最終更新日:2023-03-03
順天堂大学/日本IBM/グローリー、認知機能推定AIが高齢者の金融商品適合性をチェックするアプリを開発
順天堂大学は、2023年2月28日、認知機能推定AIを活用した「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」を共同開発したと発表した。
同アプリは、対象者の表情とAIとの会話から認知機能を推定し、金融商品の適合性判断を支援するというものだ。順天堂大学/グローリー株式会社/日本アイ・ビー・エム株式会社の3者により開発され、三菱UFJ信託銀行でのパイロット運用も同年3月1日より開始されている。
目次
<本ニュースの10秒要約>
- タブレットで撮影した表情とAIとの会話から認知機能を推定、金融商品の適合性判断を支援
- IBMのデータ解析技術やグローリーの表情解析技術、順天堂大学の認知機能推定AIの技術を活用
- 様々な金融機関に展開し、高齢者が「脳の健康度」に応じて金融商品取引を行える環境を整備
認知機能を自動で判断可能なデジタル技術に期待する金融業界
超高齢社会へと進む現在の日本では、高齢者のための資産形成サービスが求められている。しかし、認知や判断などの能力は加齢と共に低下する傾向があり、金融商品の取引においてはそれらの影響を配慮したサービス開発が課題となっていた。
この課題の解決においては、認知機能を自動で判断可能なデジタル技術に期待が集まっている。健康総合大学・大学院大学である順天堂大学も、こうした状況に対応すべく、認知症患者などを対象とする臨床試験を2018年より開始。その結果を基にして、グローリー/日本IBMと共に「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」を開発するに至った。
認知機能を15段階で推定、「脳の健康度」として提示
「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」は、会話/表情から脳の認知機能レベルを推定できるAIを搭載したアプリだ。タブレットで撮影した表情とAIとの会話から認知機能を15段階で推定し、「脳の健康度」を参考情報として提示することで、金融商品の適合性判断を支援する。
同アプリの認知機能推定AIでは、IBMが持つ「Watson」やデータ解析の技術と、グローリーが擁する表情解析技術が開発に用いられた。また、音声・表情といった自然データから脳の認知機能レベルを推定できる順天堂大学のAI技術も活用。自然に取得可能なデータをインプットとすることで、短時間での状態の可視化を実現している。
道徳的であるかどうかの審査も複数回にわたり実施
「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」は、金融業務に特化したソリューションとしては日本で初めて開発されたAIアプリであり、様々な金融機関で適用できるよう汎用性の高さを備える。金融機関それぞれが持つ既存システム/DBとの連携などに柔軟に対応でき、定期的なモニタリングとしての活用も可能。標準ツールは「IBM Cloud」上で稼働するが、AWSといった他のクラウドサービスでも導入・連携は行える。
なお同アプリの構築は、厚生労働省・PMDAに報告・確認を実施した上で行われた。また、利用しているデータやその取得・保管方法、AIモデルのロジックなどについては、道徳的であるかどうかの審査が倫理委員会などによって複数回にわたり実施されている。
三菱UFJ信託銀行にてパイロット運用を開始
「金融商品適合性チェック支援AIアプリ」のパイロット運用が行われる三菱UFJ信託銀行は、利用者それぞれの認知機能に応じた金融サービス提供を企図しており、そのためのツールとして同アプリが有効であると判断。今後は同アプリの検証を続け、将来的には年齢にかかわらず顧客が安定的な資産形成が行える金融機関になることを目指すとしている。
順天堂大学は今後、様々な金融機関に向けた同アプリの展開を予定。高齢者が「脳の健康度」に応じた形で安心・安全な金融商品取引を行える環境を整備し、人生100年時代に対応した社会基盤の構築を目指すとしている。
参照元:PRTIMES
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