異音検知とは?AIの活用事例・メリット・使用感・Pythonの役割を解説!
最終更新日:2024年11月14日
定量的な異音検知を自動化したい、異音検知の精度を上げて品質を改善したいという製造業界でのニーズはますます高まっています。
これまで行われてきた異音検知は、長年の経験や知恵が必要かつ人によって判断基準が異なるなど、多くの課題がありました。その課題を解決するために、定量的な判断が可能なAIによる異音検知が普及し始めています。
本記事では、AIによる異音検知のメリットと活用事例を紹介します。製造・医療・畜産などの様々な業界の事例を取り上げていますので、最後まで読んでいただければ異音検知の具体的な使用感を掴むことができます。
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異音検知とは?
異音検知とは、ある環境や装置で発生する異常な音を検出する異常検知プロセスを指します。
こちらで異常検知とは何か、機械学習がどのように活用されているか詳しく説明しています。
異音検知には、様々な用途があります。例えば、工場内での装置の故障を早期に発見するために、異音センサーを設置して異音を検出することができます。
また、異音検知は、自動車などの警告音や警報音を検出するためにも使用されます。異音検知には、マイクロホンやセンサーなどを使用することがあります。
AI・機械学習の役割
AIによる異音検知は、生物や機械が発する音のパターンをプログラミング言語であるPythonなどで機械学習することにより、音による異常の検知や予知保全を自動化するものです。これまで人が行っていた異音検知よりも精度が高く、常時自動で定量的な判断が可能です。
こちらで、予知保全とは何か?従来と保全とどう違うか?詳しく解説していますのでご覧ください。
技術伝承のリスクがなくなることや、人による判断の違いをなくすことができるのも、AIによる異音検知ならではのメリットです。後継者不足や不良品の混入といった問題の解決手段ともなります。
AIによる異音検知では、AIの機械学習によって正常音・異音を学習し、それらのデータに基づいて異音を検知します。機械学習によって収集したデータを基に異音かどうかを判断するため、AI・機械学習は異音検知において重要な役割を担っています。
実際の現場にはマイクが置かれ、マイクで収集したデータを音声解析し、AIが正常音か異音かを判断します。ノイズを取り除いて解析することもできるため、人間が聞き取れない環境での異音検知も可能です。
加えて、AIはリアルタイム解析ができるため、異常があったタイミングで担当者に知らせることができ、迅速な対処が可能です。また、登録さえしておけば異音の原因もすぐに解析できるので、長く勤めている作業員しか知らないような異音にも、スムーズに対処できます。
AIによる異音検知の3つのメリット
AIによる異音検知がもたらすメリットは以下です。
- 勘や経験に左右されない定量的な異音検知ができる
- 狭いスペースに設置できる
- 過酷な環境(高温・高磁場)にも設置できる
それぞれのメリットを紹介します。
勘や経験に左右されない定量的な判断ができる
AIが行う異音検知は、異音を数値として捉えるため、正確で定量的な判断が可能です。従来の人が行う異音検知は、担当者の勘・経験・感覚によって結果が多く左右されるため、正確な判断が難しくなっています。
また、一度認識した異音はデータとして残しておけるため、稀な異音にも正確で迅速な原因解明が可能です。定量的な音の認識が可能なため、担当者の違和感で済ませていた異音や、ノイズに紛れて人が認識できなかった異音にも対応できます。
狭いスペースに設置できる
工場のDX化であるファクトリーオートメーションには、工場の状態を計測するIoT機器が欠かせません。その中で、異音検知のIoT機器であるマイクは、他のIoT機器に比べて場所を取らないというメリットがあります。
「IoTセンサーとは?AIと組み合わせて何ができる?活用事例徹底解説!」を併せてご覧ください。
「ファクトリーオートメーションとは?メリット・デメリット徹底解説!AI活用で何が変わる?」もご覧ください。
過酷な環境(高温・高磁場)にも設置できる
マイクは人が立ち入ることのできない場所に設置することができるため、異音検知を用いれば過酷な環境でも異常を発見することができます。実際に、高温・高磁場環境の工場や、原子力発電所でも異音検知が導入されています。
カメラやセンサーといった複雑な機器は、使用できる環境が限られますが、マイクは振動を伝えれば良いため、比較的過酷な環境でも使用可能です。また、遮蔽物等が多い現場でも置き場所を選ばずに設置できます。小型で設置場所を選ばないため、多くの現場に対応できる汎用性を有しています。
このように、異音検知は幅広い現場に設置できるというメリットを持っています。
