医療画像診断AIの現状と今後の課題解説!導入メリット・最新事例・展望は?
最終更新日:2024年11月06日
医療画像診断AIは、ディープラーニングなどのAI(人工知能)技術を用いて医療(医用)画像(X線、CT、MRIなど)を解析し、異常箇所の検出や疾患の診断を支援する画像解析システムです。特に、放射線科医の不足が深刻化する中、AIを活用した診断支援が注目を集めています。
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AIは膨大な医療画像データを解析し、高精度な診断をサポートすることで、医師の負担を軽減し、患者への迅速な対応を可能にします。
しかし、導入にあたっては技術的な課題や精度の向上に向けた検証が必要不可欠です。
本記事では、画像診断AIの現状分析を踏まえて、導入メリットについてわかりやすく解説します。また、画像診断AIの最新事例についても解説しますので、AI導入を検討する医療分野の方にとって、AI技術がもたらす可能性と課題を深く理解できる内容となっています。
画像診断AIの活用を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
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ディープラーニングが医療画像診断にもたらした最新の現状
ディープラーニングによる画像認識、及び解析は医療画像診断において、適用範囲を急速に拡大しています。初期では画像分類に特化していましたが、現在では物体検出から領域抽出(セマンティックセグメンテーション)、画像生成にまで応用の幅を広げています。
ディープラーニングは以下のような多様な機能を画像診断にもたらしています。
高精度な画像分類と異常検出
ディープラーニングモデル、特に畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、医療画像から複雑な特徴を自動的に学習し、高精度な分類を実現します。これにより、様々な疾患の早期発見や鑑別診断の精度が向上しています。
また、ディープラーニングモデルの高速化により、内視鏡検査中のリアルタイム病変検出など、即時的な診断支援が実現しつつあります。
自動領域抽出と臓器セグメンテーション
U-Netなどのアーキテクチャを用いたディープラーニングモデルは、臓器や病変の自動セグメンテーションを可能にしました。これにより、腫瘍体積の正確な測定や治療計画の立案が効率化されています。
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マルチモーダル画像解析
マルチモーダルAIは、医療現場での診断の質と精度を向上させるために非常に重要です。現時点で提供されている画像診断AIの多くは、画像データのみを用いて病変の有無を判定します。
ディープラーニングは、MRI、CT、PETなど異なるモダリティの画像を統合的に解析する能力を持ち、より包括的な診断情報を提供します。
さらに、患者の病歴・ライフスタイル・検査結果など、時系列・言語データをはじめとするさまざまな情報を組み合わせて解析可能です。これにより、まるで医師が多角的な情報から診断を下すように、より包括的で精度の高い診断が期待できます。
誤診のリスクを減らし、患者一人ひとりに最適な治療計画を提供することが可能となります。
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GANによる画像生成と診断画質改善
敵対的生成ネットワーク(GAN)などの画像生成AI技術により、低線量で撮影したCT画像を入力とし、通常線量で撮影したような高品質画像を生成します。これにより、患者の被ばく低減と診断精度の向上の両立が進んでいます。
また、低解像度のMRI画像から、高解像度の画像を生成できます。撮影時間の短縮が可能になり、より詳細な診断が可能になるメリットをもたらします。
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消化器内視鏡分野で実用化が進む
日本国内では、特に消化器内視鏡分野で画像診断AIの実用化が進んでいます。理由は、日本では大腸内視鏡や胃カメラを使った検査が多いことから、他分野に比べ画像データが集まりやすく、高精度な画像診断AIを構築できるからです。
また、近年では公共の医療画像データベースの増加に伴い、X線CTやMRIによる肺や頭部の診断支援、超音波診断装置への適用も進められつつあります。このような動向から、今後さらに幅広い領域で画像診断AIの導入が加速すると期待されています。
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画像診断AIの課題とは?
