マルイ、AIによる需要予測で客数・販売予測精度向上。発注時間50%削減を実現
最終更新日:2024年09月18日
2024年9月17日、株式会社マルイと日本アイ・ビー・エム株式会社は、AIを活用した需要予測システムの導入効果を発表した。2023年11月から2024年2月までの4ヶ月間の実証実験で、1ヶ月の客数予測精度が90%を超え、販売機会向上と廃棄ロス削減を実現。さらに、2024年3月から7月までの一部店舗での実運用で、1店舗あたりの発注時間50%削減を確認。これらの成果を受け、マルイは2024年9月から全店舗へAI需要予測システムを正式導入することを決定した。
<本ニュースの10秒要約>
- マルイ、日本IBMのAI需要予測システムを活用し、客数予測精度90%超、発注時間50%削減を達成
- 実証実験で和日配カテゴリーの販売数予測精度96.3%、売上前年比102%、月額ロス率前年比97.5%を実現
- 2024年9月から全店舗へAI需要予測システムを導入、精肉や惣菜への展開と人員計画最適化も検討中
マルイの課題と「マルイ流DX」への取り組み
マルイは、小売業界全体が直面している人材不足、コスト削減圧力、業態を超えた競争激化といった課題に対応するため、「マルイ流DX」に取り組んでいた。この取り組みは、単なる効率化ではなく、業務効率化によって生み出される人材や時間を最大限活用し、顧客へ付加価値を提供することを目指すものだ。
一部の賞味期限の長いカテゴリーでは、在庫型・統計需要予測方式の自動発注を導入していたが、気象条件や販売促進の影響で需要が大きく変動する商品や、賞味期限が短い商品の需要予測は課題となっていた。これらの改善が大きな課題として挙げられていた。
日本IBMの「AI需要予測」システムの導入と効果
マルイは、日本IBMの「流通業向けDSP」の「AI需要予測」システムを導入した。このシステムは、天候や催事などの店舗売上影響要因であるコーザルデータや顧客の販売データの傾向分析を活用し、商品ごとに最適な予測モデルを自動で適用する。実証実験は2023年11月から2024年2月までの4ヶ月間、和日配(豆腐、納豆など)と洋日配(牛乳、デザートなど)のカテゴリーを対象に5店舗で実施された。
その結果、和日配カテゴリーでは販売数予測精度96.3%、売上前年比102%、月額ロス率前年比97.5%を達成した。また、各カテゴリーの発注時間を50%削減することができた。定性的な効果としては、担当者の発注忘れ防止、従業員の休暇中の心労削減、店舗スタッフのモチベーション向上、高付加価値サービス提供時間の増加による店舗活性化、欠品状況の可視化や定番商品の品揃え改善などが挙げられた。
全店舗導入の決定と今後の展開
実証実験の成果を受け、マルイは2024年3月から7月まで一部の店舗で実運用を行った。その結果、1店舗あたりの発注時間の50%削減効果がさらに確認されたため、2024年9月から「AI需要予測」システムを全店舗へ正式に導入することを決定した。
今後の展開としては、部位が多く予測の難しい精肉や惣菜、インストアベーカリーへのAI需要予測の適用と製造計画への利用を検討している。さらに、時間帯別の客数予測を活用した人員計画最適化を図り、スーパーマーケットの店舗管理におけるデジタル・トランスフォーメーションを推進していく方針だ。
AI Market の見解
マルイの事例は、AIを活用した需要予測システムが小売業界に与える影響の大きさを示している。客数予測精度の向上、発注時間の大幅削減、売上増加、廃棄ロス削減など、多面的な効果が確認されたことは注目に値する。特に、商品ごとに最適な予測モデルを自動適用する手法は、多様な商品を扱うスーパーマーケットにおいて非常に有効だ。
今後、精肉や惣菜などの予測困難な分野への展開や、人員計画最適化への応用が実現すれば、小売業全体のデジタル・トランスフォーメーションが加速する可能性がある。一方で、AIシステムの導入には初期投資や従業員のトレーニングなどのコストがかかるため、中小規模の小売業者にとってはハードルが高い可能性もある。業界全体の競争力向上のためには、こうしたテクノロジーの導入をサポートする仕組みづくりも重要となるだろう。
参照元:IBM Newsroom
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