FAQシステムとは?チャットボットとの違い・機能・導入メリット・生成AI搭載システムの活用事例を徹底解説!
最終更新日:2024年08月26日
顧客や社員からの問い合わせ対応の業務工数を削減したい、とお考えの企業様も多いのではないでしょうか。そんな中、サポート担当者の業務負担軽減やナレッジの属人化解消に役立つツールとして注目を集めているのが、今回紹介するAIを活用した「FAQシステム」です。
最新のAI技術、生成AI技術を搭載したFAQシステムでは、日本語の自然な質問を理解し、適切な回答を自動生成することが可能になりました。ある企業では、AI搭載FAQシステムの導入により問い合わせ数が47%も減少したという驚くべき成果が報告されています。
本記事では、
FAQシステムの導入を検討中の企業担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
FAQシステムとは?
FAQ(Frequently Asked Questions)システムとは、顧客や従業員からのよくある質問を集約し、効率的に回答情報を提供するシステムです。Q&Aシステムと呼ばれることもあります。
ユーザーがシステム上の検索欄で解決したい疑問を入力することで、システムに登録されている回答が表示される仕組みです。
FAQシステムを導入することで、企業内のサポート業務の負担が軽減されるほかに、顧客満足度の向上にもつながります。
FAQシステムの主な機能
FAQシステムの主な機能は、以下のとおりです。
- 自動応答機能:ユーザーが入力した質問に対して、即座に登録済みの回答を作成
- 検索機能:ユーザーの入力キーワードに関連する質問と回答を素早く検索
- 質問整理機能(管理側):質問をカテゴリー別に整理
- 問い合わせ履歴の管理機能(管理側):過去の問い合わせ履歴を保持
- ナレッジベース: 企業内の知識を体系的に整理し、検索可能な形で提供する機能。社内外問わず、特に技術的な情報や手順を提供する際に使われます。
FAQシステムの名前からイメージできる自動応答機能のほかに、質問の整理機能や履歴の管理機能も有し、どのような質問が多いのかなどの分析も可能です。
FAQシステムの活用シーン
FAQシステムの活用シーンは、主に以下の3つです。
- 顧客対応
- 社内ナレッジの共有
- コールセンターの情報管理
顧客対応向けのFAQシステムは、製品やサービスに関するよくある質問をまとめ、顧客が自己解決できるようにするシステムです。ヘルプデスクシステムと呼ばれることもあります。顧客(または従業員)からの問い合わせに対応するためのシステムで、問い合わせ対応の効率化を図るためにFAQが組み込まれることが一般的です。
また、FAQシステムは社内でも活用される傾向にあり、社内手続きやツールの使い方に関する質問や情報を集約し、社員が抱える問題の解決策を得る際のツールとして導入も進められています。
コールセンターではオペレーターが顧客からの問い合わせに対して迅速に対応するために、FAQシステムを活用しています。顧客や従業員が自己解決できるように設計されたWebポータル(サポートポータル)などを構築し、そのなかで、FAQシステムを含むことも少なくありません。
社内での検索システム(エンタープライズサーチ)は、企業全体の情報を包括的に検索するのに対し、FAQシステムは特定の質問への迅速な回答を提供することに特化しています。エンタープライズサーチの一環としてFAQデータベースを検索対象に含めることで、より包括的な情報提供が可能となり、顧客や従業員の利便性を向上させることができます。
チャットボットとの違い
FAQシステムとチャットボットは、どちらも顧客や従業員の質問に答えるためのツールですが、それぞれ特徴があり、以下のような違いがあります。
種別 | FAQシステム | チャットボット |
---|---|---|
情報の提供内容 | (比較的)定型的な回答 |
|
回答の探し方 | ユーザー自身が検索 | ユーザーが質問を入力すると回答が返される |
近年では、FAQシステムにチャットボットを組み込んだハイブリッド型も多く登場し、両者の違いは次第に薄れつつあります。