画像診断AIは医療分野で急速に普及しつつありますが、その進化と導入には多くの課題があります。以下では、画像診断AIの現状を分析し、その課題と可能性について解説します。
医療画像データ不足への対応が課題
ディープラーニングの学習には基本的に大量のデータが必要になりますが、画像診断AIの開発においては学習用の医療画像データの不足が大きな課題となっています。
学習用の医療画像データとして活用するには、CTやMRIなどから得られる数千枚から数万枚の画像に対して、病変部位の正確なアノテーションが必要です。そのため、一般的な画像に比べ、アノテーションの難易度の高さが不足要因の一つとして挙げられます。
医療画像データの確保には、高度な医学的知識が必要であり、AI技術者単独での対応が困難なため、専門家との協力体制が不可欠です。この状況を受け、日本医学放射線学会をはじめ多くの学会や施設が協力し、大規模な医療画像データベースを構築し始めています。
また、自然画像を学習したAIを医療画像へ応用する「転移学習」を用いた手法など、少量の医療画像データから高度な診断を可能にするAIの開発も進められつつあります。
法令・規制の整備が活用拡大を阻む
AIによる診断支援が普及しつつある中で、法令や規制の整備が大きな課題となっています。
例えば、AIが診断に誤りを生じた場合、現状では「AIは診断支援ツールであり、最終的な診断は医師が行う」傾向にあります。それでも、責任問題については現在進行形で議論が重ねられています。
近年では、AIの診断精度が熟練医を上回るケースも出てきており、医師とAIの責任分担についての議論が求められています。
承認済みAIの大半が「セカンドリーダー」止まり
現在、日本で承認されている画像診断AIの多くは「セカンドリーダー」として使用されています。セカンドリーダーとは、医師がまずAI解析なしで読影を行い、その後AIの解析結果を参考にして最終診断を行う形態です。
業務効率化の効果がより期待できる「ファーストリーダー」型AIは、AIが医師よりも先に画像を解析し、医師はAIが提示した病変候補のみを確認する形です。この形式は薬事承認のハードルが高く、現時点ではなかなか実用化が難しい現状です。
ファーストリーダー型は医療リスクの観点からも高度な信頼性が求められ、法規制やエビデンスの確立も不可欠です。
こうした課題を踏まえながら、医療現場ではセカンドリーダー型AIが主流で活用されており、AI技術のさらなる進化と規制の整備により、今後ファーストリーダー型の導入が進むと期待されています。
解釈可能性の高いAI開発が必要
AIの診断結果を医療現場で安心して利用するためには、説明可能性の向上が求められています。具体的には、AIの推論に使用された特徴量や判断根拠を人間が理解できる形で提示する技術が必要です。
ディープラーニングは高い診断精度を達成できる一方で、その学習結果のブラックボックス化が大きな課題です。
解釈可能なAIを開発し、医師とAIの診断結果に齟齬が生じないようにすること、診断結果に至るまでの根拠や経緯を明確にすることが、ファーストリーダー型AIの実用化を実現する第一歩となります。
これにより、医師がAIの判断を信頼しやすくなり、医療現場でのAI導入の障壁が低くなると期待されます。
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画像診断AIの導入メリット
画像診断AIを導入することで、診断精度や業務の効率面においてさまざまなメリットがあります。以下では、画像診断AIの導入メリットについて紹介します。
関連記事:「医療業界でAI導入が切実に必要とされる理由、AIによる具体的な解決法、活用法、注意点・問題点をご紹介」
診断精度の向上
画像診断AIを導入することで、見落としを防ぎ、非専門医でも高度な診断を行うことが可能になります。大量かつ多様な症例データを学習することで、判断が難しい微細な病変も高い精度で検出できます。
また、画像診断AIの多くでは異常を自動的に強調表示する機能を持ち、医師が短時間で病変を特定するのをサポートします。これにより、診断の精度とスピードが向上し、医療現場での負担軽減が期待できます。
診断業務の効率化
画像診断AIによる診断支援により、医師の読影・診断作業が効率化され、検査・診断のワークフローが改善されます。読影作業の効率化に伴い、患者への診断説明や診断結果に対するメンタルケアをより丁寧に行えるようになり、患者満足度向上につながると期待されます。
また、AIは大量のデータを迅速に処理する能力を持つため、複数の画像を同時に解析し、異常の早期発見を可能にします。
待ち時間の短縮
画像診断AIを活用することでより迅速な判断が可能になることから、患者の待ち時間を短縮できます。これにより、患者の負担軽減につながり、患者満足度の向上に貢献します。
実際に、診療予約システムを提供する「peerNIS」が実施した病院でのストレスに関する調査によると、待ち時間の長さと答えた人が66%と最も多い結果となりました。この調査結果からも言えるように、判断時間の短縮により、病院の口コミや評判が良くなると期待できます。
また、緊急性が高く迅速な判断を迫られる医療現場においては、患者の治療開始までの時間短縮に貢献します。短期間で正確な診断が可能となり、死亡率の低下につながります。
予防医療への活用
画像診断AIは、健康診断などの予防医療の現場でも活用が期待されています。放射線科医の負担を減らし、診断の質を向上させることで、予防医療の普及と質の向上に寄与できます。
例えば、画像診断AIでは初期段階での疾患検出能力を強化し、健康診断結果の分析においても迅速かつ精度の高い診断が可能です。これにより、病気の早期発見と早期治療が促進され、患者の健康維持に貢献します。
画像診断AIの最新事例
画像診断AIの技術は日進月歩で発展しています。ここでは、画像診断AIの最新事例を紹介します。
【富士フィルム】AI技術による新型コロナウイルス肺炎の診断支援
富士フイルムホールディングスは京都大学と共同で、間質性肺炎の病変に対する定量化技術を応用し、新型コロナウイルス肺炎患者の診断支援に役立つAI技術の開発を進めています。富士フイルムの間質性肺炎の定量化技術により、肺の7種類の病変性状を自動で分類・測定し、定量化されたデータを提供する技術です。
この技術が実用化されると、患者一人あたり数百枚にのぼる胸部CT画像の読影負担を軽減し、医師が病状の経時変化や治療効果の効率的な評価が可能になります。医師は定量化されたデータをもとに安定した診断が行え、診断結果のばらつきを抑えつつ、経過観察が容易になります。
また、このデータは新薬開発や治療法評価にも役立ち、医療現場と製薬の両面での応用が期待されています。
【NTTデータ】数千万のCT医療画像から異常を自動検知
NTTデータは、CTやMRIで取得される数千万もの膨大な医療画像から異常を自動検知するAI技術の開発を進めています。実証実験では、腎臓の異常を高精度で検出できることを確認されました。
従来、放射線科医は1回の診断で数千枚にも及ぶ画像を目視で確認する必要があり、診断レポート作成には大きな負担が伴っていました。
この技術は特定の癌に限定されず、臓器の多様な異常検出が可能であるため、病変の見落とし防止にも寄与します。今後も継続的に改良が進められ、放射線科医の負担を軽減しつつ、質の高い画像診断を支援することが期待されています。
NTTデータの実証実験のように、特定の疾病だけでなく臓器のさまざまな異常を検出できる画像診断AI技術も登場しています。
【AIメディカルサービス】内視鏡検査中に病変の検出を支援
株式会社AIメディカルサービスは、胃内視鏡検査中に病変を検出する内視鏡画像診断支援ソフトウェア「gastroAI™ model-G」を提供しています。内視鏡画像から上皮性腫瘍の疑いがある病変候補を識別し、生検などの追加検査が必要な病変位置の候補を矩形で示すことができます。
この機能により、医師に注意喚起と診断関連の参考情報を提示します。医師が見落としやすい病変に対して迅速に反応し、診断精度の向上をサポートします。
性能評価試験では、腫瘍性・非腫瘍性病変の検出において、専門医が65.8%であったのに対して、本製品の感度は84.7%の精度を達成しました。
