空間コンピューティングデバイスのタイプや機種、選び方を徹底解説！

空間コンピューティングは、現実空間そのものをインターフェースとして活用し、で直感的に行える次世代の技術として注目を集めています。近年は、AIとの統合によって実用性が飛躍的に高まり、企業への導入を検討するケースも増えています。

その中心となるのが、スマートグラス、VRヘッドセットといった空間コンピューティングに対応したデバイスです。

本記事では、空間コンピューティングを取り入れたデバイスの主要な3タイプの特徴と、代表的な機種、選定の注意点を紹介します。

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空間コンピューティングデバイス3タイプとは？

空間コンピューティングを実現するデバイスは、大きく以下の3種類に分類できます。

• スマートグラス型
• ヘッドセット型
• ハンディ型

それぞれ可視性・没入感・操作性が異なるため、どの領域で活用したいかによって最適なデバイスは変わります。ここからは、各デバイスの特徴について解説します。

スマートグラス型

スマートグラス型は、日常的な眼鏡に近い軽量設計と、現実世界の視界を妨げないシースルーディスプレイが特徴のデバイスです。多くはAR（拡張現実）に特化しており、視界上に必要な情報を重ねて表示できることから、視線を外せない状況や現場に向いています。

そのため、製造・物流・建設など、ハンズフリーでの作業が求められる現場で効果を発揮します。作業プロセスをリアルタイムで共有できるため、新人教育の効率化や、トラブルシューティングの迅速化にも適しています。

軽量の設計になっているため長時間利用しやすく、フィールドサービスや設備点検など、連続的な情報参照が必要な業務への導入も進んでいます。

スマートフォンやPCと接続して使用するタイプと、単体で動作するスタンドアロン型があります。

ヘッドセット型に比べて視野角が狭く、搭載できるセンサーやプロセッサの性能に制約があるため、高度なMR機能（現実のオブジェクトとの複雑な相互作用など）の実現は難しい傾向があります。

ヘッドセット型

ヘッドセット型は主に頭部に装着するゴーグル型で、現実世界を完全に遮断し、没入型の仮想空間を構築できるデバイスです。

Apple Vision Proに代表され、高性能プロセッサやバッテリーを内蔵しやすく、単体で高い処理能力を発揮します。また、高解像度のディスプレイや複合的なセンサー群を搭載しやすいため、MR（複合現実）機能やVR（仮想現実）機能の両方を高いレベルで実現できます。

高度なレンダリング性能を備えた機種では、空間構造・機器配置・動作環境をリアルに再現できるため、現場を訪れずに事前検証を行うことが可能です。

ビジネスにおいては、安全教育や技能習得が要求される領域において価値を提供します。

• 製造業：危険な作業の仮想体験
• 物流：フォークリフトの操作トレーニング
• 建設業：現場環境の事前確認

これらを実施することで、事故防止や教育コストの削減が可能になります。

ただし、重さや装着感から長時間の連続使用には適さない場合があり、現場作業での広視野角の確保が課題となることもあります。

ハンディ型

スマートフォンやタブレットを利用した空間コンピューティングの初期形態です。

特別なハードウェア導入が不要で、導入コストが最も低いです。ARKit (Apple) や ARCore (Google) などのプラットフォームにより、高性能なSLAM（自己位置推定とマッピング）が利用可能です。

ハンズフリーではないため、作業中に利用することは難しく、真の空間コンピューティング体験（手を自由に使いながらデジタルオブジェクトと相互作用する）は提供できません。

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スマートグラス型の空間コンピューティングデバイス4選

スマートグラスの代表的なデバイスは、以下の4つです。

Ray-Ban Metaグラス

Ray-Ban Metaグラスは、メガネブランドRay-Banのデザイン性とMetaのAI技術を融合した次世代スマートグラスです。

一般的なメガネと変わらない見た目でありながら、音声アシスタント、画像認識、リアルタイム翻訳などを搭載しており、装着したままで操作が可能です。

フレーム内にはカメラとマイクが搭載されており、ハンズフリーで撮影・通話・音楽の再生ができる点が特徴です。日常での用途にも使いやすく、音声コマンドだけで瞬時に操作できる利便性が支持されています。

2023年10月17日には第2世代がリリースされるなどモデルも進化しており、欧米諸国で人気を集めています。

Meta Aria Gen 2

Meta Aria Gen 2は、Metaが開発する第2世代スマートグラスで、研究用途を目的に設計されています。従来型のスマートグラスの延長線ではなく、空間認識、動作把握、生体データ収集など多様なセンサーとオンデバイスAI処理を統合しています。

Aria Gen 2はセンサースイートや装着性が向上しています。約74〜76gの軽量設計となっているのに加え、顔の形状に合わせやすいよう8通りのサイズから選べるため、長時間の装着と快適さを両立しています。

Aria Gen 2の強みはオンデバイス認識にあります。搭載されたコプロセッサ上でSLAM、視線追跡、3Dトラッキング、音声認識などの処理がリアルタイムに行われるため、クラウドに頼らず低遅延での利用が可能です。

視線、手の動き、環境変化、生体情報などを統合的に捉えることで、以下のような多領域の研究開発での応用が想定されます。

• ロボティクス研究
• 空間認識AIの開発
• AR／MRの次世代UI研究

ただし、Aria Gen 2は研究者・開発者向けの提供が前提となっており、一般向けに広く流通しているわけではありません。

Microsoft HoloLens 2

Microsoft HoloLens 2は、現実空間と仮想情報を融合させるMRを実現するデバイスです。スタンドアロン型のヘッドセットとして設計されており、パソコンと接続せずに単体で動作する点が特徴です。

HoloLens 2の中核には、カスタム設計されたホログラフィック処理ユニット（HPU 2.0）と、Qualcomm Snapdragon 850プラットフォームがあり、リアルタイムで空間マッピングやジェスチャー認識などを行います。

これにより、ユーザーは直感的な操作が可能です。

加えて、HoloLens 2は以下のような多数のセンサーとインターフェースを備えています。

• リアルタイムでの位置／空間認識
• 深度センサーによる環境把握
• 音声コマンド
• 手や目の動きに応じた操作認識

これにより、ホログラムを物理空間に固定したり、ユーザーの視線や手の動きに合わせて反応させたりと、高度なMR体験を実現できます。

産業分野においても、教育・医療、建設、製造、設備保全など幅広い分野での活用が期待できます。

Halo

米国のスタートアップBrilliant Labsが開発したHaloは、軽量かつ先進的なAIスマートグラスとして注目されているデバイスです。重さは約40グラムと軽く、通常のメガネとほぼ同じ感覚で装着できる点が特徴です。

Haloのディスプレイは、以下のようなセンサーを内蔵し、視覚と聴覚に加え、動作や環境の変化まで感知可能なマルチセンサー設計となっています。

• 骨伝導スピーカー
• デュアルマイク
• 低消費電力の光学センサー
• 慣性計測装置（IMU）

また、音声対話型AIアシスタント「Noa」が設計されており、複数のAIモデルを組み合わせて活用できます。

バッテリー駆動時間は最長で約14時間と、1日中活用できるため、産業分野でも導入は可能です。

ヘッドセット型の空間コンピューティングデバイス3選

ゴーグル型デバイスは、広い視野と高精細な表示が可能で、高度な体験を提供します。ここでは、代表的なデバイスは以下の3つです。

Apple Vision Pro

Apple Vision Proは、デジタルコンテンツと現実世界をシームレスに統合する、空間コンピューティング向けの最先端ゴーグル型デバイスです。高解像度ディスプレイやセンサー、プロセッサーを備え、直感的な空間体験を可能にします。

Apple Vision Proは4Kテレビを超えるピクセル数を持つディスプレイを搭載し、合計で約 2,300万ピクセルの高精細な映像を視界に表示します。これにより、3Dオブジェクトやウィンドウを、まるで現実空間に浮かばせるような感覚を実現します。

さらに、12台以上のカメラと多種センサーを内蔵しており、以下機能に対応します。

• リアルタイムな空間マッピング
• ハンドジェスチャー認識
• 目線トラッキング
• ビデオパススルー

操作インターフェースでは、コントローラーを必要とせず、目で見る・指をつまむようなピンチ・声といった直感的なジェスチャーでUI操作ができます。パソコンのような作業性を空間上で再現できます。

