RPAの導入事例17選!用途別・産業別で自動化できることを詳しく解説
最終更新日:2024年09月23日
オフィスの事務作業は定型化・自動化が進めやすい分野と思われがちです。しかし、現場ごとに件数や頻度のばらつきが多く、意外に業務改善リストの下位に回されがちな分野でもあります。そのため結局、効率を上げるよりも目の前のタスクをとにかく人力でこなしているのが多くのオフィスでの現状のようです。
実は、PCの作業を自動化できるソフトウェアロボットRPAを導入すれば、作業をフロー化して多くの事務処理を自動化できます。さらに、今後はAIと連携させることで、ルーティン作業だけでなく判断業務を伴う高度な事務処理にも適用範囲が拡大されていくでしょう。
ソフトウェアロボットと聞くと高いハードルのように感じるかもしれません。しかし、実はプログラミングが必要な従来のシステム設計よりはるかに導入が容易で、職場ごとの自由度が高いのも魅力です。多くの方が思っている以上に幅広い事務処理の効率アップにつながります。
今回はRPAとは何かについて説明し、RPAの用途別・産業別の視点から導入の具体的事例を紹介します。
「うちのオフィスまさにこれ!」と思える事例が見つかるはずです。
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また、RPA導入支援会社の選定にお悩みの方は、RPA導入支援に強い、プロ厳選の会社記事もぜひご参考ください。
目次
RPAとは
RPA(Robotics Process Automation)はソフトウェアロボットの一種で、PC上の作業を自動化するためのツールです。オフィスで日常的に行っている書類作成やデータ管理などの業務を人の手を使わずに行います。
製造や物流の現場で利用されているハードウェアタイプのロボットに対して、事務作業をサポートするロボットがRPAです。PCの画面上の操作を自動化することでオフィスワークを効率化してくれます。
例えば、PCの画面上で特定のファイルを開き、他のソースからデータをコピーして定型フォームに記載、さらに別のファイルに集計して報告書の形にまとめる、といった処理をひとつながりのプロセスとしてRPAが実行してくれます。RPAはデータを処理するというよりは作業手順を記録するイメージです。人が行う作業をそのままの手順でソフトウェアが自動的に何度でも実行してくれます。
エクセルのマクロとどう違う?
エクセルのマクロ(VBA)を操作したことのある方なら、RPAとどう違うの?と感じる方もいるかもしれません。マクロはあくまでエクセル限定の自動化ツールであるのに対して、RPAは操作できるアプリケーションに制限がありません。RPAであれば、異なるソフト間でデータを転記したり、ウェブサイトの情報を報告書に反映することもできます。
ただし、RPAはあくまでも登録された作業手順を繰り返すソフトウェアです。ですから、人間の判断が必要な作業には適用できません。事務作業には作業自体は定型化できるものが多いため、RPAの導入により大幅な効率化を図ることができます。
RPAに向いている業務と向いていない業務
RPAはソフトウェアを操作するためのソフトウェアですので、対象となる処理が定型化されているほど導入効果が高くなります。一つの処理を完了するためにいくつもの判断が求められる業務には向いていません。
また、同一処理を何度も繰り返すことができるのがRPAのメリットです。発生する頻度が少ない処理や、一回の処理で一件のデータを処理するだけといった反復性の乏しい処理では大きな導入効果は得られません。毎日大量のデータに対して複数の人間が同じ処理を繰り返し行っている業務があれば、RPA化による業務効率の改善が大いに期待できるでしょう。
RPAについての詳しい説明は『RPAとは?AI/マクロとの違いや期待できる効果を解説』の記事を参照ください。
【用途別】RPA導入事例8選
一般事務
どこのオフィスでも必ず発生するデータ入力、報告書作成、ネット上の情報収集などをRPAによって自動化、効率化できます。
例えば、業務で入手される情報でマスターファイルの情報を更新したり、異なるソフト間でデータを規則性を持って転記するようなデータ入力・移送作業はRPAによる自動化が有効です。また、定例報告書の作成作業は多くのオフィスで重要業務でしょう。部署内の情報共有や上司への報告など定例化しているレポーティングでは、報告相手ごとに内容を区分するなどの作業を自動化できます。
