コンピュータビジョンとは?仕組み・6つの活用メリット・活用分野・注意点を徹底紹介!
最終更新日:2024年11月16日
コンピュータビジョンは、企業のデジタル戦略を加速させる重要な技術です。画像や映像から情報を抽出し、人間の目に匹敵する高度な認識能力を持つこの技術は、製造、医療、小売など幅広い産業で活用されています。
本記事では、
AI Marketでは
画像認識・画像解析に強いAI開発会社をご自分で選びたい場合はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
目次
コンピュータビジョンとは?
コンピュータビジョンとは、コンピュータが画像や映像から情報を抽出する技術です。AI、特にディープラーニング(深層学習)を活用して大量の視覚データを処理し、人間の視覚に似た機能をコンピュータに持たせることを目的としています。
さまざまなセンサーやカメラと組み合わせることで、高度な物体検出や画像分類、物体追跡などが可能になります。ほぼ全ての企業分野に関係し、業務の効率化・最適化に寄与すると期待されています。
尚、一般的に混同されがちなキーワードに「画像認識」があります。画像認識では、画像をデータの対象として、何が写っているかを焦点にしているます。
一方、コンピュータビジョンは、画像だけでなく、動画なども対象とし、動きの解析やシーンの理解など、より幅広い認識を行うという観点で違います。画像認識はコンピュータビジョンの中に内包される概念と言えます。
同じように、「画像内の物体がどう動いているか」を追跡するオプティカルフローもコンピュータビジョンの重要な技術です。画像認識とオプティカルフロー、どちらもコンピュータビジョンの重要な技術分野で画像認識は「何があるか」を特定し、オプティカルフローは「どう動いているか」を追跡します。
コンピュータビジョンの仕組み
コンピュータビジョンは、以下3つの流れで画像情報を抽出する仕組みです。
- 画像取得
カメラやセンサーを用いて画像や映像データを収集します。 - 画像分析
AIを使って画像を分析し、物体の種類や形状、色、大きさなど特徴を抽出します。ディープラーニング、特に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が使用されることが多いです。 - 物体認識
物体を識別し、識別結果をシステムなどへ反映します。
このように、コンピュータビジョンはAIにより詳細な分析が行われ、正確な物体・画像認識を実現します。
コンピュータビジョンで可能になった応用技術
コンピュータビジョン技術は、以下のようにさまざまな技術へ応用されています。
応用技術 | 技術の内容 | 活用されている分野 |
---|---|---|
物体検出 | 画像内の複数のオブジェクトを同時に検出します。 | 製造業の不良品検査 自動運転車 |
画像検索 | 類似の画像や関連情報を検索します。 | インターネット上での画像検索 |
画像分類 | 画像をカテゴリー別に分類し、適切なグループに分けます。 | 医療分野で病変の分類 |
セグメンテーション | 画像を複数の領域に分割し、それぞれの領域を識別します。 | 自動運転車 |
物体追跡 | 動いている物体を追跡し、その移動や動作を解析します。 | 監視システム スポーツ分析 |
顔認識 | 目、鼻、口など特徴点の位置や顔領域の位置や大きさをデータベースと照合 | 個人識別 感情分析 年齢推定 |
姿勢推定 | 人間の姿勢や動きを検出・追跡する | スポーツ分析 モーションキャプチャー |
3D再構成 | 2D画像から3Dモデルを生成する | AR/VR 建築 製造業の設計 |
光学文字認識(OCR) | 画像内のテキストを認識・抽出する | 文書のデジタル化 |
上記の技術は単独で使用されるだけでなく、組み合わせて使用されることも多いです。例えば、自動運転では物体検出、セグメンテーション、物体追跡などが統合されて使用されています。他にも、監視システムや医療分野における診断支援など、さまざまな場面で実用化されています。
AI Marketでは
コンピュータビジョンの歴史
コンピュータビジョンの歴史は古く、1960年代から医療・製造業などさまざまな分野で活用されてきました。以下では、コンピュータビジョンの歴史について紹介します。
