顔認証システムとは?どんな仕組み?導入手順・注意点・ディープフェイク対策を徹底解説!
最終更新日:2024年09月27日
顔認証システムとは、人の顔をAIが認証して本人確認等を行うシステムです。顔認証システムには画像認識による特徴や顔のパーツを判断し、データベースと照合するなど高度なIT技術が使われています。近年はさまざまな企業が顔認証システムを導入し始めています。企業のオフィスやサービスのスマホで行う本人確認やATMなど導入シーンは幅広くなっています。
しかし、生成AIの急速な発展によって技術ハードルが下がった
今回は
AI Marketでは
目次
顔認証システムとは?
顔認証システムとは、人の顔を識別して本人確認を行う技術を利用した生体認証システムです。顔の各パーツや位置などのさまざまな特徴をもとに本人かどうか確認します。コンピュータビジョンのなかでも最も企業ニーズの高い画像認識技術をベースとして開発されています。
関連記事:「コンピュータビジョンとは?仕組み・活用メリット・活用分野・注意点を徹底紹介!」
顔の特徴をAIが学習し、実際にカメラに映っている人物の映像や画像をデータベースの人物と比較し認証していくことが一般的です。
現在はスマホのロック解除に顔認証が利用されたり、オフィスの入退室や空港の検査などに利用され普及してきました。ここでは顔認証システムの技術や仕組みに関して解説していきます。
認証方式
顔認証システムの認証方式には主に2種類存在します。いずれの方式もメリット・デメリットが存在するため、自社に必要な機能や課題に合わせて選択することがおすすめです。
デバイス型
1つ目はデバイス型と言われ、顔認証用のAIカメラや機材が組み込まれた専用のデバイスによって認証を行う方式です。顔認証専用のため認証速度が早く、ランニングコストも抑えられることが特徴です。
また、顔認証に必要な個人情報もオフィス内のみで保管できたり、各企業に必要な機能や性能を組み込めるなど独自デバイスとしてカスタマイズすることも可能です。
クラウドサービス型
2つ目はクラウドサービス型と呼ばれています。クラウド上のシステムを用いて汎用的なカメラやスマートフォンに組み込む方式です。すでに構築されたシステムを導入するだけなのでデバイス型に比べて導入コストが低く、常に最新状態を維持することができます。
しかし、認証速度やランニングコストがデバイス型に比べて高価になることがあります。
認証の仕組み
顔認証システムの仕組みは画像認識技術をベースとして、顔の各パーツの特徴や配置を事前に学習し、実際にカメラが捉えた人物の顔がどの顔と一致するか特定することで認証します。顔認証システムの仕組みはいくつか存在し、ビジュアル方式(2D認証)、IR方式(3D認証)などがあります。
ビジュアル方式
ビジュアル方式はカメラに映る顔のパーツをデータベースに保存されている顔データと比較して認証する方式です。さまざまなデバイスで用いられますが、日の当たりなどで精度が落ちたり、化粧や髪型などにも影響することがあります。
IR(赤外線)方式
IR方式はビジュアル方式に赤外線センサーを追加して立体的な顔の特徴を把握し、認証するものとなります。ビジュアル方式に比べて化粧や髪型の影響を受けにくいため精度が高いですが、専用のデバイスが必要なため活用シーンが限られています。
AI Marketでは
顔認証システムに使われる画像認識AIの仕組み
顔認証システムの画像認識AIは、主に以下の3つのステップで顔認証を行います。
1. 顔の検出
カメラに映った画像から、顔のパーツを見つけ出します。Haar-like特徴量やHOG(Histogram of Oriented Gradients)特徴量などの特徴量を用いた機械学習アルゴリズムが使われます。こうしたアルゴリズムは、多数の顔画像と顔でない画像を学習することで、顔の特徴を効率的に見分けられるようになります。
画像の認識、分類はこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
2. 顔の特徴抽出
検出された顔画像から、個人を特定するための特徴を抽出します。具体的には、目、鼻、口などの位置関係や、顔の輪郭、肌の質感などが分析されます。
この処理には、ディープラーニングのニューラルネットワークが用いられるのが一般的です。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などのアーキテクチャが、顔画像の局所的な特徴を検出するのに適しています。
関連記事:「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とは?3層の仕組み・ディープラーニング他手法との関係を徹底解説!」
3. 顔の照合
抽出された特徴量を、事前に登録されたデータベースの特徴量と比較し、合致度の高い人物を特定します。
照合アルゴリズムとしては、サポートベクターマシン(SVM)や最近傍法(k-NN)などのデータ分析手法が用いられます。これらのアルゴリズムは、特徴量空間上で個人ごとの特徴量の分布を学習し、新たな特徴量がどの個人に近いかを判定します。
これらの処理を高速かつ正確に行うために、画像認識AIは大量の顔画像データを用いた事前学習が必要です。学習データの質と量が、認証精度に大きく影響します。また、認証精度を高めるために、カメラの解像度や照明環境など、入力画像の品質も重要な要素となります。
顔認証システム導入の流れ6ステップ
顔認証システムの導入には一般的な流れが存在します。各企業が求めるニーズや導入シーンによって細かくは異なりますが、一般的な流れを把握しておくことで、導入にあたって何をすべきかスムーズに考えられるようになります。
社内での導入検討と合意形成
顔認証システム導入の第一歩は、社内での導入検討と合意形成です。まず、導入の目的や期待される効果を明確にしましょう。そのうえで以下を検討します。
- 予算
- 必要な機能
- オプション機能
- 業務プロセスの変更
- 従業員への教育
次に、経営層や関連部署を交えて導入の是非を議論し、社内の合意を形成します。
問い合わせ
社内での開発を除いて、基本的には顔認証システムを開発・提供可能な企業に問い合わせすることから始まります。問い合わせの際は以下を確認します。
- 予算
- 必要な機能
- オプション機能
- 導入事例
- 費用感
- カスタマイズの柔軟性
- アフターサポートの充実度
実際にどのような企業への導入事例があるのかなども判断材料として検討すると失敗しにくいです。NEC、パナソニック、オムロンなどの大手企業から、AI開発企業まで、多くの企業が顔認証システムを開発しています。自社のニーズに合った開発企業を選定することが重要です。
打ち合わせ
顔認証システムの開発を委託する企業が決まれば、その企業の担当者と打ち合わせに進みます。システム開発をする場合はシステム開発に必要な仕様を具体的に決めていきます。
場合によっては技術者とも直接話してシステムに関する内容を聞いたり、詳細な使用を決めていくこともあるため、事前に顔認証システムの技術的な概要を簡単にでも理解しておくとよりスムーズに進行できます。
システム開発
打ち合わせで決定した内容に基づき、システム開発と導入を進めます。必要に応じて、エンジニアが導入する現地へ向かって状況を確認したり、コーディングしたりしながら適宜仕様に関してやりとりが発生します。
システムが完成するとシステムテストに入り、実証実験を行います。問題がなければ本番導入に移行し、問題があれば修正とテストを繰り返します。
Amazon Rekognition
Amazon RekognitionはAmazonが提供するAWS(Amazon Web Services)の画像・動画分析ツールです。すでに数千万枚を超える画像によって機械学習しているため、多くの場合追加の学習なしで画像や動画を分析できます。料金も非常に安く設定されているため、顔認証やオブジェクト検出などの幅広い分析を安価に実施したい企業におすすめです。
導入
システム開発が終了したり、すでにシステムが完成されている場合は現場への導入になります。担当者による運用のレクチャーや場合によってはシステムの管理方法をレクチャーしてもらい、注意点なども社員全体へ教育してもらうことが一般的です。
アフターサポート
顔認証システムの導入が終わってからも、システムに関する質問、イレギュラーなユースケースに関する問い合わせやシステムエラーなどの対応依頼は必ず発生します。エラーや動作不具合を感じた際はシステム改修などが発生することもあるため、サポート体制がしっかりしている必要があります。
顔認証システム導入の注意点
顔認証システムを導入する際にいくつか注意点が存在します。代表的な注意点を詳しく解説していきます。注意点を理解しておくことで、導入時のトラブルやイメージとの相違を無くすことができるため、ぜひ参考にしていきましょう。
認証精度は100%ではない
顔認証システムは画像認識技術などを利用しているため、どれだけ高精度でも精度が100%になることはありません。特に製品による顔認証の精度は差が大きいです。利用登録できる人数の範囲や、利用条件などによって有用かどうか判断が必要となります。
人間の顔は経年変化するため変化に耐えられるものか、メガネ・マスクの着用は問題ないかなど、事前に顔認証に影響しうる要因はたくさん存在します。また、システムが保存するデータ量も多くなればなるほど認証にかかる時間や再学習による精度変化の影響も発生することもあります。どの範囲までカバーできている製品かどうか確認しておくことがおすすめです。
利用環境によって差がでることもある
顔認証システムには利用環境で差が出ることもあります。野外のような日の当たり方が時間によって変化しやすく、人の顔を判断しにくい場合や、暗い場所だと認証精度が落ちるなどシステムが得意とする条件が限られていることもあります。
プライバシーに配慮する
顔認証システムは個人の顔に関する情報を活用しているため、データ保護をはじめとするプライバシーには十分に配慮する必要があります。個人情報保護法では顔認証に必要な顔に関するデータは個人情報として見なされるため、法的にも配慮しなければいけません。
利用時には必ずデータ利用の目的で認証する対象の本人に通知・公表したうえで写真を撮影したり、利用目的以外でのデータ利用したりしないことが義務付けられています。また、退職者や認証の対象からはずれた人のデータの削除を速やかに行うこと、データの保護期間を決めることなども必要です。
顔認証システムの大敵ディープフェイク対策
顔認証システムは顔に関するデータを利用しているため、ディープフェイク攻撃に対する対策をしておく必要があります。ディープフェイク技術の悪用により、なりすましや不正アクセスのリスクが高まっているためです。ここでは、最新の動向を踏まえた具体的な対策方法を紹介します。
関連記事:「ディープフェイクとは?問題点・課題・ビジネス利用方法、使われるAI技術徹底解説!」
ライブネス検知機能の導入
ディープフェイク攻撃を防ぐ上で有効なのがライブネス検知機能です。これは、カメラに映る顔が生身の人間のものであるかを判定する技術で、目の動きや表情の変化などを分析します。
多くの顔認証システムにライブネス検知機能が搭載されています。導入時には、この機能の有無を確認することが重要です。
多要素認証の併用
顔認証に加えて、パスワードやワンタイムパスワード(OTP)、ICカードなどの他の認証方式を組み合わせる多要素認証も有効です。仮に顔認証が突破されても、他の認証方式があることで不正アクセスを防げます。米国立標準技術研究所(NIST)のガイドラインでも、多要素認証の採用が推奨されています。顔認証システムの導入時は、他の認証方式との連携可能性についても検討しましょう。
AIによるディープフェイク検知
ディープラーニングを用いてディープフェイク画像や動画を見分けるAIの開発が進んでいます。このようなAIを顔認証システムに組み込むことで、ディープフェイク攻撃をリアルタイムで検知・遮断できます。提供企業に、最新のディープフェイク検知技術の導入状況を確認することをおすすめします。
従業員への教育と注意喚起
技術的な対策に加えて、従業員教育も欠かせません。ディープフェイク攻撃の手口や、怪しいアプリ・サイトへのアクセスを控えるなどの注意点を、定期的に伝えることが重要です。セキュリティ意識の高い組織文化を作ることが、ディープフェイク対策の基盤になります。
最新動向のモニタリングと対策の更新
ディープフェイク技術は日進月歩で進化しているため、定期的に最新動向をモニタリングし、対策を更新していく必要があります。提供企業との定期的な情報交換や、セキュリティ専門家によるアドバイスを受けることで、常に最適な対策を講じられます。システム導入後も、セキュリティ対策を継続的に見直していくことが肝要です。
顔認証システムについてよくある質問まとめ
- 顔認証システムとは何ですか?どのような仕組みで動作しますか?
顔認証システムとは、カメラに映った人物の顔の特徴をAIが分析し、事前に登録された顔画像と照合することで本人確認を行うシステムです。顔のパーツの位置や形状など、各人に固有の特徴を画像認識技術で読み取ることで認証を実現します。主にビジュアル方式(2D認証)とIR方式(3D認証)の2種類の認証方式があります。
- 顔認証システムを導入する際の流れを教えてください。
顔認証システム導入の一般的な流れは、以下の6つのステップです。
- 社内での導入検討と合意形成
- 顔認証システム開発・提供企業への問い合わせ
- 企業との打ち合わせ
- システム開発
- 導入
- アフターサポート 各段階で、予算や必要な機能、導入事例、カスタマイズ性など、自社に適したシステムを選定するためのポイントを確認しながら進めることが重要です。
- 顔認証システムを導入する際の注意点は何ですか?
顔認証システム導入時の主な注意点は以下の3つです。
- 認証精度は100%ではないこと。
環境や条件によって認証精度に差が出る場合があります。 - 個人情報保護法に基づき、プライバシーに十分配慮すること。
利用目的の通知や、不要になったデータの削除などが必要です。 - ディープフェイク攻撃への対策を講じること。
ライブネス検知機能やAIを用いたディープフェイク検知、多要素認証の併用など、多層的な対策が求められます。 こうした点に留意しつつ、自社に最適なシステムを選定し、運用体制を整えることが肝要です。
- 認証精度は100%ではないこと。
まとめ
今回は顔認証システムについて技術や仕組みの概要から、実際に導入する際の流れや導入した際の注意点を解説してきました。顔認証システムは人の顔のパーツや配置の特徴を画像認識の技術を利用して学習し、実際にカメラに映っている人物と照合し認証するシステムとなります。
現在はオフィスや空港での導入事例も増えてきており、身近なものになりつつあります。しかし、プライバシーへの配慮や認証精度の差がシステムによって大きいこと、ディープフェイク問題など注意すべき点もあるため、
AI Marketでは
AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp