富士通とヘッドウォータース、日本航空客室乗務員のオフライン環境でも使用可能な生成AIによるレポート作成効率化を実現
最終更新日:2025年03月28日

富士通株式会社とヘッドウォータースは、日本航空(JAL)の客室乗務員が行う引き継ぎレポート作成業務において、クラウド接続不要のオンデバイス生成AIソリューションを活用した実証実験を実施した。
マイクロソフトのSLM(小規模言語モデル)「Phi」を活用し、フライト中の機内でもタブレット端末上でチャット形式のレポート作成が可能なプロトタイプアプリを開発。これにより、レポート作成業務の効率化を実現し、JALのさらなる顧客サービス向上への貢献を目指している。
- 富士通とヘッドウォータース、JALの客室乗務員向けオフライン環境で動作する業務特化型生成AIソリューションの開発
- マイクロソフトの小規模言語モデル「Phi」を活用したオンデバイス型AIにより、機内でのレポート作成時間と修正発生率の削減を実現
- 「Fujitsu Kozuchi」の技術を活用し、JALの過去レポートデータでファインチューニングした業務特化型モデルの構築
本実証実験は2025年1月27日から3月26日までの期間、東京都大田区羽田空港のテクニカルセンターなどで実施された。富士通とヘッドウォータースが共同で開発したソリューションは、JALの客室乗務員がタブレット端末上でチャット形式で入力した情報をもとに、引き継ぎレポートを自動生成するシステムだ。
富士通は自社のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」を通じて培った業務特化型生成AIモデルの開発ノウハウを活用し、JALの過去のレポートデータをもとに、マイクロソフトの小規模言語モデル「Phi」を客室乗務員の業務に特化したモデルへとファインチューニングした。
一方、ヘッドウォータースはオフライン環境のデバイス上でも稼働する業務特化型生成AIアプリケーションを開発した。量子化技術による処理の軽量化によって、タブレット端末上での動作を最適化している点が特徴だ。
同社はAIコンサルタントによる伴走型支援を通じて、AI導入におけるワークフロー分析からPoCの実施・評価、アジャイル開発の進行管理も担当。AIエンジニアが「Fujitsu Kozuchi」のファインチューニング環境を構築し、JALの利用環境に最適化するための技術支援も行った。
実証実験の評価結果では、生成されたレポートがJALの業務用語が学習された自然な表現であり編集が容易であることや、スムーズな英訳により業務負担が軽減されたことが確認された。
既存アプリと比較して、レポート作成にかかる作業時間および修正発生率が削減できたことも確認された。富士通とヘッドウォータースは今後、JALにおける本システムの本番運用に向け段階的な検証を実施し、JALが運用する生成AIプラットフォームへの導入を目指す。
また、業務特化したSLMを「Fujitsu Kozuchi」の生成AIとして活用し、オフライン環境で動作するオンデバイス型・エッジ型・オンプレミス型での提供を予定している。
AI Marketの見解
今回の富士通とヘッドウォータースによるJAL向け生成AIソリューションは、業界において注目すべき技術的進歩を示している。
特に注目すべき点は、通信制限のあるフライト中でも活用できるオフライン対応の生成AIという点だ。従来の大規模言語モデル(LLM)がクラウド接続を前提とする中、SLM(小規模言語モデル)「Phi」を業務特化型にチューニングし、端末内で処理可能にした技術は、航空業界に限らず、工場、建設現場、医療現場など通信環境が制限される多くの業種への応用可能性がある。
また、業務特化型のファインチューニングにより、一般的な生成AIよりも高い精度でJAL特有の業務用語や表現を理解・生成できる点も、企業向けAI導入の一つのモデルケースとなると想定される。
このような実務に即したAIソリューションの普及により、今後日本企業における生成AI活用が加速し、特にフロントライン業務の効率化と顧客サービスの質向上の両立が進むと想定される。
参照元:富士通株式会社
生成AIオンデバイスソリューションに関するよくある質問まとめ
- オフライン環境で動作するSLM(小規模言語モデル)とは何ですか?
SLMは、GPT-4などの大規模言語モデル(LLM)と比較して、パラメータ数が少なく軽量に設計された言語モデルです。
本ケースで使用されているマイクロソフトの「Phi」もその一つで、モデルサイズが小さいため処理負荷が軽く、専用のクラウドサーバーを必要とせずタブレットなどの端末内で直接動作させることが可能です。これにより、インターネット接続のない航空機内などのオフライン環境でも、生成AIの機能を活用できるようになります。
- 業務特化型のファインチューニングとはどのような技術ですか?
業務特化型のファインチューニングとは、汎用的な言語モデルを特定の業界や業務に合わせて調整する技術です。今回の実証実験では、JALの過去のレポートデータを使用して、モデルに航空業界特有の専門用語や表現、レポート形式などを学習させています。
この過程で、「Fujitsu Kozuchi」の技術が活用され、JALの客室乗務員が作成するレポートの特徴を理解したモデルが構築されました。これにより、一般的な文章生成よりも高い精度で業務に即したレポート作成が可能となり、修正の必要性が少ない実用的な文書を自動生成できるようになりました。

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