異物混入対策とは?重要性・有効な施策・AIによる検知のメリット・活用事例を徹底紹介!
最終更新日:2024年11月09日
製造ラインでの異物混入は、食品メーカー、飲食業界にとって最も頭を悩ます課題の一つです。目視検査による作業者の負担、検査精度の個人差、そして見逃しのリスク。これらの課題に直面している製造現場の品質管理担当者は少なくありません。
本記事では、食品業界での異物混入対策の重要性や有効な施策を紹介します。また、近年注目を集めるAI(人工知能)技術を活用するメリット、そして実際の活用事例についても解説します。
自社の食品製造工程において、異物混入リスクの低減と業務効率化を目指す企業担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
AI Marketでは
異物混入対策とは?
異物混入対策とは、食品に異物が混入するのを防ぐための一連の取り組みを指します。これには、検査員に対する衛生教育や施設のメンテナンス管理、品質管理システムの導入など、多岐にわたる対策が含まれます。
近年では、画像認識AIの導入により、異物の検出精度と効率が向上し、自動化による作業負担の軽減が期待されています。
異物混入対策には、以下の3つの原則があります。
- 入れない
- 発生させない
- 取り除く
これらの原則に基づいて、具体的な対策を実施していきます。
異物混入対策の重要性
異物混入は食品を扱う企業にとって重要な問題であり、そのリスクは企業の信頼性に直接影響を与えます。
特に、SNSやネットの影響力が強い現代では、一度食品に異物混入が発生すると瞬く間に情報が拡散されます。不特定多数の顧客からの信頼を失うことも珍しくありません。
これにより、深刻な顧客離れを招き、大幅な売上減少やブランドイメージの悪化に直面する可能性があります。また、食品の回収や販売停止による経済的損失を避けることは難しく、その回復には多くの時間と努力が必要です。
したがって、異物混入事故を防ぐことは、企業のブランド価値や経営を長期的に守るうえで重要といえます。
異物混入が起きる主な原因
異物混入が発生する主な原因として以下が挙げられます。
- 検査員の不注意
- 害虫・害獣の侵入
- 設備機器・施設の劣化や不具合
- 原材料などに対する衛生管理不足
まず、食品を取り扱う検査員の衛生管理の不徹底が原因で、髪の毛やアクセサリー、衣服の一部が食品に混入することがあります。特に、衛生帽子や手袋など衛生グッズを適切に使用しない場合に発生する傾向があります。
清掃が不十分であったり、窓や扉が開放されていたりするときには、工場内への害虫や害獣が侵入し、異物混入になるケースも少なくありません。
工場の老朽化やメンテナンスが不十分な設備の不具合から、金属片やプラスチック片などが食品に混入することもあります。
また、自社工場内だけでなく、仕入れ先の原材料に対する衛生管理が不十分な場合にも異物混入が発生する傾向にあり、特に穀物類の場合には害虫などが付着することもあります。
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異物混入防止に有効な対策
異物混入防止のためには、取引先・自社工場の衛生管理・文書化などあらゆる側面からの対策が必要です。以下では、異物混入対策防止に有効な施策を紹介します。
信頼できる取引先の選定
厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルにも記載されているように、食品への異物混入を防止するうえでは品質管理の確かな取引先から購入することが基本です。責任者は、日頃から食材の納入業者についての情報の収集に努め、品質管理の確かな業者から食材を購入することが求められます。
また、取引先の衛生管理体制や品質管理基準を定期的に確認することが求められます。例えば、以下に挙げる生産環境や取り扱いについて確認することが必要です。
- 「定期的に生産環境の清浄化をしているか」
- 「生産を担う検査員の衛生管理は適切か」
- 「搬送中・保管中に害虫の侵入を防止できているか」
適切な企業と取引することで、原材料の安全性を確保し、異物混入の原因となる生物学的・物理学的汚染物質の侵入や混入リスクを最小限に抑えることが可能です。
3S活動に基づいた施設管理の徹底
