日本IBMと東京海上日動あんしん生命保険は生成AI活用で「お客様の声」の分析モデルを開発
最終更新日:2025年03月27日

日本IBMと東京海上日動あんしん生命保険は2025年3月26日、生成AIを活用した「お客様の声」の分類・分析モデルを新たに開発したことを発表した。
両社は昨年実施した2段階の実証実験を経て、東京海上日動あんしん生命保険は2025年3月31日以降、本モデルを本格的に導入し、コールセンターや会社ホームページなどへ寄せられるご要望やご不満などの分類・分析を高度化することで、より一層のお客様へのサービス品質の向上を目指していく。
- IBM watsonxを活用した「お客様の声」分類・分析モデルにより手作業の時間削減と人的判断のばらつき解消を実現し業務効率化を達成
- 複数の不満が含まれる内容から分類候補と根拠を示すAI技術で作業の迅速化・平準化を実現し、重要キーワード抽出と関連性可視化も開発
- 2025年3月31日より第1段階モデルを本格導入開始し、その後第2段階モデルも導入予定、契約データと組み合わせた詳細分析へと拡大予定
東京海上日動あんしん生命保険では、コールセンターや会社ホームページ、営業店等に寄せられる年間18,000件におよぶ「お客様の声」を「お客様本位の業務運営」に活用してきた。
これまでは社員が毎日内容を確認し、手作業で分類を行い、業務改善やサービス品質の向上に活かしていたが、作業時間の増加や人的判断に伴う分類のばらつき、重要キーワードの抽出等に課題があった。
一方、日本IBMはIBM watsonxをはじめとするAIなどの先進技術の提供を通じ、ビジネスへのAI適用やデジタル変革の支援を推進している。保険業界においては50年以上にわたってIT化を支援し、契約管理や代理店連携、保険金支払いなどのシステム高度化を推進してきた実績がある。
このような背景から、両社は属人化の解消などの業務プロセス効率化や更なるサービス品質向上の実現に向け、生成AIを活用した「お客様の声」の分類・分析モデルの開発を目指し、2段階にわたる実証実験を行った。
第1段階の実証実験は2024年7月から約2か月間実施され、IBM watsonxの主要コンポーネントであるwatsonx.aiを採用し、自然言語検索や生成AI技術と、情報検索技術(RAG:Retrieval-Augmented Generation)を組み合わせたデータサイエンス手法を用いて、「お客様の声」の分類・分析が行われた。
具体的には、複数のご不満が含まれる電話内容を基にした「お客様の声」データのメモから、分類候補となりうる分類結果を分類根拠とともに示すことで、分類・分析業務の迅速化や優先度の明確化、観点の標準化が目指された。
その結果、生成AIを活用することによる正確かつ平準的な分類や、担当者の作業時間の大幅削減による負荷軽減が実証された。
続いて第2段階の実証実験は2024年10月から約2ヵ月間行われ、重要キーワードの正確な抽出や、キーワードを基にした関連性を可視化する機能、「お客様の声」の多角的な分類、ハッシュタグを自動生成・分類する仕組みなどについて検証された。
その結果、「お客様の声」の内容やトレンドを即時に把握できるようになり、分析の迅速化・高度化が実現することが確認された。
これらの実証実験において、本モデルを活用したソリューションの有効性が実証されたことから、東京海上日動あんしん生命保険は、2025年3月31日より、まず第1段階の実証実験を経たモデルの本格的な導入を開始する。
なお、個人情報を含むデータは、データ取得時の利用目的に基づき利活用するほか、保険業界が扱う個人情報を保守するためにも、高い安全性を備えたIBM Cloud上で構築される。
2025年度以降は、第2段階の実証実験を経たモデルも本格導入するとともに、「お客様の声」を契約データ等と組み合わせ、お客様の属性や商品種類ごとにより詳細な分析を行う等、活用範囲を拡大する予定だ。
日本IBMは今後も先進技術の提供を通じ、東京海上日動あんしん生命保険が掲げる「お客様本位の業務運営」の推進を支援していくとしている。
AI Market の見解
本事例は保険業界における生成AIの実用的な業務適用の好例として注目に値する。技術的な観点では、自然言語検索と生成AI技術に情報検索技術(RAG)を組み合わせるアプローチが、単純な自動分類だけでなく「分類根拠」の提示を可能にしており、AIの判断に対する説明可能性を確保している点が評価できる。
特に金融・保険業界では判断の透明性が重要であり、この手法は業界特性に沿った実装と言える。ビジネス面では、年間18,000件にも及ぶ顧客からのフィードバックを効率的かつ一貫性を持って分析できるようになることで、顧客満足度向上と業務効率化の両立を実現する可能性が高い。
また、第2段階で実現されたキーワード抽出や関連性可視化は、単なる分類作業の自動化を超えて、顧客ニーズの潜在的パターンを発見するための分析基盤として機能すると想定される。
今後、契約データとの組み合わせによる詳細分析へと発展することで、よりパーソナライズされた商品・サービス開発への活用も期待でき、保険業界全体のAI活用モデルケースとなる可能性を秘めている。
参照元:IBM
生成AI活用「お客様の声」分析モデルに関するよくある質問まとめ
- この生成AI活用モデルでは具体的にどのような課題が解決されるのですか?
このモデルでは主に3つの課題が解決されます。1つ目は手作業による分類作業時間の削減で、担当者の業務負荷が大幅に軽減されます。2つ目は人的判断によるばらつきの解消で、AI活用により正確かつ平準的な分類が可能になります。3つ目は重要キーワードの抽出と関連性の可視化で、「お客様の声」の内容やトレンドを即時に把握できるようになりました。これにより、業務プロセスの効率化だけでなく、サービス品質の向上にも寄与します。
- 個人情報を含むデータの安全性はどのように確保されていますか?
個人情報を含むデータは、まずデータ取得時の利用目的に基づいて利活用されます。さらに、保険業界が扱う個人情報の機密性を確保するため、高い安全性を備えたIBM Cloud上でシステムが構築されています。この安全対策により、顧客情報の保護とAI活用によるビジネス価値の創出を両立させています。なお、2025年度以降は「お客様の声」を契約データ等と組み合わせた詳細分析も予定されていますが、その際もデータ保護の枠組みは維持されます。

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