感情認識AIとは?4つの種類や活用事例【AIのプロが解説】
最終更新日:2024年09月23日
感情認識の分野で、AI(人工知能)を活用したサービスが続々と誕生しています。AIは論理的に考えることは得意であっても、感情や気持ちを察することは難しいとされてきましたが、急速に研究や技術開発が進展しています。
「AIを活用した感情認識とは?」「感情認識AIはどんなことができるの?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。
感情認識AIは注目されている分野ですが、必要性がわからなければ導入に踏み切れません。本記事では、感情認識AIの概要を解説し、4つに分類されたAIの種類や活用事例を紹介します。
そもそもAIとはなにか?、基本的な仕組みは?と言った基礎的知識を学べる完全解説記事はこちらです。
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目次
感情認識AIとは?
「感情認識AI」とは人間の感情や気持ちの変化を読み取ることができるAIのことです。マイクやカメラ、センサーなどを通して、音声やテキスト、顔の表情、脈拍の変化から喜怒哀楽や興味の度合いを分析します。(用語解説:感情分析とは)
接客や電話応対でのスキルアップの支援や、同僚や部下など同じ職場で働く社員の悩みをすぐに察知できたり、コミュニケーションの質の向上に貢献できたりするでしょう。技術やサービスごとに音声だけ、テキストだけ、などと認識対象は限定されたものが多いのが現状です。やがて人間のあらゆる細部における変化をとらえ、総合的な感情の判断ができるAIも現れるかもしれません。
最近は、アイトラッキングなど他の技術と組み合わせて、顧客の感情の動きや自動車の運転者の感情のぶれを定量的データとして取り扱って解析する分野で活用が進んでいます。
こちらでアイトラッキングの仕組みと活用事例を詳しく説明しています。
感情認識AIが注目されるのは?
人間の感情を読み取ることはコンピュータには不可能であると思われてきました。しかしインターネット技術やAI分野が急速に進歩したことで、感情分析に必要なデータを大量に幅広く収集できるようになり、高精度なディープラーニング技術の発展とともに感情認識が実現可能になりました。
コールセンターでの通話分析や、オペレーター支援でのテキストマイニングツールでの会話内容でのネガティブワードの抽出による音声分析の感情認識技術が導入されたことをきっかけとして、その後多くの分野で活用されています。
今後さらに技術発展していけば、感情認識AIを医療分野への活用もできるのではと注目されています。うつ病やPTSDなど病気の診断が定量的に難しいメンタルヘルスの支援活用や、日常生活のストレスや体調判断にも役立つかもしれません。また、自動運転などの移動支援や、働き方改革支援にも利用が進められています。
このように今後の活躍の幅の広さの期待から注目が集まっています。
AIによる感情分析のメリット・デメリットについてこちらの記事で分かりやすく解説しています。
感情認識AIの主な種類
感情の認識対象は、テキスト・音声・表情・生体情報の4つに分類できます。それぞれのタイプの感情認識AIを詳しく見ていきましょう。
テキストの感情認識AI
人間が入力した文章、あるいは音声データをテキストに変換した情報を自然言語処理によって取り込み、書かれている内容を認識して感情を判断します。この文章をポジティブであるかネガティブであるかなど、文章に含まれる単語、言葉遣い、表現などから、入力した人間がどのような感情を抱いているか判定します。
ポジティブ・ネガティブ・ニュートラルなどに大きく分けるものや、細かい喜怒哀楽や好き嫌いを分類できるもの、感情レベルの数値化などさまざまです。
AIが感情を認識できるようにするには、あらかじめ多くの学習データを用意しなければなりません。例えば、コールセンターにおいて、基本的なデータと判断基準を与え、チャットボットでのユーザーとのやりとりをためておけば、AIが収集したやりとりのデータから学習し、結果の精度を向上できます。
音声の感情認識AI
