ステレオカメラとは?仕組み・メリット・デメリット・活用方法を徹底紹介!
最終更新日:2024年11月09日
ステレオカメラは、物体の立体感や距離を把握できる距離センサの一種です。製造業の外観検査や自動運転技術、ロボティクスなど、画像認識など、さまざまな分野で活用が検討されています。
本記事では、
ステレオカメラがどのように企業の業務効率化や自動化に貢献できるかなど、導入を検討している企業担当者にとって有益な情報を提供しますので、ぜひ最後までご覧ください。
AI Marketでは
画像認識・画像解析・画像処理に強いAI開発会社をご自分で選びたい場合はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
ステレオカメラとは?
ステレオカメラとは、2つのカメラを使用して対象物を異なる角度から同時に撮影し、人間の目のように奥行き情報を取得できるカメラです。他の3Dカメラについてはこちらの記事をご覧ください。
ステレオカメラは、人間が物を見るときの視差を模倣することで、周囲の空間をより正確に認識します。ここで視差とは、異なる視点から同じ物体を見たときに生じるわずかなズレを指し、この情報をもとに物体までの距離を算出できます。
以下では、距離測定の仕組みやLiDARとの違いを紹介します。
ステレオカメラの仕組み
ステレオカメラは、2つのレンズを使って同時に撮影した画像の視差をもとに、三角測量の原理を用いて物体までの距離を求める仕組みです。具体的な流れは以下のとおりです。
- 2つのカメラレンズで同時に対象を撮影
- 歪み補正:レンズによって生じる画像の歪みを修正し、正確なデータを取得
- 平行化:2つのカメラの画像を基準に合わせ、解析がしやすい状態に調整
- ステレオマッチング:2つの画像間で対応するポイントを見つけ出し、そのポイントの視差を計算して距離を求める
この仕組みにより、高精度かつスピーディな距離測定が可能となります。
LiDARとの違い
ステレオカメラは「受動式」であるのに対して、LiDARは「能動式」センサである点が大きな違いです。
ステレオカメラは周囲の光を利用して情報を取得するため、外部からの信号を発することはありません。一方で、LiDARは光や電磁波を対象に向けて発射し、その反射をもとに距離を測定します。
関連記事:「LiDARとは?自動運転や監視カメラで注目の機能・メリット・デメリット・企業活用事例を徹底解説!」
ステレオカメラとAI
ステレオカメラとAIの組み合わせは、従来の画像認識を超えた、より高度で実用的なコンピュータビジョンを可能にします。
- 3D情報の高度な解析
ステレオカメラで取得した3D情報をAIが解析することで、より精密な物体認識や環境理解が可能になります。 - 不審行動の検知
ステレオカメラの距離情報とAIの行動分析を組み合わせることで、より高精度な不審な行動パターンを検出できます。 - 画像認識の精度向上
ステレオカメラの立体視情報をAIの学習データとして活用することで、2D画像だけでは難しかった物体の正確な識別が可能になります。 - エッジAIでリアルタイム処理の実現
ステレオカメラにAI処理機能を実装することで、高速かつリアルタイムな3D情報処理が可能になります。
今後、さらなる技術革新により、私たちの生活や産業に大きな変革をもたらすことが期待されています。
AI Marketでは
ステレオカメラのメリット
ステレオカメラを活用することで、業務効率化や自動化を進める企業にとって、さまざまなメリットがあります。ここでは、他の距離計測機器であるLiDARやミリ波レーダーと比較しながら、その主なメリットについて解説します。
リアルタイムで安定した距離測定ができる
ステレオカメラは幅・高さ・奥行きの3次元情報を短い時間間隔かつ連続的に取得できることから、単眼カメラと比較して安定した距離測定が可能です。
また、LiDARが距離に関係なく±10センチの精度でしか測定できないのに対し、ステレオカメラは距離の2乗に反比例するように測定精度が高くなる特性を持ち、特に近距離での精度に優れています。
ステレオカメラであれば、近接する場合に高精度な距離データを瞬時に得られることから、近距離での衝突回避が必要な自動運転分野において、LiDAR+単眼カメラの代替になる計測機器として期待を集めています。
導入コストが比較的低い
ステレオカメラは、LiDARやミリ波レーダーと比較して、導入コストが低いのも大きなメリットです。
それぞれの導入コストの相場は、以下のとおりです。
距離計測機器 | 平均導入コスト(目安) |
---|---|
ステレオカメラ | 30万〜200万円 |
LiDAR | 150万〜1000万円以上 |
ミリ波レーダー | 80万〜300万円 |
LiDARは高精度なレーザーとシステムを利用し、高精度で広範囲をカバーできる分、導入コストがかかる傾向にあります。
