AutoGenとは?特徴や機能、MastraやLangChainとの違い、できること、料金や使い方、活用事例を徹底解説
最終更新日:2025年05月06日

- AutoGenは、Microsoftが開発したPythonベースのオープンソースAIエージェントフレームワーク。
- 非同期・イベント駆動型アーキテクチャにより、複数エージェントの協調動作や分散処理に対応。
- 対話・検索・コード生成・ゲームなど、さまざまなタスクに応じたマルチエージェント構成が可能。
- ノーコードでエージェント構築できるGUIツール「AutoGen Studio」も提供。
- MITライセンスとCC BY 4.0ライセンスで無料利用・商用利用・拡張が可能。
AutoGenは、Microsoftが開発するマルチエージェントAIアプリケーションのためのオープンソースフレームワークです。マルチエージェントとは複数のAIエージェントが役割分担しながら連携・協調してタスクを解決するシステムです。
本記事では、AutoGenの特徴やできること、主要コンポーネント、料金体系、使い方、他フレームワークとの違い、実際の活用例までを徹底的に解説します。
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目次
AutoGenとは?
AutoGenは、Microsoftが開発したオープンソースのAIエージェント開発フレームワークです。エージェント同士が自律的に、あるいは人間と連携してタスクを遂行するマルチエージェントAIアプリケーションの開発が可能です。
ノーコードで開発を支援するAutoGen Studioが提供されており、開発のハードルが比較的低いです。GUI上でエージェントチームを構築・設定し、即座にタスク実行することができ、コードを一切書かずに複雑なワークフローを設計することが可能です。
AutoGen 0.2、AutoGen 0.4とは
AutoGenにはAutoGen 0.2と0.4という複数のバージョンが提供されています。
AutoGen 0.2は、高レベルAPI「AgentChat」によってマルチエージェント会話システムを手軽に構築できる初期バージョンです。
AutoGen 0.4は、ユーザーからのフィードバックをもとにゼロから再設計された最新版で、非同期・イベント駆動型のアーキテクチャを採用しています。これにより、スケーラビリティや可観測性、エージェント間の制御性が大幅に向上しています。
AutoGen 0.2は同期的なアーキテクチャのため、柔軟性や拡張性に限界があったため、AutoGen 0.4ではアーキテクチャや設計思想に大きな変更が加えられており、「Core」と「AgentChat」の2層構造が導入され、より柔軟かつ安定したエージェントシステムの開発が可能になっています。
AutoGen 0.4はAutoGen 0.2と互換性がないため、新規開発には0.4の利用が強く推奨されています。
AutoGenとAG2の違い
AutoGenはMicrosoftと大学研究者らの共同で生まれたフレームワークですが、開発者自身が意思決定を行える独立した体制での運営を求めて、派生したフレームワークであるAG2というものが別に存在します。
現在では、AutoGenとAG2(AutoGenの次世代フレームワーク)は開発元や開発方針が全く異なり、それぞれ別々に開発が進んでいる状態です。
関連記事:「AG2(旧AutoGen)とは?特徴や機能、MastraやLangChainとの違い、できること、料金や使い方、活用事例を徹底解説」
また以下の動画は、「AutoGen」と「AG2」の開発者であるDr. Xi WangとDr. Shing Yun Wuのインタビュー動画で、AutoGenの誕生秘話やAG2への進化について語られています。
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AutoGenでできること・特徴
AutoGenは、以下のようなAIシステム開発に対応しています。
会話エージェントの構築
OpenAIのGPT-4oなどを活用し、自然な対話が可能なエージェントを簡単に作成できます。複数のエージェントを組み合わせることで、意見の補完や議論による最適解の導出も実現できます。
ツールを用いたマルチエージェント連携
AutoGenのExtensions APIを利用することで、Webブラウザ操作やコード実行、ファイル読み書きといったツールをエージェントに組み込むことができます。たとえば、ブラウザ操作中の各ステップでユーザーからのフィードバックを受け取りながら、情報収集タスクを対話的に進めるシステムの開発が可能です。
ノーコード環境(AutoGen Studio)
コードを書かずにマルチエージェントアプリを構築したいユーザー向けに、AutoGen Studioが提供されています。GUI上でエージェント、ツール、モデル、終了条件などをドラッグ&ドロップで構成ます。
タスクの実行やデバッグ、動作ログの視覚化もStudio内で完結でき、技術に詳しくないユーザーでも簡単にAIワークフローを試作可能です。
分散システム開発
AutoGenのCore APIは、イベント駆動型・非同期通信ベースで構成されており、分散環境でのスケーラブルなAIシステム構築に適しています。
複数のエージェントがネットワーク越しに非同期で通信し、役割ごとに協調動作するような構成も可能で、大規模な業務プロセスやクラウドベースのエージェントネットワーク構築に対応しています。
AutoGenのコンポーネント・機能
AgentChat
AgentChatは、AutoGenでマルチエージェントアプリケーションを構築するための高レベルAPIです。初めてAutoGenを使う人に推奨されており、複雑な設定をせずに画像の例のようなエージェント同士の会話や協調動作を実現できます。
あらかじめ用意されたエージェントの動作パターンや、2者チャット・グループチャットといった構成テンプレートが用意されており、すぐに実用的な仕組みを構築できます。また、カスタムエージェントの追加やメモリ機能、ログ出力、設定の保存(シリアライズ)など、開発を効率化する機能も充実しています。
Core
AutoGenのCoreは、エージェント同士が非同期でやり取りするイベント駆動型の基盤フレームワークです。より高度な制御や拡張を行いたい開発者向けに設計されており、スケーラブルで堅牢なマルチエージェントシステムを構築できます。
特徴は、エージェント同士がメッセージを非同期に送受信できる点で、これにより大規模な分散処理や柔軟なワークフロー設計が可能になります。Pythonと.NETのクロスランゲージ対応もあり、企業内外のシステム連携にも適しています。
また、カスタムエージェントの作成、メモリ機能の追加、ツールの登録などの機能を自由に組み合わせられる高い拡張性も備えています。ログの可視化やデバッグ支援機能も充実しており、本格的なエージェントシステムの構築に最適です。
Extensions
Extensionsは、AutoGenに機能を追加するための仕組みで、標準では用意されていないモデルクライアント、ツール、実行環境などを柔軟に拡張できます。拡張機能はすべて「autogen-ext」パッケージに含まれており、必要に応じて組み込むことで、AutoGenの活用範囲を大きく広げられます。
たとえば以下のような拡張が提供されています:
- モデル連携: 他社LLMやWatsonXなどと連携可能にするクライアント(例:autogen-watsonx-client、autogen-openaiext-client)
- ユーティリティ系ツール: モデルコンテキストを自動で要約・トリミングする拡張(例:autogen-contextplus)
- プロトコル連携: Model Context Protocolに対応したツール呼び出し用アダプタ(例:autogen-ext-mcp)
- 業務支援エージェント: 自動でメールを生成・送信する専用エージェント(例:autogen-ext-email)
- APIエミュレーション: AutoGenを使ってOpenAI互換のAPIサーバーを構築(例:autogen-oaiapi)
開発者は独自のコンポーネントを作成して拡張し、コミュニティに公開することも推奨されています。AutoGenのエコシステムは、こうした拡張を通じて日々進化しています。
AutoGen Studio
Build @pyautogen Agents without writing *any* code
AutoGen studio is a low code / no code tool for prototyping agents in AutoGen. You can do the following:
– Use the team builder to compose teams (drag and drop from a built in gallery of teams including a deep research agent… pic.twitter.com/mzUQ6HjG2J
— AutoGen (@pyautogen) February 13, 2025
AutoGen Studioは、AutoGenのエージェント構築をGUI上で直感的に行えるローコード開発ツールです。コードを書かずにエージェントを組み合わせ、チームを構成し、複雑なタスクを実行するプロトタイプを素早く作成できます。
操作はすべて視覚的なインターフェースで完結し、ツールやモデル、エージェントの設定もドラッグ&ドロップやJSON定義で行えるため、プログラミングに不慣れなユーザーでも扱いやすいのが特徴です。また、作成した構成はそのままPythonコードにエクスポートして本番環境へ移行することもできます。
Studioはあくまで試作支援ツールとして提供されており、セキュリティや本番運用向けの制御機能は含まれていません。
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AutoGenの料金プラン
AutoGenはオープンソースプロジェクトであり、ドキュメントおよびデータはCC-BY-4.0ライセンス、コードはMITライセンスの下で無料で提供されており商用利用、改変、再配布も可能です。
ただし、以下の条件を遵守する必要があります:。
いずれのライセンスも柔軟ですが、再利用時には元プロジェクトへの適切な帰属表示を行う必要があります。詳しくは公式のGitHubをご参照ください。
また、AutoGenではLLMのAPIを使用する必要があり、APIには別途料金が発生します。
関連記事:「生成AI(ジェネレーティブAI)のAPI、注目の17選をプラットフォーム別に紹介!メリット・各ツールの特徴を徹底解説!」
Mastra・LangChainとの違い
AutoGenは、Microsoftが開発したPythonベースのオープンソースフレームワークで、マルチエージェントアプリケーションの構築に特化しています。非同期メッセージングとイベント駆動型アーキテクチャを採用しており、複数のAIエージェントが協調してタスクを分担・遂行できる環境を提供します。
一方、LangChainはPythonで構築された汎用的なLLMアプリケーション開発フレームワークで、検索や外部データ連携に強みを持ちます。MastraはTypeScriptベースで、Web開発に適した構造と直感的なワークフロー設計を特徴としています。
以下に、AutoGenと他の代表的なフレームワークとの違いをまとめます。
機能・特徴 | AutoGen | Mastra | LangChain |
---|---|---|---|
開発言語 | Python | TypeScript | 主にPython (TypeScript版もあり) |
主な用途 | マルチエージェント対話システム プロトタイピングと自動化 | モダンなAIエージェント開発 | LLMアプリケーション開発全般 |
特徴 | 非同期・イベント駆動型アーキテクチャ 拡張性の高い設計と豊富な拡張機能 ノーコードUIとの連携(AutoGen Studio) | 高い開発体験 シンプルなワークフロー設計 | 豊富なツール連携 コンテキスト認識と外部データ接続 |
AutoGen Studioの使い方
AutoGen Studioは、GUIベースでマルチエージェントの構成・実行・デバッグができるローコードツールです。ここでは、AutoGen Studioのインストールから起動までの手順をわかりやすく解説します。
ステップ1:仮想環境の作成(推奨)
まずはPython用の仮想環境を用意しましょう。システム全体への影響を避けるため、venvやcondaなどの仮想環境を使うのが推奨されています。
[yourenvname]にお好みの仮想環境名を設定し、以下のコマンドをターミナルで実行することでvenvを構築することができます。
python -m venv [yourenvname]
venvを使用する際には、以下のコマンドを実行しactivateします。
Mac, Linux
source [yourenvname]/bin/activate
Windows
.\[yourenvname]\Scripts\activate
※終了時は deactivate を実行して仮想環境を解除します。
ステップ2:AutoGen Studioのインストール
次に、AutoGen Studioのインストールを行います。最も簡単なインストール方法は、以下のコマンドを実行します。
pip install -U autogenstudio
※Node.jsを使ってソースコードからインストールすることも可能ですが、開発者向けの手順となるため、pipを使用したインストール方法が推奨されています。
ステップ3:アプリケーションの起動
AutoGen Studioを利用するには、OpenAIのAPIキーを正しく設定する必要があります。今回は簡単で確実な方法を使ってOpenAIのAPIを設定していきます。
[your_api_key]にご自身で用意したAPIを入力し以下のコマンドを実行しましょう。
export OPENAI_API_KEY=[your_api_key]
$env:OPENAI_API_KEY = "[your_api_key]"
set OPENAI_API_KEY=[your_api_key]
以下のコマンドを実行することでAutoGen Studioをローカルで起動できます。なお、AutoGen Studio上でLLMを利用するには、APIの設定の設定を行ったターミナルで起動を行う必要があります。
autogenstudio ui --port 8081
ブラウザで http://localhost:8081 にアクセスすると、AutoGen StudioのGUIが開きます。
ステップ4:起動オプション(必要に応じて)
AutoGen Studioは、起動の際にコマンドに追加することで以下のようなオプションを柔軟に設定できます。
- --host: デフォルトはlocalhost。ネットワーク上で共有したい場合に変更可能。
- --appdir: 設定ファイルやDBを格納するディレクトリを指定。デフォルトはユーザーディレクトリ内の.autogenstudio。
- --port: ポート番号を指定(デフォルトは8080)。
- --reload: コード変更時に自動リロードを有効にする(開発用途向け)。
- --database-uri: SQLiteやPostgreSQLなどのDB接続URIを指定可能。
- --upgrade-database: スキーマのバージョンをアップグレードしたい場合に有効。
ステップ5:AutoGen Studioで開発
AutoGen Studioが起動できたら、以下の操作が可能になります。
- GUIでエージェントの作成・設定・連携
- セッションの起動・対話
- エージェントのスキル・ツール追加
上記の画像のように、Team Builder画面を開くことで、エージェントの編集ができます。ドラック&ドロップやテキストプロンプトなどで設定を行うことができます。
エージェントの作成が終わったらPlaygroundでテストを行います。例えば、「生成AIとは?」と聞くと作成したエージェントが画像のように回答を出力してくれました。
AutoGen Studioを使えば、コードを書かずにマルチエージェントワークフローをすばやく試作・検証できます。
AutoGenの活用事例
AutoGenは、複数のエージェントが協調して動作する柔軟なアーキテクチャを活かし、教育・検索・意思決定・ゲームなど様々な分野で活用されています。以下に、AutoGenの論文で紹介されていた6つの事例を紹介します。
数学問題の自動解決
AutoGenではGPT-4を活用したアシスタントエージェントとユーザープロキシエージェントを組み合わせ、MATHデータセットの難問を解くシステムを構築することができます。 人間のフィードバックや複数人の同時参加も可能で、教育や研究支援ツールとしての応用が期待されています。
検索補助付きQA/コード生成
外部ドキュメントから情報を取り込みながら質問応答やコード生成を行うRAG(Retrieval-Augmented Generation)型のエージェントを構築もできます。 「情報が見つからない」と判断した際には自動で再検索を行う“インタラクティブ検索”機能が高い効果を発揮しました。
仮想環境での意思決定とタスク実行
動画のような、家庭内の言語ベースの意思決定タスクを集めた「ALFWorld」という仮想環境があります。
その中で、言語ベースで行動計画を立てるエージェントと、それを実行するエージェントを組み合わせた2〜3エージェント構成のシステムの構築もAutoGenで可能になります。さらに、常識的判断を提供する「グラウンディングエージェント」をシステムに追加することによって、タスク成功率が15%以上向上した報告されています。
マルチエージェントによる安全なコード生成
ユーザーの質問に対し、コード生成・安全性チェック・結果の解釈をそれぞれ別のエージェントが担当するシステムを作ることもできます。 OptiGuideの導入により、単一エージェント構成と比較して精度や作業効率が大きく向上し、ユーザーの負担が軽減されました。
動的グループチャット
あらかじめ順序を決めず、参加エージェントが状況に応じて自由に会話を展開する「ダイナミックグループチャット」の実現も可能です。 タスク内容や役割に応じて発言者を選ぶ設計により、成功率が向上し、LLMの呼び出し回数も削減されました。
会話型チェスゲーム
人間とAI、またはAI同士で自然言語を用いてチェスを対局できる「Conversational Chess」を構築可能です。 ルール違反をリアルタイムで検出・訂正するボードエージェントにより、公平でスムーズな対局が可能になっています。
これらの活用事例について詳しくは、AutoGenの論文をご参照ください。
AutoGenについてよくある質問まとめ
- AutoGenは誰でも無料で使えますか?
AutoGenはオープンソース(MITライセンス+CC BY 4.0)で提供されており、個人・法人問わず無料で利用可能です。
ソースコードはGitHub上で公開されており、改変・再配布・商用利用も認められています。ただし、再利用の際はライセンス条件に従い、著作権表示とクレジット明記が必要です。
- 開発経験がなくても使えますか?
AutoGen Studioを使えば、ノーコード・ローコードでエージェントの構成と実行が可能です。
ドラッグ&ドロップのGUIでエージェントやツールの設定が行えるため、プログラミング未経験者でもプロトタイプを作成できます。
まとめ
AutoGenは、Microsoftが提供する会話型AIから分散システムまで幅広いユースケースに対応するマルチエージェントAIアプリケーション開発向けのフレームワークです。
高レベルAPI「AgentChat」やGUIツール「AutoGen Studio」を活用すれば、初心者から開発者まで柔軟に活用可能です。
無償で始められる点も魅力であり、今後ますます注目される可能性の高いAIエージェント開発基盤といえるでしょう。
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