音声感情認識AIは、人間が発する音声から感情を分析するものです。会話の内容の分析は、言語解析によって音声からテキストに変換できるので、先述した「テキストの感情認識」に該当します。音声感情認識AIは、AIの音声認識能力を活用します。AIによる音声認識の詳細が知りたい方はAI音声認識に関する仕組みや活用事例の記事をご参考ください。
会話には言語だけでなく非言語による感情表現も含まれます。声の大きさ、抑揚、イントネーションなどを分析する「音響解析」によって、音声の特徴量や周波数の変化をとらえて判定可能です。ディープラーニングを音素認識モデルに適用した流れが加速したため、開発が進められています。
怒りや不満の感情を分析・把握する際は、コールセンターや接客での現場で活用されることが多いでしょう。また、個人向けに声からメンタルヘルスの状態を判断するサービスも登場しています。
AIによる音声感情分析の仕組み、注意点、活用シーンについてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
表情の感情認識AI
表情認識AIは、カメラを通して顔の表情から感情を読み取ることが可能なAIです。表情による感情認識では、喜怒哀楽といった感情だけでなく、微妙な表情の変化や雰囲気から興味を示しているのか、もしくは実際はさほど興味を示していないのかといった微妙な心の動きを読み取ります。
ディープラーニングや顔認識技術の進展によって大きな進化を遂げてきました。理論によって表情筋の動きと感情が関連づけられているため、AIの学習データの精度を向上させやすくなっています。視線の動きや瞳孔の開き具合などから無意識の感情や気持ちを推測する研究も進められています。企業内のストレスチェックや空港などの入国審査での活用ができるでしょう。
顔認識では、ランドマークアノテーションという手法を用いて、顔のパーツを指定します。細かなアノテーションを行うことで、顔の表情から感情を特定するなどが可能です。
生体情報の感情認識AI
生体情報の感情認識は、主に脳波、脈拍、発汗などのセンサーで得られた生体情報から情動や感情を計測します。これまであげてきたテキスト、音声、表情と比較して、研究は発展途上です。脳波、発汗は専用の機器を必要としますが、脈拍はスマートウォッチなどに搭載される製品が多くなったことで活用が増えてきました。
これまでに開発が進められているテキスト、音声、表情の認識とこの生体情報の認識を組み合わせることで、より正確な感情の推定ができるのではと期待されています。
職場や学校での仕事や学習の生産性を高める効果や、関心の高い人にピンポイントで広告を表示できる仕組みの開発などが期待されています。
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感情認識AIサービス・事例紹介
感情認識AIのサービスや事例を5つ紹介します。さまざまな分野で感情認識AIが活用されていることが分かります。
営業職での事例:Affectiva
Affectivaは感情AIサービスやソフトウェアを手掛けるアメリカの企業で、感情認識AIの「Affdex」を開発しています。世界90カ国以上の1,000万人近い顔の画像を独自のアルゴリズムによるディープラーニングによって学習し、感情認識のAIを開発しました。
どこの表情筋がどのくらい動いたら、どういう感情を表すことになるのか、喜怒哀楽など7種類の感情を判定可能としています。
感情認識AI開発のライブラリである「AffdexSDK」を提供し、それを活用したさまざまなサービスが開発されています。
表情トレーニングアプリの「心sensor for Training」はAffdexを活用して作られたもので、端末に搭載されたカメラで、顔の表情筋の動きから解析が可能です。どのような印象を与える表情であるかを採点、評価します。
接客業での事例:AIさくらさん
ティファナ・ドットコムが開発した「AIさくらさん」は、困った人をサポートするバーチャル従業員です。人手不足の現場では接客が大きな課題となっており、サービスの質の向上とともに、AIによるサービスの需要が高まっています。
顧客対応で質問をした際の感情が読み取れるので、一人ひとりに合わせたよりよい対応が可能です。マスクを着用していても表情を読み取ることが可能で、気持ちに寄り添った接客で信頼を得ることにもつながります。
コールセンターでの事例:Empath
