静岡大学、温室メロンの網目品質を熟練生産者レベルで認識できる等級判定AIを開発
最終更新日:2022年09月22日
国立大学法人静岡大学は、2022年9月20日、温室メロンが持つ網目の品質を認識可能な等級判定AIの研究開発に成功したと発表した。
この等級判定AIは、画像解析や深層距離学習といった技術を活用し、熟練生産者による等級判定を約82%まで再現できるというものだ。静岡大学が株式会社大和コンピューターと取り組んでいる農知創造研究に関する共同研究において、開発されている。
<本ニュースの10秒要約>
- メロン表皮の全周画像から網目の品質を解析して等級を判定、熟練生産者による判定を約82%まで再現
- 人間による等級判定につきものの「時間がかかる」「判断基準がバラつく」といった課題を解消
- 今後は温室メロン以外にも等級判定AIの活用を進め、生産者の負荷軽減や等級判定技術の継承に貢献
人力作業では多くの課題が生じていた温室メロンの等級判定
日本国内において温室メロンは、贈答用などに用いられる高級果実として広く認知されている。そのため、大きさ・糖度といった品質と共に外観上の品質もまた重要となる。果実の形状が整っていることや網目の色合い、網目形状の均一さといった外観品質を、これまでは熟練生産者が目視確認により行ってきた。
しかし、熟練生産者であっても人間による判定作業は多くの時間を必要とする。また、生産者ごとに判断基準がバラつくこともあるため、等級付けの一貫性が保持できないという課題も生じていたこうした課題を解消するため静岡大学が大和コンピューターと共に開発したのが、等級判定AIだ。
網目の品質をベクトル化(定量化)し、熟練生産者並みに等級を判定
今回開発された等級判定AIでは、メロン表皮の全周を表した網目画像と輪郭画像を生成した上で網目の品質をベクトル化(定量化)し、熟練生産者並みの等級判定を行う。ベクトル化に際しては、等級判定に寄与した部位を表現するActivation Mapと深層距離学習を活用。表皮の全周映像データは、一般的なRGBカメラで取得可能となっている。
この技術を用いると、熟練生産者が等級判断を行う際の根拠となっていた網目の部位の可視化や、等級ごとの類似度をレーダーチャートで表示することも、可能となる。基礎実験結果からは、熟練生産者の見立てでも妥当(約98%)であることが明らかになっている。
AIとの協働による持続可能な地域社会の実現も目指す
今回の成果は、「メロン画像特徴量の類似度を用いた等級判定技能習得支援システムの提案」というタイトルで
学会誌に掲載された。著者として、静岡大学大学院・小池誠氏と同学学術院・峰野博史氏、そして大和コンピューター・小川晋氏が名を連ねている。大和コンピューターは、静岡県袋井市にて保有する自社農場を用いて、栽培システムの構築など農業のICT化に取り組む企業だ。
この等級判定AIについて静岡大学は、今後は多様な領域での活用も検討している。外観の品質判定が重要な農産物や工業製品は、温室メロン以外にも多数存在する。こうした領域で等級判定AIの活用を進めることにより、一貫性を持った等級判定と出荷作業の効率化、また生産者の負荷軽減や等級判定技術の継承への貢献も企図。さらに、こうした取り組みを通じてAIとの協働による持続可能な地域社会の実現も目指すとしている。
参照元:PRTIMES
農業へのAI活用事例を詳しく知りたい方はこちら、また画像解析が得意なAI開発会社をお探しの方はこちらの記事をご参考ください。
AI Market ニュース配信チームでは、AI Market がピックアップするAIや生成AIに関する業務提携、新技術発表など、編集部厳選のニュースコンテンツを配信しています。AIに関する最新の情報を収集したい方は、ぜひ𝕏(旧:Twitter)やYoutubeなど、他SNSアカウントもフォローしてください!
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
過去のニュース一覧:ニュース一覧
ニュース記事について:ニュース記事制作方針
運営会社:BizTech株式会社
ニュース掲載に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-press@biz-t.jp