【1960年代】人工衛星や医療用画像の解析技術として注目を集める
コンピュータビジョン技術は、1960年代に入り人工衛星や医療用画像の解析分野でその基盤が築かれました。コンピュータビジョンを通じて人工衛星から取得された画像の解析データが、地球観測や気象観測などに応用され、従来よりも効率的なデータ処理が可能となりました。
また、医療分野ではX線やCTスキャン画像の解析が進み、病変部位の特定に利用されることで診断精度が向上につながりました。この時期に、画像解析技術が業界に与える影響が広く認識され、コンピュータビジョンは早期から大きな価値を持つ技術として注目されることになったのです。
【1990年代】マシンビジョンやロボットビジョンへ応用される
1990年代に入ると、コンピュータビジョンはマシンビジョンやロボットビジョンへ応用され、製造業を中心とした産業分野で急速に応用が進みました。特に、マシンビジョンは製品の検査や品質管理において欠かせない技術となり、寸法測定や欠陥検出のプロセスを自動化することで、業務効率化とコスト削減を実現しました。
また、ロボットビジョンによりロボットが周囲の環境を正確に認識し、動作を制御できるようになったことで、製造現場での自動化が加速しました。
マシンビジョンなどのコンピュータビジョンの応用技術は、製造現場の自動化を大幅に進め、30年近く経過した現在でも生産性向上に大きく貢献しています。
関連記事:「寸法検査とは?従来手法の限界・AIを導入するメリットまで徹底解説!」
【2000年代初頭】AIの発達により幅広い分野で急速に活用が進む
2000年代初頭には、AIの発展がコンピュータビジョン技術の進化をさらに後押ししました。特に、ディープラーニング技術の発達により、画像認識の精度が劇的に向上したことで、医療・交通・セキュリティなど、さらに幅広い分野で応用が進むことになりました。
例えば、自動運転技術の分野では、コンピュータビジョンにより車両周辺の状況をより正確に把握できるようになりつつあり、自動運転の実用化に大きく貢献しています。
AIの進化によりコンピュータビジョンは、多様な業界での効率化と自動化を支える基盤技術となったのです。
【2023年~】生成AIとコンピュータビジョンを組み合わせた技術が登場
2023年以降、生成AIとコンピュータビジョンを組み合わせた技術が登場したことで、認識精度の向上に成功しています。生成AIとは、膨大なデータにもとづいて新たな文章や画像を生成する技術です。生成AIをコンピュータビジョンと組み合わせることで、より高度な画像解析の実現が期待されています。
例えば、ファーストアカウンティング株式会社では、コンピュータビジョン技術に生成AIならではのモデルであるトランスフォーマーを取り入れることで、従来手法の文字認識精度に対して20%もの精度向上に成功しました。
コンピュータビジョンの6つのメリット
近年のコンピュータビジョンは、人の目以上に高速かつ高度な認識が可能になりつつあります。ここでは、コンピュータビジョンがもたらす具体的なメリットについて解説します。
大量の画像を高速に処理できる
AI技術を取り入れた現代のコンピュータビジョンは、大量の画像でもリアルタイムで高速に処理できることが大きなメリットです。例えば、監視カメラや自動運転車が毎秒何十フレームもの画像を瞬時に解析して物体や状況を認識できます。
これにより、リアルタイムでの異常検知や自動化が進み、ビジネスにおける迅速な意思決定をサポートします。
画像の認識精度が向上する
コンピュータビジョンを活用することで、微細なパターンや特徴の識別が可能となり、画像の認識精度が大幅に向上します。例えば、人の目では逃してしまうような製品の小さなキズに対しても、コンピュータビジョン技術であれば迅速に検知可能です。
従来では難しかった物体の正確な分類や検出が可能となり、医療診断や自動運転など誤認識が許されない分野でも活用が進められています。
24時間365日の連続稼働
人間の目には疲労がありますが、コンピュータビジョンシステムは休むことなく継続的に稼働できます。これにより、製造ラインや監視システムなどで常時モニタリングが可能になります。
コスト削減と効率化
人手による作業を自動化することで、長期的には人件費の削減につながります。また、作業の高速化により生産性が向上し、ビジネスプロセスの効率化が図れます。
データの蓄積と分析
コンピュータビジョンシステムは、処理した画像データを蓄積し、長期的なトレンド分析や予測に活用できます。例えば、画像内の物体、顔、テキストなどが識別され、メタデータとして構造化されて保存されます。また、データには時間情報が付与され、時系列での分析が可能です。
これにより、ビジネス全体の洞察力を高め、より戦略的な意思決定を支援する強力なツールとなります。
新しいビジネスモデルの創出
コンピュータビジョン技術を活用することで、従来にない新しいサービスや製品の開発が可能になります。例えば、ARを活用した新しい購買体験の提供などが挙げられます。
コンピュータビジョンの活用事例6選
コンピュータビジョンは、実際に製造・医療現場や小売店などさまざまな分野で活用されています。ここでは、コンピュータビジョンの活用事例を紹介します。
顔認識
顔認識技術は、スマートフォンのロック解除やオフィスの入退室管理など、身近な場面でも活用されています。例えば、日本コンピュータビジョンの顔認証システム「サービスログイン」は、社内デバイスに対するなりすまし不正ログインを防止し、従来のパスワード認証と比べて効率的かつ高いセキュリティを実現しています。
このように顔認証は、写真や動画による不正アクセスを防ぐために役立てられ、社内やシステムのセキュリティ向上に貢献しています。
医療画像診断
医療分野では、コンピュータビジョンを活用した画像診断の活用が進められています。例えば、日立の「検査画像AIソリューション」は、撮影された医療画像から病変や臓器の特徴を抽出し、診断を支援しています。
このようにコンピュータビジョンは、医師の負担を軽減し、より迅速で正確な診断を可能する技術として注目されています。
自動運転支援技術
自動運転車の技術においても、コンピュータビジョンは欠かせません。例えば、デンソーでは、コンピュータビジョンにより歩行者の軌道を予測し、危険なエリアに入ってくる可能性の高い歩行者を検知するアプリを開発しました。
このようにコンピュータビジョンは、車両周辺の車や歩行者、建物などを認識し、リアルタイムで安全に走行するための判断をサポートするシステムへ役立てられています。
監視カメラ
小売店では、コンピュータビジョンを搭載した監視カメラが導入され始めています。例えば、アイリスオーヤマの高精度な画像認識機能を備えたAIカメラは、状況や顧客の顔の変化を瞬時に検知でき、取得したデータをもとに勤怠管理や動線分析、来客数の統計に役立てられています。
このように小売業では、効率的なマーケティングや勤怠管理、セキュリティ強化のためにコンピュータビジョン技術が活用されつつあります。
AI-OCR
AI-OCR(光学文字認識)もコンピュータビジョン技術の代表例です。AIを利用したOCRは、手書きや活字の書類を正確にデータ化し、業務効率を大幅に向上させます。例えば、パナソニックの「WisOCR」は、手書きから活字までさまざまな形式の書類を高精度にデータ化することで、業務の効率化を実現しています。
コンピュータビジョンは紙帳票の入力作業や転記作業を効率化し、事務作業の大幅な省力化に貢献します。
異常検知
製造現場やインフラ設備のメンテナンスでは、コンピュータビジョンを活用した異常検知システムが導入されつつあります。例えば、TDSE Eyeの外観検査システムは、製品やインフラ設備の目視で確認できる欠陥や異常を正確に検知できることから、検査員の省人化に役立てられています。
コンピュータビジョンを製造業の品質管理へ活用することで、製品リードタイムの短縮を実現するとともに、品質向上につながります。
コンピュータビジョンの今後の課題
コンピュータビジョンをより幅広い分野で活用するには、いくつか課題があります。ここでは、コンピュータビジョンの今後の課題・展望を紹介します。
エッジAIへの対応
コンピュータビジョンが抱える今後の大きな課題の一つとして、エッジAIの活用が挙げられます。エッジAIとは、デバイス自体でAI処理を行う技術です。
エッジAIにより、セキュリティやプライバシーが向上し、データ転送の遅延も削減されることから、製造業の検査システムや自動運転の障害物検出技術など迅速な判断が必要な分野での応用が進んでいます。
