AI業界最新ニュース【AI Market人気記事2024年3月まとめ版】
最終更新日:2024年06月04日
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目次
Anthropic社、LLM「Claude 3」を発表、3つのモデルファミリーを展開へ
2024年3月4日
米Anthropic社は、新たな大規模言語モデル「Claude 3」を発表しました。「Claude 3」は分析・予測、ニュアンスのあるコンテンツ作成、コード生成、多言語対話などの性能が向上したモデルです。3つのモデルファミリー「Claude 3 Opus」「Claude 3 Sonnet」「Claude 3 Haiku」が発表され、最上位モデルの「Opus」は複数のベンチマークでOpenAI社の「GPT-4」のスコアを上回る性能を示しています。
本ニュースが注目される理由は以下の通りです。
- OpenAIの元メンバーが設立したAnthropic社による最新のLLM(大規模言語モデル)であり、業界でも注目度が高い。
- 高度な推論力、マルチモーダル機能、プロンプトの細やかな理解など、AIの性能が大幅に向上している。
- 最上位モデルの「Claude 3 Opus」は、GPT-4など他社の主要なAIモデルの性能を上回っているとされる。
Anthropic社はOpenAIから独立したメンバーによって設立され、「責任あるAIの活用」を掲げてAGI/LLMの開発を進めてきました。2023年にはGoogle、Microsoft、OpenAIと共にホワイトハウスの会合に参加するなど、業界をリードする存在として注目を集めています。
今回の「Claude 3」は、従来の「Claude」と比較して、誤認識の頻度が大幅に減少し、自由形式の質問に対する精度が2倍に向上するなど、AIの性能が格段に高まっています。最上位の「Claude 3 Opus」は、人間に近い理解力と流暢さを持ち、他社モデルを凌駕するとされています。
企業でこの技術を活用する際には、以下のような方法が考えられます。
- 高度な分析・予測タスクへのClaude 3の活用(Opus)
- 大規模なデータ処理、営業支援、コード生成などへの応用(Sonnet)
- カスタマーサポートの自動化、コンテンツモデレーションなどの即応性が求められる用途(Haiku)
ELYZA、グローバルモデルに匹敵する日本語LLMを開発、デモ公開
ELYZA、グローバルモデルにも匹敵する700億パラメータの日本語LLM「ELYZA-japanese-Llama-2-70b」開発
2024年3月12日
株式会社ELYZAは、700億パラメータの最新日本語LLM(大規模言語モデル)「ELYZA-japanese-Llama-2-70b」を開発し、グローバルモデルに匹敵する性能を達成したと発表しました。このモデルを含むLLM群は「ELYZA LLM for JP」シリーズとして提供が開始され、デモサイトも公開されました。
本ニュースの注目すべき点は以下の通りです。
- 東大松尾研発のELYZAが、グローバルモデルに匹敵する性能のLLMを国内で初めて開発した。
- 「Llama 2 70B」をベースに独自の事後学習を行い、他の日本語LLMの性能を凌駕。
- 「ELYZA LLM for JP」シリーズとして、グローバルモデル以外の新たな選択肢を企業に提供する。
背景として、ChatGPTの登場以来、LLMは国家・企業の競争優位の源泉になりうる技術と認識され、OpenAIやGoogleなどの米国企業が開発を牽引してきました。日本国内でも2023年から大手ベンダーがLLM開発を進めていましたが、2023年末時点ではグローバルモデルとの性能差は大きいままでした。
そうした中、ELYZAは「Llama 2 70B」をベースに独自の事後学習を行うことで、「GPT-3.5」「Claude 2」「Gemini 1.0 Pro」などグローバルモデルに匹敵し、国内LLMでは最高レベルの性能を実現。産総研の「AI橋渡しクラウド」の大規模言語モデル構築支援プログラムも活用しました。
企業での活用に向けて、ELYZAは本モデルを含むLLM群を「ELYZA LLM for JP」シリーズとして位置付け、セキュリティ・カスタマイズ性を重視する企業や、自社サービスへのLLM組み込みを目指す企業などに、グローバルモデルとは異なる選択肢を提供していく方針です。
日本発のLLMがグローバルレベルの性能を実現した本ニュースは、国内企業のAI活用の選択肢を広げる大きな一歩と言えるでしょう。ELYZAによる高性能な日本語LLMの開発が、日本のAI活用を加速させることが期待されます。一方で、LLMの安全性や倫理的課題への対応も求められるため、ELYZAの取り組みから目が離せません。
