OpenAIのAgents SDKとは?仕組みやできること、料金、活用例、Responses APIとの連携方法を徹底解説!
最終更新日:2025年03月29日

- OpenAIのAgents SDKは、複数のAIエージェントを連携させた複雑なワークフローを簡単に構築できる開発用フレームワーク。
- エージェント間で処理を分担するハンドオフ機能、入力を安全に制御するガードレール機能、処理を追跡・可視化するトレーシング機能を持つ。
- Responses APIやChat Completions APIなど、OpenAIのAPIや他社モデルとも柔軟に連携可能。
- Agents SDK自体はオープンソースで無料提供されている。
OpenAIのAgents SDKは、複数のAIエージェントを連携させたワークフローを簡単に構築できる軽量かつ強力なフレームワークです。
開発者はこのSDKを活用して、カスタマーサポートの自動化、リサーチ、コンテンツ生成、コードレビュー、さらには見込み客の開拓など、さまざまな実務用途に対応するエージェントを迅速に開発できます。
本記事では、OpenAIが提供する「Agents SDK」について、その基本的な仕組みや主要な特徴、具体的な活用例をわかりやすく解説します。また、Responses APIやMCPとの連携方法、ChatGPTとの違い、導入手順まで詳しくご紹介しています。
AI Marketでは
AI開発会社をご自分で選びたい場合はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
目次
Agents SDKとは?
Agents SDKとは、2025年3月にOpenAIが発表した軽量かつ柔軟なフレームワークで、AIエージェントを活用した高度なワークフローを簡単に構築できる開発者向けツールキットです。
※動画内では、10分23秒からAgentsSDKに関する言及が始まります。
カスタマーサポートの自動化、リサーチ、コンテンツ生成、コードレビュー、営業活動の支援など、多岐にわたる業務をAIによって効率化できます。
複数のエージェントを連携させ、複雑なタスクを分割・処理する仕組みを持っており、エージェント間の処理引継ぎ(ハンドオフ)や安全性を確保するためのチェック機能(ガードレール)、さらには処理の流れを可視化して問題を追跡・デバッグできるトレーシング機能などが備わっています。
また、OpenAIが提供するResponses APIやChat Completions APIをはじめとするOpenAIのAPIの他、他社のモデルとも互換性を持つため、さまざまな環境で柔軟に活用できることも特徴です。
現在、Pythonベースで提供されており、今後さらに他言語への対応も予定されています。
Agents SDKの特徴
Agents SDKの主な特徴は以下の通りです。
- シンプルかつ柔軟な構成で初心者でも簡単に複雑なAIワークフローを構築
- 高度なエージェント連携
- 独自のPython関数を簡単にツール化してエージェントに組み込むことが可能
- OpenAIのモデルや他社APIと柔軟に連携可能
- オープンソース
- 高い安全性と可視性
リアルタイムで処理を検証するガードレール機能や、実行プロセスを追跡・可視化するトレーシング機能を備えており、安全かつ信頼性の高いAI運用が実現できます。
Agents SDKの料金
Agents SDK自体はオープンソースのフレームワークとして提供されており、無償で利用できます。
ただし、実際に運用する際には、使用するAPIやクラウドリソースに応じた料金体系が適用される場合があるため、最新の料金情報は公式ドキュメントで確認しましょう。
Agents SDKとChatGPTの違い
Agents SDKとChatGPTは共にOpenAIの技術を基盤としていますが、その用途や仕組みには明確な違いがあります。ChatGPTは主に自然言語による対話型インターフェースを提供し、質問に対する応答を中心に設計されています。
一方、Agents SDKはマルチターンの複雑な処理やツールの自動呼び出し、エージェント間の処理引き継ぎを可能とし、ユーザーの指示を元により多面的なタスクを自律的に遂行できるよう設計されています。
エージェントの動作を可視化・追跡するトレーシング機能や安全性を確保するガードレール機能など、実務における高度なエージェント利用を想定した機能が充実していることも特徴です。
▼累計1,000件以上の相談実績!お客様満足度96.8%!▼
Agents SDKの仕組み・コンポーネント
Agents SDKは、主に以下のコンポーネントで構成されています。
- エージェント(Agents)
- ハンドオフ(Handoffs)
- ガードレール(Guardrails)
- トレーシング(Tracing)
Agents SDKはオープンソースとして提供されており、さまざまなAPIやモデルプロバイダーと柔軟に統合できます。
エージェント(Agents)
エージェントは具体的な指示やツールを備えた個別の処理ユニットです。独自に作成したPython関数をツールとして統合することができ、これらの関数は自動的にJSONスキーマとして変換され、エージェントが必要に応じて呼び出します。
また、異なるモデルタイプ(Responses APIやChat Completions API)を利用することが可能で、用途に応じて最適なモデルを選択できます。
ハンドオフ(Handoffs)
ハンドオフとは、複数のエージェント間で処理を分担・引き継ぐ仕組みです。タスクの途中でも処理を適切な専門エージェントに渡すことで、それぞれのエージェントが自身の専門領域に集中できます。
この機能により、柔軟かつ効率的な処理フローが構築可能になります。
ガードレール(Guardrails)
ガードレールはエージェントへの入力や出力を検証し、不正または不適切な処理を事前に防ぐ安全機能です。入力が特定の条件を満たさない場合、エージェントの実行を即座に停止させ、システム全体の安全性を保ちます。
トレーシング(Tracing)
トレーシング機能を使うことで、エージェントの全動作を詳細に追跡・可視化できます。処理のステップごとにデータが記録されるため、問題発生時のデバッグやパフォーマンスの最適化が容易になります。
さらに、エージェント間のハンドオフ履歴も管理・確認できるため、複雑なワークフローの透明性も高まります。
▼累計1,000件以上の相談実績!お客様満足度96.8%!▼
Agents SDKの一般的な利用パターン
Agents SDKでは、以下のような運用パターンを実現できます。
- 決定的なフロー(Deterministic flows)
- ハンドオフとルーティング(Handoffs and routing)
- ツールとしてのエージェント(Agents as tools)L
- LMを審査役として使う(LLM-as-a-judge)
- 並列実行(Parallelization)
- ガードレール(Guardrails)
各パターンの活用シナリオとメリットを説明します。
決定的なフロー(Deterministic flows)
決定的なフロー(Deterministic flows)は、複雑なタスクを複数のステップに細分化し、それぞれ異なるエージェントに順番に処理させる方法です。各エージェントの処理結果が次のエージェントの入力となり、明確な手順でワークフローを進行できます。
ハンドオフとルーティング(Handoffs and routing)
ハンドオフとルーティング(Handoffs and routing)は、リクエストを受けたエージェントが処理の内容に応じて適切な専門エージェントへ処理を引き継ぐ方法です。複数のエージェントが連携し、それぞれの専門分野で効率的にタスクを処理できます。
ツールとしてのエージェント(Agents as tools)
エージェント間で会話や処理を継続的に引き継ぐのではなく、独立したツールとしてエージェントを活用する方法です。呼び出されたエージェントが単独で処理を行い、その結果を元のエージェントに返します。
LLMを審査役として使う(LLM-as-a-judge)
あるLLMが出力した結果を別のLLMが評価・改善フィードバックを行う方法です。より小さなモデルで初回の生成を行い、その後、精度の高い大規模モデルで評価することで、品質向上とコスト削減を両立できます。
関連記事:「LLM-as-a-Judgeの概要やメリット、活用シーンについて徹底解説」
並列実行(Parallelization)
複数のエージェントを同時並行で動作させる方法です。タスクを並列化することで処理の高速化を図ったり、複数の結果を同時に取得して最適な出力を選択できます。
ガードレール(Guardrails)
エージェントへの入力が妥当かどうかを即座に検証し、不正な入力を検出した際に処理を中断する安全機能です。迅速なチェックを行うことで、エラーの拡散防止や無駄な処理の発生を防げます。
Agents SDKでできること
Agents SDKは、その柔軟な設計により、以下のようなユースケースに対応可能です。
- カスタマーサポートの自動化
- 複数ステップのリサーチ
- コンテンツ生成
- コードレビューや開発支援
- 見込み客の開拓
- 個人向けアシスタント
- 業務アプリケーションとの連携
- MCP(Model Context Protocol)との連携
カスタマーサポートの自動化
自動応答エージェントを構築することで、顧客からの問い合わせに迅速かつ正確に対応できます。
複数ステップのリサーチ
エージェントが情報収集や分析を行い、複雑なリサーチタスクを効率化します。
コンテンツ生成
指定されたテーマやフォーマットに沿って、記事、詩、コードなどを生成する能力を持っています。
コードレビューや開発支援
開発者向けの支援ツールとして、コードの検証や最適化提案など、プログラミング作業を効率化します。
見込み客の開拓
ビジネス向けのエージェントとして、マーケティングデータやリード情報の収集、分析を自動化できます。
個人向けアシスタント
ユーザーの好みや過去のデータを基に、パーソナライズされた提案やタスク実行(商品の購入など)を自動で行います。
業務アプリケーションとの連携
APIを持たないレガシーシステムやGUIのみのアプリケーションをAIで制御・自動化することも可能です。
MCP(Model Context Protocol)との連携
2025年3月28日、OpenAIはAgents SDKがMCP(Model Context Protocol)対応したことを発表しました。
MCPは、LLMにコンテキストやツールを提供するためのオープンなプロトコルで、さまざまなデータソースやツールを標準化された方法でAIモデルに接続できるようにします。
イメージとしては、AIアプリケーションにおけるUSB-Cポートのような役割を果たし、データやツールを簡単かつ標準化された方法でモデルに提供します。
Agents SDKはMCPをサポートしており、幅広いMCPサーバーを利用してエージェントにツールを提供できます。
関連記事:「OpenAI Agents SDKがMCPに対応!連携方法や具体的な活用方法まで徹底解説!」
Responses APIとの連携方法
Responses APIは、Agents SDKの中核となるAPIであり、マルチターンの会話や複数ツールの同時呼び出しをサポートします。
これにより、1回のAPIリクエストで複数の処理を同時に実行することが可能となります。ユーザーのリクエストに応じてファイル検索ツールやWeb検索ツールを同時に呼び出し、最終的な回答を迅速かつ正確に提供できます。
また、Responses APIはChat Completions APIのスーパーセットとして設計されており、Chat Completionsで提供される機能に加え、マルチモーダル処理(画像や音声など)や高度なツール利用を可能にしています。
将来的にはAssistance APIの機能もResponses APIに統合され、より包括的なAPI環境へと進化していく予定です。
Responses APIを用いた簡単なサンプルコード
from agents import Agent, Runner, OpenAIResponsesModel
import asyncio
from openai import AsyncOpenAI
agent = Agent(
name="Assistant",
instructions="あなたは親切で役に立つアシスタントです。",
model=OpenAIResponsesModel(
model="gpt-4o",
openai_client=AsyncOpenAI(api_key="あなたのAPIキー")
)
)
async def main():
result = await Runner.run(agent, input="人工知能のメリットを簡単に説明してください。")
print(result.final_output)
if __name__ == "__main__":
asyncio.run(main())
Agents SDKの開発環境と導入方法
Agents SDKの導入は非常にシンプルです。Python環境が前提となりますので、まずPython仮想環境を作成し、有効化します。次にpipを用いてSDKをインストールします。
Python仮想環境の設定
python -m venv env
source env/bin/activate # Windowsの場合: env\Scripts\activate
Agents SDKのインストール
pip install openai-agents
簡単な使用例
from agents import Agent, Runner
# エージェントの作成
agent = Agent(name="Assistant", instructions="You are a helpful assistant")
# タスクの実行
result = Runner.run_sync(agent, "Write a haiku about recursion in programming.")
print(result.final_output)
# 出力例:
# Code within the code,
# Functions calling themselves,
# Infinite loop's dance.
インストール後は上記のような簡単なコードで動作確認を行うことができます。
詳細は、下記の公式ドキュメントをご参考ください。
OpenAI Agents SDK
Agents SDKの活用事例
実際の事例として、以下のような活用例があります。今後、活用事例はより増えてくるものと想定されます。
Coinbaseのエージェントツールキット(AgentKit)
Coinbaseは、暗号資産ウォレットやオンチェーン上の各種アクティビティとシームレスに連携するAIエージェントを、Agents SDKを利用して短期間で実現しました。わずか数時間で自社のDeveloper Platform SDKのカスタムアクションを、完全に機能するエージェントに統合しています。
Boxの企業向け情報検索エージェント
Boxは、社内に蓄積された非構造化データとインターネット上の情報を組み合わせ、エージェントを活用して企業内外の情報検索・抽出を迅速化しました。金融サービス企業などでは、自社の市場分析情報とリアルタイムな経済データを連携させ、投資判断のサポートに役立てています。
他にも、Xでは下記のような事例が投稿されています。
Deep Research AI Agent チームの構築
I built a Deep Research AI Agent team using OpenAI Agents SDK and Firecrawl.
It combines multiple AI agents that can autonomously search the web, extract content, and generate detailed reports with enhanced analysis.
100% Opensource Code with step-by-step tutorials. pic.twitter.com/XCyUNWLjag
— Shubham Saboo (@Saboo_Shubham_) March 17, 2025
noteの自動執筆エージェント
OpenAI Agents SDKで、noteの自動執筆エージェント作った!
あとは、ComputerUseで自動投稿までできそうだね pic.twitter.com/UFTsipntr8
— 吉波拓夢 『Mastraで学ぶAIエージェント開発』 (@yoshi8__) March 17, 2025
OpenAIのAgents SDKについてよくある質問まとめ
- OpenAIのAgents SDKはどのような用途に活用できますか?
Agents SDKは、カスタマーサポートの自動化、リサーチ、コンテンツ生成、コードレビュー、見込み客の開拓など、多岐にわたる業務の効率化に活用できます。複数のAIエージェントを連携させることで、より複雑なタスクを自動的に処理することが可能です。
- Agents SDKの利用料金はかかりますか?
Agents SDK自体はオープンソースのフレームワークとして無償で利用できます。ただし、実際に運用する際には、使用するOpenAIのAPIやその他のクラウドリソースに応じた料金が発生する場合があります。最新の料金体系については、OpenAIの公式ドキュメントをご確認ください。
まとめ
OpenAIのAgents SDKは、エージェントの構築と運用を劇的に簡素化し、企業が多様な業務タスクにAIを活用するための強力な基盤を提供します。
高度なカスタマイズ性、拡張性、そしてシームレスなAPI連携により、カスタマーサポートやリサーチ、コンテンツ生成など、さまざまなユースケースで大きな効果を発揮します。
今後もSDKの進化により、さらに多彩なエージェントの活用が期待され、業務効率の向上に寄与することでしょう。
AI Marketでは

AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
弊社代表 森下𝕏:@ymorishita
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp
