NPU(Nural Processing Unit)とは?AI PCを実現するプロセッサの特徴・CPUやGPUとの違い・メリットを解説!
最終更新日:2024年10月29日
近年、AIを搭載したPC、AI PCが注目されています。AI処理に特化したハードウェアを内蔵することで、ローカルな環境でも高精度の処理が可能です。その処理を担う新たな頭脳、それがNPU(Neural Processing Unit)です。
スマートフォンやPCに搭載され始めたNPUは、AIの性能を飛躍的に向上させ、私たちの日常生活を大きく変えようとしています。
この記事では、NPUの特徴やCPUやGPUとの違い、メリット、開発に取り組む企業について解説していきます。NPUを聞いたことがない方でも、NPUがどんな技術で何ができるのか理解できる内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
NPU(Nural Processing Unit)とは?
NPU(Nural Network Processing Unit)とは、AIの演算処理に特化したプロセッサです。従来のCPUやGPUが汎用的な計算処理を行うのに対し、NPUは特にニューラルネットワークの演算に適した技術で、AIの処理を高速化する役割を担います。
AI技術が進化する中で、ディープラーニングや機械学習といった複雑なアルゴリズムの処理が不可欠となっています。これに伴う計算負荷を効率的に処理できるのがNPUです。並列処理に優れており、画像認識や自然言語処理などのAIタスクはもちろん、画像生成などの生成AIを高速に実行できます。
高い効率性を実現した結果として、AIの処理時間を短縮し、より迅速なデータ処理を可能にしています。今後、スマートフォンやタブレット、自動運転車など様々なデバイスにNPUが搭載されるでしょう。NPUを搭載したPCにAIが搭載されることで、AI PCがより身近で高性能なものになると期待されています。
AI推論のローカル処理が可能
NPUの特徴として、AI推論のローカル処理が可能になる点が挙げられます。AIの推論処理を行う際、クラウドサーバーに依存するケースが多く、ネットワークの遅延やセキュリティリスクが課題となっていました。
NPUを利用することでパソコンやスマートフォンといったデバイス内部でAIモデルを活用できるようになり、リアルタイムでAI処理や推論を行うことが可能です。これにより、インターネット接続が不安定な環境でも高速で安定したAI処理を実現できます。
また、プライバシー保護の観点からもNPUは有効です。AIが処理したデータが外部に漏れにくくなり、セキュリティ面においても従来より安全性が高まることが期待されます。これは、エッジAIと呼ばれる考え方です。
CPU、GPUとの違い
プロセッサ | 特徴 | 得意なタスク | 消費電力 |
---|---|---|---|
CPU | 汎用プロセッサで、幅広いタスクを処理可能 | シリアル処理が得意で、一般的な計算やタスク処理に優れる | 高め |
GPU | 並列処理に特化し、多くのコアを持つ | グラフィックス処理や並列計算、ディープラーニングのトレーニングに適している | 中程度から高め |
NPU | ニューラルネットワーク計算に最適化 | エッジ端末でのAI推論やディープラーニングモデルの高速処理に優れる | 低め |
CPU(Central Processing Unit)は、汎用的な計算処理を行うコンピュータの中心的ユニットを指します。全てのコンピュータの基盤となっているシステムで、複雑な計算処理が得意としており、幅広いタスクに対応可能です。
GPU(Graphics Processing Unit)は並列処理に優れており、従来は画像データの処理に特化していました。CPUほど汎用性は高くないものの、グラフィックス処理、大規模な並列計算、ディープラーニングのトレーニングにおいて高速で処理することが可能です。
関連記事:「GPUとは?なぜ世界的に品薄?重要性・AIとの関係を徹底解説!」
これに対して、NPUは学習ではなく推論に特化し、AIの演算処理、特にニューラルネットワークの処理を専門としたプロセッサーとなっています。AIモデルの推論を効率的に実行するために設計されており、大量の行列計算や畳み込み操作を高速で行うことが可能です。これにより、AIの高度な演算処理を最小限の消費電力で実行できます。
CPUやGPUは多用途に利用されるプロセッサですが、NPUはAI専用のプロセッサとして圧倒的な性能を発揮します。
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NPUをデバイスに搭載するメリット
AIの処理に特化したNPUをコンピュータに搭載することで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、NPUのメリットについて見ていきましょう。
CPUへの負荷を軽減できる
NPUでAI処理を行うことで、CPUへの負荷を大幅に軽減することが可能です。これまでAIの推論処理はCPUやGPUで行われていましたが、これらの処理は計算負荷が高く、他のタスクの処理速度に影響を与えることがありました。
NPUは、このような負荷の高いAI処理を専門で担当するため、CPUは他の画像処理などに対応できるようになり、効率性が向上します。マルチタスク環境でも安定したパフォーマンスが維持できるのが、NPUの特徴です。
AIの推論処理における消費電力を抑えられる
CPUやGPUといったプロセッサは汎用的な設計であるため、AIの複雑な計算を行う際には多くの電力を消費します。しかし、NPUはAIの推論処理に特化しており、AIデータの処理において効率的に電力を使うことが可能です。
このため、モバイルデバイスや組み込みシステムなど、バッテリー寿命が重要なコンピュータシステムでも省電力を実現しつつ、高性能なAI機能を維持できます。
セキュリティリスクを低減できる