この技術のように、診断中にAIがリアルタイムで画像診断を行うシステムも増えつつあります。
【エルピクセル】クラウド型の読影診断サポートAI
エルピクセル株式会社は、クラウドベースの読影診断支援ソフトウェア「EIRL Cloud」を提供しています。オンライン接続があれば機材の新設やシステムの複雑な連携を必要としない点が特徴です。
そのため、比較的小規模なクリニックにとっても導入コスト面・規模両面から利用しやすく、幅広い規模のクリニックへ画像診断AIの導入を促進しています。
EIRL Cloudは、まず胸部CT画像から医師が設定した基準値に基づくCT値から、肺野領域の組織のうち「関心領域」を抽出します。そして、各領域の体積や最大径を測定することで、胸部X線画像から肺結節に類似する5ミリ〜30ミリ程度の領域を検出し、医師の読影をサポートします。
EIRL Cloudを併用した場合、医師単独での読影感度は45.4%から57.0%に大幅に向上し、専門医・非専門医ともに精度の向上が確認されています。
また、新プランでは検出できる異常の範囲が拡大され、胸部X線検査における異常陰影の検出を支援し、健康診断や日常診療での包括的な活用が期待されています。
エルピクセルの提供サービスのように、従来のオンプレミス型のほかに、低コスト・省スペースで導入できるクラウド型も増えてきています。
【HACARUS】肝細胞がんのMRI画像解析
医療分野のAI開発を手がける株式会社HACARUSは、神戸大学と肝細胞がんのMRI画像解析、診断支援AIの共同研究の契約締結をしました。肝がんの一種の肝細胞がんは、MRIの画像診断で早期発見が可能ですが、画像の読影には高い専門性が必要で、実際に行う放射線科医の負担が大きいことが問題でした。
神戸大学との共同研究は、「AIによって画像内のリスク領域の検出」、「リスク領域内での肝細胞がんの病型分類」、「精度の高い病型分類や診断支援」について可能となるよう進めています。
特徴としては、手法がAI開発の主流のディープラーニングではなく、「スパースモデリング」を用いていることです。比較的少ないデータ量でも、どこが本当に必要な情報であるかを見極めて抽出し、データ間の関係性を特定することによって全体像が把握できます。
【OPTIM】眼底画像診断支援
AIやIoTのプラットフォーム開発ベンチャーである株式会社OPTIMは、眼底画像解析システムの「眼底画像診断システム OPTiM Doctor Eye」を開発しており、これが医療機器プログラムとして 認証されました。
AIが眼底の画像を基にして学習を重ねていき、診断の精度を向上させることができます。眼底は全身で唯一、血管を直接観察できる部位なので、目の病気の他にも動脈硬化や糖尿病の兆候を早期発見できると期待されています。
画像診断AIについてよくある質問まとめ
- 画像診断AIはどのように医師の診断をサポートしますか?
画像診断AIは、医師が見落としやすい微細な病変を高精度で検出し、診断結果を補完することでサポートします。また、異常部位を強調表示することで、医師が短時間で正確に診断を行えるよう支援します。
これにより、医師の負担軽減と診断のスピードアップが可能となります。
- 画像診断AIを導入する際の主な課題は何ですか?
主な課題には、医療画像データの不足やデータのアノテーションにかかるコスト、法的・規制上の課題、そしてAIが出した診断結果の説明可能性があります。
特に、AIの診断に関する責任の所在や、医師とAIの協働体制の確立が重要なポイントです。
まとめ
画像診断AIは、医療現場において放射線科医や専門医のサポートとして大きな期待を集める技術です。特に、CTやMRIなどの大量の医療画像データを迅速に解析し、異常を高精度で検出することで、医師の負担軽減や診断精度の向上を支援します。
しかし、導入にはいくつか課題があり、マルチモーダルAIへの対応など技術的な調整や医療画像データ不足への対応が急務です。これらの課題を解決することにより、現在主流であるセカンドリーダー型からファーストリーダー型への適用が進むと期待されます。
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