットフォームを比較し、自社のニーズに最も適した選択をすることは、多くの企業にとっての課題です。
そこで今回、AWSとAzureの主要な特徴だけでなく、それぞれの強みと弱み、そしてどのような状況でどちらを選択すべきかを詳しく解説します。
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目次
AWSとAzureの特徴まとめ
AWSとAzure両サービスとも独自の強みを持ち合わせており、特定のニーズに合わせた選択が可能です。ここでは、それぞれの特徴を紹介します。
AWSの特徴
EC世界最大手のAmazonが運営するAWS(アマゾン ウェブ サービス)は、2006年にサービスを開始した世界で最も広範囲に及ぶクラウドプラットフォームです。以下に2つの特徴を挙げます。
世界中でトップシェアを占める
アメリカの調査会社であるSynergy Research Groupによると、2023年第2四半期のAWSのシェアは約33%を占め、約22%で2位のAzureとは差をつけ、世界トップシェアとなっています。多岐にわたる業種の企業が、AWSを自社のデジタルインフラの核として採用しています。
様々な国での利用が可能
AWSは世界中にデータセンターを持ち、105のアベイラビリティーゾーンを通じて、33の地理的リージョンでサービスを展開しています。この広範なグローバルネットワークにより、世界のあらゆる地域で、企業はAWSを活用することが可能です。
Azureの特徴
Microsoft Azureは、2010年にサービスを開始した、急速に成長を遂げているクラウドプラットフォームです。以下に2つの特徴を挙げます。
セキュリティーレベルの高さ
Azureは、高いセキュリティーレベルを誇っており、大手企業での活用も進んでいます。不正アクセスの防止やサイバー攻撃への対策ができる「Azure Security Center」の使用ができるだけでなく、政府機関などと連携してセキュリティー対策の研究拠点を世界に展開し、高いセキュリティーレベルを担保しています。
Microsoft製品との連携がしやすい
Azureは、Office 365やWindows Serverなど、Microsoftの幅広い製品群との統合が容易です。この高い互換性は、既にMicrosoftの製品を日常的に使用している企業にとって大きなメリットとなります。
AWSとAzureが共通する点
クラウドサービスの2台巨頭であるAWSとAzureは、共通する点も多く存在します。それぞれの強みや弱みに入る前に、どちらにも備わっている点について解説します。
幅広いサービスとリソースの提供
AWSとAzureは、コンピューティング、ストレージ、ネットワーキング、データベース管理、AI (人工知能) と機械学習など、幅広いクラウドサービスを提供しています。これにより、どちらのプラットフォームも、スタートアップから大企業まで、あらゆる規模のビジネスのニーズに応えることができます。
ハイブリッドクラウドのサポート
AWSとMicrosoft Azureともに、ハイブリッドクラウドアーキテクチャの実装を強力にサポートしています。ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスのリソースとクラウドリソースを組み合わせて使用する環境のことです。
それぞれ以下のサービスを活用することで、オンプレミスの環境とクラウド環境をシームレスに統合し、リソースを一元的に管理できます。
- AWS:AWS Outposts
- Azure:Azure Arc
従来のオンプレミス環境のメリットを維持しつつ、クラウドのスケーラビリティや柔軟性も取り入れられるのです。
例えば、データの保存場所を法規制によりオンプレミスに限定しつつ、アプリケーションの実行はクラウド上で行うといった運用が可能になります。こうしたハイブリッド環境を実現することで、企業はビジネスの変化に迅速に対応しながら、効率的なITインフラの運用を実現できるでしょう。
ハイブリッドクラウドは、デジタルトランスフォーメーション時代に不可欠なテクノロジーといえます。AWSとAzureは、そのようなハイブリッドクラウドの実装をサポートする充実したサービスを提供しています。
AWSの強みと弱み
AWSは、クラウドコンピューティング業界の先駆者として、多くの企業に選ばれ続けています。その強みと弱みは、利用者がサービスを選択する際の重要な判断材料となります。
AWSの強み
ここでは、AWSの強みである以下2つをご紹介します。