NPUはデータ処理をデバイス内部で完結させる能力を持ち、AI推論をローカルで実行できるため、クラウドにデータを送信する必要がなくなります。これにより、外部からの攻撃やデータ漏洩のリスクが大幅に減少します。
また、デバイス内での処理により機密性の高いデータや個人情報を外部に出さずに済むため、プライバシー保護の面でも安全を確保することが可能です。NPUはローカルな環境でのAI処理を実現させ、セキュリティの強化に貢献します。
リアルタイム処理能力の性能向上
NPUはニューラルネットワークの演算を高速かつ効率的に処理できるため、リアルタイムでのデータ解析や推論が求められるAIアプリケーションの性能向上に不可欠な技術です。NPUによって、画像・音声認識や自然言語処理が正確に動作するようになります。
また、NPUの高い演算能力により、複雑なAIモデルの運用も可能です。これまで実現が難しかった高度な機能やサービスを、NPUが展開できると期待されています。
オフラインでも稼働できる
NPUを搭載することで、AI機能をオフラインでも利用可能なデバイスに組み込むことが可能です。従来、AIの高度な処理はクラウドに依存していましたが、NPUの導入によりローカルでのAI推論が可能となります。
これにより、インターネット接続がなくてもスマートフォンやIoTデバイス、車載システムなど、さまざまなデバイスでAI機能を利用できます。例えば、オフライン環境での音声認識や画像解析が求められるシーンでも、NPUがあれば正確な処理が可能です。
このように、NPUはデバイスの利用シーンを広げ、AI技術をより使いやすくしてくれます。本格的なエッジAIの実現にNPUは欠かせない技術です。
関連記事:「エッジAIとは?活用事例解説!カメラ分析・エッジコンピューティングでの活用」
NPUを搭載したPCの開発に取り組む企業
NPUを搭載したコンピュータとして一般的に知られているのが、パソコンです。現在、以下の企業がNPUを搭載したPCの開発に取り組んでいます。
- Microsoft
- Intel
- マウスコンピューター
各企業のAI PCへの取り組みについて解説します。
Microsoft
Microsoftでは、NPUを搭載したPCの規格化に積極的に取り組む企業です。Copilot+ PCという規格を定義し、PC製造メーカーと協力してこの規格に適合したAI PCの開発を促進しています。
Copilot+ PCの主な要件として、40TOPS(毎秒40兆回の高速演算処理性能)以上のNPU性能を持つことが提唱されています。
例えば、QualcommのプロセッサSnapdragon® X シリーズは、毎秒45兆回の高速演算処理性能(TOPS)のNPUを搭載しています。リアルタイムでのAI機能の強化や、ユーザーインターフェースの改善が期待されています。NPUによって、迅速なレンダリングやアプリケーションの並列実行、1日中稼働できるバッテリーなどを実現します。
既にSurface Pro (第11世代)やSurface Laptop (第7世代)から搭載されています。これからCopilot+ PCの全機能が利用可能になり、各社のNPU搭載プロセッサを搭載したAI PCが出揃うことが期待されています。
Intel
IntelもAI PCの開発に取り組む企業で、2025年までにNPUを搭載したAI PCを1億台以上出荷するという普及戦略を立てています。Intelは新しいCore Ultra(コア・ウルトラ)プロセッサーを発表しました。Core UltraプロセッサーはNPUを内蔵しており、ローカルでのAI推論処理を可能にしています。また、2024年6月に発表した第4世代NPUは、48TOPSを実現しています。
Intelは「AI Everywhere」という戦略を掲げており、あらゆるプラットフォームでAIを活用できる環境を構築することを目指しています。これには、AI PCの普及も含まれています。
マウスコンピューター
マウスコンピューターでは、2024年7月時点でNPUを搭載したノートPCを販売しています。クリエイターとビジネス向けのPCで、Teamsなどの簡単なAI処理がローカル上で行えるようになりました。
マウスコンピューターはグラフィックス×AIに特化したPCも販売しており、Stable DiffusionやNovel AI Diffusionなどの画像生成AIを快適に活用できるスペックとなっています。
NPUについてよくある質問まとめ
- NPUとGPU、CPUの違いは何ですか?
GPUとCPUは多用途に使われるプロセッサで、汎用性が高いのが特徴です。
一方でNPUはAI処理に特化したプロセッサで、GPUやCPUより汎用性は低いものの、AI演算やニューラルネットワークにおいては高速な処理が可能です。
- NPUを導入するメリットは?
NPUを導入することで、以下のようなメリットが期待できます。
- CPUへの負荷を軽減できる
- AIの推論処理における消費電力を抑えられる
- セキュリティリスクを低減できる
- AIアプリケーションの性能向上
- オフラインでもさまざまなデバイス搭載できる
- NPU搭載のPCは今後、一般的になっていくのでしょうか?
はい、NPU搭載PCは今後急速に普及していく見込みです。MicrosoftやIntelなどの大手企業が積極的に開発を進めており、Intelは2025年までに1億台以上のAI PCを出荷する目標を掲げています。AI機能の重要性が増す中、NPUはスタンダードな仕様になっていくと予想されます。
まとめ
NPUはAI演算処理に特化したプロセッサで、ローカルなAI推論の処理を可能にします。特にPCでの活用事例が多く、今後NPUを搭載したAI PCが普及することが予想されます。MicrosoftやIntel、マウスコンピューターなど、大手企業がNPU搭載のAI PCの開発に注力している事実は、この技術が今後のコンピューティングの中心になることを示唆しています。
AI時代を先取りするためにも、NPU搭載デバイスの動向をチェックし、自身のニーズに合った選択をすることが重要です。
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