農業のIoT化とは?スマート農業で可能になる未来・メリット・導入ステップ徹底解説!
最終更新日:2024年11月12日
「農業xIoTってどんなメリットがある?」「農場で簡単にIoTを導入する方法は?」
農業は、少子高齢化に伴う後継者不足、災害の激甚化のリスクや環境問題への対策などさまざまな課題に直面しています。それでも、多くの農業法人経営者や個人農家が、IoTやAIなどの最新技術で全く新しい農業に挑戦しています。
他の産業と比べると、農業ではデジタル化があまり進んでいないと言われてきました。いま、IoT化やテクノロジーを融合したスマート農業が急速に進められています。
本記事では農業のIoT化やスマート農業について解説し、できること、農業のIoT化が今必要な3つの理由、メリットや導入ステップを紹介します。
農業での自動化ロボットやドローンなどのAI導入事例についてはこちらの別記事で分かりやすく解説していますのでご覧ください。
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目次
農業のIoT化とは
農業でのIoT化とは、IoTセンサーやデバイスから作物の栽培に関するデータを集めて、省力化や高品質の生産に生かすエッジコンピューティングの取り組みです。AIなどの先端テクノロジーを活用して分析することで、これまで農業が抱えていた課題に対応ができるようになるでしょう。
IoTとは「Interenet of Things」の頭文字の略で、モノのインターネットと訳されます。機械や設備などのhttps://ai-market.jp/technology/edge-computing/ あらゆるデバイスがセンサーを付け、ネットワークでつながる仕組みです。実現するサービスやビジネスモデルが新たに生まれています。
IoT化とスマート農業
スマート農業は、ロボット技術や情報通信技術(ICT)などの先端技術を活用して、超省力化や高品質の生産を可能とした新たな農業です。
スマートアグリ(Smart Agri)、アグリテック(Agri Tech)とされる言い方もあります。ICTとIoTは似ている単語ですが、ICTは情報通信を使って人やモノをつなげる技術そのものを指し、IoTはICTに含まれる概念の1つです。
スマート農業は、不作となるリスクを最小限に抑えて、収穫の質を高めます。同時に採算性や収益性を改善することも目的です。
農業のIoT化が今必要な3つの理由
農業のIoT化が必要な理由を3点解説します。農業を取り巻く環境は厳しさを増していますが、IoT化によって農業の課題解決に取り組もうとする動きが進んでいます。
農家の高齢化・後継者不足
引用:2020年農林業センサスの概要より
農林水産省が実施している農林業センサス2020年版によると、農業生産者が減少し高齢化しています。農林業センサスは農林業や農山村の現状と変化を的確に捉えて、きめ細かな農林行政を推進するために5年ごとに行われています。
上記に示す農林業センサス資料によると、農業就業人口の自営農業である「基幹的農業従事者数」は2010年205万人から2020年には136万人にまで減少しています。さらに65歳以上が95万人で全体のおよそ7割を占め、平均年齢は67.8歳でした。
農家の人口は継続的に減少し、高齢化の割合が年々高くなっています。従来型の農業は人手がかかる作業が要求されるため、労力や体力が相当必要でした。その点が多くの若者や女性に敬遠される原因ともなっています。
新規参入のハードルの高さ
農業経験がない新規就労者にとって、農業への参入ハードルは非常に高いのも問題です。新たに農業に従事しようとする人は少なく、2020年では5.4万人で、49歳以下に限ると1.8万人でした。新規参入へのハードルが高いと、大規模集約による効率化や技術を用いたイノベーションが起きにくくなってしまいます。
新規参入のハードルの高さには以下の2点の理由が挙げられるでしょう。
- 多額の初期投資が必要
数百万から数千万の自己資金を投じないと農業に参入できないというハードルがあり、特に若い人たちの新規参入を阻んでいる原因とされています。 - ノウハウを身につける手段が少ない
経験が浅いと栽培する上で的確に判断できず、ノウハウの習得までには多くの時間を費やしてしまいます。生活できるまでの収益の見通しが立たず、撤退を余儀なくされるケースも多くあります。
収益率の低さと労働環境の悪さ
生産基盤が脆弱なままだと、収益性が低く労働環境が過酷な事業となってしまいます。従来の農業で収益率が上がらない原因は、以下の2点が挙げられます。
- 肥料・機械のコストの適正な価格競争が起こりにくい仕組み
- 農業従事者が取引価格の決定権を握っていない
重労働であったり、巡回を何度もしなくてはならなかったりといった過酷な労働環境の割に収益性が低い状況は根強く続いています。そのため、新たに農業従事者になろうとする人たちから敬遠されているのが現状です。
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IoTを駆使したスマート農業でできること・メリットは?
