モダナイゼーションとは?刷新対象・7つの手法・メリット・AIをフル活用した進め方を徹底解説!
最終更新日:2025年07月10日

- モダナイゼーションは、単に古いシステムを新しくする「マイグレーション」とは異なり、ビジネス価値の向上を目的とした戦略的なIT投資
- 刷新のアプローチには「7R」と呼ばれる多様な手法があり、目的やリスクに応じて最適な手法を選択することが成功の鍵
- AI、特にLLM(大規模言語モデル)を活用することで、従来は困難だった現状分析(アセスメント)やテスト工程を効率化
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が多くの企業で高まる中、企業の成長を阻害するレガシーシステムの刷新が急務とされています。
そこで、老朽化したITシステムを現代仕様に段階的・柔軟に適応できる「モダナイゼーション」が注目を集めています。
この記事では、
DXを成功に導く第一歩として、最適な刷新戦略を立てましょう。
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目次
モダナイゼーションとは?
モダナイゼーションとは、老朽化・複雑化したIT資産(レガシーシステム)を、現在の技術や業務要件に適した形へ刷新することです。
レガシーシステムは、組織固有の仕様や属人的な運用に支えられてきた結果、技術的負債が蓄積しやすく、DXの推進において大きな障壁です。モダナイゼーションを実施することで、アーキテクチャの柔軟性と保守性が向上し、新サービスを迅速に投入できる基盤が整備されます。
重要なのは、これが単なるシステムの「リプレイス(入れ替え)」ではないという点です。リプレイスが既存の機能を新しいハードウェアやソフトウェアに置き換えることを主目的とするのに対し、モダナイゼーションはビジネス価値の向上を最終目標とします。
また、全面的なスクラッチ開発とは異なり、既存資産を最大限活かし刷新するため、移行リスクやコストを抑えつつ俊敏性を高められます。
経済産業省が最大年間12兆円の経済損失が生じる警鐘を鳴らす「2025年の崖」。原因は、システムのブラックボックス化に加え、それを理解するベテラン技術者の退職によるノウハウの喪失です。
技術の担い手がいなくなる前に、モダナイゼーションによって誰でも維持・改修できるオープンなシステムへの移行が急務となっています。
モダナイゼーションの刷新対象
モダナイゼーションの刷新対象は、以下のとおりです。
刷新対象 | 主な手段の例 |
---|---|
アプリケーション層の刷新 | レガシー言語(COBOL、VB、Perl等) → モダン言語(Java、Python等) |
プラットフォーム | オンプレミス → クラウド(IaaS/PaaS) |
インフラ | 物理サーバー→仮想サーバー、コンテナ技術(Docker/Kubernetes) |
データベースの近代化 | Oracle等 → PostgreSQLなどのOSSやクラウドDB |
UI/UXの改善 | デスクトップUI → Web/モバイルUI(レスポンシブ対応) |
API連携・サービス化 | モノリシック構造 → マイクロサービス/API化 |
業務プロセスの再設計(BPR) | 業務フローのゼロベース見直し |
セキュリティとガバナンスの強化 | 古い暗号化・アクセス制御の更新 |
AI技術を活用することで、従来よりも効率的かつリスクの少ない形でモダナイゼーションを実現することが可能です。
モダナイゼーションとマイグレーションとの違い
混同されることが多いモダナイゼーションとマイグレーションとの違いは、以下のとおりです。
比較項目 | モダナイゼーション | マイグレーション |
---|---|---|
定義 | レガシーシステムを近代化しビジネス価値を向上させる取り組み | システムやデータを 別環境に移行して稼働させる作業 |
改修範囲 | アプリ層・データ層・UI/UX・業務プロセス・セキュリティなど多層的 | 主に インフラ層とデータ層 |
目的 |
ビジネス価値を向上 |
短期的リスクの回避 |
時間・コスト | 中〜長期・投資大 | 短期・コスト小〜中 |
モダナイゼーションは、DXの実現や将来の成長に向けた構造改革であり、システムの価値を根本から高める長期的な施策です。一方、マイグレーションは、目先のリスク対策や延命措置として有効な環境移行に近い手段です。
