糸魚川総合病院などの共同研究チーム、問診票の情報だけで5種類の頭痛を高精度で診断できるAIを開発
最終更新日:2023年01月31日
糸魚川総合病院は、2023年1月31日、AIを用いた頭痛診断モデルを開発したと発表した。
この頭痛診断AIは、問診票から得られる17項目の情報のみから、片頭痛をはじめとする5種類の頭痛を高精度で診断できるというものだ。開発は糸魚川総合病院・脳神経外科と富永病院・頭痛センター、そして埼玉精神神経センターの共同研究チームによって行われている。
<本ニュースの10秒要約>
- 問診票から得られる17項目の情報のみから、片頭痛をはじめとする5種類の頭痛を高精度で診断可能
- 問診データと診断データをAIが学習。片頭痛の診断精度は91%、非頭痛専門医の診断精度も大幅向上
- 医師の負担軽減により、正しい診断を患者に提供。オンライン診療やアプリへも組み込みも予定
片頭痛患者、約1,000万人以上。対して頭痛専門医の数は、949名
片頭痛など頭痛の大半は、命に関わることがないため軽視されることが多い。しかし、片頭痛による欠勤・休業や学業・労働のパフォーマンス低下は間接的に経済損失を発生させており、その額は1人あたり176万円/年に達するとも言われている。そのため、医療機関で頭痛に関する適切な診断・治療を受けることは、患者自身のQOL(生活の質)向上に加えて、日本の経済発展のためにも重要となる。
しかし日本国内には現在、頭痛専門医が949名しか存在しない。そのため、約1,000万人を超えるとも推測される片頭痛患者の多くは、非頭痛専門医によって診断・治療されている。また、頭痛の診断を正確に行うためには長時間の問診が必要なため、医師の負担も大きい。こうした医師の負担を軽減し、頭痛患者が正しい診断を受けられるようにするため、糸魚川総合病院は頭痛診断AIを開発するに至った。
17項目の情報から5種類の頭痛を診断できる頭痛診断AI
今回開発された頭痛診断AIは、頭痛問診票に17項目の情報を入力するだけで頭痛の種類を診断できるというものだ。識別するのは、片頭痛と緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛とその他の一次性頭痛、そして脳血管障害をはじめとする二次性頭痛の5種類。診断の精度については、正解率が76%、感度が56%、特異度は92%を誇る。専門医の治療が必要な片頭痛については診断精度が91%と特に高く、三叉神経・自律神経性頭痛の診断精度も84%に達している。
このAIの開発に際しては、富永病院頭痛センターが保有する4,000名の匿名問診データと、頭痛専門医が頭痛5種を診断した2,800名のデータが活用された。これらのデータを学習することで、頭痛診断AIは高精度の診断を実現。有効性の検証として、非頭痛専門医5名が50名の頭痛患者を問診票のみで診断したところ、診断精度はAIなしの46%から83%にまで向上した。
放射線学的検査や血液検査などが不要、医師の負担を軽減
問診票の情報のみで診断が可能な頭痛診断AIは、放射線学的検査や血液検査などが不要というメリットも持つ。そのため、頭痛患者の問診に要する時間を削減し、頭痛専門医/非頭痛専門医の負担を軽減できる可能性がある。また、専門医の治療が必要な片頭痛や三叉神経・自律神経性頭痛の見落とし防止や、プライマリーケア医および専門的頭痛治療センターとの連携促進の面でも期待されている。
さらに頭痛診断AIは、オンライン診療やスマートフォンアプリなどに組み込むことで、より広範な形での活用も可能となる。こうした活用を通じて、誤診断や自己判断などで頭痛に苦しみ続けている患者に向けて、正しい頭痛診断を得るきっかけを提供できる可能性も持つ。
糸魚川総合病院は、頭痛診断AIの有用性をさらに検討すべく、今後は複数の医療機関や企業などにおいて実地検証の実施を予定している。なお今回の研究成果は、国際頭痛学会の公式医学雑誌「Cephalalgia」に「Developing an Artificial Intelligence-Based Headache Diagnostic Model and Its Utility for Non-Specialists’ Diagnostic Accuracy」のタイトルで、2023年1月27日付で掲載された。
参照元:PRTIMES
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