クラスタリング(クラスター分析)とは?機械学習でなぜ重要?種類・メリット・注意点・活用事例を徹底解説
最終更新日:2024年12月02日
近年、AIや機械学習が広まっている中で「クラスタリング」や「クラスター分析」と呼ばれる手法を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。クラスタリングとは、データを類似度にもとづいてグループ分けするデータ分析手法です。
データ分析の代表的な手法をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
クラスタリングによって
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目次
クラスタリング(クラスター分析)とは?
クラスタリング(クラスター分析)とは、データセットを類似度にもとづいてグループ(クラスタ)ごとに分類する、データ分析の手法のひとつです。例えば、顧客データをクラスタリングして購入した商品の種類ごとにわけることで、その商品に関心を持つ顧客層が見えてきます。
このデータを活用することで、同様の顧客層へも同じ商品をおすすめするといった使い方が可能です。
分類との違いは?
同じようにデータをグループ分けする方法として「分類」と呼ばれる手法もありますが、クラスタリングと分類とには明確な違いがあります。それは、クラスタリングではどのようなグループに分けるか前提の答えが存在しないという点です。
分類では、グループ分けの際に明確な答えが決まっており、その決まった答えに属するかどうかで仕分けが行なわれます。しかし、クラスタリングは絶対的な答えがなく、あくまでデータセットの中から共通点を探してグループごとに分けていく手法です。
機械学習におけるクラスタリング
機械学習におけるクラスタリング技術は、膨大なデータの中から隠れたパターンや構造を発見する強力な手段として、多大な注目を集めています。
データが爆発的に増加する現代において、企業や研究機関は、手に負えないほどの情報の海から有用な洞察を引き出す必要に迫られています。クラスタリングは、この挑戦に対応するための重要なツールです。
クラスタリングにより、類似の特徴を持つデータをグループ化し、これらのグループ内での関連性やパターンを明らかにすることが可能になります。例えば、顧客データをクラスタリングすることで、特定の購買行動や好みのパターンを発見し、マーケティング戦略を最適化することができます。
また、医療データを分析する際には、病気の早期発見や治療法の開発に貢献する可能性があります。
クラスタリングは、単なるデータ分類を超えて、未知のインサイトを発掘し、予測不可能な相関関係を明らかにすることで、ビジネスや科学研究に新たな視点をもたらします。機械学習におけるこの進化は、データ駆動型の意思決定を強化し、より賢い、効率的な戦略の実現を可能にしているのです。
クラスタリングの種類
階層的クラスタリング | 非階層的クラスタリング | |
---|---|---|
分類方法 | データ同士の類似度の近さで階層に分ける | 階層を作らずにデータ全体を分類する |
向いているデータの総数 | 数十個程度 | 100個以上 |
メリット | データを可視化しやすい | データ処理が速い |
デメリット | 膨大なデータに向いていない | クラスタ数を人間が設定する必要がある |
クラスタリングには「階層的クラスタリング」と「非階層的クラスタリング」の2種類があり、それぞれ異なる方法でグループ分けを行ないます。
ここでは、両者の違いや、どちらを使えばよいのかについて詳しく解説します。
階層的クラスタリング
階層的クラスタリングは、データを類似度が高い順に徐々にグループ化し、これを階層構造で表現する手法です。このプロセスでは、各データポイントを個別に分析し、類似性に基づいて段階的に集約していきます。データをひとつひとつ分析し、データの類似度合いが高いもの・低いものに分類して順番にまとめていきます。
別の言い方をすると、階層的クラスタリングは、データを小さなグループから始め、徐々に大きなグループに統合する過程です。
例えば、人物の写真を整理する過程で、まずは近い関係の人々を一緒に分類し、次にそれらの小さなグループをより大きな家族グループに統合していく方法に似ています。最初は配偶者(夫や妻)や子供を最近親の家族として分類します。
次に実の父母、義理の父母の写真を含めて、より大きな家族単位でまとめていきます。続けて、兄弟姉妹、親族と拡げていき、この一連のステップを通じて、家族の階層的な構造が明確になります。
この方法の利点は、データ構造を樹形図(デンドログラム)で視覚化できるため、クラスタリングの結果を直感的に理解しやすいことです。特にデータセットの内在する関係性を探求したい場合に有効です。
ただし、データをひとつずつ比較・検証していくため、膨大なデータには向いておらず、処理に時間がかかる場合もあります。そのため、データが100個を超える大きな数ではないデータセットや、階層構造が重要となるデータを扱うのに向いている手法です。製品のカテゴリ分けや顧客セグメントの微細な区分けに役立ちます。
非階層的クラスタリング
非階層的クラスタリングは、データを階層ごとに並べずに単純なグループ分けを行なう分類方法です。全体のデータの中から類似度の高いものを探してまとめ、事前に設定したクラスタ数に分けます。
非階層的クラスタリングは、階層的クラスタリングより直接的で目的指向的なアプローチです。
写真アルバムを整理する際に、すでに「学校行事」「旅行」「日常の出来事」といったカテゴリーを事前に設定し、それぞれの写真をカテゴリーに直接分類する方法に例えられます。写真を一つ一つ見て、それがどのカテゴリーに最も適しているかを判断し、直接そのカテゴリーに分けていきます。
このプロセスでは、階層的な構造を形成するのではなく、最初から定めた数のグループにデータを割り当てます。
クラスタ数をあらかじめ設定しておくため、データすべてを検証する必要がある階層的クラスタリングよりも処理が速い点がメリットです。膨大なデータを扱う場合や、適切なクラスタ数を推測できる状況で特に有効です。特に、市場のセグメント化や顧客の行動パターンの特定に役立つでしょう。
一方で、分析するデータセットに適しているクラスタ数は人間が決定しなければならないため、手間がかかる側面もあります。
クラスタリングの3つのメリット
クラスタリングには、主に以下のメリットがあります。
- 膨大なデータを構造的に捉えられる
- 人間では気づかない特徴を発見できる
- データ処理の効率化が図れる
ここでは、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
膨大なデータを構造的に捉えられる
クラスタリングを使うことで、人間の手では処理が難しい膨大なデータでも構造的に捉えることができるようになります。例えば、市場調査やアンケートなどで得られる結果を人間が見ても、顧客の多数が望む商品が分かったり、個別の回答を大まかな傾向に分けたりする程度にとどまります。
しかし、クラスタリングを使うことで、調査結果を構造化して市場全体の顧客の性別・年齢・嗜好をより詳しく分析可能です。このような分析はセグメンテーション(市場細分化)と呼ばれ、個々のグループごとのニーズを明確にできるクラスタリングが向いています。
人間では気づかない特徴を発見できる
クラスタリングでは、人間の手では発見できない特徴も見つけられる特徴があります。これは、客観的なデータのみにもとづいて分類が行なわれるためです。
人間の手で分析をするとどうしても主観が入ったり、固定概念に囚われたりして新しいパターンを発見できないことも多いでしょう。そこで、クラスタリングによる膨大なデータの客観的分析が役に立つのです。
例えば、新しいサービスで競合との差別化をはかる際には、クラスタリングによる顧客分析でほかのサービスにはないニーズを探し出すことができます。
このような新しい発想ができるのも、客観的かつ細かい分類分けができるクラスタリングならではの特徴です。
データ処理の効率化が図れる
クラスタリングは大量のデータでも効率的に分析・分類できます。これは、それぞれのデータに特徴をラベリングせずにグループ分けを行なうためです。
この特徴は、例えばテストマーケットの選出などで役立ちます。本格的なマーケティングを実施する前に小規模のマーケットで施策を行なうテストマーケティングでは、どこを対象にするかが非常に重要です。
実際のマーケットに近い環境でテストを行なわなければ、評価の意味がなくなってしまいます。そこで、ターゲットとなる顧客を細かく分類できるクラスタリングが役立つのです。
クラスタリングによって形成されたグループからテストマーケットを選ぶことで、客観的に網羅されたテストを行なうことができます。
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クラスタリングを使う際の3つの注意点
クラスタリングには多くのメリットがありますが、以下のような注意点も存在します。
- 目的を明確にして分析する
- 手法によっては時間がかかる
- 精度評価をしっかり行なう
これらを意識することで効果的なクラスタリングが可能になりますので、詳しく見ていきましょう。
目的を明確にして分析する
クラスタリングを行なう前には、その分析の目的などを考えておくようにしましょう。目的がなければどのデータを分析すべきかわからず、また結果が得られてもそれをどう活用すればよいか分からなくなってしまいます。
クラスタリングで得られる結果はあくまで構造化されたデータのみであるため、それをマーケティングなどへ正しく活かすためにはしっかりとした目的が大切です。
また、分析前にあらかじめ結果の予測や仮説を立てておくことも重要となります。これは、予測と結果とのずれこそが、人間によるデータ分類では得られないクラスタリングならではの分析結果であるためです。
自社調査などで得た傾向をもとにするなどして、どのような傾向でクラスターが分類されるのか、いくつに分類されるのかといった仮説を立ててクラスタリングを行ないましょう。
手法によっては時間がかかる
クラスタリングは、手法とデータの個数によっては時間がかかる場合もあります。とくに階層的クラスタリングを採用する場合は、データをひとつずつ比較検証していくため、データ数が多くなるほど時間がかかってしまうのです。
また、クラスタリングはあくまでデータの分類を行なうものであるため、それを活用するための分析にも手間がかかります。なぜこのような分類になったのか、どのような規則性があるのかについては人間が見ていく必要があるのです。
場合によっては相関分析・回帰分析など別の分析手法も行なうことになり、結果として時間がかかる可能性があります。
クラスタリングは簡単にデータを処理できる便利なツールではなく、それらを分析する時間もかかるものであることに留意しておきましょう。
精度評価をしっかり行なう
クラスタリングでは、精度評価をしっかりと行なうことも重要です。設定するクラスタ数・使用する手法・データ範囲などを少し変えただけでも大きな変化が出ることがあります。
そのため、複数の手法や入力値を使った場合に結果がどう変化するのかを検証し、正しい結果が出ているかどうかの確認が重要です。
ただし、設定する指標を準備するのはあくまで人間であるため、主観が入らないよう細心の注意を払いましょう。「男性はこの商品が好みだろう」「30代ならこのサービスを選ぶだろう」などの固定概念があると、その考えに沿った分類結果を正しいと思い込んでしまいがちです。
このように、クラスタリングの結果は必ずしもすべて正しいとはいえず、常に人の手で精度を確かめていく必要があります。
クラスタリングの活用事例3選
それでは、クラスタリングは実際にどのような場で活用されているのでしょうか。
- 問合せ履歴からAIチャットボットを作成
- 顧客データを分析してセグメンテーションを実施
- 画像や音声を分析してジャンルごとに分類
ここでは、この3つの活用事例について詳しく紹介します。
問合せ履歴からAIチャットボットを作成
AIチャットボットを導入する際に、その学習過程でクラスタリングを活用できます。AIチャットボットの活用事例をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
カスタマーサービスを行なうAIチャットボットでは、顧客からの質問を正しく受け取り適切な答えを返すように、内部データのメンテナンスが欠かせません。このとき、問い合わせ内容の分析は人の手で行なわなければならない場合がほとんどでした。
しかし、クラスタリングで問い合わせ履歴を分類分けすることで、これらの業務を大きく簡略化できます。質問内容や求める回答の傾向を把握することで、よりカスタマーサービスに力を入れる分野や、対応が必要となる顧客層が明確になるためです。
このように、クラスタリングを活用することでAIチャットボットの内部データ調整を自動で行なうことができるようになっています。
顧客データを分析してセグメンテーションを実施
顧客データを分析したセグメンテーションは、クラスタリングが大きく役立つ分野です。セグメンテーションとは、本来は「区分」という意味の言葉ですが、マーケティングでは顧客を特性やニーズごとに細分化することを指します。
クラスタリングによって膨大な顧客データの傾向を把握できれば、新商品を打ち出すターゲットの選定や、新たなペルソナの発見に繋げることが可能です。また、さらに細分化を行なえば顧客一人ひとりの特性を分析でき、個々に合わせたマーケティングができるようにもなります。
このようにクラスタリングによって、顧客が持つニーズがどこにあるのか、また自社サービスが展開しやすいマーケットはどこなのかを予測することが可能となるのです。
マーケティング分析について、こちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
画像や音声を分析してジャンルごとに分類
クラスタリングを活用することで、画像や音声の分類も効率的に実施可能です。
クラスタリングの活用方法として、大量のメール・チャット・SNS投稿などの文章データを解析して情報を抽出する「テキストマイニング」があります。しかし、これは文章だけではなく、画像・音声といった抽象度の高いデータでも分類ができるのです。
例えば、写真素材を販売しているサイトでは、それらをジャンルごとに分類する場合が多いでしょう。膨大な画像データを分類するには、これまでは人間が画像を見てジャンルを判断することがほとんどでした。
しかし、クラスタリングを活用すれば自動で分類ができるだけでなく、人間の主観が入らない新しいジャンルグループが生まれる可能性もあります。このように、クラスタリングを活用することでさまざまな種類のデータ分類が可能となるのです。
テキストマイニングやデータマイニングをこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
クラスタリングについてよくある質問まとめ
- クラスタリングとは?
クラスタリングとは、データセットを類似度にもとづいてグループ(クラスタ)ごとに分類する、データ分析の手法のひとつです。クラスター分析とも呼ばれます。たとえば、顧客データをクラスタリングして購入した商品の種類ごとにわけることで、その商品に関心を持つ顧客層が見えてきます。
- なぜ機械学習でクラスタリングを使う?
機械学習におけるクラスタリング技術は、膨大なデータの中から隠れたパターンや構造を発見する強力な手段として、多大な注目を集めています。
例えば、顧客データをクラスタリングすることで、特定の購買行動や好みのパターンを発見し、マーケティング戦略を最適化することができます。また、医療データを分析する際には、病気の早期発見や治療法の開発に貢献する可能性があります。
クラスタリングは、単なるデータ分類を超えて、未知のインサイトを発掘し、予測不可能な相関関係を明らかにすることで、ビジネスや科学研究に新たな視点をもたらします。
まとめ
クラスタリングは、簡単にデータを構造化でき、客観的な分類を自動的に行ってくれる便利な手法です。顧客データや売上データの分析を効率化してくれるため、うまく活用すれば新たなビジネスチャンスを掴めるかもしれません。
今後、クラスタリングの活用がさらに広まれば、企業が大きなデータを使って分析をするのは当たり前になっていくでしょう。ぜひ
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