最近多くの業務で、複数のウェブサイトから情報を読み取って比較するWebスクレイプが活用されています。例えば、以下のようなケースで最新の情報をRPAで定期的に入手することができます。
- 旅行費用の予算見積
- 自動車購入時の見積
株式市場の動向や為替の動きなどもネットから直接更新可能です。
セールス・マーケティング
属人要素が大きいと思われがちな営業やマーケティングの分野でも、RPAを活用することでより重要な作業へかけるリソースを大幅にアップできます。さらに、AIとRPAを連携させることで、KPI分析や改善案作成など、これまで属人要素の強かった領域まで自動化でき営業効率が向上するでしょう。
ネット販売ではオーダー処理のプロセスはRPAにより自動化可能です。ウェブサイトからのオーダーは倉庫に転送され、出荷指示と在庫引当までRPAにより自動で処理できます。人が介在する場合に比べて入力ミスなどもありません。
在庫管理は更新と調整が随時発生するため、手間のかかる処理です。RPA導入が有効なソリューションになります。また、従業員のデータベースと顧客情報の実績管理をRPAでルーティン化することで、個人別実績(スコアカード)をリアルタイムでアップデートできます。
CRM(顧客情報管理)
CRM(Customer Relationship Management)は、日本語では顧客管理システムとして知られ、顧客との良好な関係を構築・維持していくための機能を有したシステムのことです。多くの現場では、納入先によってシステムが異なるなどの理由で、顧客との調整作業に複数のパターンが介在することは珍しくありません。RPAを使えば頻度の高い顧客の処理を自動化できます。また、ユーザーの属性や嗜好性などの顧客情報は、定期的に更新してフレッシュに保つのがCRMの肝です。RPAを使うことで、顧客情報を漏れなく手間なく最新に保つことができます。
顧客対応で頻繁に発生する問い合わせへの応対は、チャットボットとRPAを連携させることで対応できます。複雑な案件はクライアントの情報を確認しながら人が対応することで、サービス品質を高めることができます。複雑な問題に担当者を集中させることで、全体のCS(顧客満足度)を改善できるでしょう。
クレームや返品・返金処理など、トラブルシュートについて形式化可能な作業もRPAでデータベース化できます。データベースに基づいた対応をRPAで自動化すれば、スピーディーな対応も可能となり、顧客の心理的・物理的負担を下げられます。
会計・経理
経営の基幹を担い、細かな数字の間違いも許されない会計・経理分野の業務はRPAが活躍できる分野がたくさんあります。例えば、社内会計処理のデータと銀行残高照会の調整など、社内・社外にまたがって行わなければならない作業もRPAで自動化できます。過去の担当者が独自に作成した会計プログラムを走らせたり、エクセルシートをいくつも広げて電卓も使いながら行う日次損益計算処理作業もRPAで自動化できるでしょう。
HR(人材活用)
HR(Human Resource)は、単なる人事に留まらず、社内の人的資源を有効活用するための業務全体を指します。最近はRPAによる自動化により、従来では考えられないような少人数で会社全体の人材管理を行えるようになっています。例えば、採用候補者のリスト作成では、履歴書や業務経歴書からの候補者絞り込みだけでなく、LinkedInやGlassdoorなどのプラットフォームからのデータ取得も自動化可能です。
また、急激な成長もしくは整理を進めている企業では、以下のような複数作業を並行して行わなければなりません。
- 業績評価
- 採用の処理
- 退職の処理
RPAで採用に関わる手間のかかる処理を自動化できます。関連文書の保管・分類をRPAで自動化することで人事業務を支援可能です。
最近は、スタッフの休暇取得状況の管理もHRの重要な業務です。しかし、スタッフの休暇取得管理は、本人・上長・人事担当の間で主体的な管理がルーズになりやすい業務でもあります。PRAで自動化すれば、手間を減らして、しかも透明性を高めることができます。
調達