しかし、エッジAIに対するコンピュータビジョンの実装にはいくつかの技術的な課題があります。まず、限られたリソースで高性能な計算を実行するための効率的なアルゴリズム設計が必要です。また、センサーから得られる膨大なデータ量を処理するためには、データ圧縮技術や処理速度の最適化も不可欠です。
これらの課題が解決され、コンピュータビジョン技術を応用したエッジAIがより普及すれば、自動運転や製造分野の制御システムの発展がますます進むでしょう。
関連記事:「エッジAIとは?活用事例解説!カメラ分析・エッジコンピューティングでの活用」
3D画像生成の高度化
コンピュータビジョンでは、3D画像生成の高度化ニーズも高まっています。コンピュータビジョンの3D画像生成技術が普及すれば、コンピュータが物体や環境を立体的に認識できるようになり、より正確な判断が可能です。
しかし、3Dデータの生成や処理はその高度さゆえに、大量の計算リソースを必要とするため、現状では処理速度や精度向上が課題として挙げられます。
特に、自動車や医療分野における3Dモデリングでは、高精度かつリアルタイムでの処理が求められます。例えば、自動運転車が立体的な障害物を検出し、安全なルートを即時に判断するには、精度と速度の両立が必要です。そのため、計算リソースの効率的な活用や、アルゴリズムの最適化を検討する必要があります。
3D画像生成技術が今後さらに発展すれば、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、さらには医療分野での外科手術支援など、多岐にわたる分野で新たな活用が期待されます。
関連記事:「AIの3Dモデル自動生成では何ができる?特徴から活用シーン、企業で使えるおすすめツールまで徹底解説!」
マルチモーダルの精度向上
コンピュータビジョンの精度向上には、ディープラーニング技術の発展が欠かせません。ディープラーニングは、コンピュータビジョンの精度向上に大きく貢献してきましたが、近年自動運転や無人コンビニなど自動化ニーズが高まる中、さらなる技術発展が求められています。
特に、マルチモーダルAIの登場により、画像データだけでなく、音声やテキストといった複数のモダリティを同時に処理できるモデルの開発がコンピュータビジョンの次のステップとされています。これにより、コンピュータビジョンが他のモダリティと連携することで、コンテキストを理解したより高度な認識が可能です。
しかし、マルチモーダルAIをコンピュータビジョンへ導入するには、モデルの高度化と計算コストのバランスを取る必要があり、効率的なアルゴリズム設計とリソースの最適な配分が今後の課題として挙げられます。
関連記事:「マルチモーダルAIとは?意味から身近な事例、ビジネスでの活用事例を詳しく紹介」
コンピュータビジョンについてよくある質問まとめ
- コンピュータビジョンを導入するメリットは何ですか?
コンピュータビジョンの主なメリットには、作業の自動化による効率向上、24時間稼働による生産性の向上、人間の目では見逃しやすい微細な変化の検出能力、大量データの高速処理などがあります。これらにより、品質管理の向上、コスト削減、新しいサービスの創出などが可能になります。
- コンピュータビジョンの導入に必要なリソースは何ですか?
コンピュータビジョンの導入には、高性能なコンピュータ、適切なカメラやセンサー、そしてAI技術を活用するためのソフトウェアが必要です。また、技術を支えるエンジニアやデータサイエンティストも重要なリソースです。
- コンピュータビジョンを導入する際の注意点は何ですか?
導入の際には、プライバシー保護やセキュリティ対策が重要です。また、データの品質やトレーニングデータセットのバイアスにも注意が必要です。さらに、導入後のメンテナンスやシステムのアップデートも計画的に行うことが求められます。
まとめ
コンピュータビジョンは、大量の画像を高速かつリアルタイムに処理できることや、人の目よりも高度な画像認識が可能なことから注目を集める技術です。外観検査や医療画像診断などさまざまなシーンで活用が進められ、業務の効率化や自動化において不可欠といえます。
今後は、
AI Marketでは
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp