マテリアルズ・インフォマティクスとは?AI活用方法、国内成功事例や導入事例、材料開発におけるメリット・課題、解決策を解説!
最終更新日:2024年11月05日
材料開発分野のDXとして注目を浴びているマテリアルズ・インフォマティクス(MI)。しかし、共通のプラットフォーム開発が進んでいないことや、先端技術である「AI」を使うことや、膨大な蓄積データが必要であることから、まだ導入するには早いと考えている方もいるかもしれません。
しかし、マテリアルズ・インフォマティクスは、材料開発にかかる期間を半分以下にでき、試作回数も数十分の一にできる驚異的な威力が既に実証されている技術です。この面で後れを見せていた日本でも急激な巻き返しが期待されています。だからこそ、マテリアルズ・インフォマティクスとは何か、自社でもマテリアルズ・インフォマティクスを導入できるか、しっかり検討することが求められています。
本記事では、マテリアルズ・インフォマティクスとは何か、なぜ必要か、メリット・課題・成功事例を紹介します。最後まで読んでいただければ、解決できる問題や、具体的な事例による導入イメージをしていただくことができます。
AI Marketでは
マテリアルズ・インフォマティクスに強いAI開発会社を自力で選びたい方はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
目次
マテリアルズ・インフォマティクスとは?
マテリアルズ・インフォマティクス(MI)は、AI・機械学習を使用することで、材料開発を効率よく行う手法です。手順や組み合わせの発見に強い探索アルゴリズムなどを活用します。
AIの発展に伴い、膨大な実験データや論文を瞬時に解析できるようになったことで注目されています。マテリアルズ・インフォマティクスによって、⻑期間にわたることが多い材料開発のサイクルを短縮できることが期待されます。
マテリアルズ・インフォマティクスは、材料科学の新たなフロンティアを開くと共に、産業界におけるイノベーションの加速に貢献しています。
マテリアルズ・インフォマティクスと従来の開発プロセスの違い
材料開発を端的に言うと、膨大な物質から目的に合わせた最適な組み合わせを見つける試みです。従来の材料開発では、新材料を探すための理論計算は研究者の勘や経験に頼るしかありませんでした。
求められる特性を持つ材料を開発するためには、何度もの研究と実験を繰り返す必要があり、一つの材料を開発するのに数十年もの時間がかかることも珍しくありませんでした。このアプローチは、時間と資源の大きな投資を必要とし、効率的ではありませんでした。
しかし、マテリアルズ・インフォマティクスでは過去の実験データやシミュレーションデータに基づく探索アルゴリズムにより、AIが目的に応じた最適解を出し、コンピューター上で実験まで行えます。マテリアルズ・インフォマティクスは情報科学と計算科学の力を利用して材料開発のプロセスを加速させます。
例えば、コンピュータ上で原子配列の特性を計算したり、過去の論文データを機械学習で分析し、新しい材料の組み合わせを導き出すことが可能になります。このようにして、マテリアルズ・インフォマティクスは従来の手法に比べてより迅速かつ効率的に材料開発を進めることができるのです。
この革新は、材料開発の時間を大幅に短縮し、開発コストを削減することを可能にします。また、従来の方法では見落とされがちだった材料の潜在的な特性や新しい組み合わせを発見する可能性も広がります。
最近では、開発に主眼を置いたマテリアルズ・インフォマティクスに加えて、実際の生産のプロセスの最適化に主眼を当てたプロセス・インフォマティクスも注目されています。
マテリアルズ・インフォマティクスでのAI・機械学習の役割
マテリアルズ・インフォマティクスでは、AI・機械学習が開発期間短縮に大きく貢献しています。開発の肝である「製造工程の導出」に、圧倒的な計算能力と機械学習能力を持つAIが加わることで、今まででは考えられなかった速さで材料開発を進めることが可能になります。
AIは、目的に応じた最適な製造過程を短時間で導き出すことが得意です。また、登録されているデータを漏れなく活用できるため、世界中で行われた研究を最大限活かした最適解を見つけることができます。
さらに、近年急速に進歩しているLLM(大規模言語モデル)は、材料科学の複雑な知識構造やデータフレームを自動的に学習し、レビュー論文からの情報抽出に利用されています。LLMによって材料名、物性、合成パラメータなどの情報を科学文献から効果的に抽出し、材料の性能を評価する際に必要な関係を抽出することが可能になります。
LLMとは何か、どう使われるか、こちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
AIが導き出した製造工程が各社の工場や予算的に可能かどうかは科学者が考えなければいけないため、最終的な判断を下すのは専門的な知見を持った人間です。。研究者とAIが一緒になって材料開発をしていくイメージです。
AIは、あくまで研究者をアシストする道具として働きます。AIを活用することで、従来は考えられなかった速度で材料開発を進められます。
マテリアルズ・インフォマティクスの成功事例8選
マテリアルズ・インフォマティクスの成功事例を以下に紹介します。
- タイヤのゴム材料の開発技術革新(横浜ゴム)
- MI人材を育成して開発期間を半分以下に(旭化成)
- 熱電変換材料の開発期間を短縮(NEC)
- 高性能ポリマー収率の収率を改善(ENEOS)
- 炭素繊維強化プラスチックの開発期間を短縮(東レ)
- 5年かかる全固体電池の材料を1年で開発(サムスン)
- フレキシブル透明フィルムの開発で実験回数を25分の1に(産総研)
- マルチモーダルAIでマテリアルズ・インフォマティクスを発展(日本ゼオン)
それぞれの事例について説明します。
タイヤのゴム材料の開発技術革新(横浜ゴム)
横浜ゴムは、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用して、ゴム材料の開発技術を大きく革新しています。同社の長年のシミュレーション技術と実際のゴム材料の設計・加工に関する研究結果を統合し、AI(機械学習)による情報と知識の探査を導入することにより、材料開発の精度とスピードを飛躍的に向上させています。
この技術を用いることで、タイヤのゴム材料となるポリマー(ゴム)とフィラー(カーボンブラックやシリカなどの微粒子)の微細構造の影響を詳細に解析します。それにより、転がり抵抗の低減や耐摩耗性の向上など、相反する性能を持つ高機能なゴム材料の開発が可能になります。
また、横浜ゴムはAIを利用したゴムの配合物性値予測システムも独自に開発し、タイヤ用ゴムの配合設計を効率化しています。
この予測システムは、人がゴムの配合設計パラメーターを入力し、AIが配合物性値を予測するという形式で機能します。さらに、予測された結果を判断しやすくするための機能も備えており、人とAIが協力して新たな知見を得ることができます。
横浜ゴムのMI技術は、タイヤのみならずホースやコンベヤベルトなど、多岐にわたるゴム製品の開発に応用され、新しい商品の開発や技術開発をさらに推進していく方針です。
MI人材を育成して開発期間を半分以下に(旭化成)
旭化成は、従来は数年かかる材料開発を半年で行うことに成功しました。旭化成では、2018年からマテリアルズ・インフォマティクスの強化に取り組んでいます。
社内で3年間の研修期間を設けて、マテリアルズ・インフォマティクスの技術を習得した「MI人財」の育成を行ってきました。研修では、Webブラウザで実行可能な「MI-Hub」というクラウド研修システムを用いて、機械学習やコンピューター言語の教育を実施しました。
その結果、コロナウイルスの影響で在宅勤務が強いられる中でも材料開発期間の短縮に成功しています。現在は多くの製品の開発にマテリアルズ・インフォマティクスが活用されているようです。
熱電変換材料の開発期間を短縮(NEC/東北大学)
NECと東北大学は、自社で開発したマテリアルズ・インフォマティクスを用いて熱電変換デバイスの研究開発を行い、デバイスの熱電変換効率を約1年で100倍に向上させました。
開発には、大量のデータを高速に処理・評価するシステムと、組み合わせゲーム理論に基づく分岐型探索アルゴリズムが用いられ、高速かつ高精度な開発が実現しました。
また、高精度な物性モデルを構築して可視化することで研究者がより理解しやすい環境になり、AIと研究者がより協調してデータ理解を深めることが可能になっています。
高性能ポリマー収率の収率を改善(ENEOS)
ENEOSは、マテリアルズ・インフォマティクスを用いて潤滑油とグリースの設計を行っています。独自の予測モデルを併せて活用することで、収率の向上や狙った機能を持つ素材の開発に成功しています。
ENEOSのマテリアルズ・インフォマティクスでは、化学シミュレーションによって活性化エネルギーや吸着・脱離エネルギーを算出でき、その結果を用いたAIによる最適な製造工程の予測ができます。これにより、多くの相互作用や複雑な分子構造を持つ高性能ポリマーでも、正確な設計予測が可能です。
炭素繊維強化プラスチックの開発期間を短縮(東レ)
東レは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の開発にマテリアルズ・インフォマティクスを用いて、開発期間の大幅な短縮に成功しました。
これまで、CFRPのように難燃性と力学特性を両立しなければならない素材の開発には、膨大なデータが必要でした。そのため開発には多くの時間が必要で、設計だけでも2~3年の期間が必要でした。
しかし、マテリアルズ・インフォマティクスを用いることにより短期間での開発が可能となったのです。マテリアルズ・インフォマティクスを活用した開発では、データベースの構築に1年、設計・評価に1~2ヶ月しかかからず、開発期間の大幅な短縮を実現しました。
5年かかる全固体電池の材料を1年で開発(サムスン)
サムスンがマサチューセッツ工科大学と行った次世代バッテリー全固体電池の共同研究では、マテリアルズ・インフォマティクスを用いることで1年という短期間での開発に成功しました。ちなみに、マテリアルズ・インフォマティクスを用いていなかったトヨタは、ほとんど同じ材料の全固体電池の開発に5年かかっていました。
タッチの差で特許権はトヨタが獲得しましたが、サムスンはシミュレーションまですべてコンピュータ上で行っていたことで業界に衝撃を与えました。マテリアルズ・インフォマティクスによって、開発の時間短縮に加えて実験コストの削減も可能なことが明らかになったのです。
フレキシブル透明フィルムの開発で実験回数を25分の1に(産総研)
産総研はフレキシブル透明フィルムの開発で、材料特性や素材データを学習したAIの予測により実験回数を25分の1にまで減らしています。産総研は2016年度から5年間、「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)」を行い、マテリアルズ・インフォマティクスを推進してきました。その中の成功例が、フレキシブル透明フィルムの開発です。
実現が困難と思われていた「透過率」「破断応力」「伸び」という相反する3項目の特性を高めたフィルムの開発も成功しており、品質向上にも寄与しています。2022年4月からは、半導体や触媒など5分野のデータプラットフォーム「データ駆動型材料設計技術利用推進コンソーシアム」を運用して材料開発の革新に取り組んでいます。
マルチモーダルAIでマテリアルズ・インフォマティクスを発展(日本ゼオン)
産業技術総合研究所(産総研)、日本ゼオン株式会社などは共同で、マルチモーダルAI技術を用いて複雑な構造を持つ材料データを処理し、高速かつ高精度でさまざまな機能を予測できる技術を開発しました。画像データや分光スペクトルなどの異なる複数のデータを計測し統合することにより、従来のAIでは適用できなかった複雑材料系でも異なる特性を高精度で予測することが可能となりました。
このマルチモーダルAI技術は、膨大な条件から選定、成形加工、評価といった材料開発のプロセスの大幅な高度化・大幅な所要時間の短縮につなげられたということです。
こちらでマルチモーダルAIとは何か詳しく説明しています。
AI Marketでは
なぜいまマテリアルズ・インフォマティクスが必要?
マテリアルズ・インフォマティクスは、日本の産業界において、技術革新の推進力であり、経済成長の加速器となる可能性があります。そう言える理由について説明します。
日本でのマテリアルズ・インフォマティクスは伸びしろだらけ
日本も2016年から本格的にマテリアルズ・インフォマティクスを推進する動きを見せています。材料開発で高い国際競争力を維持するためには、さらなるデータの蓄積や一般企業への浸透が不可欠でしょう。逆に言えば、これからますます伸びる分野です。
マテリアルズ・インフォマティクスはアメリカ発祥の手法で、2011年のオバマ政権の段階で整備が行われ、その翌年の2012年には電池材料開発の分野で大きな成果を上げています。世界的に見ると、マテリアルズ・インフォマティクスの導入はスタンダードとなりつつあり、海外企業と戦うためには国内でも早期の確立がカギになります。
ケモインフォマティクス(化合物・化学)、バイオインフォマティクス(生物学)の発達によって、基礎科学分野でのAI活用に関する基本的な手法は既に確立しています。ですから、材料開発や素材開発と呼ばれる分野でもマテリアルズ・インフォマティクスが主流となる日は近いでしょう。
工業素材の重要性
日本経済にとって不可欠な輸出産業の中心にあるのは、工業素材です。素材分野が日本の輸出産業の約2割を占め、世界市場での日本製マテリアル製品のシェアが大きいことは、国の産業競争力にとって極めて重要と言えます。
これらの素材は、国際市場において日本の競争力の根幹を支えており、その開発の進展は国の経済成長に直結しています。マテリアルズ・インフォマティクスは、このような環境の中で、材料科学における革新的なブレイクスルーを実現する鍵となり得るのです。
社会環境の変化と技術進化
我々の生活を取り巻く社会環境は、モビリティの進化や5Gの急速な進展といった技術革新によって大きく変化しています。これに伴い、新しいタイプの材料が求められ、その開発競争はますます激しさを増しています。
また、コンピュータ技術の飛躍的進歩やデータ蓄積技術の発展は、ビッグデータの蓄積や人工知能によるデータ分析を可能にし、材料科学の新たな地平を開いています。
既に持っているリソースの有効活用が求められている
基礎研究の分野では、質の高い研究者と優れた材料データが国際競争力を支えています。これらのデータを有効活用し、さらなる躍進を遂げるためにはマテリアルズ・インフォマティクスの導入が不可欠です。
また、過去にビジネスと学術研究の融合によって生まれたイノベーション(例:リチウムイオン電池、青色LED)の実績は、MIの分野でも大きな可能性を秘めています。
マテリアルズ・インフォマティクス4つのメリット
材料開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスのメリットを以下に紹介します。
1. 予測精度の向上
2. 研究期間の短縮
3. 全世界・全時代のデータを活かせる
4. 研究開発の採算性や実現可能性を可視化できる
それぞれのメリットについて説明します
予測精度の向上
マテリアルズ・インフォマティクスは、原子スケールで材料開発を考えることができるため、より高い精度での予測が可能です。現在は、機械学習によって様々な物質の電子状態を短時間で予測できるようになっており、従来のシミュレーターでは数日かかるものも数秒で予測できるようになっています。
分子振動の相互作用や結晶構造に基づいた高い予測ができるようになれば、予備実験等の手間も省くことも可能です。結果的に科学者の負担や研究の時短にも繋がります。
研究期間の短縮
研究期間の短縮は、マテリアルズ・インフォマティクスの一番の魅力です。AIの計算の速度と、精度向上による試行回数の減少の2つが研究期間の短縮に寄与しています。
マテリアルズ・インフォマティクスを使用しない場合と比較すると、製造工程を導き出す期間は半分以下、試行回数は数十分の一まで減らすことが可能です。今後さらにデータが集まれば、さらなる時間短縮ができるようになるでしょう。
全世界・全時代のデータを活かせる
AIは登録された全てのデータを基に計算するため、全世界のデータを最大限活かした予測をすることが可能です。これにより、経験や知識不足による設計ミスを減らすことができます。
研究者が研究テーマに関わる全ての論文を読むことは現実的に不可能でしょう。ましてや、これまで材料分野で行われた研究結果をすべて活用することは不可能です。しかし、AIはデータさえ登録されていれば見逃す確率は極めて低いです。また、全くの別分野でも活用できるデータがあれば取り入れてくれます。これにより、より精度の高い実験をすることが可能になります。
研究開発の採算性や実現可能性を可視化できる
マテリアルズ・インフォマティクスは、材料開発の採算性や実現可能性を数値化し、可視化してくれるのに役立ちます。長いものでは10年単位の時間がかかるのも普通だった材料開発では、決裁権者から予算をもらうためのエビデンス作成がたいへんな関門です。
AIを用いるマテリアルズ・インフォマティクスであれば、過去の実験データやシミュレーションデータを基にエビデンスを出せるため、開発計画をスムーズに立案できるでしょう。
AI Marketでは
マテリアルズ・インフォマティクス4つの課題
マテリアルズ・インフォマティクスには、先端技術ならではの以下のデメリットがあります。
- プラットフォームが整備されていない
- データの秘匿化が必要
- データの質の偏り
- 逆問題に対応できる解析技術の向上
それぞれのデメリットについて説明します。
プラットフォームが整備されていない
マテリアルズ・インフォマティクスは比較的新しい技術のため、データのプラットフォームがまだ整備されていません。マテリアルズ・インフォマティクスでは、AIが蓄積データを基に製造工程や最適な材料を予測しますが、蓄積データが少ないと正確な予測ができません。
現在、日本でも国が予算を出して取り組んでいるため、データ整備は着実に進んでいくと思われます。しかし、マテリアルズ・インフォマティクスに関して日本は遅れをとっています。そのため、自社データを早期段階から保持しておくなどの準備をしなければ海外企業に先を行かれてしまいます。
データの秘匿化が必要
マテリアルズ・インフォマティクスは様々な研究所や企業のデータを活用するため、データの秘匿化が重要です。
近い分野を取り扱う研究において、マテリアルズ・インフォマティクスは良い相互作用を生み出すことができますが、中には競合に知られたくない情報もあるでしょう。そのようなデータを表に出すことなく、データを秘匿化して活用できるようにする仕組みも必要です。
データの質の偏り
マテリアルズ・インフォマティクス(MI)では、データの量だけでなく「質」も非常に重要です。AIの学習プロセスでは、成功データだけではなく多くの失敗したデータが必要です。これは材料開発にも当てはまります。
材料開発での一般的なデータソースは、成功例が中心の論文が主です。そのため、失敗データの集積が不足しがちで、この偏りがAIの活用を阻害しています。
また、材料開発では往々にして「過去のデータにない新しい特性を持つ材料を発見したい」というケースが多く、これがデータの質と量の不足を引き起こしています。
逆問題に対応できる解析技術の向上
材料開発におけるAI活用には、データ分析の「逆問題」に対応可能な解析技術の向上が不可欠です。多くの一般的なAIシステムは、まだ「順問題」にしか対応しておらず、材料開発分野の特有の逆問題への対応が難しい状況です。
- 順問題:物質の組成や構造情報から材料特性を予測する。例えば、物質の配合を変えた場合にどのような材料特性が得られるかを予測する。
- 逆問題:求めたい特性が得られる条件を予測する。つまり、特定の特性を持つ材料を作るために必要な物質の組成や構造を予測する。
この逆問題への対応が、材料開発分野でのAI活用の鍵となります。従来の方法では解決が困難だったこの種の問題に対して、逆問題に対応した解析技術の開発と応用が、材料開発の効率化とイノベーションの加速を実現する道となるでしょう。
マテリアルズ・インフォマティクスについてよくある質問まとめ
- マテリアルズ・インフォマティクスとは?
マテリアルズ・インフォマティクス(MI)は、AI・機械学習を使用することで、材料開発を効率よく行う手法です。手順や組み合わせの発見に強い探索アルゴリズムなどを活用します。AIの発展に伴い、膨大な実験データや論文を瞬時に解析できるようになったことで注目されています。マテリアルズ・インフォマティクスによって、⻑期間にわたることが多い材料開発のサイクルを短縮できることが期待されます。
- マテリアルズ・インフォマティクスと従来の開発プロセスの違いは?
従来の材料開発では、新材料を探すための理論計算は研究者の勘や経験に頼るしかありませんでした。求められる特性を持つ材料を開発するためには、何度もの研究と実験を繰り返す必要があり、一つの材料を開発するのに数十年もの時間がかかることも珍しくありませんでした。
しかし、マテリアルズ・インフォマティクスでは過去の実験データやシミュレーションデータに基づく探索アルゴリズムにより、AIが目的に応じた最適解を出し、コンピューター上で実験まで行えます。マテリアルズ・インフォマティクスは情報科学と計算科学の力を利用して材料開発のプロセスを加速させます。
- マテリアルズ・インフォマティクスでのAI・機械学習の役割は?
開発の肝である「製造工程の導出」に、圧倒的な計算能力と機械学習能力を持つAIが加わることで、今まででは考えられなかった速さで材料開発を進めることが可能になります。と言っても、AIが導き出した製造工程が各社の工場や予算的に可能かどうかは科学者が考えなければいけないため、最終的な判断を下すのは専門的な知見を持った人間です。。研究者とAIが一緒になって材料開発をしていくイメージです。
まとめ
材料開発に欠かせない手法となりつつあるマテリアルズ・インフォマティクス。開発時間を短縮できることから、労働環境の改善や人材不足などの問題も解決できるかもしれません。先端技術であるAIを用いたマテリアルズ・インフォマティクスは、高いレベルの材料開発において不可欠な存在となるでしょう。
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