調達部門の業務は、情報を管理し最新状況を継続してアップデートする手間のかかる作業が多く含まれます。例えば、複数の部署に共通したサプライヤーを一括管理するのにRPAを活用している企業が少なくありません。RPAによる自動情報管理により、調達部門はより高度なサプライヤーのマネジメントに注力できます。
コンプライアンス
コンプライアンス問題は現代企業のアキレス腱となりかねません。しかし、責任の所在もあいまいになりがちな分野です。RPAで可能な限り作業を自動化することでコンプライアンスを遵守しながら、担当者の負担も軽減できるでしょう。例えば、社内で一定のルールを定めて、不審なスパムメールやマルウェアの検知にRPAを活用できます。また、社内IT機器に使用するパスワードの強度測定やアップデート状況などの定期検証は、RPAによりルーティン化できます。
【産業別】RPA導入事例9選
銀行・金融
クレジットカード発行に関わる信用情報やバックグラウンドチェックの書類収集には、既に多くの現場でRPAが導入されています。今後は以下のプロセスでもRPAによる自動化が進められていくでしょう。
- 審査
- カード発行の決定
加えて、ローン審査での書類作成や審査に先立つ数値分析などのプロセスはRPAで自動化し、人による判断業務の質をサポートできます。
例えば、三井住友ファイナンス&リース(株)ではRPA導入による全社的業務改革を実施しています。AIによる契約書類の仕訳にRPAを使い、小口リースの審査スピードをアップするなど業務支援を進めることに成功しました。
医療
外来患者のスケジューリングは重要な作業ですが、多くの病院やクリニックでは患者のベストな来院日程を決定するためにRPAで以下の情報を管理しています。
- 診断履歴
- 治療進捗
- 医師の日程や場所
保険情報などのアカウント管理も同時にRPAで管理できます。また、RPAを使って患者の臨床データを外部の第三者機関に転送し、医療情報システムから診断と治療に役立つ情報を自動で入手できます。最新の臨床治験を参考にした医療をより迅速に導入できるでしょう。
例えば慈恵大学では病院の事務作業削減にRPAを導入しました。入退院に伴う報告書作成業務にかかる作業時間を90%削減することで、医師の作業負担を軽減する取り組みを行っています。
保険
RPAによる作業の自動化で、多くの保険会社が顧客満足度を上げながら全体コストを削減しています。保険金請求処理は保険会社にとって極めて重要な処理です。顧客にとっては好ましくない事態の収拾になるので、顧客満足度向上のコア要件と言えます。証拠となる複数形式の文書、法制の変化などを考慮して公正で透明性のある決定を行うには、RPAによるプロセスのサポートが有効です。
例えば、アメリカで教員や公益サービスを主なクライアントとする保険会社American Fidelity inc.は、RPAとAIの連携によってお客様からのメールへの返信や適切なサービス部門への転送などを自動化しました。契約者との対面業務プロセスを大幅に改善して、短時間で正確なサービス提供を実現できました。
製造
既に多くの製造業がRPAを活用して、従来は人力任せだった作業を自動化してコスト削減しています。AI-OCRとRPAを連動させることで、プロダクトライフサイクルを管理可能です。使用頻度の高い重要文書の更新・管理を自動化できます。
AI-OCRについて詳しく知りたい方は、こちらの【10製品比較】AI-OCRを徹底理解!AI-OCR活用のメリットとは?記事もぜひご参考ください。
アサヒプロマネジメント(株)ではアサヒビールで知られるアサヒグループの社内業務にRPAを導入し、年間26,000時間を削減しました。さらに物流部門のRPA化や部門間の部品の標準化を進め、一部署につき流動人材を一人確保できる状態を目指しています。
小売
既に多くの小売業でRPAが導入されて、従来は人力や長年の経験任せだった作業が自動化されています。例えば、数千社から数万社もある取引先に対して在庫情報を定期配信しなければならない部署も多いでしょう。取引先によって、相手の必要とする商品、値引き率、また配信のフォーマットが異なる複雑で膨大な作業です。RPAによって、自社の在庫管理システムから情報を取り出して、相手先に合わせた形で配信するまでの作業を自動化可能です。
また、ディスカウント会計の処理やキャンペーンの効果測定など、バックエンドの業務をRPAで軽減できます。
