製造業DXとは?スマートファクトリーとの違いは?メリットや実現のためのステップを徹底解説!
最終更新日:2026年09月27日
記事監修者:森下 佳宏|BizTech株式会社 代表取締役

DXは「デジタルによる社会変革」といわれており、単なるデジタル化ではなくデジタルによってビジネスモデルや組織を大きく変えることが本質です。近年、人材不足や国内外での価格競争が激しくなる製造業においても、DXの重要性が高まっています。
そこで、この記事では、製造業DXについての概要やスマートファクトリーとの関連性、メリットなどを解説していきます。記事の後半では、製造業DXの事例についても紹介していきます。製造業でDXを推進していきたい方、興味がある方は是非最後までご覧ください。
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目次
製造業におけるDXとは
製造業DXとは、IoTやAIなどのデジタル技術とデータを活用し、製品の設計・製造から調達・販売・アフターサービスまでの業務や事業のあり方を変えることです。関連する業務の流れには、以下があります。
- 製品設計や工程設計、生産などの連鎖である「エンジニアリングチェーン」
- 受発注から生産管理、流通・販売、さらにはアフターサービスまでの連鎖である「サプライチェーン」
製造業DXを進めることで、以下のことが実現できます。
- アナログ作業をデジタル化して効率の良い生産体制をつくる
- 製造過程をデータ化して製造ミスを削減する
- 設備や生産計画を見直し、多品種生産への対応力を高める
- 繁閑期の予測をして最適なリソースの分配をする
製造業でDXを進めるためには「データ基盤とAI活用」と「IoTの活用」が重要になります。
製造業DXに必要なデータ基盤とAI活用

製造業DXでは、製造過程に加え、受注からアフターサービスまでの情報を収集・共有し、活用することが重要です。例えば、設備の稼働データや生産実績を蓄積すれば、生産量の調整や品質改善などに役立てられます。
経済産業省は、製造現場の加工・稼働データなどをデータ基盤として整備し、AIモデルを組み合わせた製造プラットフォームの開発を支援する「製造AX拠点」構想を示しています。データを集めるだけでなく、AIによる分析結果を現場の改善に活かす考え方です。
一方、AI・デジタル技術の活用には、知識やノウハウの習得、人材の確保といった課題があります。データ基盤とともに、現場で活用できる体制を整える必要があります。
製造業DXとIoTの活用
製造業DXを進めるためにはIoTの活用が効果的です。IoTはInternet of Thingsの頭文字を略した用語です。日本語に訳すと「モノのインターネット」を意味し、設備やデバイスとインターネットをつなぐ技術を意味します。
IoT技術を活用することで、様々な過程で情報を収集することで「見える化」できます。製造過程だけでなく、販売した製品でも情報を見える化すれば、効率的な生産だけでなく、アフターフォローの充実にも繋がります。
こちらで工場のIoT化事例、メリット、導入ステップを詳しく説明しています。
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スマートファクトリーと製造業DXとの関係性
製造業DXと聞くとスマートファクトリーのことでは?と思われる方もおられるかもしれません。製造業DXは製造業のビジネスモデルを変えることであり、工場の生産体制を変える意味ではスマートファクトリーこそが製造業DXで目指す姿の1つといえるでしょう。
スマートファクトリーとは、機械と基幹システムや製造管理システムなどがネットワークでつながり、データの可視化・デジタル化により生産性が改善した工場のことで、主にエンジニアリングチェーンの最適化を目的としています。
こちらでスマートファクトリーの事例や導入デメリットを詳しく説明しています。
製造業DXは工場での製造部分だけに関わらず、受注から販売、アフターフォローなど企業活動全体を変えるのが目的です。スマートファクトリーは製造業の中核である製造部分のDXと捉えることができます。
重要な関連用語であるファクトリーオートメーションは、工場における加工や組み立て作業、運搬管理、管理を自動化することが目的で、より詳細な工程をターゲットにしています。
こちらでファクトリーオートメーションの概要、メリット・デメリットを詳しく説明しています。
日本国内の製造業でDXがなかなか進まない3つの理由とは?
製造業でDXがなかなか進まない場合があります。なぜDXが進まないのか解説していきます。
データ活用の遅れ

2026年版ものづくり白書では、一連の製造プロセスで何らかの目的でデータを取得している事業者は66.0%です。一方、取得したデータを活用している事業者は51.4%、活用によって効果を得た事業者は43.9%にとどまります。
データを集めても、工程をまたいで活用し、改善の成果につなげることには課題が残っていることがわかります。また、企業間のデータ連携も、2年前からほぼ進展していません。
関連記事:「製造業のデータ分析でAIはどう使える?4Mの軸で整理する手法の選び方と成功事例を解説!」
属人的実態と人手不足
いま日本の製造現場では、情報共有や後進の育成などは後回しになりがちになり、業務の属人化が深刻になってしまいます。日本の製造業界は優秀な現場の人材を中心に業務が展開されることが多く、作業内容や現場の情報が優秀な人間の周りに集まりやすくなる傾向があります。
また、目に見えて利益に直接結び付く成果が評価され、マニュアル作成や後進の育成といった仕事を人事評価であまり重視できていない課題も顕在化しています。そのため、企業全体でノウハウが共有しにくい環境になってしまう可能性もあります。
投資額が大きい
DXを進める上でIoT機器やAIといった設備の導入が必要になります。特に製造業DXを進めるためには、工場全体の機械やレイアウトなどを大幅に刷新することも考えられます。
近年の製造業を取り巻く経済状況は厳しくなっており、新たな設備に投資するだけの資金を準備できない可能性があります。また、世界的に「脱プラ・脱炭素」が求められてきており、そのための設備投資が必要になってくることも考えられます。こうした設備投資の額が大きくなることで、投下できる資金が足りずにDX化が進まない状況があります。
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製造業DXで期待できる効果とは?

製造業DXがなかなか進まない課題はありますが、一方でDXが進んだときは以下のような効果が期待できます。
- 人手不足の解消
- QCDの最適化
- 生産性の向上
それぞれを解説します。
人材不足の解消
製造業DXの効果のひとつに深刻化している人手不足の解消があります。例えば、品質検査の自動識別やAIを活用した自動化など、従来は人がおこなっていた業務の多くを機械化・自動化できます。
製造業DXを進めることで、ヒトが行う業務を高いレベルで機械に全て任せることで人手不足の解消を行うことができます。また、製造業DXにより労働環境の改善につながり、従業員の離職を防ぐこともでき、さらなる人手不足に陥ることを事前に防げます。
QCDの改善
製造業DXを実現した場合、以下のようにQCDを改善することができます。
- Q:クオリティ・・・自動化によるヒューマンエラーの削減やデータのフィードバックによる品質の向上
- C:コスト・・・省人化による人件費削減や受注状況のデータ化から需要予測することでのムダの削減
- D:納期・・・AIによる作業スピード向上や長時間の機械稼働による短納期化
製造業DXにより、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンをデータ化することでQCDの改善に繋がるでしょう。
生産性の向上
製造業DXでは、製造の全自動・半自動化の実現だけでなく、作業手順の見える化、事務的な業務や販売データの見える化などが実現できます。製造のみならず、事務作業やマーケティングデータの見える化によりあらゆる作業で効率化を図ることができ、生産性向上に繋がります。
また、製造業の生産性を低下させる以下のようなロスを減らすこともできます。
- ヒューマンエラー
- 不良ロス
- 生産停止ロス
単純なヒューマンエラーから、機械の故障などが原因での生産停止を減らすことや生産性が低下するのを防ぐことも可能です。
製造業DX実現のための5ステップ

製造業DX実現のためのステップは以下です。
1.現状の課題を把握する
2.DX技術とのマッチングを行う
3.業務効率化に取り組む
4.効果の測定と見直しを行う
5.ビジネスを変える
それぞれのステップを解説します。
現状の課題を把握する
製造業でDXを推進するためには、まず現場の業務やシステムなど現状抱えている課題や問題点を洗い出し、明確にすることが重要です。課題が明確になった上で、「どう変わるのか」という具体的なイメージを共有することで、現場と協力してDXを進めることができます。
把握した課題を解決するためにどのようなIoTやAIなどのデジタル技術を活用し、どれくらいの効果が出るのかを試算しておくことも重要です。製造業DXの目標は組織やビジネスの変化であり、製造部門だけでなく、経営者や各部門の管理職、管理部門など組織全体で課題を共有して取り組んでいきます。
DX技術とのマッチングを行う
洗い出した課題に対し、どのデジタル技術(AI、IoTなど)が最適な解決策となるかを試算し、決定します。この段階で専門家の視点が重要となります。
例えば、生産ラインでのボトルネックとなる工程がある場合、AIを活用した予測保全が有効です。また、在庫管理や製品のトレーサビリティが課題であれば、IoTとクラウドを組み合わせたリアルタイムな情報共有が解決策となるでしょう。
これらの試算をもとに具体的なDXの方向性を示すとともに、効果予測も行います。
業務効率化に取り組む
DXによって業務が突然大きく変わってしまうと、現場は混乱してしまう場合があり、業務効率が低下する可能性があります。 DXを進めていくときは、まず小さな業務から段階的に業務効率化を行っていくことが有効です。
どのくらい効率化できたかを把握するための効果測定を行うなど、効果を可視化することで、つぎのDXのための設備投資も有効に行うことができ、DXが頓挫することなく段階的に進めていくことができます。
効果の測定と見直しを行う
DXの各ステップにおける効果を定量的に測定し、結果を基に次のステップへの設備投資や改善点を見直します。
例えば、AIを導入した予測保全が実現した場合、その結果を機器の稼働率の向上や故障回数の減少といった具体的な数値で評価します。また、IoTを活用した在庫管理が行えるようになった場合、在庫の適正化によるコスト削減量やリードタイムの短縮等を数値で把握します。
これらの数値を基に、次の投資や取り組みの方向性を決定することで、効率的かつ効果的なDX推進が可能になります。
ビジネスを変える
DXの目標は組織やビジネスの変化です。業務の効率化で効果が出た後はビジネスを変えていきます。新たなサービスやビジネスモデルを変えて、新たな価値の創造や収益向上を図っていきます。
AIや基幹システムを活用して、部門を横断した情報共有を行い、顧客ニーズの変化にすぐ対応できる製造体制を作ることや、収集したデータをもとに新製品や新サービスを開発するというDX本来の目的を達成することができます。
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AIを活用した製造業DX事例紹介
現代の製造業DXを実現するためにAIの活用は欠かせません。以下で、AIを活用して製造業DXを実現した成功事例を解説します。
関連記事:「製造業のAI活用事例!生産性向上・工場自動化は可能?導入メリットや課題、相談事例も紹介」
設計から生産までを改革する生産システム(オークマ)

NC工作機械を主力製品として製造販売を行うオークマ株式会社は、自社のNC工作機械の設計から生産までのあり方を改革する観点から着想を得て、次の3つを統合した生産システム「IT Plaza」を構築しました。
- 設計から製造までデータを一気通貫させて行うコンカレント・エンジニアリングによるエンジニアリング・チェーン連携
- 変動する生産計画への柔軟な対応のための生産管理情報をつなぐサプライチェーン連携
- 人の入力や操作の蓄積と再利用のためのナレッジマネジメント
これにより製造のリードタイムの短縮や生産効率の最大化、技術・ノウハウを蓄積・共有して活用することを可能としました。
参照:オークマ|オークマ創業120年サイト
参照:オークマ|オークマの技術 Okuma Smart Factory
工場IoTをサプライチェーンにも応用(トヨタ)

トヨタ自動車株式会社では、工場横断の共有プラットフォームを構築しました。トヨタでは3D CADデータや試作時の特性データなど個々の情報のデジタル化を行い、技術開発・生産準備に成果を上げてきました。しかし、実際の製造や顧客から得たデータを技術開発へのタイムリーなフィードバックができていない課題がありました。
そこで「工場IoT」として段階的投資を行い、工場横断の共有プラットフォームを2~3年かけてつくりました。製造部門ではデジタル技術を使って、各社員が小規模なテーマを立案し・実行し、効果を出すボトムアップの人材の育成にも力を入れました。
トヨタ自動車ならではのカンバン方式の考え方をデータの収集や蓄積にも取り入れて「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」取り出せるようにしたのが特徴で来てです。結果として、効率的なデジタル化を実現し、費用対効果を出すことに成功しました。
この「工場IoT」で得られた成果をもとに、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンを含むデジタル化への適用を打ち出し、品質向上や商品力向上、法規への対応等、付加価値向上に関わるデジタル化にも着手しています。
関連記事:「AIは自動車製造業界・自動車部品業界をどう変えている?活用方法・メリット・事例を徹底解説!」
参照:トヨタシステムズ|IoTプラットフォームによる産業と技術革新の基盤づくり
AIを活用した需要予測システムの導入を目指す(三井化学)

三井化学株式会社と日本電気株式会社が連携して開発したデータサイエンスプロセス全体を自動化するAIソフトウェア「dotData」を活用して、市況に左右されやすい製品の価格変動を予測をする実験を実施しました。従来は業務担当者の知見や経験に基づいて、過去の価格や為替などの週単位に集計されたデータを用いて製品の需要動向を予想してきました。しかし、近年、市場ニーズが急激に変化しており、需要動向予想が難しい課題がありました。
そこで、過去数年にわたる日次および週次の在庫データや工場稼働率、販売数量などの多様なデータをAIで分析し、無数の特徴量候補から有効なものを自動抽出する高精度な価格の予測モデルを構築しました。これにより、翌月の当該製品の高精度な需要予測が可能となりました。
自社の販売計画立案や、計画に基づいた調達・生産を行うことで、在庫金額を数億円規模で削減することが期待できます。今回の実証実験を踏まえ、今後、適正な調達・生産・販売による利益の向上と価格変動による損失回避に貢献するAIを活用した需要予測システムの本格導入を目指します。
参照:三井化学|三井化学、NEC・dotDataと連携し、AIを活用した市況商品の価格変動予測の実証実験を実施
製造業DXについてよくある質問まとめ
- 製造業DXとは?
製造業DXとは、IoT技術やAIなどのデジタル技術を駆使して変えることです。製造業DXを進めることで以下のことが実現できます。
- アナログ作業をデジタル化して効率の良い生産体制をつくる
- 製造過程をデータ化して製造ミスを削減する
- 生産ラインを増設しなくても複数種類の製品を製造できる
- 繁閑期の予測をして最適なリソースの分配をする
- 製造業DXで期待できる効果は?
製造業DXが進むと以下の効果が期待できます。
- 人手不足の解消
- QCDの最適化
- 生産性の向上
まとめ
製造業DXは、製造業のビジネスや会社組織全体を変えます。スマートファクトリーと混同される場合もありますが、スマートファクトリーは製造部門でのデジタル化を進めていくものに対して、製造業DXでは製造部門に限らず、サプライチェーンも含めたデジタル化を行っていくことに違いがあります。
製造業DXは、受注から生産、販売・アフターサービスなどをデジタル化することで、付加価値の向上や会社全体の生産性の向上、人材不足への対応など様々な効果が見込めます。
DXを進めていく上では、解決すべき課題を抽出し、IoTやAIの技術を活用して解決していきます。IoTで取得したデータをAIで分析し、その情報を組織全体で横断的に共有、活用することで、製造部門のみならず管理部門や営業部門等と連携することで、付加価値の向上や生産性の向上に繋げることができます。

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