施設の老朽化や汚染物質による異物混入を防ぐためには、3S活動に基づいた施設管理の徹底が効果的です。3S活動とは、「整理・整頓・清掃」の3つの要素からなる活動であり、作業環境を常に整えて清潔に保つための取り組みを指します。
特に、設備や施設内の定期的な清掃は、異物混入防止の基本です。例えば、排水溝やグリストラップの清掃頻度を高めることで、害虫の発生を防げます。
また、作業環境を常に清潔に保つことは、検査員の衛生意識を高める効果もあり、結果として異物混入の発生を未然に防ぐことにつながります。
これにより、異物混入リスクを低減し、作業の効率化や食品の品質を向上できます。
定期的な検査員教育
異物混入防止には検査員一人ひとりの意識が欠かせません。そのため、定期的に異物混入防止に関する研修を実施し、検査員の衛生意識を高めることが重要です。
研修では、具体的な事例を通じて異物混入が発生した際の影響やリスクについて理解を深めさせることが重要です。また、効果的な対策方法について学ぶ機会を用意しましょう。
また、異物混入防止の取り組みが企業全体のブランド価値を守ることにつながることを強調しましょう。そのようにして、検査員のモチベーションを向上させることも重要です。
検査員教育を通じて検査員の意識と行動が変わることで、異物混入リスクの大幅な低減が期待できます。
チェックリスト・マニュアルの作成
異物混入を防ぐうえでは、工場内での人や物の動きに関するルールや注意点を明確に文書化し、全検査員に周知することで管理を徹底しましょう。これにより、遵守すべき基準が統一され、異物混入リスクの低減につながります。
また、「大量調理施設衛生管理マニュアルの点検表」や各自治体が公開している「異物混入事故防止チェックリスト」を参考にしながら、独自のチェックリストを作成することも有効です。
作成したチェックリストは定期的に見直しましょう。現場の声を反映させながら改善点を反映させることで、継続的な品質向上を図ることが可能です。
品質管理システムの導入
金属探知機やX線異物検出機などの高度な品質管理システムを導入することで、目視では見逃しがちな異物も高精度で検出できるようになります。
実際に、大手企業では品質管理システムを導入している場合も見られます。例えば、「永谷園ホールディングス」では、硬い異物を取り除ける「X線異物検出機および金属探知機」や天然由来の異物を除去できる「色彩・風力選別機」を活用し、効率的な全数チェックを実現しています。
品質管理システムを活用することで、食品検査の効率が大幅に向上するとともに、品質管理の信頼性も強化することが可能です。
画像分析AIによる自動化
近年は、画像認識・画像解析AIを活用した異物混入対策が注目を集めています。AIによる異物検出の基本的な仕組みは以下です。
- カメラで食品を撮影:生産ラインに設置されたカメラが、流れてくる食品を連続的に撮影します。
- AIが画像を分析:撮影された画像をAIが瞬時に分析し、異物の有無を判断します。
- 異物の検出と排除:AIが異物を検出した場合、その食品を自動的に排除します。
基本的な仕組みは、製造業の外観検査で活用される画像認識AIの仕組みと同様です。従来のルールベース型の画像検査装置や目視検査と比較すると、画像認識AIは異物検出の精度と速度の両面で優れています。
例えば、プラスチック片や植物、髪の毛など検出が難しい異物にも対応できるようになり、異物検知作業のフルオート化を実現します。
また、AIは自己学習機能を持っており、運用を通じてさらに精度を高め、未知の異物や新しい異物にも柔軟に対応できます。これにより、食品の安全性向上だけではなく、検査員の負担軽減にもつながります。
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異物混入対策でAIを活用する5つのメリット
AI技術は、異物混入対策において非常に強力なツールとなり得ます。これまでの目視やルールベースの検査方法では対応しきれなかった異物も的確に検出でき、精度と効率の両面で大きなメリットがあります。
以下では、異物混入対策でAIを活用するメリットについて紹介します。
高精度な異物混入検知
従来の画像処理技術では、検査対象の特徴を数値化し、明確なルールを設定して検査を行っていましたが、個体差や曖昧な検査に対応しきれず、誤検出や過検出が頻発していました。
一方、AIを用いたディープラーニング手法では、大量の画像データから自動的に特徴を抽出し学習することが可能です。これにより、個体差がある場合や人間の目では難しい曖昧な判断が必要なケースでも、高精度な検査が実現します。