楽天グループ、日本語に最適化したLLMの基盤モデル「Rakuten AI 7B」をオープンモデルとして公開
2024年3月21日
楽天グループは、日本語に最適化したLLM(大規模言語モデル)の基盤モデル「Rakuten AI 7B」を、オープンモデルとして公開しました。「Rakuten AI 7B」は、仏Mistral AI社のオープンモデル「Mistral-7B-v0.1」を基に、日本語と英語のデータで継続的に学習させて開発された70億パラメータの日本語基盤モデルです。
本ニュースが注目される理由は以下の通りです。
- 楽天グループが、AIの研究開発の一環として高性能な日本語LLMを独自に開発した。
- 膨大な日本語・英語データでの事前学習と、日本語に最適化された形態素解析器の採用により、高性能を実現。
- 基盤モデル・インストラクションチューニング済モデル・チャットモデルの3モデルを、オープンソースとして公開。
背景として、楽天グループは「AI-nization」をテーマに掲げ、様々なAIモデルやデータサイエンス・機械学習モデルの研究開発を進めてきました。今回の「Rakuten AI 7B」の開発も、LLMに関する知識と専門性を高め、楽天エコシステムをサポートするモデル作成を目指す取り組みの一環です。
同モデルは、高品質なデータでの事前学習と、日本語に最適化された独自の形態素解析器の採用により、高い性能を実現。言語モデル評価ツール「LM Evaluation Harness」の基準でも、オープンな日本語LLMとして高い評価を獲得しています。
企業での活用に向けては、以下のような方法が考えられます。
- 基盤モデル「Rakuten AI 7B」を用いた、特定のタスクやアプリケーションに適したモデルの開発
- ンストラクションチューニング済モデル「Rakuten AI 7B Instruct」の、要約・質問応答・文章理解などへの応用
- チャットモデル「Rakuten AI 7B Chat」の、対話システムへの組み込み
楽天グループは、「Rakuten AI 7B」の開発で得た知見をオープンソースコミュニティと共有し、日本語LLMのさらなる発展に貢献する方針です。同社のLLM開発の取り組みは、日本企業のAI活用を後押しすると共に、オープンソースの世界でも大きなインパクトを持つと言えるでしょう。一方で、LLMの倫理的課題への対応など、責任あるAIの実装も求められます。「Rakuten AI 7B」を起点とした日本発のLLMの発展に期待が高まります。
デジタルヒューマン社とmiibo、日本初の「視覚」を持ったデジタルヒューマン「デジタルヒューマンVISION」開発
2024年3月18日
デジタルヒューマン株式会社と株式会社miiboは、日本初の「視覚」を持ったデジタルヒューマン「デジタルヒューマンVISION」を共同開発しました。デジタルヒューマン社は次世代型AIアバターを、miiboは会話型AI構築プラットフォーム「miibo」を提供する企業です。
本ニュースが注目される理由は以下の通りです。
- AIアバターに「視覚」の機能を持たせることで、より人間に近い自然な対話を実現。
- 会話相手の容姿・表情・性別を認識し、特徴に合わせた会話が可能に。「眼」の前の物体認識も可能。
- 医療や観光、アパレルなど、様々な分野での活用が期待される画期的な技術。
背景として、デジタルヒューマン社とmiiboはこれまでも連携を行ってきました。デジタルヒューマン社のAIアバターに、miiboの会話型AIを統合することで、人間とAIの自然なコミュニケーションの実現を目指してきたのです。
今回の「デジタルヒューマンVISION」は、デジタルヒューマン社の高精度なAIアバターと、miiboが持つ「GPT-4 Turbo with vision」のカスタマイズ機能を組み合わせることで実現しました。これにより、デジタルヒューマンが相手の様子を視覚的に認識しながら会話できるようになり、よりパーソナライズされた体験の提供が可能になります。
想定されるユースケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 心臓病術後患者に寄り添うデジタルヒューマンコーチ(医療)
- デジタルヒューマンガイドによる街の観光案内(観光・旅行)
- 店舗での接客体験の向上(アパレル)
デジタルヒューマン社とmiiboは、「デジタルヒューマンVISION」の早期実用化を目指し、共創パートナーや参画企業の募集を開始しています。
AIに「視覚」の機能を持たせることで、より人間らしいコミュニケーションが可能になるこの技術は、様々な業界に大きなインパクトを与えるでしょう。一方で、AIの倫理的な活用やプライバシーの問題など、克服すべき課題もあります。デジタルヒューマン社とmiiboの取り組みが、人間とAIの新しい関係性を切り開く第一歩となることに期待が高まります。