多くのコールセンターでは感情認識AIが導入されており、オペレーターや顧客の感情変化をモニタリングしています。
音声解析を手がけるスタートアップのEmpathは、オペレーターの音声からAIで感情を解析して、職場でのコミュニケーションを円滑にしたり、従業員満足度を向上させたりする取り組みを進めています。
音声の物理的特徴量からAIが独自のアルゴリズムで、気分の状態を判定。オペレーターの声の抑揚などから感情を読み取り、離職を防いだり、生産性を上げたりといった効果が期待できます。
リモート環境で働いていても、音声解析によりオペレーターのメンタル状態を可視化できるので、上司がそれを見て、声がけをするなど対策を早めに講じることが可能です。
アンケート分析の事例:User Local
テキストデータから書き手の感情を認識するAIサービスをUser Localでは提供しています。「テキスト感情認識AI」は、Web上から簡単にアクセスでき、文章を入力するだけでその場で感情を判定。喜び、好き、恐れ、悲しみ、怒りの5つの感情の項目をそれぞれ点数化し、どの感情が強いかが分かるようチャートで表されます。
自然言語処理技術が近年では急速に進展し、文中内の単語の関係性や文脈から感情を読み取ることが可能となり、読解力は人の平均レベルを上回ったとされました。
テキスト感情認識AIもあらかじめ数千万件の口コミデータを学習させ、単語単位だけでなく文字の並び方パターン、文末の細かなニュアンス表現を自然言語処理技術で捉えています。顧客アンケートの自由記入欄の定量評価や、掲示板での口コミチェック、カスタマーサポートの記録精査など社内文書の分析が可能です。
感情の判定や体調管理に「におい」を活用した事例
生体情報はセンサーから得られた脈拍や脳波、発汗などの様子をモニタリングし、AIと組み合わせ感情の判断に活用されています。他の生体情報から感情を推定する活用法が研究されていますが、その中でも特に最近注目を集めているのが「におい」です。
においセンサーで手のひらから出るにおいを測定します。これはその時の感情によって手のひらから発する物質が変化する特徴を活かして、におい分子のパターン分析から感情が診断できるためです。
また、においから心地よさやリラックスといった感情を生み出すことも可能です。例えば焼きたてのパンの良いにおいを嗅ぐとワクワクした気分になる。好みのコーヒーの香りを嗅ぐと幸せな気分になるといった経験は多くの人に当てはまるでしょう。
これらのにおいの情報と感情を言語化してデータ化することで、一人ひとりの好みの香りを見つけ出すサービスもあります。
感情認識AIについてよくある質問まとめ
- 感情認識AIにはどのような種類がありますか?
感情認識AIには主に4つの種類があります。
- テキストの感情認識AI:文章内容から感情を分析
- 音声の感情認識AI:声の特徴から感情を判定
- 表情の感情認識AI:顔の表情から感情を読み取る
- 生体情報の感情認識AI:脳波、脈拍、発汗などから感情を推定
- 感情認識AIの具体的な活用事例にはどのようなものがありますか?
感情認識AIの主な活用事例には以下があります。
- 営業職:Affectivaの表情トレーニングアプリ
- 接客業:AIさくらさんによる顧客対応
- コールセンター:Empathによるオペレーターの感情分析
- アンケート分析:User Localのテキスト感情認識AI
- 体調管理:においを活用した感情判定
- 感情認識AIを導入する際の検討ポイントは何ですか?
感情認識AIを導入する際の主な検討ポイントは以下の通りです。
- コスト
- 適切な種類の選定(テキスト、音声、表情、生体情報)
- 導入目的に合った活用方法の検討
- データの収集と学習方法
- プライバシーへの配慮
感情認識AIの開発は代行会社へ
本記事では、感情認識AIの概要や種類、活用事例を紹介しました。AIによる感情認識が可能となったことで、さまざまなビジネスへの活用が実現できるでしょう。
ただし、感情認識AIを導入する際はコストや種類の選定など、検討する部分が多く存在します。導入する際にお悩みになりましたら、最適なAI開発会社紹介を行なっているAI Marketをぜひご利用ください。
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