学習が進むほど精度向上
AIは繰り返し学習を行うことで精度が向上し続けるため、日々の運用を通じてより信頼性の高い品質管理が可能となります。
また、アクティブラーニング検査の導入により、AIが不確実性の高いケースを自動的に人間の検査員に振り分け、効率的な検査体制を構築できます。AIと人間の長所を組み合わせた最適な検査フローを実現しています。
多様な異物に対応
AI技術は、プラスチック片や髪の毛、虫など非金属異物をはじめとする多様な異物に対応できます。従来の金属探知機やX線検査では検出が困難だった異物も、高精度に検知することが可能です。
また、目視では判別しにくい微妙に異なる多品種の混入も高精度に検知可能です。
近年は、画像・音響・振動などの複数のセンサーデータを組み合わせたマルチモーダル異物検知により、より確実な検査が実現しています。
さらに、AIは大量の画像データをもとに特徴を学習し、さまざまな環境や条件下での異物検出に柔軟に対応できます。これにより、異物混入リスクの低減とともに、検査精度の安定化と効率化を実現し、食品の安全性をより確実に確保することが可能になります。
大量の異物混入検査を迅速化
目視検査の場合には、検査速度が検査員の疲労度合いに左右されることも少なくありません。特に、全数チェックにおいて大量の食品を検査する必要がある場合には、多大な時間を要します。
一方、AIによる異物検知はカメラ画像から一度に複数の異物混入を判定できるため、食品の検品ラインでコンベア上を流れる大量の食品に対して、リアルタイムで検査することが可能です。
24時間稼働する場合にも、一定の質を保ちながら迅速に検査できます。
また、システムの導入により検査作業の効率が向上し、検査員の負担も軽減されます。これにより、検査員はより高度な業務に集中でき、全体的な生産性の向上に寄与します。
結果として、生産ライン全体の効率が向上し、検査コストの削減や出荷リードタイムの改善などのビジネス上で多くのメリットを得られます。
未知の異物への対応が可能
従来のルールベース型の場合には、異物の種類を登録しなければ判定できないため、未知の異物に対してはスルーしてしまうことがあります。
一方、AIシステムは、学習を重ねることで新たな異物や未知の異物にも対応できるようになります。これにより、従来の検査方法では対応できなかった想定外の異物も検知できる可能性が高まります。
また、システムをスケーラブルに拡張することが可能です。生産ラインの規模や食品種別に応じて柔軟に対応できるため、どのような食品の異物にも適用できます。
AIの適応力により、環境や製造条件の変化に迅速に対応し、幅広い環境下で安定した品質管理を維持できます。
異物混入対策でのAI活用事例
異物混入対策としてAIを活用し、従来よりも高精度かつ効率的な検査を実現している事例も増えてきています。以下では、異物混入対策でのAI活用事例を紹介します。
【アヲハタ/ニコン】ジャム製造での異物検査を自動化
アヲハタとニコンは、ジャム・フルーツスプレッド製造工程における異物検査装置を共同開発しました。この装置は、光学技術とAIを活用して、製品に混入する可能性のある異物や夾雑物を検出・除去します。
システムの仕組みは、ニコンの分光技術を用いてベルトコンベア上の原料を連続的に撮影し、AIによって果肉と異物を見分けます。異物が検出されると、ロボットアームに取り付けられたバキューム装置で自動的に取り除きます。
これまでジャム・フルーツスプレッドの異物検査は、原料の種類が多く果肉の形状も様々なため、自動化が難しいとされてきました。
今回の装置では、アヲハタの異物検査のノウハウと、ニコンの光学技術を組み合わせることで、この課題に対応しています。果肉と異物を区別するのに最適な波長のフィルターを選定し、AIによる画像認識技術と組み合わせることで、検出の精度を高めています。
「アヲハタ 55ジャム」などの主力商品の生産ラインで稼働を開始し、従来からの目視検査と併用することで、検査の確実性を保ちながら作業者の負担軽減にもつなげています。
【アラヤ】毛髪まで検出可能な高性能AIを開発
株式会社アラヤは、プラスチック片のほかに、毛髪まで正確に検出できる高性能AIソフト「InspectAI」を開発しました。黒髪だけでなく、白髪・茶髪・金髪まで対応可能で、食品に混入する微細な毛髪も見逃さずに検出します。