両者は競合関係ではなく、モダナイゼーションを実現化する最短経路手段としてマイグレーションが選択されることも少なくありません。目的や制約に応じて使い分けることで、最小限のリスクで最大限の効果を得られます。
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モダナイゼーションの主な手法7R
モダナイゼーションは、対象システムや予算・リスクに応じて手法を使い分けることで、最小限のコストとリスクでより高い効果を得られます。以下では、モダナイゼーションの主な手法を工数の小さい順に紹介します。
リタイア(Retire)
不要と判断したアプリケーション・データベースを廃止、または削除します。クラウド移行が出来ない要件がある場合やクラウド移行による付加価値が出ない場合に選択されます。
リテイン(Retain)
刷新の優先度が低い、または変更が困難なシステムについては、あえて現状を維持するという選択も重要です。
リテンションの対象となるシステムは、安定稼働しておりビジネス上の影響も少ない場合が多いため、他領域のモダナイゼーションと並行してモニタリングやドキュメント整備を進めておくことが推奨されます。
例えば、刷新対象外の周辺系システムをそのまま保守運用しつつ、障害ログの収集や性能状況を継続的に監視することで、将来的な移行に備える体制を整えられます。
リホスト(Rehost)
「リフト&シフト」とも呼ばれるリホストは、アプリケーションのコード自体には手を加えず、インフラ環境のみをオンプレミスからクラウドへ移行するものです。例えば、Windows Server上で稼働している業務アプリケーションを、そのままAWS EC2環境へ移行するケースが典型例です。
迅速かつ低リスクで実施できるため、レガシー環境から脱却するための第一ステップとして有効です。迅速に移行できる反面、クラウドのメリットを最大限享受することはできません。
リプラットフォーム(Re-Platform)
リプラットフォームは「リフト&リシェイプ」とも呼ばれ、リホストに比べて一歩踏み込んだ手法です。アプリケーションコードの大幅な変更は行わずに、ミドルウェアやランタイムなどのプラットフォーム部分をクラウドに最適化します。
例えば、オンプレミスで稼働していたアプリケーションをDockerコンテナに変換し、AWS ECSなどのクラウドサービス上で運用する方法が該当します。リプラットフォームにより、クラウドのスケーラビリティや運用効率の恩恵を受けられます。
リファクター(Refactor)
リファクターは、アプリケーションの機能や仕様はそのままに、コードの内部構造や設計を見直し、品質や保守性を改善する手法です。例えば、スパゲッティ化したモノリシックなシステムを分割・整理して、より理解しやすく保守しやすい構造に再設計する取り組みが該当します。
俊敏性や拡張性が大幅に向上しますが、高度な技術と工数を要します。近年では、LLM(大規模言語モデル)を活用し、冗長なコードや設計の問題点を自動抽出・提案するAI支援も進んでいます。
リビルド(Rebuild)
リビルドは既存の機能を参考にしつつ、アーキテクチャもコードもゼロから再構築する手法です。リロケート(Relocate)と呼ばれることもあります。
例えば、古いVB製の業務アプリケーションを、ReactによるモダンなフロントエンドとJava+APIベースのバックエンドで再設計・再構築するといったケースが該当します。
クラウドネイティブやマイクロサービスといった最新の設計思想を取り入れやすいのがメリットです。
リビルドは、UI/UXの刷新や業務要件の大幅な変更が必要で、現行システムの再利用が難しい場合に選ばれます。技術的負債の抜本的な解消やセキュリティ強化を目的とし、LLMを活用して仕様書を自動生成したり、最適なコード構造をAIが提案するケースもあります。
リプレース(Replace)
リプレースは、既存システムを廃止し、市販のパッケージやSaaSに置き換える手法です。リパーチェス(Repurchase)や「ドロップ&ショップ」と呼ばれることもあります。
例えば、自社開発した経費精算システムをSaaS型に移行することで保守負担が軽減され、機能拡張に対して柔軟に対応できるようになります。
業務要件が標準化されてカスタマイズの必要が少ない場合に適しており、コストや開発工数の大幅な削減が期待できます。
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モダナイゼーションのメリット