PKSHA、日本マイクロソフト支援のもと新たな大規模言語モデルを開発
2024年3月28日
株式会社PKSHA Technologyは、新技術「RetNet(Retentive Network)」を世界で初めて活用した日英LLM(大規模言語モデル)を、日本マイクロソフトの技術支援のもと開発したと発表しました。「RetNet」は、従来の「Transformer」より学習速度と長文入力時の推論速度に優れた技術です。PKSHA Technologyは2024年4月以降、このLLMを段階的にビジネス現場へ実装し、コンタクトセンターや社内ヘルプデスクの生産性向上を支援していく予定です。
本ニュースが注目される理由は以下の通りです。
- 「Transformer」の後継と期待される新技術「RetNet」を、LLMに世界で初めて活用した。
- 効率的な長文理解と優れた回答速度を両立し、従来モデルの約3.3倍の速度で出力可能。
- 2024年4月以降、コンタクトセンターや社内ヘルプデスクでの実運用を開始し、生産性向上を目指す。
背景として、PKSHA Technologyは創業当初より自然言語処理の研究開発に注力し、AI活用の実績を6,000件以上積み重ねてきました。近年の生成AIの進化を受け、さらに先進的なAIの開発を目指して、「RetNet」を活用したLLMの開発に至ったのです。
同社が開発したLLMは、70億パラメータを持ち、日本語の新聞紙2ページ分の情報を入力した際に、従来モデルの約3.3倍の速度で出力できるとのこと。開発には日本マイクロソフトからLLM学習ノウハウなども提供されました。
ビジネスでの活用としては、以下のようなユースケースが想定されています。
- コンタクトセンター:リアルタイムのCRMによる顧客満足度の向上
- 社内ヘルプデスク:従業員問い合わせの高度化、情報検索の効率化
PKSHA Technologyは今後、このLLMの検証と改善を重ね、2024年4月頃からコンタクトセンターや社内ヘルプデスクを中心に、段階的に実運用を開始する計画です。
「RetNet」を活用した日英LLMの登場は、日本企業のAI活用の選択肢を広げるインパクトを持つでしょう。従来よりも高速かつ効率的な言語処理を実現するこの技術は、ビジネスの生産性向上に大きく寄与することが期待されます。一方で、AIの導入に伴う業務プロセスの見直しや、倫理的な課題への対応など、克服すべき点も残されています。PKSHA Technologyの取り組みが、日本における言語AIの実用化を加速させる一歩となるか、注目が集まります。
インテックと横河グループ、姿勢推定AIを活用して製造業の生産性を可視化する実証実験を開始
2024年2月29日
TISインテックグループのインテックは、横河システム建築および横河商事と共同で、姿勢推定AIを用いた製造業の生産性可視化に向けた実証実験を2024年1月から開始したと発表しました。この実験では、カメラで撮影した作業者の関節の動きから作業内容を推定するAIを活用し、作業効率や品質の向上を目指します。
本ニュースが注目される理由は以下の通りです。
- インテックの姿勢推定AI技術を、実際の製造現場(横河システム建築)に導入して実証実験を行う。
- 一般的なカメラ1台の2D映像から人の骨格を認識し、作業内容を自動で詳細に把握できる。
- 作業実績の自動収集や、「匠の暗黙知」のデータ化など、製造業の課題解決につながる可能性がある。
背景として、製造業の現場では業務の属人化やブラックボックス化、非効率な業務形態などの問題が潜在的に存在しています。これらを把握・改善するために生産性の可視化が求められていますが、特に人の作業状況については、定常的で正確・詳細な情報の取得が難しいのが現状でした。
そこでインテックは、自社の姿勢推定AI技術を活用した実証実験を開始。マーカーやセンサーを使わずに、カメラ映像から人の骨格を認識し、詳細な作業内容を推定できるようにしました。
この技術を用いることで、以下のような効果が期待できます。
- 作業者の生産数、作業効率、品質などの自動収集
- 標準作業の順守状況の自動チェック
- ベテランと未習熟者の作業比較による「匠の暗黙知」のデータ化
- 作業標準書の作成・改訂の効率化
インテックは今後、人に関するデータ収集を進め、製造業に限らず産業全体に活用できるサービス展開を目指すとのことです。
姿勢推定AIによる人の動態把握は、製造業のDXを大きく前進させる可能性を秘めています。作業の属人性を排除し、データに基づく改善を進められるようになるからです。一方で、従業員のプライバシー保護や、AIによる管理の是非など、倫理的な課題への配慮も欠かせません。インテックと横河グループの取り組みが、製造業の新たなデジタル化モデルを提示できるか注目されます。
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