IoTを駆使したスマート農業でできること・メリットは何でしょうか。農業を取り巻く課題と合わせながら解説します。
圃場を適正管理して高収益・省力化
離れた場所であってもIoTセンサーで情報を送れば、圃場や農作物の状況が把握でき巡回の手間を軽減できます。実際に耕作されている農地である圃場、もしくはビニールハウスなどにIoTセンサーを設置して、計測したデータをインターネット経由で集めます。例えば、ビニールハウス内の状態に合わせて水や肥料、光などを調節できれば植物工場の普及にもつながります。あらゆるセンサーから集めたビッグデータを解析して適正管理に役立てることが可能です。
機械や設備を自動化・自律化できれば、これまで人が行っていた作業を機械やロボットなどでできるようになり、省力化も実現できるでしょう。無人のトラクター・収穫機・田植え機などが開発されています。天候や国土の狭さに左右されない安定した産業として発展が実現できるかもしれません。
減農薬で農作物の付加価値の向上
IoTセンサーによるデータの取得と解析によって、最適な水・温度管理、施肥・農薬散布、収穫・出荷のタイミングを決定できます。肥料の必要量の決定や病害虫の状況の把握から、農薬使用量を最小化した防虫対策も可能です。
農作物の育成や病害虫の発生の予測に活用すれば、高品質な農作物の生産が可能となります。農薬の削減によってコストダウンも可能となるうえ、環境や人体にとっても良い効果が期待できます。最低限の農薬もしくは不使用とすれば、農作物への付加価値として収益性の向上にもつながるでしょう。
AIとドローンなどを活用して農薬の使用を減らす栽培に取り組んでいる事例もあります。
ドローンで圃場を撮影し、AIによって病害虫の発生予測をします。その地点だけに最小限の農薬をピンポイントでドローンで散布することが可能です。AIを搭載したドローンの活用事例についてはこちらの記事で解説しています。
農業ノウハウを集積して後継者不足の解消
熟練農業者の勘や経験とされてきた作業ノウハウを、IoTセンサーやAIカメラで見える化・データ化すれば、農業の参入ハードルを下げられます。農業への新規参入者にとって大きな課題は、農業ノウハウを得ることが難しい点です。従来、農作業のノウハウは人から人へ伝承されてきたもので、データ化されていない課題がありました。ノウハウは暗黙知として、共有や移転が難しいとされていましたが、IoT化により科学的な管理が可能となります。
例えば、スマートグラスを用いて、熟練農業者が遠隔で新人の技術指導ができ、ベテラン農家のノウハウや技術を伝承できるといった取り組みがされています。栽培時のリスクを回避し、より良い農作物ができるノウハウがわかれば、生産性や品質も向上するでしょう。
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IoTとAIで農業を変える3ステップ
IoTとAIを活用した農業は以下の3ステップで進められます。それぞれを詳しく解説します。
IoTセンサーでデータを収集
生産量や生産効率に寄与する情報を収集可能なIoT機器を圃場に設置しましょう。IoTセンサーには温度・湿度・日照・水分量・ph値などが計測できるものが活用されています。代表的なIoTセンサーの種類についてはこちらの記事で説明しています。
リアルタイムで圃場や農作物のデータを収集できるので、計測や収集に手間がかかっていたり、巡回や取得にかかる手間を省くことが可能です。
データをAIで分析・予測
IoTセンサーやデバイスなどで集積したデータをAIを用いて分析や予測をします。AIによって蓄積されたデータから、未来の状況をより正確に予測可能となってきています。
圃場内で収集したデータを、過去の天候や作物のデータ、航空写真などのビッグデータと組み合わせることができます。データをもとにAIモデルにパターン識別するようトレーニングすれば、AIでの分析による予測が実現可能です。AIによる予測の仕組み、問題点や注意点についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
AIの分析結果から機械や設備を自動制御
AIを用いて分析した結果に基づいて農業機械や設備を制御できるようにします。自動運転によるトラクターやドローンがすでに実用化されています。
また、AIで予測した結果から前もって準備や対策を講じることが可能です。収穫や作物の選別、水や肥料の開閉弁をコントロールといったことができるでしょう。
例えば、害虫を検知し病害発生リスクが高くなったらアラートを出したり、作物の収穫時期を見極めるための画像解析といった事例があります。
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農業でIoT化を進める際の3つの課題
IoT化を農業で進める上で課題となる3つの点を挙げました。
コストがかかる
環境情報を収集するIoTセンサーやデバイスの購入や設置費用は決して安いものではありません。広大な敷地にデバイスを設置すると大きな初期コストを必要とするでしょう。
通信費など月々に発生する費用もかかるので、小規模農家にとっては負担が重くのしかかってしまいます。まず、費用に対する効果を明確にしたうえでIoT化を進めましょう。
データ形式のばらつき
現状は、送信するデータの規格がメーカーによってそれぞれ異なります。各メーカーがそれぞれにIoTセンサーや、スマート農業機器類を開発しているからです。新しい機器を設置しようとしても、既存の機器に対応していない、別の製品と互換性がないといった状況が起こり得ます。
スマート農業実施者や人材の育成不足
スマート農業に携わっている人はまだまだ少なく、人材の育成にも時間がかかるため実施できる人材が圧倒的に不足しています。特に農業従事者には高齢な方が多数を占めます。農業分野で先進技術を扱える人材が確保しにくい点も課題です。
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農業のIoT化についてよくある質問まとめ
- 農業のIoT化が必要とされる主な理由は何ですか?
農業のIoT化が必要とされる主な理由は以下の3点です。
- 農家の高齢化と後継者不足への対応
- 新規参入のハードルを下げるため
- 農業の収益率向上と労働環境改善のため
- IoTを活用したスマート農業で実現できることは何ですか?
IoTを活用したスマート農業で主に実現できることは以下の通りです。
- IoTセンサーによる圃場の適正管理と省力化
- データ分析による減農薬栽培と農作物の付加価値向上
- 農業ノウハウのデジタル化による技術伝承と新規参入者支援
- 農業でIoT化を進める際の主な課題は何ですか?
農業でIoT化を進める際の主な課題は以下の通りです。
- 導入・運用コストの高さ
- IoT機器やシステム間のデータ形式の互換性不足
- スマート農業を実施できる人材の不足と育成の必要性
まとめ
本記事では、農業のIoT化やスマート農業について解説しました。農業はデジタル化が遅れていた分野でしたが、これからはIoT化やスマート農業のニーズはますます高まるでしょう。
しかし、農場や圃場にIoTやAIによるシステムを導入するためにどのような業者やパートナーと組むのがいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
AIやIoTの専門用語、システム要件はよくわからないし、見積もりの内容チェック方法もわからない方がほとんどではないかと思います。
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