さらに、このAIソフトでは「海苔の上の黒髪」や「白飯の上の白髪」など、同系色の背景に存在する毛髪も正確に識別することが可能です。
ルールベース型画像検査で判定できない原材料にまれに混入する異物に対して、目視検査で対応していた企業が、導入後に検出率95.88%を実現し、異物除去工程の無人化に成功しています。
このように、InspectAIはピクセル単位で不良部分と正常部分を正確に判定することで、品質検査固定の省人化に貢献しています。
【ユアサ商事】良品データに基づき正確に判定できるAI外観検査装置を提供
ユアサ商事は、良品判別に必要な測定項目・正常範囲を自動でAIが決定するAI外観検査装置「F[ai]ND OUTシリーズEX」を提供しています。
F[ai]ND OUTシリーズEXは、検査員の経験に依らず、AIに学習した良品データの特徴から判定させる仕組みを採用しています。これにより、従来よりも精密かつ正確に多様な不良品を判定できます。
例えば、実際の導入事例ではかまぼこに付着した目に見えにくい透明なセロファンをAIがしっかりと捉えます。NG判定を出力でき、従来の方法では見逃される可能性の高い微細な異物の検出が可能になっています。
検査員の判断による制度や基準のブレを無くし、品質管理の精度向上や検査ラインの自動化・効率化に大きく貢献することが期待されています。
【YE DIGITAL】エッジ端末でのリアルタイムAI外観検査を実現
YE DIGITALが提供するAI画像判定サービス「MMEye」は、AIを搭載したエッジ端末を活用することで、製造現場においてリアルタイムな画像判定が可能なサービスです。クラウドにデータを送信する必要がなく、社内で安全にシステムを構築できる点もメリットです。
また、検知能力も高く、従来の検査方法では人の目に頼るしかなかった複雑なパターンや細かな異物も、ディープラーニングを活用することで人並みに高精度な自動判定を実現しています。
例えば、MMEyeでは、ジャムなどの加工食品の中に混入した金属探知機で見つけられない異物も検出可能です。MMEyeは、生産ラインでのスピーディな異物検出と品質管理の向上に貢献します。
【NEC】ガラス瓶中の異物を検出するAI技術を開発
NECは小野薬品工業と提携し、ガラス瓶に充填された薬液中の微細な異物検出ができるAI技術を開発しました。
NECの新しいAI技術は、検査員の目視検査手法をAIが学習することで、従来の画像検査と目視検査手法では困難だった薬液中の異物の高精度な検出を実現しています。ガラス瓶を傾けたり振ったりすることによって発生する「泡」と「異物」の動きの違いをAIが抽出・認識し、薬液中に含まれる微細な異物だけを正確に検出します。
これにより、検査員の熟練度による検査品質のばらつきを最小限に抑えることが可能です。
今後さらに多くの薬品製造工程に導入され、品質管理の強化と効率化が進むと期待されています。
異物混入対策についてよくある質問まとめ
- 異物混入対策の重要性は?
異物混入対策を徹底することで、消費者の安全確保やブランドの信頼向上が図れます。異物の検出精度が上がるため、リコールやクレームのリスクも減り、品質管理におけるコスト削減につながります。
- AIを使った異物混入対策はどのように効果を発揮しますか?
AIは、目視や従来の検査機器で見逃しがちな微細な異物も高精度に検出します。リアルタイムで判定ができるため、製造ラインでの効率的な品質管理とコスト削減が可能になります。
まとめ
異物混入対策は、食品の安全性を守り、企業の信用を保つために不可欠な取り組みです。
異物混入を防ぐための効果的な施策として、検査員の衛生管理教育や製造設備の定期的な清掃・点検、金属探知機などの品質管理システムの導入が挙げられます。これらにより、食品に異物が混入するリスクを最小限に抑えることが可能です。
また、近年は製造業の外観検査にも使われている画像認識AIの導入が注目されており、AIにより従来の目視検査やルールベースの検査装置では検出が難しかった異物に対しても、高精度な検出が可能になっています。AIはリアルタイムでの異物検出や品質管理の自動化により、品質検査の効率化とコスト削減に大きく貢献します。
より安全で信頼性の高い食品を効率良く提供するためにも、画像認識AIを導入してみてはいかがでしょうか。
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