一方、ステレオカメラは2台のカメラと画像処理ソフトにより処理でき、ハードウェアにかかるコストが比較的低いため、ハイエンドモデルでもLiDARのローエンドモデル以下の価格で導入できる場合もあります。
したがって、ステレオカメラは他の距離測定機器と比べて手軽に導入できるため、特に限られた予算で距離測定機器を検討している企業に適した選択肢です。
反射率に依存しない
LiDARやミリ波レーダーは、物体からの反射波を利用するため、黒い車や樹木、段ボールなど反射率の低い物体を検出するのが難しい傾向にあります。
一方、ステレオカメラは物体表面のパターンや境界を検出するため、反射率が低い物体に対しても有効です。これにより、LiDARなどの他の距離計測機器では測定できない低反射の対象物でも安定した測定が可能です。
立体視が可能
LiDARやミリ波レーダーは、画像に比べてデータの密度が低く、立体物の形状を詳細に得ることはできません。
一方ステレオカメラは、人間の目に近い構造を持ち、人間と同じように自然な立体視が可能です。物体の形状やテクスチャを詳細に捉えられ、物体の輪郭やパターンを精密に測定できます。
これにより、ステレオカメラは障害物の検出において、LiDARなど他の距離計測機器に対して圧倒的な優位性を持ってます。
ステレオカメラのデメリット
ステレオカメラは、多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも存在します。以下では、そのデメリットについて紹介します。
校正が必要
ステレオカメラの2つのレンズで取得した画像を正確に比較し、距離情報を得るためには、使用前にカメラの位置関係やレンズの歪みなどカメラ自体の校正が必要です。
校正が不十分だと、得られる3D情報の精度が低くなり、実際の距離に対して大きな誤差が生じる可能性もあります。
そのため、特に小さな測定ミスが許されない自動運転や医療支援へステレオカメラを活用する場合には、位置ズレなどを高精度に校正できる画像処理ソフトが重要です。
悪天候で性能が低下する
ステレオカメラは、天候の影響を受けやすい点がデメリットです。特に霧や雨、逆光といった悪条件下では、カメラが取得する画像の品質が低下し、物体の識別や距離測定が困難になることがあります。
これに対して、ミリ波レーダーは悪天候に強く、これらの条件でも安定して動作することから、ステレオカメラが適切でない使用環境では他の計測機器の検討が必要なケースもあります。
遠距離の測定精度が低い
ステレオカメラのもう一つのデメリットは、遠距離での測定精度が低下することです。ステレオカメラの測定精度は、距離が遠くなるにつれて急激に悪化します。これは、視差が小さくなるため、測距精度が比例して低下するためです。
そのため、遠距離での精密な測定が必要な場合には、LiDARやミリ波レーダーのほうが適している場合もあります。
ステレオカメラの活用方法
ステレオカメラは、さまざまな分野での活用が進んでおり、特に製造現場やロボティクス、建設現場などで積極的に導入され始めています。また、AI(人工知能)との組み合わせにより、さらなる精度向上や効率化が実現されつつあります。
以下では、具体的な活用例を紹介します。
【リンクス】自動車部品の外観検査
ステレオカメラは、製造現場での外観検査へ積極的に活用されています。
例えば、リンクスが扱う「3DPIXAシリーズ」は、高さ画像とカラー画像を同時に取得できるステレオビジョン方式のカメラと、画像処理にディープラーニングを採用することで、サブミクロン精度での高精度計測を実現しています。
主に、自動車のエンジンやブレーキなど多数の金属部品で構成される製品の外観検査で活用され、鏡面に近い金属平面上の打痕等の欠陥においてより的確な検査・計測をサポートしています。
この例のように、外観検査でステレオカメラとAIを活用することで、過検出を削減し、欠陥の安定検出が可能となります。
関連記事:「AIを活用して外観検査を実施するメリット、手順、注意点について解説」
【RUTILEA】金属部品の外観検査
株式会社RUTILEAは、ステレオカメラとAIによる画像処理を組み合わせて製造業での外観検査を自動化しています。
ギア検査の自動化は、金属表面の個体差や不良データの収集困難さから、従来は難しい課題でした。RUTILEAは照度差ステレオ法を用いた新しいアプローチを開発しました。
従来は1つの不良に対して約10,000枚の画像が必要でしたが、この方法により100枚まで削減できました。これは99%の削減率に相当します。
特に、金属部品や複雑な形状を持つ製品の検査において、ステレオカメラは威力を発揮します。例えば、ギアやプレス部品、アルミダイカスト部品などの検査では、表面の微細な凹凸、キズ、打痕などを高精度に検出することが可能です。
また、シリンダーヘッドやエンジンブロックなどの自動車部品の検査では、鏡面に近い金属平面上の欠陥を正確に識別できます。