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異音検知の活用事例7選
異音検知が実際に活用されている事例をご紹介します。
- コンクリートの品質を異音検知で判定(會澤高圧コンクリート/バーナードソフト)
- X線で区別できない食肉中の骨片を検知(ELMEC)
- 聴力点検の高度化・自動化・省力化を実現(日立)
- パイプライン内部のつまりを予知(横河ソリューションサービス)
- 風力発電機の故障リスクを予知(エネルギーファーム)
- 肺音から疾病リスクを検知(Hmcomm)
- 声のトーンからドライバーの状態を認識(Nuance)
それぞれの事例を説明します。
コンクリートの品質を異音検知で判定(會澤高圧コンクリート/バーナードソフト)
生コン事業やプレキャスト事業を行っている會澤高圧コンクリートは、画像認識と同様の精度で、異音検知による生コンクリートの品質判定を行うことに成功しました。生コンクリートをミキサで練り混ぜているときの音響から品質を判定できるAIシステムです。
「生コン品質判定システム」は、株式会社バーナードソフトの異常音検知システムであるエスカレイドを活用してAIでコンクリートのスランプ値を判定するシステムです。「スランプ」というのは、鋼製中空のコーンにつめたコンクリートが、コーンを引き抜いた後に最初の高さからどのくらい下がる(スランプする)かを示すものです。スランプが大きいコンクリートは、軟らかいコンクリートということになります。
熟練の技術者であれば、製造時の画像からおおよそのスランプ値を推定することができます。同社はこれまで画像認識による品質判定を行っていましたが、工場内の粉塵や水蒸気によりカメラが汚れて判定精度が落ちるという問題を抱えていました。さらに、業界全体で後継者の育成やノウハウの継承が困難になることを見据えて、ミキサで練り混ぜ中の音響からスランプ値を判定できるAIを用いたシステムの開発を行いました。
粉塵や曇りに強いマイクによる異音検知を行って品質判定を行ったところ、83.6%の画像認識精度に対し、異音検知の精度は81.4%と画像認識と遜色ない結果となりました。北海道新幹線の大型トンネル工事に使用するコンクリートセグメント用生コンなどの品質管理に使用する計画です。データをさらに収集することで精度が上がるため、同社はさらにデータを収集し、精度を上げて使用していくようです。
X線で区別できない食肉中の骨片を検知(ELMEC)
AIシステムを開発しているELMECは、食肉加工センターに異音検知を導入し、X線では不可能だった硬骨混入判定を可能にしました。
食肉加工センターでは、食肉に骨片が混入していないかをX線にて判定しますが、脂肪の中の骨片はX線で判定できません。そこで、肉を切る刃の部分に振動センサを取り付け、骨がカットされる際の振動を検知することで骨片の混入を判断できるようになりました。
このように、異音検知の技術を用いれば、音だけでなく振動としても異常を捉えることが可能です。
聴力点検の高度化・自動化・省力化を実現(日立)
日立の発電所では、軸冷水ポンプのモーターの摩耗を防ぐための定期的なグリス注入のタイミングは聴診棒で回転音を聞くことによって判断していました。しかし、経験の浅い担当者はその違いを聞くことができなかったため、AIによる判断を導入しました。
学習を終えたAIは、熟練技術者と同様の異常判断をすることに成功し、これまで行っていた聴力点検をAIが行えるようになりました。このように、異音検知の導入は、技術伝承の解決に加えて省力化も可能な技術です。
日立では、これまで人の感覚に頼っていた設備保全や製品検査における異音検知を数値化することで、より高度・省力化された点検を自動で行うシステムを多数開発しています。同社は、2018年に開催された音響認識の国際コンペティションでは、第1位のスコアを獲得するなど異音検知において優れた技術を持っています。
パイプライン内部のつまりを予知(横河ソリューションサービス)
横河ソリューションサービス株式会社は、異常音のAI解析を行うことにより、パイプラインのつまりを予知・予兆できるシステムを開発しました。これまで、パイプの内部は外して見てみないと状態がわかりませんでしたが、内部の音を解析することで状態を把握でき、つまりを予知・予兆できるようになりました。異音検知を用いれば、定期的なメンテナンスが不要になり、データに基づいた適切なタイミングでのメンテナンスが可能です。ディープラーニングによる音声処理について高い技術を保有するHmcomm株式会社が技術を提供しています。
パイプは一箇所でもつまりが生じると工場全体の生産計画に影響を及ぼしやすいため、適切なメンテナンスが重要ですが、内部の状態を把握するのは難しくなっています。パイプが一つでもつまってしまうと全体の生産計画が停止してしまうような工場には、非常に効果的な予知保全です。
経済産業省の補助事業である「平成29年度補正予算 産業データ共有促進事業費補助金」にも「音声データを基にした製造業パイプラインのつまり予知・予兆診断事業」として採択されています。
風力発電機の故障リスクを予知(エネルギーファーム)
小型風力発電を取り扱う株式会社エネルギーファームは、異音検知を取り入れることにより、設置場所の限られる風力発電機において、故障の兆候を早期に発見することに成功しました。風力発電機は異常時に異音を発することが知られていましたが、遠隔地に設置されることが多い風力発電機において、人が常に異音を確認することは困難でした。しかし、風力発電機の事故は被害が非常に大きくなりやすいため、安全性の確保は急務でした。
そこで、設置場所特有の環境音を除き、風力発電機の音のみを収集できる独自のピックアップマイクを開発し、異音検知による予知保全を実施しました。このシステムを用いれば、メンテナンスや熟練技術者による異音検知でしかわからなかった異常を早期に発見することが可能です。これにより、風力発電機の安全性を向上させることに成功しました。
肺音から疾病リスクを検知(Hmcomm)
音声認識のベンチャー企業であるHmcomm株式会社は、人や家畜動物の聴診音・肺音から疾病リスクを検知するシステムを構築しています。人に関しては研究段階ですが、家畜動物に関しては既に実用化されており、豚舎にマイクを設置して咳やくしゃみ音から疾病の早期発見をしたり、母豚の発情管理がされています。豚が重度の呼吸器系の病気にかかると、増体が遅れたり殺処分の対象となってしまうため、畜産物の安定供給のためには疾病の早期発見が重要です。
熟練者は豚の咳やくしゃみから罹患している豚を見分けることができますが、常に監視することはできないため見落としが発生したり、多くの時間がかかっていました。サーモグラフやカメラでの監視を既に取り入れている現場でも、異音検知を追加することでさらに効率的な繁殖や感染症予防が可能です。また24時間測定できる異音検知を導入することで、罹患している豚をAIが熟練者以上の精度で判断できるようになりました。同時に、熟練者でも時間がかかる発情も認識できるため、大幅な省力化が実現しました。
人の疾病も予測できるようになれば、自宅での検診や、収集データによるより正確な診断ができるようになります。人に対するシステムは、2024年に医療機器認定取得を目指して開発されています。
声のトーンからドライバーの状態を認識(Nuance)
米音声認識大手のNuance Communicationsは自動車に音声認識技術を組み込み、声のトーンから眠気や怒りを検知し、危険運転を防止するシステムを開発しました。
この技術が搭載されている車では、画像認識などの様々なAI技術が搭載されており、あくびが多かったり眠気を感じている声を認識すると、休憩できる場所をAIが提案して休憩を促します。また、怒りを認識して危険運転を行いやすい状態だと判断することも可能です。
異音検知についてよくある質問まとめ
- AIを活用した異音検知のメリットは何ですか?
AIを活用した異音検知の主なメリットは以下の通りです。
- 勘や経験に左右されない定量的な判断が可能
- 狭いスペースにも設置可能
- 高温や高磁場など過酷な環境でも利用可能
- 人間が聞き取れない環境での異音検知が可能
- リアルタイム解析による迅速な対応
- 技術伝承のリスク軽減
- 24時間常時監視が可能
- 異音検知のAIはどのような業界で活用されていますか?具体的な事例を教えてください。
異音検知AIの主な活用事例は以下の通りです。
- 製造業: コンクリートの品質判定(會澤高圧コンクリート)
- 食品業: 食肉中の骨片検知(ELMEC)
- エネルギー: 風力発電機の故障リスク予知(エネルギーファーム)
- 医療: 聴力点検の自動化(日立)、肺音からの疾病リスク検知(Hmcomm)
- 畜産: 家畜の健康管理と発情検知(Hmcomm)
- 自動車: ドライバーの状態認識(Nuance)
- プラント: パイプライン内部のつまり予知(横河ソリューションサービス)
- 異音検知AIの導入において、Pythonはどのような役割を果たしますか?
Pythonの異音検知AIにおける役割は以下の通りです。
- 機械学習モデルの構築と訓練
- 音声データの前処理と特徴抽出
- リアルタイムデータ解析のためのプログラミング
- 異音検知アルゴリズムの実装
- データ可視化とレポート生成
- IoTデバイスとの連携や制御
まとめ
設置場所を選ばずに、高精度で異常を検知できる異音検知は製造業に限らず、医療・畜産・食品など多くの業界で活躍しています。これまで不可能だと思われていた場所の保全も、異音検知なら可能かもしれません。そして、検知と判断を自動化するにはAIの活用が欠かせません。
しかし、AIの導入はハードルが高いと二の足を踏んでいる経営者もまだまだ多いようです。
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