教師あり学習とは?教師なし学習との違い・代表的アルゴリズムと4つの活用方法
最終更新日:2024年12月18日
様々な状況で社会への実装が進められているAI(人工知能)。その重要な機能の核となり、注目をされているのが機械学習(マシンラーニング)です。この機械学習というAIの仕組みには大きく「教師あり学習」と「教師なし学習」、そして「強化学習」と呼ばれる3つのタイプがあります。
AIとはなにか、についてはこちらで詳しく解説しています。
この記事ではこのうち、主要な学習様式である「教師あり学習」について説明します。またメリットデメリット、活用事例、課題についても説明していきます。
強化学習についてはこちらの記事で分かりやすく解説していますので併せてごらんください。
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目次
教師あり学習とは
教師あり学習とは、正解ラベルを付与したデータで学習するAIモデルの訓練手法です。教師あり学習ではAIに与える学習データについて、求められる正解を導くためのサンプルデータが与えられています。AIはこの例題を解くことでどのように学習すればよいかの方向性を得ることができます。
この手法は、機械学習の種類の中でも基本的な位置付けで、教師あり学習や教師なし学習、強化学習といった枠組みに並び、転移学習やメタ学習、アンサンブル学習、Few-Shot Learning(フューショット学習)、Zero-Shot Learning(ゼロショット学習)などの先進的アプローチとも組み合わせ可能です。
AIによる、教師あり学習の課題解決には大きく分けて分類と回帰があります。
分類問題は与えられるデータから得られる出力がいくつかのカテゴリーであるもの。回帰とは出力が値となる場合です。
AIの学習は、用意された正解データを処理することによってAIのアルゴリズムを教育していきます。そして、十分な正答率を実現するまで修正を繰り返すことで学習が完了するプロセスになります。
また、こうしたモデルをより洗練させるために、モデルマージやknowledge distillation(知識蒸留)を活用することもあります。
ディープラーニングと教師あり学習
データを基に学習し、処理を実施するAI技術を「機械学習」と呼びます。機械学習の種類、用いられるアルゴリズムをこちらの記事で特集しています。
機械学習の中にはいくつかの主要な手法があります。これらの手法には、以下が含まれます。
- ディープラーニング(深層学習):ニューラルネットワークを使用し、データの深い層を通じて複雑なパターンや関係性を学習する
- 教師あり学習:入力データとそれに対応する出力(ラベル)が与えられ、これらの関係性をAIが学習する手法
- 教師なし学習:ラベルや特定の出力がないデータを用い、データ内のパターンや構造を自動的に見つけ出す
- 半教師あり学習:限られたラベル付きデータと多量のラベルなしデータを組み合わせて学習を行う
現在多くの大規模なAIで採用され効果的な結果を得ているのがディープラーニング(深層学習)です。ディープラーニングは生物の神経系の反応を模した「ニューラルネットワーク」というデータ処理法を応用しています。画像認識、音声認識、自然言語処理など、複雑なパターン認識や特徴抽出が求められるタスクに適しています。ただし、多くの学習データを必要とし、データ量が多いほど性能が向上します。
こういった学習過程では、フレーム問題への対処なども研究されています。
一方、教師あり学習は特定の入力データに対して特定の出力(カテゴリや数値)を予測する問題に適しています。ディープラーニングモデルよりもシンプルで解釈しやすいことが多いのが特徴です。
教師あり学習のメリット・デメリット
有効な正解データが多数存在するとき、教師あり学習は簡単で有効なアルゴリズムを得られます。
また、あるデータを特定のデータ出力に結び付けるようにラベリングをすることが容易なので、解答にたどり着くまでの作業領域を効果的に選ぶことができ、時間短縮が可能な点も長所です。
一方で正解を導くデータが多数存在することが教師あり学習の条件であり、時にこのようなデータを集めることに大変な時間やコストがかかることがあります。
特に学習データの中に誤ったデータが紛れ込んでいると、AIが正しい答えと誤った答えを判別できなくなるおそれがありますので注意が必要です。AIの処理精度が学習データの信頼性に大きく依存することがリスクといえます。
尚、この教師データを作成する工程をアノテーションと呼びます。アノテーションの詳細については、AI開発におけるアノテーションとは?意味や種類、管理方法を徹底解説!の記事で紹介していますので、ぜひご参考ください。
教師なし学習のメリット・デメリット
教師なし学習はAIが学習するための正解データを利用せずに、与えられたデータの中に見つかる傾向や区分を発見できることが最大のメリット。事前に正解データを入手する必要がないため、より広い課題に対して使用できる学習方法です。
ただし、教師なし学習では学習の結果が正しいものである保証はありません。もともとのデータに不適当な偏りがあると、AIが生成する処理は利用者が望まないような非常にバイアスのかかった結果となることも考えられます。
現実の多くの状況では、正解データを作成するのに膨大な時間やコストが必要なため、「半教師あり学習」というアプローチが取られることがあります。これは、限られた正解データを用いてAIを訓練する方法です。
教師あり学習のアルゴリズム
AIがデータを学習するには、データ間の関係を解くための数学的アルゴリズムが用いられています。教師あり学習に使われる代表的なアルゴリズムをいくつか紹介しましょう。
一次相関
与えられた条件となるデータ一つに対して求められる結果となるデータ一つが定まり、両者の関係が一次関数で表記できる場合です。回帰分析の1つで、線形相関、線形回帰などとも呼ばれます。
入力値と出力値はy = ax+bで表すことができます。
理解しやすい予測モデルとして古くから使われてきました。
回帰の問題であれば入力値と出力値の間の関係を解くことになります。家の広さと賃貸料の関係や今日の気温と商店の販売額の関係など、直接の関係が想定しやすいケースで有効です。
ロジスティックス相関
ロジスティック関数という曲線的なモデルを使うアルゴリズムです。一次相関の場合に比べて2つのデータが相互に影響するような場合に有効なモデルで、それぞれのデータは確率的に表現されます。
一方のデータが大きくなる度合に応じてもう一方の増え方が変わったり、ある範囲を超えると急に大きくなったりするような、連続だが一様でない場合を対象とするときによく使われます。
生活習慣とガンの発症率の関係やスマートフォンの保有率と新規顧客件数など、現実の課題に対する対処に有効性が高い数学モデルです。
サポートベクターマシン
主に分類問題で力を発揮するパターン認識のアルゴリズム。2つのカテゴリに属するデータの特性を識別する能力が高く、未学習のデータにアルゴリズムを適用することに優れているモデルです。
複数の属性をもとにデータを座標空間中にプロットし、異なるカテゴリのデータ群を分割する平面を見つけることで有効な分類方法を作り出します。
フェイスリコグニションや筆跡鑑定、臨床でのガン細胞の検知など、複数の要素が複雑に絡み合った条件下でのデータ認識に活用されています。
単純ベイズ法
統計学におけるベイズの定理に基づくモデルで、サンプルとなるデータが少ない状況でも効率よく機械学習を進めることができる方法として利用されています。
2つのグループに属するデータがお互いに独立(一方のデータによってもう一方が影響されない)でありながら共通の別のデータとの関係でつながっているという状況で、2つのデータの関係を確率的に処理するアルゴリズムです。
メールのスパム検知や感受性分析、自然言語の処理など、学習の期間が短いプロセスで高速処理ができます。
K近傍法
K近傍法はパターン認識で用いられます。アルゴリズムはシンプルで、予測したい値を入力すれば、特徴量と近い距離にあるデータで多数決をとって、結果を予測値とするアルゴリズムです。
時系列に対するデータに対して距離を定めて、その距離から異常値なのかどうかを判断します。シンプルでわかりやすいアルゴリズムであり、特に小規模なデータセットに対しては高い精度を発揮します。
決定木分析
決定木分析は、要素から結果を予測する樹木型のデータ分析の手法です。数学的には回帰分析と似ていますが、決定木分析は「イエスかノー」の2択です。そのため、シンプルに結果の予測が可能であり、データの数が少なくても行えます。目的変数に影響する説明変数を明らかにし、樹木図を作成する手法で、説明変数の結果を分岐させていくことで視覚的に理解しやすいメリットがあります。
その他
上記に紹介した方法の他に教師あり学習で用いられるアルゴリズムとしては以下のようなものが挙げられます。
- ランダムフォレスト
- 勾配ブースティング法
- 次元削減法
なお、ここで紹介したアルゴリズムは教師あり学習でのみ使われるものではありません。数学モデルによっては処理方法を変えることで教師なし学習でも使われているものもあります。
AIの予測分析に使われる基本的な手法についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
教師あり学習の活用事例
教師あり学習を用いたAIのディープラーニングの事例として、具体的な用途を紹介します。
スパム検知
教師あり学習の用途として広く活用されている分類アルゴリズムの一つ。最初にいくつかのメールをスパムメールとそうでないメールに分ければ、その後に受け取った新しいメールの中からスパムメールを検出し、スパムフォルダーに分けるアルゴリズムをAIが自動的に生成してくれます。
機械学習により生成した言語モデルを活用したAIのパターン認識アルゴリズムです。情報セキュリティ分野では今後もAIの異常検知アルゴリズムの開発が期待されています。
分類作業
複数の要素間の関係から対象データがどのグループに属するかを判断する分類作業は教師あり学習の強みを生かせる用途です。サポートベクターマシンや単純ベイズ法を用いた教師あり学習のアルゴリズムが活用されています。
過去のデータから将来の機器の故障を予測するモデルや臨床医療の分野における病気の有無判定、ニュース記事の自動分類などビジネス分野での情報分析に広く実用化されています。
画像認識
画像認識は、ディープラーニングでのニューラルネットワーク処理により精度が大幅に改善した分野です。読み込んだ画像や動画を教師あり学習の対象として処理することで、画像の分類や異常なイメージの検出が可能となります。
フェイスリコグニションによる個人判別や医療現場でのスキャン画像からのガン細胞の検知などの他、スキャナーで読み込んだ文字画像を言語情報と結びつけてその文章を「読み」、内容に従ってテキストをラベリングするようなことも可能です。
画像認識・画像解析のAI開発に強い!プロ厳選の開発会社の記事では、画像認識・画像解析におすすめの会社を紹介していますので、ぜひご一読ください。
顧客の志向予測
小売業をはじめ、精密な需要予測にはAIの教師あり学習が使われています。個人の言動や感情の表現を情報として抽出し、その嗜好や反応パターンを予測するセンチメント分析は企業ブランディングの強力なツールです。
需要予想にAIを活用するメリット・デメリット、導入事例についてはこちらで分かりやすく解説しています。
視聴しているサイト情報から個人の購入履歴や視聴者の好みを推測し、購買意欲をかきたてるような商品の紹介をするレコメンドアルゴリズムは、マーケティングツールとして現実のネット上に実装されています。
画像生成
画像生成とは、コンピュータに画像を「想像」させる技術です。AI技術を用いて新たな画像を作成します。既存の画像データから特徴を学習し、それらの特徴をもとに新しい画像を生成します。
この技術は、Webデザイン、医療診断、芸術表現、商品写真生成、ゲーム開発など、幅広い分野で応用されています。
画像生成に使われる技術と仕組みをこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
画像や動画をAI技術で自動生成する生成AI(ジェネレーティブAI)も、画像生成を基盤としているAIです。
こちらで生成AIの代表的なサービス、プロンプトの使い方を詳しく説明しています。
教師あり学習の課題
教師あり学習はAIのディープラーニングにおいて非常に強力な学習プロセスですが、学習データの準備及びその信頼性に関する懸念が実働アルゴリズムにおいて大きなリスクになるという課題があります。データベースに誤りがあればAIのアルゴリズムは正しく機能しません。
また、学習モデルを正しく構築するためには相当なレベルの専門的な知識が欠かせません。教師あり学習モデルに十分な学習経験を積ませるには多くのサンプルデータと学習時間が必要です。
教師あり学習についてよくある質問まとめ
- 教師あり学習の主なメリットは何ですか?
教師あり学習の主なメリットは以下の通りです。
- 正解データが多数ある場合、簡単で有効なアルゴリズムを得られる
- 特定のデータ出力に結びつけやすく、時間短縮が可能
- 教師あり学習の主なデメリットは何ですか?
教師あり学習の主なデメリットは以下の通りです。
- 正解データの収集に時間やコストがかかることがある
- 学習データの信頼性に処理精度が大きく依存する
- 教師あり学習で用いられる代表的なアルゴリズムにはどのようなものがありますか?
教師あり学習で用いられる代表的なアルゴリズムには以下のようなものがあります。
- 一次相関(線形回帰)
- ロジスティック回帰
- サポートベクターマシン
- 単純ベイズ法
- K近傍法
- 決定木分析
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有効な教師データが十分にある場合、教師あり学習はAIの分類、回帰アルゴリズムを自動生成させるために非常に有効な手法です。すでに様々な形で現実の用途でも活用が進められています。
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