モダナイゼーションは、単なるソフトウェアのアップデートやハードウェアの入れ替えとは一線を画します。既存のレガシーシステムが抱える根本的な課題を解決し、ビジネスのあり方そのものを変革するための包括的な取り組みです。以下では、モダナイゼーションの主なメリットを紹介します。
ビジネス変化への柔軟な対応
レガシーシステムは、複雑な構造や古い技術に縛られているため、市場や顧客ニーズの変化に迅速に対応することが困難です。
モダナイゼーションによって、最新のクラウドやコンテナ技術を導入することで、システムの柔軟性と拡張性が向上します。その結果、新しいサービスや機能の開発・リリースサイクルを短縮し、ビジネスの変化に素早く適応できるようになります。
運用・保守コストの削減
レガシーシステムは、特定の技術に精通した人材の不足や複雑な構造によるメンテナンスの困難さから、高額な運用・保守コストがかかる傾向にあります。また、システム障害発生時の復旧にも時間を要します。
モダナイゼーション後は標準技術や自動化ツールを活用することで運用負荷を軽減し、メンテナンス性の向上が可能です。結果として、保守費用や管理費用などのコストを削減でき、限られたIT予算を新たな投資に充てられます。
セキュリティレベルの強化
古いシステムは、近年の高度化するサイバー攻撃に対する防御策が不十分であるためセキュリティリスクが高くなります。
モダナイゼーションを通じて最新の暗号化技術や認証・アクセス制御などのセキュリティフレームワークを導入すれば、システムの脆弱性を解消し、安全性を強化できます。情報漏えいやシステム停止のリスクを低減でき、企業の信頼性向上に貢献します。
AI導入基盤の構築
長年改修を重ねてきたレガシーシステムは、コードの複雑化やブラックボックス化によって、AIなどの新技術の導入や機能追加が困難です。技術的負債となり、新しい技術の導入や機能追加を阻害します。
モダナイゼーションは、システムの再構築や再設計を通じて技術的負債を解消し、保守性の高いシンプルなアーキテクチャへと刷新できます。これにより、AIやIoTといった先端技術との連携が容易になり、新たなビジネスモデルの創出やイノベーションを加速させられます。
BCP対策の強化
古いシステムは、災害や障害発生時の冗長性や復旧能力が不足しているケースも多く、事業継続の大きなリスクです。
モダナイゼーションによって、クラウド環境への移行や分散アーキテクチャの導入を進めることで、システムの可用性と耐障害性を向上させられます。緊急時にも事業を継続できる体制を構築し、企業のレジリエンスを高めることが可能です。
AIを活用したモダナイゼーションの基本的な進め方
AIを活用したモダナイゼーションの進め方は、以下のとおりです。
アセスメント(現状分析)
モダナイゼーションの成否を分ける最も重要なフェーズです。AIは、ブラックボックス化したシステムの可視化を強力に支援します。
AI、特にLLM(大規模言語モデル)でCOBOLなどのレガシー言語を含むソースコードやデータベース定義、実行ログを解析可能です。システムの全体像、コンポーネント間の依存関係、データフローなどを自動で可視化・ドキュメント化します。
課題の特定: 人間では見つけにくい非効率な処理や潜在的なバグ、セキュリティ上の脆弱性をLLMが検出し、改善インパクトの大きい改修箇所を特定します。
計画策定
アセスメント結果に基づき、ビジネス目標と照らし合わせながら最適な手法を選択し、具体的なロードマップを策定します。AIによる影響範囲分析は、移行リスクの低減に貢献します。
設計・実装
策定した計画に基づき、新しいシステムの設計と実装を進めます。生成AIによるコード生成支援ツールなどを活用し、開発の生産性を向上させることも可能です。
テスト
システム移行で大きな負担となるテスト工程も、AIで大幅に効率化できます。既存システムの仕様やソースコードから、網羅性の高いテストケースをAIが自動で生成します。
また、生成されたテストを実行し、結果を分析可能です。不具合箇所を特定し、修正プロセスを迅速化します。
移行と運用
テストをクリアしたシステムを本番環境へ移行します。移行後はシステムの稼働状況を常時モニタリングすることが必要です。
障害の予兆検知やパフォーマンスの自動最適化を行い、安定した運用を実現します。基幹システムと情報系システムがシームレスに連携することで、全社的なデータをリアルタイムに収集・分析可能になります。
AIによる高精度な需要予測や経営シミュレーションが可能になり、データに基づいた迅速な意思決定を支援します。
モダナイゼーション推進のポイント
モダナイゼーションを成功させるには、単に技術を導入するだけでなく、進め方や体制面での工夫が欠かせません。
以下が、モダナイゼーション推進のポイントです。
- IT資産の現状分析
- スモールスタートと段階的移行
- ベンダーに依存しすぎない
IT資産の現状分析
まず重要なのは、対象となるシステムの現状を正確に把握することです。現行システムの構成要素を棚卸しし、「変更が可能な部分」と「変更が困難な部分」に切り分けておくことで現実的な刷新範囲が明確になります。
例えば、外部サービスとの連携仕様や法令に基づく処理など改変が難しい領域はそのまま残し、それ以外を段階的に改善するといった戦略が有効です。
スモールスタートと段階的移行
全てを一度に変えようとするとリスクが高まります。ビジネスインパクトの大きい領域から小さく始め、成果を出しながら段階的に範囲を広げていくアジャイルなアプローチが有効です。
ベンダーに依存しすぎない
モダナイゼーションでは外部ベンダーの力を借りる場面も多くなりますが、全面的に依存するのはリスクです。ブラックボックス化や追加コストの発生、柔軟性の低下を招きかねません。
そのため、ベンダーを利用する際は内製化と外部リソースのバランスを意識することが重要です。例えば、社内チャットボットや教育コンテンツの活用により、従業員のAIに対する理解を深めましょう。
また、複数ベンダーから提案を受けた場合は提案書の要点を自動で要約・比較し、費用対効果や実現可能性の観点から客観的に検討することが大切です。
モダナイゼーションについてよくある質問まとめ
- モダナイゼーションとは具体的に何ですか?
老朽化・複雑化したIT資産(レガシーシステム)を、現在の技術や業務要件に適した形へ刷新することです。単なるシステム入れ替えとは異なり、以下の特徴があります。
- 目的:ビジネス価値の向上
- アプローチ:既存資産を活かしつつ、段階的に刷新
- 効果:システムの柔軟性・保守性を高め、DXの基盤を構築
- AIを使ってモダナイゼーションを進める場合、どのような流れになりますか?
基本的な進め方は以下の5ステップです。特に現状分析(アセスメント)とテストの工程でAIの活用が効果的です。
- アセスメント:AIでソースコードなどを解析し、システムの現状を可視化・分析する
- 計画策定:分析結果を基に最適な手法を選択し、ロードマップを作成する
- 設計・実装:AIのコード生成支援などを活用し、開発を進める
- テスト:AIでテストケースを自動生成し、テスト工程を効率化する
- 移行と運用:本番環境へ移行し、AIで稼働状況を監視・最適化する
- モダナイゼーションにはどんな手法がありますか?
代表的な手法として「7R」があります。工数が小さい順に以下の通りです。
- Retire(廃止):不要なシステムを停止・削除する
- Retain(保持):現状を維持し、大きな変更は加えない
- Rehost(リホスト):インフラのみをクラウドへ移行する
- Replatform(リプラットフォーム):プラットフォームをクラウドに最適化する
- Refactor(リファクタ):コードの内部構造や設計を品質改善目的で見直す
- Rebuild(リビルド):既存機能を参考にゼロから再構築する
- Replace(リプレース):市販のSaaSなどに置き換える
- モダナイゼーションを行うと、どんな良いことがありますか?
主に5つのメリットがあります。
- 柔軟な対応:市場や顧客ニーズの変化に迅速に対応できる
- コスト削減:運用・保守コストを最適化できる
- セキュリティ強化:最新技術でシステムの脆弱性を解消できる
- AI導入基盤の構築:技術的負債を解消し、AIなどの先端技術と連携しやすくなる
- BCP対策の強化:システムの可用性と耐障害性を高め、事業継続性を向上できる
まとめ
モダナイゼーションとは、老朽化したIT資産を現在の技術基盤に適応させ、業務の柔軟性・効率性・安全性を高める取り組みです。ビジネスの俊敏性を高め、コストを最適化し、将来の成長に向けた技術的負債を解消する極めて有効な戦略です。
しかし、多様な選択肢の中から自社に最適な手法を見極め、複雑な既存システムを正確に分析し、効果的な移行計画を策定するには、高度な知見と客観的な視点が不可欠です。
もし「何から手をつけるべきかわからない」「自社に最適なアプローチを知りたい」とお考えでしたら、ぜひ一度専門家にご相談ください。
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