広範なサービスオファリング
AWSは、200以上のフルマネージドサービスを提供しています。これは、コンピューティング、ストレージ、データベース、アナリティクス、機械学習など、ITインフラに必要な機能を包括的にカバーしているということです。AWSのサービス数は、他のクラウドプロバイダーと比較しても突出しており、2023年時点でAzureの3倍以上のサービスを提供しています。
この広範なサービス提供により、企業は必要な機能をAWSのなかで見つけることができます。例えば、大規模なデータ分析基盤の構築であれば以下のように機能が揃っています。
- Amazon S3:データを保存
- Amazon EMR:分散処理
- Amazon QuickSight:ビジュアライゼーションする
複雑なビジネス要件に対しても、AWSの豊富なサービスを組み合わせることで、スムーズに対応できるのです。
また、AWSは各サービスを緊密に連携させています。これにより、サービス間のデータ連携や統合管理が容易になり、企業はアプリケーション開発に集中できます。AWSの広範で統合されたサービスは、ビジネスの俊敏性と効率性を高める強力な基盤といえるでしょう。
充実したコミュニティとエコシステム
AWSは、世界中に広がる大規模なユーザーコミュニティを有しています。AWSを利用する開発者は200万人以上、AWSパートナーネットワークに登録された企業は10万社以上に上ります。このコミュニティの規模は、他のクラウドプロバイダーを大きく引き離しています。
充実したコミュニティは、AWSユーザーにとって大きなメリットです。例えば、特定の問題に直面した際、コミュニティで解決策を見つけられる可能性が高くなります。また、ベストプラクティスや、他社の導入事例など、クラウド活用に関する有益な情報が豊富に共有されています。
加えて、AWSパートナーネットワークには、コンサルティングやシステムインテグレーションを提供する企業が多数登録されています。これらのパートナー企業は、AWSの導入や運用を支援するだけでなく、自社のソリューションとAWSのサービスを組み合わせたソリューションも提供しています。つまり、企業はAWSを導入することで、パートナー企業の専門的なサポートも受けられるのです。
AWSの弱み
一方でAWSは、以下の弱みがあります。
複雑な料金体系
AWSの料金体系は、その豊富なサービス提供と柔軟性ゆえに、理解が難しいと感じる方も多いでしょう。例えば、EC2インスタンスの料金は、インスタンスタイプ、リージョン、使用量、購入オプションなど、様々な要因によって変動します。さらに、データ転送量やストレージ容量など、関連するサービスの料金も考慮する必要があります。
新規顧客にとって、このような複雑な料金体系は、コスト管理の障壁となる可能性があります。アプリケーションのアーキテクチャ次第で、想定外の高額請求が発生するリスクもあるのです。
ただし、AWSは料金の透明性を高めるための以下のような取り組みも行っています。
- AWS Cost Explorer:サービス別、リソース別の費用を可視化
- AWS Budgets:予算超過を防ぐ
コスト管理を適切に行うためには、これらのツールを活用し、継続的にモニタリングすることが重要となります。
リソースの過剰利用
AWSの柔軟性と拡張性は、リソースの過剰利用につながることがあります。例えば、開発者がEC2インスタンスを立ち上げたまま放置したり、不要になったストレージを削除し忘れたりするケースです。こうした細かなリソースの無駄積みが、気づかぬうちにコストを増大させてしまうのです。
この問題に対処するためには、以下ツールでの適切な監視と管理が不可欠です。
- AWS CloudTrail:AWS アカウントで発生した API コールを記録し、リソースの変更を追跡する
- AWS Config:構成情報の記録や監視を行い、リソースの変更を追跡する
- AWS Trusted Advisor:コスト最適化、セキュリティ、パフォーマンス、サービス制限などの観点から、改善すべき点を自動的に指摘
AWSの柔軟性を生かしつつ、無駄のないリソース管理を行うには、ガバナンスの仕組みづくりとクラウドに精通した人材の育成が欠かせません。そのためのコストは当初想定する必要がありますが、中長期的なコスト最適化と俊敏性の向上を考えれば、十分に投資する価値があるでしょう。
Azureの強みと弱み
AWSと合わせて、Azureの強みと弱みについても解説していきます。
Azureの強み
Azureは、以下2つの強みをもっています。
既にあるMicrosoft環境のクラウド化が容易
Azureは、Windows ServerやActive Directoryなど、多くの企業で利用されているMicrosoftの製品やサービスとの親和性が高いのが特長です。例えば、「Azure Active Directory」を使えば、オンプレミスのActive Directoryとシームレスに連携できます。また、「Azure Arc」を使って、Windows ServerをAzureの管理下に置くこともできます。
これにより、企業は既存のMicrosoft環境をスムーズにクラウドに拡張できます。つまり、新たなツールやプロセスを一から習得することなく、クラウドのメリットを享受できるのです。Microsoftのエコシステムに精通しているIT担当者にとって、Azureは取り組みやすいクラウドプラットフォームといえるでしょう。
業界特化型ソリューションの提供
Azureのもう一つの強みは、特定の業界に特化したソリューションを提供している点です。ヘルスケア、金融サービス、製造業、小売など、特定のセクターのニーズに合わせて最適化されており、業界固有の課題に対応します。
例えば、以下のような業界特化型サービスがあります。
- Azure API for FHIR:ヘルスケア向け医療データの相互運用性を高めるサービス
- Azure for Financial Services:金融サービス向けに規制要件に対応したサービス
これらの業界特化型ソリューションは、業界固有の課題に対応するだけでなく、コンプライアンス要件の充足も支援します。つまり、企業は自前でゼロからシステムを構築する必要がなく、アプリケーション開発に注力できるのです。Azureの業界特化型ソリューションは、デジタルトランスフォーメーションを加速する強力な武器になり得ます。
Azureの弱み
強みと合わせて、Azureがもつ弱みについても解説します。
地理的リーチがAWSに比べて限定的
Azureは世界的に広範囲にサービスを提供していますが、AWSに比べるとデータセンターの数や地理的なリーチは劣ります。これにより、特定の地域においては、サービスの使用に影響が出る可能性があります。
コミュニティの充実度
Azureのユーザーコミュニティは、AWSほど活発ではない傾向にあります。このため、一部のユーザーにとっては、必要な情報やサポートを得ることが難しくなります。コミュニティの充実度が低いと、ユーザーが特定の問題に直面した際、解決策を見つけにくくなります。
また、ベストプラクティスや他社の導入事例など、クラウド活用に関する有益な情報も得にくくなるでしょう。Azureを検討する際は、社内のスキルセットとコミュニティからのサポートを見極める必要があります。
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AWSとAzureの使い分け
クラウドサービスは、ビジネスのニーズに応じて適切に使い分けることが重要です。以下に、AWSとAzureの使い分けに関するガイドラインを提供します。
AWSがおすすめのケース
以下のような場合はAWSがオススメです。
広範なサービスと機能が必要な場合
AWSは、200以上のフルマネージドサービスを提供しており、広範囲のクラウドサービスを求める企業に適しています。最先端のAI、機械学習、データ分析ツールが必要な開発プロジェクトや、特定の技術ニーズがある場合には、AWSが強力な選択肢となります。
例えば、生成AIを含む、AIや機械学習のサービスであれば以下サービスが準備されています。
高度なデータ分析ツールは以下を提供しています。
- Amazon Redshift
- Amazon Athena
つまり、AIやビッグデータ分析など、特定の技術領域に注力したい企業にとって、AWSは最適なプラットフォームといえます。AWSの豊富なサービスを活用することで、開発者は複雑な環境構築に煩わされることなく、イノベーティブなアプリケーション開発に集中できるでしょう。
グローバルな展開を考えている場合
AWSのグローバルインフラは非常に広範で、世界中にデータセンターを持っています。国際的なビジネス展開や、世界中のユーザーにサービスを提供する必要がある企業には、AWSが適しています。
例えば、グローバルにECサイトを展開する企業の場合、各国のユーザーに高いパフォーマンスを提供する必要があります。AWSのグローバルインフラを活用することで、ユーザーに近いリージョンにアプリケーションを配置し、レスポンス速度を最適化できるのです。
また、「Amazon CloudFront」などのCDNサービスを使えば、さらにパフォーマンスを高められます。国際的なビジネス展開を見据えている企業にとって、AWSのグローバルインフラは大きな強みとなるでしょう。
Azureがおすすめのケース
以下のような場合はAzureがオススメです。
Microsoftのサービスとの統合が重要な場合
Azureは、Office 365、Teams、Dynamics 365など、Microsoft製品との深い統合が可能です。既にMicrosoftの製品を広範囲に利用している企業にとっては、Azureがシームレスなクラウド移行と運用を可能にします。
また、ChatGPTを始めとするOpenAI社のAPIを利用してシステムを構築したいという場合も、運用が容易なAzureが選択肢として上がるでしょう。
例えば、以下サービスが準備されています。
- Azure OpenAI Services:OpenAIのAPIを活用する
- Azure Active Directory:Office 365のユーザー認証を一元管理できます
- Azure Logic Apps:Office 365のデータをワークフローに組み込む
つまり、すでにMicrosoftのエコシステムを活用している企業にとって、Azureは自然な選択肢となります。既存のMicrosoft製品との連携を深めることで、業務の効率化とコストの最適化が可能になるのです。
ハイブリッドクラウドを構築したい場合
AWSと比べ、Azureはハイブリッドクラウドソリューションに強みをもっており、オンプレミス環境とクラウド環境の間での一貫したアプリケーション管理ができます。大手企業などハイブリッドクラウド戦略を採用している企業にはAzureが推奨されます。
例えば、以下サービスがあります。
- Azure Stack:オンプレミスにAzureと同じ環境を構築できます
- Azure Arc:オンプレミスのサーバーをAzureの管理下に置くことができます
つまり、セキュリティや規制上の理由からオンプレミス環境を維持する必要がある企業でも、Azureを活用してクラウドのメリットを享受できるのです。Azureのハイブリッドソリューションにより、オンプレミスとクラウドの間でアプリケーションを一貫して管理できます。
レガシーシステムが多く、段階的なクラウド移行を求められる大企業などにとって、Azureのハイブリッド戦略は非常に魅力的といえるでしょう。
リスク分散やサービスの最適化をしたい場合はAWSとAzureの併用も検討
特定のサービスや機能でAWSを、他のアプリケーションやサービスでAzureを利用するなど、両プラットフォームを併用することで、リスク分散やサービスの最適化が可能です。これにより、各プラットフォームの強みを最大限に活用することができます。
クラウドサービスへの依存度が高い企業にとって、単一のクラウドプロバイダーに依存するのはリスクとなり得ます。AWSとAzureを併用することで、一方のサービス障害の影響を最小限に抑えられます。また、アプリケーションごとに最適なプラットフォームを選べば、パフォーマンスとコストの最適化も可能です。
例えば、以下のような管理も可能でしょう。
- AIや機械学習のワークロードにはAWS
- Microsoftとの連携が必要なアプリケーションにはAzure
つまり、マルチクラウド戦略を採用することで、各プラットフォームの強みを状況に応じて使い分けられるのです。
ただし、マルチクラウドの管理には専門的なスキルと労力が必要です。複数のクラウド環境を一元的に管理するためのツールの活用や、ガバナンスの仕組みづくりが欠かせません。マルチクラウドのメリットを十分に生かすためには、戦略的な取り組みが求められるでしょう。
AWSとAzureの比較についてよくある質問まとめ
- AWSがおすすめのケースは?
- 広範なサービスと機能が必要な場合
- グローバルな展開を考えている場合
- Azureがおすすめのケースは?
- Microsoftのサービスとの統合が重要な場合
- ハイブリッドクラウドを構築したい場合
まとめ
クラウドサービスの二大巨頭、AWSとAzureを徹底比較し、それぞれのプラットフォームが持つ強み、弱み、そして使い分けのポイントを解説しました。クラウドサービスの選択は、ビジネスの成功に直結する決定であり、各プラットフォームの特性を理解した上で、ベストな選択をしていきましょう。
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