【ナノシード】ロボティクス
ロボティクスの分野では、ピッキングロボットや移動ロボットにおいて、ステレオカメラが障害物検知や物体の正確な位置情報の把握に使用されています。
例えば、ナノシードのステレオカメラ「SceneScan Pro」は、パッシブ方式のリアルタイム三次元距離センサで、明るい屋外や水中など幅広いシーンでの距離測定が可能です。
ステレオカメラをロボットに搭載することで、ロボットの適用範囲が広がり、工場や物流センターでの大幅な作業効率向上につなげられます。
関連記事:「AIロボットのメリットや各分野で実際に研究、導入されている事例について紹介」
【萩原エレクトロニクス】建設現場
建設現場では、作業員の安全を確保するために、ステレオカメラとAIを組み合わせた装置が導入され始めています。
例えば、萩原エレクトロニクスのステレオカメラを活用した安全補助装置 「AI ヒト・モノ検知システム」は、建設機械や産業車両向けの異常検知システムです。工事現場の過酷な環境下でも、ステレオカメラの高速な演算技術により、誤検知や過剰アラートを抑えた精度の高い検知を提供しています。
建設現場ではステレオカメラのリアルタイムな近距離測定を活かし、作業員の事故防止や作業の安全性向上につなげています。
関連記事:「建設業におけるAIの活用と導入について、最新の開発状況と具体的な用途について説明」
自動運転
自動運転の分野でも、ステレオカメラはADAS(先進運転支援システム)の一部として活用されています。ステレオカメラは車間距離の測定や自動ブレーキ、白線認識など、車両の運転支援において重要な役割を果たしています。
さらにステレオカメラから得られる情報をAIが分析することで、精度の高い走行環境の把握が可能です。AIとステレオカメラの相互補完によって、路上の障害物や人をより正確に検知でき、自動運転の実現へ近づくことが期待されます。
医療
医療分野では、ステレオカメラが手術支援や放射線治療において、患者の精密な位置情報を提供するために活用されています。ステレオカメラの3D計測技術を駆使することで、患者のポジショニングを高精度に行うことが可能になり、治療の正確性を向上させるのに役立ちます。
例えば、外科手術では微妙な位置調整を要する場面が多く、近距離測定に強みを持つステレオカメラが安全な手術をサポートします。、外科手術を中心にさまざまな医療シーンでステレオビジョン技術を採用しており、精度の高い医療を実現しています。
このように、ステレオカメラのリアルタイムな3D計測能力は、医療現場での効率性と安全性の向上に大きく寄与しています。
医療分野に強いAI開発会社をこちらで特集していますので併せてご覧ください。
今後の展望
今後、ステレオカメラ技術はさらに進化し、これまで以上に幅広い分野での活用が期待されています。
特に4Kや8Kといった高解像度カメラの導入により、測定精度が一層向上し、製造現場や自動運転技術での応用範囲が広がるでしょう。
特に、自動運転技術では、3次元マップマッチングとの連携が進むことで、より安全で効率的な運転支援システムが実現されることが期待されます。
また、アルゴリズムの進展によって物体認識能力が向上し、より複雑な状況下でもリアルタイムでの精密な分析が可能になると期待されます。
さらに、技術の進展に伴い、ステレオカメラの低価格化も進み、これまでコストの面で導入を先延ばしにしていた企業の活用が進むでしょう。
ステレオカメラについてよくある質問まとめ
- ステレオカメラの導入コストはどれくらいですか?
ステレオカメラの導入コストは、使用するカメラの種類や解像度、用途によって異なりますが、LiDARなど他の距離計測機器と比べて比較的低コストで導入可能です。
- ステレオカメラの校正はどのくらい頻繁に必要ですか?
ステレオカメラの校正は、初回導入時や設置環境の変更時に必要です。運用中も精度を維持するため、定期的な確認や再校正を行うことが推奨されます。
- ステレオカメラを導入すると、どの程度外観検査の精度が向上しますか?
検査対象や環境によって異なりますが、一般的に2D画像処理と比べて30〜50%の精度向上が期待できます。特に金属表面の微細な凹凸や、複雑な形状を持つ部品の検査で高い効果を発揮します。ただし、最適な結果を得るには、カメラの設置位置や画像処理ソフトウェアの調整が重要です。
まとめ
ステレオカメラは、2つのカメラを使って奥行きや立体感を捉える技術で、製造業の外観検査やロボティクスなどでさまざまなシーンで活用されています。
これらの課題に対応しながら導入することで、企業は業務効率化や自動化を実現し、競争力を強化できます。距離測定機器を検討している場合には、今回の機会に高コスパで導入できるステレオカメラをまず活用してみてはいかがでしょうか。
AI Marketでは
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp