感情分析とは?種類・導入のメリット・デメリット・活用事例を徹底解説!
最終更新日:2024年11月12日
長らくコンピューターで人間の感情を分析するのは不可能だと考えられていました。しかし、感情認識AIの進歩によって、声や表情、テキスト情報を基に人間の感情を数値化して解析できるようになっています。
AIによる感情分析をビジネスに導入して、大きな成果を挙げる企業も増えています。特に、顧客と直接コンタクトするコールセンター業務や、見込み顧客のリアクションを正確に把握する必要がある商品企画業務で業務の精度と効率を上げられると人気です。
本記事では、AIによる感情分析の仕組み、種類、メリット・デメリット、活用事例について詳しく解説します。
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目次
感情分析とは?
感情分析とは、人間の感情や気持ちの変化などを読み取るAIの機能です。分析する対象としては、音声、テキスト、表情など様々なものがあります。今までは、人間の感情を分析するのは人間にしかできないものだと考えられていました。(用語解説:感情分析とは)
しかし、近年はAI技術の進歩によって、人間の感情を分析できるようになってきたのです。今後は様々なビジネスシーンにおいて活用できるようになると予想されています。最近ではLLM(大規模言語モデル)を活用した、より複雑でより高度な感情分析が様々な業界で取り入れられています。特に、コールセンターなどのカスタマーサービス分野、接客業やマーケティング分野において、既に活用され始めています。
より高度な感情分析を可能にしたLLM(大規模言語モデル)とは何か、どのような仕組みか、こちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
AIによる感情分析が広まった背景
感情分析が広まった背景としては、次のようなものがあります。
インターネット技術の発展
インターネットによって、ウェブ上から自社の製品やサービスに関する大量のデータを集めることができるようになりました。これによって、感情分析が広まったと考えられます。
以前は、ユーザーの意見を集める作業には膨大なコストが必要でした。しかし、現在はSNSなどで率直な意見を無料(または安価に)集めることが可能です。こういった膨大な量のデータをAIに学習させることで、感情分析を実施できます。
AI技術の進歩
AI技術の進歩も、感情分析が広まった背景にあります。近年、ディープラーニングといった新しい技術が登場しました。これによって、コストをあまりかけずに人間の感情表現という高度な分析対象でも精度の高いAIを開発できるようになったのです。
また、クラウドサービスが普及し、AIを活用することが一般的になりました。こういった流れによって、感情分析が進歩したと言えます。今後さらに多くの企業で、感情分析が導入されるようになるでしょう。
AIによる感情分析のアプローチ方法
感情分析のアプローチ方法としては、次のようなものが挙げられます。
ルールベースのアプローチ
ルールベースのアプローチとは、事前に定められたルールに沿って行われる感情分析のアプローチ方法です。ルールは人間が手動で設定威します。検索した人の意図を理解しようとするもので、セマンティックアプローチと呼ばれることもあります。
高い精度で行うためには、正確な判別及び定義が必要不可欠です。皮肉(字面と真意が異なる)が含まれているテキストや、ポジティブな感情とネガティブな感情が入り混じったテキストなど一つの文章内に複雑な要素が含まれている場合には注意しなければなりません。
機械学習によるアプローチ
機械学習によるアプローチとは、テキストや映像に表れる感情を抽出・判別・分析する作業に機械学習技術を活用するものです。過去の事例からパターンや規則性を見つけ出し、感情を論理的に推論する帰納的なアプローチ方法です。AIに学習データを与えることで高い精度を保つことが可能ですし、学習を継続していくことで精度をどんどん上げていくことができます。
AIによる感情分析3種類
感情分析の種類としては、次のようなものがあります。
1. テキスト
2. 音声
3. 表情
最近は上記に加えて、脳波、脈拍、発汗などから感情を読み取る生体情報の感情認識AIも出てきています。生体情報の感情認識AIについてはこちらの記事で解説しています。
それぞれの種類について説明します。
テキスト
テキストによる感情分析においては、人間が入力した文章をAIが自然言語処理によって読み取り、分析することで感情を判断します。単語や表現、言葉遣いを分析し、そこから文章を入力した人の感情が分かる仕組みになっています。
感情認識AIを活用したチャットボットは、多くのウェブサイトで既に導入されています。判別可能な感情は、サービスによって異なります。大まかな分類でスピーディ、かつ大量に判別できるものもあれば、細かい感情まで認識できるものもあります。基本的な判定基準を学習させておくことで、AIが自動で日々データを蓄積させていきます。これによって、精度を高めることができるのです。
音声
音声による感情分析においては、人間が発する音声から感情を判定するようになっています。特定の言語に依存することなく、声のトーンや抑揚、大きさなどから感情を認識する仕組みです。人間のコミュニケーションでは、文字面だけでは読み取れない感情があります。
従来のAIでは認識できなかった音声の感情も、現在のAI技術なら読み取れるようになっています。音声による感情分析は、スマートスピーカーへの応用やコールセンターでの活用が可能です。他にもあらゆるビジネスシーンで利用できるでしょう。AIによる音声感情分析の仕組み、導入の注意点、活用事例についてはこちらの記事で分かりやすく解説しています。
表情
表情による感情分析においては、顔の表情から感情を読み取ることができます。カメラによって細かい動きの変化を捉え、視線や瞳孔の大きさなどから感情を推測します。
表情認識AIとも呼ばれ、ランドマークアノテーションを用いて顔のパーツを指定します。単純な喜怒哀楽だけでなく、微妙な感情の違いも判別可能です。目の前のことに興味があるのかないのか、といったことまで判定します。さらに精度が高くなれば、本人も意識していない気持ちまで認識できるようになると考えられています。
AIによる感情分析3つのメリット
感情分析を導入するメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
1. 顧客満足度の向上
2. 市場トレンド・自社情報を収集できる
3. 従業員のストレス軽減
それぞれのメリットを説明します。
顧客満足度の向上
感情認識AIを活用することで、やり取りする顧客の満足度を向上させられます。電話対応において、顧客の感情を読み取ることが難しい場合があります。そういった際でも、AIは電話越しでは認識しにくい感情の機敏を察知できます。
顧客がどれくらいストレスを感じているのかを読み取り、状況を改善する対策を打つことも可能です。電話対応に慣れていない新入社員でも、適切な接客を実施でき、結果的に顧客満足度の向上に繋がります。
市場トレンド・自社情報を収集できる
SNSでのつぶやきや掲示板での会話を感情認識AIで分析して、最新の市場トレンドや自社・競合に関する正確な情報分析が可能です。自社の商品やサービスに対する正確なフィードバックを、リアルタイムに低コストで収集できます。ネガティブなフィードバックに対しては、早期で炎上対策を打つことが必要でしょう。
同じ仕組みを使えば、競合企業の商品やサービスに関する分析も行えるのでマーケティングに活用可能です。これから流行する可能性の高い商品やサービスを見つけたり、競合他社に先んじて新規事業の開拓もできるでしょう。
併せて、競合他社の評価も収集することで、「業界内での自社のポジションを明確にできる」「他社の優れた事例を参考にできる」など、幅広いマーケティング戦略設計を具体化可能です。
従業員のストレス軽減
AIによる感情分析を活用することで、従業員のストレスを軽減可能です。AIを使って従業員の声から感情を推測し、ストレス度を判定して適切に対処できるようになります。落ち込んでいるか、怒っているか、いらいらしているかなど、感情の変化をしっかりと読み取ります。
ストレス軽減の対策を早め早めに行うことで、離職率を下げられます。顧客だけでなく、従業員に対しても感情分析を行うことが有効です。ストレスを把握し、的確なメンタルケアを実施する必要があります。
AIによる感情分析4つのデメリット
感情分析を導入するデメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
1. 導入コストがかかる
2. 汎用的な使用は難しい
3. 保守やメンテナンスが必要
4. 個人データ保護に注意しなければならない
それぞれのデメリットについて説明します。
導入コストがかかる
AIの導入にはコストがかかります。AIによる感情分析を導入するには、データの収集作業を行わなければなりません。社内ですべての必要データを準備できない場合は外部で購入する必要があります。さらに、開発費用やツール購入費用も必要です。また、運用するにあたっては定期的なメンテナンス作業が必要不可欠です。
こういった作業には、どうしても初期コスト、及びランニングコストがかかってしまいます。しかし、コストがかかることが必ずしもデメリットであるとは限りません。つぎこむコスト以上の成果を得られるか検討しましょう。
汎用的な使用は難しい
AI全般に言えることですが、感情認識AIの技術とシステムも発展途上です。特定のサービスの相談窓口で寄せられる顧客の反応を分析する、と言ったような限定的なシチュエーションでは十分な精度を確保できます。
しかし、社内の一部署で使用されている感情認識AIのモデルを、社内の全く異なる事業で使うような汎用的な使用法ではまだ十分な精度が出ない可能性があります。今後、感情分析を利用する企業が増えれば、それに伴って汎用的に活用できるAIも増えていくでしょう。
保守やメンテナンスが必要
感情認識AIの精度を保つためには、定期的に保守やメンテナンスを行わなければなりません。AIは蓄積されたデータを参考にして、分析していきます。
ですので、学習内容が誤っていた場合、途中で修正する必要があるのです。手間はかかりますが、日々保守やメンテナンスを行うようにしてください。
個人データ保護に注意しなければならない
AIの学習に用いるデータにおいては、個人データ保護に注意しなければなりません。例えば、人の表情を使って感情分析を行う場合、分析に用いる顔写真は個人データです。ですので、個人情報保護法に基づいて管理しなければなりません。
個人データに関する知識を持った専門家の指導に従って、感情分析を行ってください。
AIによる感情分析6つの活用事例
感情分析のビジネスへの活用例としては、次のようなものがあります。
- コールセンターでAI音声分析による顧客分析
- 顧客のサイト体験満足度向上
- 子供の学習サポート
- ボイスボットによる電話対応の自動化
- カスタマーサービスの業務改善
- バーチャルヒューマン
それぞれの事例について詳しく説明します。
コールセンターでAI音声分析による顧客分析
AI音声分析によって、オペレーターと顧客の音声から気持ちや感情の動きを読み取って分析可能です。データは日々蓄積され、これを参考にオペレーターへの指導が実施されます。
他にも、スーパーバイザーの分析が行われます。音声データを分析することで、顧客に対するトークスクリプトの作成が可能になります。コールセンターではマニュアルが必要不可欠ですので、AI音声分析は非常に効果的です。
AI音声アシスタントは、コールセンターでの業務改善にも効果的です。AI音声分析やボイスボット、AI音声アシスタントを活用することができます。
顧客のサイト体験満足度向上
AIによる感情分析を活用することで、サイトを訪問するユーザーの体験(UX)を個別化でき、より高い顧客満足度を得ることができるでしょう。
例えばオンラインゲームでは、AIがプレイヤーの表情や声から特定の感情を検出できます。時々のユーザーの感情に応じて、ゲームのシナリオや難易度を変化させることでプレイヤーの没入感を増大可能です。プレイヤーはよりパーソナライズされた、特別なゲーム体験ができるでしょう。
電話対応の自動化
感情認識AIを搭載したボイスボットを活用すれば、的確な電話対応を行うことができます。ボイスボットとは、AI技術を利用した音声会話プログラム・サービスです。受電音声を解析し、音声合成技術などを用いて回答します。
コールセンターのオペレーターにとって、顧客との電話対応は重要な業務の一つです。それゆえに、丁寧な接客を行うと、一人の顧客に使う時間が増えていきます。対応時間が長くなればなるほど、他の顧客の待ち時間が長くなってしまうのです。
待ち時間が長くなると、当然顧客のストレスが増加する一方です。ボイスボットによる自動電話対応が可能になれば、顧客の待ち時間はなくなります。
カスタマーサービスの業務改善
様々なタイプの顧客に迅速かつ的確に対応できるように、AIがオペレーターをサポートできます。AIがオペレーターと顧客の会話を聞き、適切な話し方や声のトーン、会話の切り上げ時を提案してくれます。
もし動画を通してコミュニケーションしているのなら、顧客の表情分析も同時に行えるので、リアルタイムでの分析とフィードバックが可能です。感情分析を導入することで、オペレーターの負担を大きく低減できるでしょう。
子供の学習サポート
感情認識を実際に子供の教育に活用している事例が、MITメディアラボが開発した感情認識AIを搭載した「Tega」です。Tegaは、子供の学習用のソーシャルロボットです。
カメラで読み取った子供の表情を読み取り、問題を解いた子供が笑えば一緒に笑い、回答できずに悲しんでいる子供を慰める、と言った反応を示せます。さらに、子供一人一人の感情表現の傾向に合わせて反応を変化させて、一人一人に最適化された方法で読み書き学習をサポートできます。
Tegaと同様のシステムが、大人向けの語学教師やダイエットや筋トレのトレーナーなど新しい分野で活用されることが期待されています。
感情認識AIを開発して、実際にサービス化している企業の実例についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
バーチャルヒューマン
バーチャルヒューマンは、コンピュータによって生成されたデジタルキャラクターです。感情分析AIの活用は、バーチャルヒューマンとユーザー間の対話をより豊かで人間らしいものに変える重要な要素です。
感情分析AIの技術を用いることで、バーチャルヒューマンはユーザーの感情を理解し、それに応じた適切な反応を示すことができます。
バーチャルヒューマンの仕組み、活用の注意点をこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください
感情分析についてよくある質問まとめ
- AIによる感情分析にはどのような種類がありますか?
AIによる感情分析には主に3種類あります。
- テキスト分析: 文章から感情を読み取る
- 音声分析: 声のトーンや抑揚から感情を判断する
- 表情分析: 顔の表情から感情を推測する
- 感情分析AIをビジネスに導入するメリットは何ですか?
主なメリットは以下の3つです。
- 顧客満足度の向上
- 市場トレンドや自社情報の効率的な収集
- 従業員のストレス軽減と働きやすい環境の創出
- 感情分析AIの具体的な活用事例にはどのようなものがありますか?
主な活用事例には以下のようなものがあります。
- コールセンターでの顧客対応の改善
- Webサイトでの顧客体験の向上
- 電話対応の自動化(ボイスボットの活用)
- 教育分野での学習サポート(例:MITの「Tega」)
- バーチャルヒューマンとの対話の質向上
まとめ:ますます拡がる感情分析の可能性
感情分析を活用すれば、顧客満足度を向上させたり、従業員のストレスを軽減したりすることが可能です。感情分析は、今後さらに市場が拡大する見込みです。まだ考えられていない活用方法はたくさんあります。うまく活用すれば、新たな価値を提供することができるでしょう。
最近では、車の運転手の表情を分析して安全性を高めたり、人の精神状態をスマートウォッチで管理したりなど、新しい活用方法が増えています。今のうちに感情分析を導入することで、まだ世にないサービスや製品を生み出せるかもしれません。
今後は様々な企業において、AIによる感情分析は必要不可欠なものになっていくと考えられます。感情分析についてもっと詳しく知りたいという方は、ぜひお問い合わせください。
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