例えば、「ドン・キホーテ」や「長崎屋」の展開で知られる(株)パンパシフィック・インターナショナル・ホールディングスでは、RPA導入により170の業務を自動化しました。各店舗の売上げデータの分析などの業務にRPAを導入し、全社的なナレッジ共有に活用しています。
通信
ユーザーへのSIM割当て、及び盗難などの場合のSIM移管などの処理をRPAで自動化できます。NTTコミュニケーションズ(株)では、RPAの導入により契約IDの更新や請求書発行業務を自動化しています。AI-OCRの連携で請求書の電子化を進め、紙による手作業を半減することに成功しました。
旅行・物流
旅行・物流業は、業界全体で出遅れていたDX(デジタルトランスフォーメーション)をRPAで一気に巻き返そうとする動きが速まっています。例えば、発券業務にRPAを導入することで旅程の変更やキャンセル、払い戻しの処理を確実に処理できるようになります。宿泊や観光地情報などとリンクして最新情報を取り込むことで、より上位の機会開発につなげるトラベルマネジメントツールとして活用可能です。
また、ホテルやツアーの予約業務をRPA化することで顧客の待ち時間を削減し、カスタマーサービスの質を向上できます。同時に顧客の嗜好や希望を入手するPOSツールとしても活用可能です。
日本通運(株)では、集約型及び横展開型という2タイプのRPAを導入しました。RPA導入により、100万時間の作業時間削減を目標に業務改革プロジェクトを推進しています。
学校・教育機関
多くの教育機関でRPAが導入されて、従来はスタッフの経験任せだった作業が自動化されています。学生の必要取得単位、専門課程などの情報をもとに作成にしたクラスのリストなどをRPAで自動的に収集・管理できます。クラス登録後のスケジュール管理や課題のフォローアップなど、RPAによるイベント管理へとつなげることも可能です。
琉球大学では、「RPAを活用した業務改善プロジェクト」により業務の標準化や正確性を向上する取り組みを進めています。学生証の再発行や採用申請書のデータベース管理などでRPAによる自動化を実現しました。
政府・公共サービス
住民の個人登録情報の変更のような個人情報を取り扱う作業ではRPA化により手続きを簡素化しながら、情報セキュリティを確保できます。免許証更新などの手続きも簡素化でき、窓口業務の負担を軽減できるでしょう。
また、新型コロナウイルス感染症対策で必要になるような公衆保健の対応において、ワクチンの接種状況や症例のトラッキングと医療チームへの情報提供は欠かせません。RPAによってスムーズに情報を共有し、情報の伝達漏れを防ぎながらも現場での負担を軽減できます。
茨城県ではクライアント型RPAを導入して既存システム間の橋渡しをし、仮想基幹システムを構築しています。開発を注力した4業務で86.5%の労働時間削減に成功しました。他県に比べて少ない職員数での行政サービス提供にRPAが貢献しています。
RPAについてよくある質問まとめ
- RPAとは何ですか?
RPAとは以下の通りです。
- Robotics Process Automationの略
- PC上の作業を自動化するソフトウェアロボット
- RPA導入によってどのような効果が得られましたか?
RPA導入の効果は以下の通りです。
- 作業時間の大幅削減
- 業務の自動化
- サービス品質向上
- コスト削減
- RPA導入時の注意点や課題は何ですか?
RPA導入はRPA導入支援会社に相談を
今回はRPAの用途と産業別事例に分けてその導入事例を解説しました。
従来のコンピューターシステムではシステム設計及びプログラミングに時間がかかり、オフィスにおける事務作業の自動化に取り組むことは非効率でした。一方、RPAによる自由度の高い改善は、業務の現場に近いところでの業務効率改善を容易にしてくれます。
RPAの導入と開発には十分な経験を積んだ担当者が行う必要があります。導入を検討している案件があれば、最適なRPA導入支援会社の紹介を行っているAI Marketをぜひご活用ください。開発コストなどの情報を含めて、専門コンサルタントが開発会社の選定を無償でサポートいたします。
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
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