最終更新日:2024-09-23
AI導入で自治体サービスの品質向上に成功!すぐ使える事例7選
労働人口減少の中、仕事の効率をアップし、サービス品質を向上したいのは民間企業ばかりではありません。リソースの活用効率を向上させたいのは政府省庁や地方自治体でも同じです。現在多くの自治体でAI(人工知能)の導入が進められています。
AIチャットボットを活用して住民からの問い合わせを的確に処理したり、AI画像処理で手書き書類をスピーディに処理したりなど住民に対するサービスを向上するためにAIが活用されています。
また、常に公明正大な判断が求められる自治体の業務は、偏見や先入観を排したAIによる現状把握と判断支援がますます求められている分野です。
今回は自治体におけるAI導入事例について説明し、その用途と個別の自治体のケーススタディを紹介します。
AI Marketでは
自治体・官公庁でのChatGPTの導入・開発事例についてはこちらの記事で特集していますので併せてご覧ください。
目次
いま自治体でAI活用が急がれている4つの理由とは?
現在、自治体では以下の理由により、業務の効率化が重要な課題となっています。
- 採用難による人材不足
- 求められるサービスレベルの向上
- 膨大な文書処理量
- 就業時間削減の厳格化
地方税収の縮小もあって、どこの自治体も予算削減に取り組まざるを得ません。それでも、より柔軟でより効果的な行政サービスの訴求は下がるどころか、ますます高いサービス基準が求められているのが現状です。住民サービスの24時間対応・土日対応など、利便性強化の競争が自治体間で激化しています。そこで、持っているリソースを最大限に活用して住民サービスを改善するため、AIの導入による対人サービスの強化が進められてきました。
加えて、自治体での多くの事務作業は膨大な文書処理を伴います。処理に必要な書類のなかには、まったくデジタル化されていない数十年前の書類が含まれることもざらです。それらアナログ書類とデジタルデータの両方を効率よく処理するには、AIやRPAと言った現代技術による処理自動化が求められています。
自治体におけるAI導入の用途
自治体でよく活用されているAI機能は以下です。
- チャットボット
- 音声認識
- 画像認識
- 予測・シミュレーション
それぞれのAI機能について解説します。
チャットボット
AIチャットボットは人が受け答える作業を代替するツールです。住民サービスの電話窓口業務に、AIチャットボットによる応答が導入されています。住民からの電話問い合わせについて、簡単な案内や情報提供であればAIがいったん対応します。AI対応により情報提供の品質を統一できます。そして、職員は複雑な案件のみ対処することで、職員の負担を増やさずにサービスの質を全体的に向上させるのです。
音声認識
音声認識とは、人間が話した声を解析してテキストに変換する技術です。最新のAIは、何を言ったかに留まらず、誰が言ったかまで解析できます。AIの音声認識機能を使えば、住民とのミーティングや内部での会議の録音データから議事録を自動作成できます。
いったんデジタル化された議事録を人が見直すことで作業時間を短縮できますし、議事内容の作成レベルを統一することにも役立ちます。
議事録作成AIツールのメリットについてはこちらの記事で解説しています。
画像認識
画像認識は、画像のなかに何が何個(人)写っているか識別する技術です。最も基本的で重要な用途は、画像の中の手書き文字をAIで判読するAI-OCRでしょう。
最近では文字だけでなく、広域写真を読み込んで地形を判断したり、動画を認識したりすることも可能です。以下のような活用方法が採用されています。
- 交通量の多い地域にビデオを設置してAIで交通量を測定
- 廃棄物の量を画像から測定して地域のごみの量を割り出す
- 道路状況をカメラで撮影し道路表面の劣化状態を判定
予測・シミュレーション
AIで収集されたデータを定式化することで、将来生じる同様の状況についてシミュレーションできます。例えば、過去の事件や事故の発生状況をベースに発生場所や時間帯を分析し、将来再度起こりやすい条件を特定すれば地域トラブルや事件を予防できるかもしれません。
また、地域の交通量をカメラで測定し、人と車の流れをAIで分析する活用法も考えられます。場所や時間帯ごとの混雑や渋滞を予測すれば、イベントでの交通規制や人員配置を有効に策定できるでしょう。
自治体でのAI導入事例7選
AIを導入した事例のある自治体の取り組みを紹介します。
SNSのAI分析で災害救援(総務省)
総務省では、災害発生時にツイッター上の大量の投稿をAIで分析・要約して救援活動の効率を高める、以下2つのシステムを開発しました。
- 対災害SNS情報分析システム DISAANA(ディサーナ; DISAster-information ANAlyzer)
- 災害状況要約システム D-SUMM(ディーサム;Disasiter-information SUMMarizer)
ツイッターを始めとするSNSは利用者が幅広く、情報のリアルタイム性が⾼いメリットがあります。しかし、以下のようなデメリットがあり、自治体が救援活動で活用するには問題がありました。
- 情報量が膨大で解析困難
- 情報の信ぴょう性を判別するのが難しい
しかし、AIでツイッターでの投稿をリアルタイムで正確に分析・整理できれば、住民の最新ニーズを正確に把握できます。例えば、いまどこが毛布を必要としているか、どこに要救助者がいるか、どこの堤防が決壊しているか、を正確に把握して効率的な救援、避難に役立てることが可能です。
実際に以下の重大災害時には、地域の停電状況や道路冠水状況をAI分析でいち早く把握し、担当部署や鉄道会社にシェアする点で成果をあげています。
- 九州北部豪⾬(2017年7月)
- 北海道胆振(いぶり)東部地震(2018年9月6日)
ますます被害の甚大化が予想される地震や台風、集中豪雨などの災害対策で、AIの活用はこれから最も期待される分野です。
防災分野での他のAI導入事例についてこちらの記事でご紹介しています
AIとRPAで多分野でのサービスを改善(東京都港区)
東京都港区では、AI導入によって、人口増加に伴う行政サービスの低下防止と事務効率化が進められています。人口減少に悩む自治体が多い中、港区では転入増加による人口増加への対処が課題です。1996年当時15万人だった人口は、2027年には30万人に倍増すると予想されています。それでも、大幅に職員を増員するのは困難です。そのようなチャレンジングな環境の中、港区では以下の分野でAIを導入し成功しています。
- AIによる議事録作成支援システム
- AIによる保育所のマッチング
- AI-OCRによる申請書のデジタル化
- RPAによるデータ作成支援
- AIチャットで多言語ニーズに対応
港区では、200を超える会議体にAI音声解析による議事録作成支援システムを導入しました。支援システムにより、議事録作成にかかっていた時間は1/6に低減されました。職員の負担低下はもちろんですが、会議で決定した事項のスピーディな着手により住民ニーズへの対応品質向上が期待されています。
音声認識による自動議事録作成に強いAI開発会社はこちらの記事で紹介しています。
保育所の入所選考業務用にはAIのマッチングシステムを開発し、実証実験を通じて職員による作業と同精度の選考業務を実現しています。コミュニティバスの乗車券申請書システムではAI-OCRを導入し、手書きの申請書をCSV化しデータの精度を向上しました。
AI-OCRの人気ツールをこちらの記事で比較しています。
また、港区では職員の出退勤管理や会計システム向けのデータ作成業務に、ルーティン業務を自動化できるRPAを導入して事務作業を大幅に軽減することに成功しました。
港区は80近い大使館が立地し、140以上に上る国籍の住民が居住する国際性の高い自治体でもあります。港区ではAIチャットサービスを運用し、生活情報の提供や各種手続きの問い合わせに、英語及びわかりやすい日本語で情報を提供しています。
ドローンで農業を活性化(佐賀県みやき町)
佐賀県のみやき町では株式会社オプティムと共同で、基幹産業である農業の活性化にAIの活用を進めています。みやき町は県内2番目の耕地面積を有しながらも、就農人口の減少という大きな課題があります。就農者の高齢化と後継者不足を解決するためには農業の高度化、スマート化が求められているのです。
具体的には、ドローンを使って農場を管理して害虫への対策を合理化しています。ドローンで水田を定期的に撮影し、画像をAIで解析します。AI画像解析により、必要最小限度の農薬をピンポイントで散布することが可能になりました。農薬の散布量を劇的に削減することで「減農薬米」というブランド米に仕上げ、高付加価値の農作物で収益強化を計画しています。
農業分野への他のAI導入事例についてこちらの記事でご紹介しています。
AI健診で受診率向上(沖縄県那覇市)
那覇市では住民の健康診断履歴をAIで分析し、受診率の向上を目指して実証実験を進めています。従来は住民に対して一律的な通知で健診を勧めていました。しかし、各人の健康診断履歴をAIで分析することで、対象者の適性ごとに異なる通知方法を採用できるようになっています。現在は、対象者を4つのタイプに分類し、それぞれに特徴のあるメッセージを送ることで受診率を向上させることに成功しています。
受診率の向上は、住民の健康寿命を向上し、そして医療費が市の財政に与えるネガティブな影響を低下させる効果が期待されます。
AIによる保育所選考システム(埼玉県さいたま市)
さいたま市は、公立保育所の利用を希望する方の保育所選定・調整作業にAIを導入しています。複数の希望者間の条件の違いを比較し、ゲーム理論のモデルを用いて全体利得が最大になるように組み合わせを選定するシステムです。それぞれの入所希望者の優先順位や希望条件を公平明快に点数化し、AIがその割り当てルールを学習することで調整作業を短縮しました。
AIによる選考システム導入により、これまで職員が延べ1500時間かかっていた調整作業を数秒で完了することに成功しています。入所の選考結果は職員による作業の結果とほとんど変わりません。利用希望者への通知を早期に行うことができますし、選考から漏れてしまった希望者の対応も、選考業務の負担がなくなった職員が迅速に対応できるようになっています。
AIで多言語観光案内(福井県永平寺町)
永平寺町ではピーディーシー株式会社が開発したAIを使った多言語観光案内システム「小梅ちゃん」を設置しています。永平寺町は年間100万人以上が訪れる観光地です。大本山永平寺へは外国からの観光旅行者も多く訪れます。しかし、主要観光スポットに多言語での観光案内書が整備されていない問題がありました。
永平寺町では、AIを使った多言語観光案内を使って日本語の他に英語、中国語、韓国語で観光スポットや飲食店、特産品情報を提供しています。情報提供にはデジタルサイネージ(情報発信ディスプレイ)を活用することで、人員コストをかけずに日英中韓の4か国語で町の魅力を伝えることに成功しているのです。
AI翻訳サービス導入に最適な開発会社はこちらの記事でご紹介しています。
デジタルサイネージは、観光情報を提供すると同時に利用者からのアクセス記録も収集するPOS情報端末としても活用しています。来訪者数のカウントや訪問者の行動解析により、今後のサービス展開にも役立てることができます。
定型業務の自動化を推進(茨城県つくば市)
つくば市では市の窓口業務と市税課税業務にRPAを導入して事務処理を自動化しました。定型業務を自動化してくれるRPAの特長を生かして作業時間の大幅な短縮に結び付けています。特に窓口業務は行政サービスの中で最も処理時間を要する業務です。窓口業務の処理時間を削減することが、サービス全体の効率化につながりました。
例えば、転入転出の届出は季節により激しく変動します。業務が年度末前後などに集中しやすいので、人的資源の割り当てと作業負荷のバランスに悩まされていました。そこで、住所変更の届出書類を確認する通知作業をRPAで自動化することにより、職員の作業時間を80%以上削減することに成功したのです。さらに、作業時間が削減しただけでなく、入力ミスも減少しました。
RPAの導入支援に最適な開発会社はこちらの記事でご紹介しています
自治体のAI導入についてよくある質問まとめ
- 自治体でAI活用が求められている理由はなんですか?
自治体でAI活用が求められる理由は以下の通りです。
- 人材不足への対応
- サービスレベル向上の要求
- 膨大な文書処理の効率化
- 就業時間削減への対応
- 自治体でのAI活用の主な用途は何ですか?
自治体でのAI活用の主な用途は以下の通りです。
- チャットボット:住民からの問い合わせ対応
- 音声認識:会議の議事録作成
- 画像認識:手書き文書のデジタル化、交通量測定
- 予測・シミュレーション:事故予防、交通規制計画
- 自治体でのAI活用の具体的な成功事例を教えてください。
自治体でのAI活用事例は以下の通りです。
- 総務省:SNSのAI分析による災害救援情報の収集
- 東京都港区:AI議事録作成支援システム、保育所入所選考のAIマッチング、AI-OCRによる申請書デジタル化
- 佐賀県みやき町:ドローンとAIを活用した農業支援
- 沖縄県那覇市:AI健診による受診率向上
- 埼玉県さいたま市:AI保育所選考システム
- 福井県永平寺町:AI多言語観光案内システム
- 茨城県つくば市:RPAによる定型業務の自動化
自治体向けAIの開発は専門会社に
人手不足が常態化している地方自治体において、住民サービスの向上を図りながら多言語化・サービスの迅速化など時代の要望に応えるは至難の業です。しかし、従来の事務処理をAIによって自動化し、公平で迅速な判断が求められる作業もAIの支援を受けることで人的リソース・機器リソースをより良い仕方で再配置できるでしょう。
自治体へのAIの導入と開発には十分な経験と知識を持った信頼できる開発会社が当たる必要があります。導入を検討している案件があれば、最適なAI開発会社の紹介を行っているAI Marketをぜひご活用ください。AI Marketの専門のコンサルタントが、それぞれの自治体でのAI支援システム開発に最適な開発会社の選定を無料でサポートしますので、いつでもお気軽にご相談ください。
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