仮想空間と現実を融合させた新しい働き方や、コンテンツ体験を模索する企業・開発者にとって、Apple Vision Proは空間コンピューティン」の可能性を広げるモデルとして、今後の標準となり得るでしょう。

XREAL Air 2 Ultra

XREAL社のAir 2 Ultraは、ARグラス市場における最新鋭モデルの一つで、高次元の拡張性を実現させたデバイスです。通常のメガネに近い装着感を維持しつつ、空間コンピューティング用途への応用も想定された仕様となっています。

SONY製のmicro-OLEDを採用し、動画や仮想画面の表示がクリアかつ鮮明です。映像鑑賞だけでなく、仮想モニターとしての活用や、ARコンテンツの表示など幅広い用途に適しています。

また、6DoF（6自由度）トラッキングに対応しており、ユーザーの前後・左右・上下の移動や回転を含めた空間での位置および動きを正確に追跡できます。体の動きまで反映する没入感を実現します。

加えて、USB-C経由で PC・スマートフォンなどさまざまな機器と連携可能で、仮想モニターや多目的ディスプレイとして柔軟に活用できます。

Magic Leap 2

Magic Leap 2は、現実世界に高精度な拡張現実（AR）コンテンツを重ね合わせられる、法人・エンタープライズ向けのゴーグル型デバイスです。軽量設計と強力な処理能力を両立し、幅広い分野への実装が進んでいます。

Magic Leap 2の特徴として挙げられるのは、視覚体験です。

デバイスのディスプレイは片目あたり1440×1760ピクセルの高解像度で、対角最大70度の広視野角を備えています。そのため、滑らかで自然な映像描画が可能です。

また、没入型ARだけでなく、現実と仮想を融合するためのダイナミック・ディミング機能（明るい環境下でもコンテンツを見やすくする遮光・調光機能）を備えており、照明条件の異なる現場でも安定した視認性を確保できます。

操作面では、ハンドトラッキングやアイトラッキングに対応しており、自然なジェスチャーで仮想オブジェクトを操作できる点が強みです。手でつかむ・回転させるといった直感的なインターフェースが可能で、複雑なARシーンの操作が可能です。

Magic Leap 2は以下のような用途に適しています。

• 建築・土木・製造現場：施工前の検証
• 医療や設備保全：手術支援、点検、メンテナンス工程でのARガイド
• 教育・研修分野：実践的トレーニングおよび技能習得
• 遠隔協業／支援、複数拠点間での3Dモデル共有・可視化

Meta Quest 3

Metaが開発したMeta Quest 3は、スタンドアロンで動作する最新世代のVR／MRヘッドセットです。高性能プロセッサーと高解像度ディスプレイの組み合わせで高い没入感を実現しており、仮想空間での体験から複合現実（MR）までカバーします。

最大の強みはMR体験です。

ヘッドセットに搭載されたカメラやセンサーによって、周囲の現実世界をカラーで取り込みつつ、仮想のオブジェクトを重ね合わせるカラーパススルー機能を備えています。これにより、現実と仮想を融合させた体験が可能です。

加えて、処理能力には最新のSnapdragon XR2 Gen 2を採用しており、グラフィックや処理性能が大幅に向上します。そのため、複雑な3Dシーンや動きにも対応可能です。

これにより、ゲーム、シミュレーション、トレーニングといった用途でも高いパフォーマンスを発揮します。

また、ヘッドセットとコントローラーだけで起動できるため、PCや外部機器を必要としないオールインワンな利便性も特徴です。ケーブルに縛られず自由に動けるため、場所を問わずVR／MR体験ができます。

趣味用途だけではなく、教育、トレーニング、プロトタイピングなど多様な用途で活用できるオールラウンダーなデバイスです。

HTC VIVE Focus Vision

HTC VIVE Focus Visionは、スタンドアロンでPC接続が可能なハイブリッド型のVRヘッドセットです。

2448×2448ピクセルの高解像度を備え、約5Kの解像度を実現し、滑らかで広視界な映像体験を提供します。プロセッサにはQualcomm Snapdragon XR2を搭載しており、高負荷な3Dレンダリングや多センサー処理も可能な性能を備えています。

また、トラッキングとセンサーも充実しており、インサイドアウト方式による6DoFの空間追跡に加え、アイトラッキングや深度センサーを備えています。前面にはカラーカメラによるフルカラーパススルーも搭載されており、現実空間の映像を取り込みつつ仮想オブジェクトを重ねるMR体験も可能です。

加えて、ヘッドセットは単体のスタンドアロンモードだけでなく、PCと接続することでフル機能のPC-VR環境も構築可能です。Wi-Fi／Bluetoothはもちろん、USB-Cでの有線接続もサポートしており、PCベースのVRソフトウェアや設計／開発用途にも対応できます。

そのため、HTC VIVE Focus Visionは、ビジネス用途にも適した、非常に応用範囲の広いVRヘッドセットです。

PlayStation VR2

PlayStation VR2（PS VR2）は、PlayStation 5と組み合わせて使う、家庭用／コンシューマ向けの次世代VRヘッドセットです。2023年2月に発売され、初代機から大幅な性能強化が施されたことで、没入感と使いやすさを実現しています。

没入感のある描画はもちろん、トラッキングと操作性も優れています。ヘッドセットとコントローラーの動きは、外部センサー不要のインサイド-アウト方式で捉えられます。

また、内部にはIR カメラが備わり、アイトラッキングによる視線ベースの操作や、フォービエイテッドレンダリング（視線中心のみ高精度レンダリング）を活用した最適化が可能です。

PlayStation VR2はPS5本体にケーブル一本繋ぐだけのシンプル構成で、プロセッサーユニットや複雑な設定は不要です。また、3Dオーディオと内蔵マイクも備わっており、没入環境に必要な音声・空間音響も整っています。

一方で、コンシューマ向けに最適化されているため、業務用途というよりエンターテインメントや家庭でのVR体験を重視して設計されています。業務向けの設計レビューや、シミュレーションに使うには適切なVRソフトウェアや拡張機能が必要です。

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空間コンピューティングデバイス選定の注意点

以下の3つの視点を持つことで、より本質的な意思決定が可能になります。

没入感 vs 携帯性・安全性のトレードオフ

Vision Pro, Quest 3など、高没入感・高性能なMRヘッドセットは高度なトレーニングや複雑な共同作業など、高い再現性と没入感が必要な用途に適しています。

一方、高携帯性・安全性が特徴のARグラスは、現場でのハンズフリー作業や長時間の情報参照など現実世界の視認性と軽量性が求められる用途に適しています。

自社の利用シーンで「完全に視野を遮断しても問題ないか」「歩き回りながらの使用か」を明確にしましょう。

エコシステムと開発の容易性

既存のMicrosoft製品やAndroidベースのモバイルソリューションとの連携を重視する企業は、Microsoft/Android XRを選択肢に加えるとよいでしょう。

一方、セキュリティ、デザイン、既存のAppleエコシステムとの連携を重視する企業はApple visionOSが最右翼候補となるでしょう。

コストを抑え、広範なゲーム・消費者向けコンテンツを活用しつつ、エンタープライズ機能も活用したい企業には、Meta Horizon OSがおすすめです。

自社の既存ITインフラや、開発リソース（使えるエンジニアのスキルセット）を考慮し、最もスムーズに開発できるプラットフォームを選ぶことが重要です。

コストと導入効果

初期導入コスト（デバイス単価）だけでなく、コンテンツ開発コスト、運用・保守コスト、そして何より導入によって削減されるコストや生まれる収益（ROI）を比較検討することが不可欠です。

例えば、高価なMRヘッドセットであっても、熟練者の出張費を削減し、OJT時間を半分にできるなら、その投資対効果は計り知れません。

空間コンピューティングのデバイスについてよくある質問まとめ

まとめ

空間コンピューティングデバイスは、スマートグラス・ヘッドセット型のいずれも進化が著しく、用途に応じて使い分けられるようになりつつあります。

空間コンピューティングは、空間そのものをインターフェース化するという新たな業務設計を支える技術です。今後AIとの連携が進むことで、企業活動の幅広い領域で空間コンピューティングの価値は一層高まっていきます。

空間コンピューティングを搭載したデバイスの選定や業務への導入手順でお悩みの場合は、ぜひ一度、専門家の知見をご活用ください。