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FAQシステムの導入がもたらす8つのメリット
企業がFAQシステムを導入することで、社内の属人化解消や省力化のほかに、新規顧客獲得や集客力向上などさまざまなメリットを得られます。以下では、FAQシステムを導入するメリットについて詳しく紹介します。
ユーザーエクスペリエンスの向上
FAQシステムはユーザーが直感的に操作できるインターフェースを提供し、必要な情報を迅速に見つけることができます。これにより、ユーザーエクスペリエンスが向上し、企業への信頼感も高まります。
顧客獲得の機会損失を防げる
顧客が商品やサービスについてカスタマーサポートに問い合わせる場合、サポート担当者の勤務時間に依存するため、サポート担当者が対応できない年末年始や祝日には顧客獲得の機会損失が発生します。
一方でFAQシステムを導入している場合には、システムが停止しない限り、ユーザーは24時間365日いつでも回答を得ることが可能です。購入に直結する質問を取りこぼすことがなくなるため、顧客満足度が向上するとともに、新規顧客の獲得も期待できます。
ナレッジや業務の属人化を解消できる
高度な業務では、熟練社員のスキルや経験に依存することが多く、特定の担当者にしか対応できない問い合わせや解決できない問題が発生しがちです。
FAQシステムでは製品仕様や取り扱い説明書など社内に点在する情報を一元管理できます。そのため、スキルや経験に依存せず誰でも正しい情報を迅速にたどり着ける環境が整い、社内ナレッジや業務の属人化を解消できます。
最近では、熟練者の知識を取り込んだFAQのシステムを用いて、新人社員でもFAQシステムを利用すれば、経験豊富な社員が対応する場合と同等の品質で対応が可能となり、結果として組織全体の生産性向上が期待できるとして、利用が進んでいます。
サポート担当者の省力化につながる
FAQシステムの導入により、よくある質問に対する回答が自動化されるため、サポート担当者の対応コストの削減が可能です。顧客や従業員が自分で情報を見つけて問題を解決できるため、サポートチームへの問い合わせ件数を減らすことができます。
特に定型的な質問がFAQシステムにより対応可能となり、サポート業務の負担が大幅に軽減され、省力化につながります。人的リソースを削減できるだけでなく、担当者がより高度で価値のある業務に集中することが可能になります。
人材育成がスムーズになる
FAQシステムを活用することで、社内のナレッジが一元的に管理され、人材育成がスムーズになる点もメリットです。特に、熟練社員が持つ高度な知識や経験をFAQシステムに蓄積しておくことで、新人社員はいつでもその情報にアクセスでき、自己解決できる場面が増えます。
新人社員が熟練社員へ相談する回数が減ることで、熟練社員の対応コストも削減でき、新人教育の効率アップが可能です。さらに、新人社員が自ら問題を解決できることで、自信を持って業務に取り組めるようになり、結果として新人社員の自発的な成長促進にもつながります。
ナレッジマネジメントの強化
FAQシステムは、社内のナレッジを体系的に管理し、共有するためのプラットフォームとして機能します。これにより、従業員が必要な情報をすばやく見つけ、業務効率を向上させることができます。
データ分析と改善
FAQシステムは、どの質問が頻繁に検索されているかなどのデータを収集・分析することができます。このデータを基に、製品やサービスの改善点を特定し、顧客ニーズに応じた対応策を講じることが可能です。
企業サイトのSEO対策につながる
FAQシステムを導入することで、企業サイト全体のSEO対策にもつなげることが可能です。FAQページへのアクセス増加に伴い、サイト全体のページビュー(PV)が増えることで、検索エンジンでの評価アップが期待できます。
また、FAQを探すためにユーザーがサイト内を回遊する時間が増え、セッション時間やページ滞在時間も向上します。
アクセス数や滞在時間の増加などが総合的に評価され、検索エンジンのアルゴリズムで「質の高いサイト」として認識されやすくなります。結果的にオーガニック検索でのランキングが向上し、Web集客も強化できるという副次的効果も期待できます。
FAQシステムの導入デメリット
FAQシステムの導入にはいくつかのデメリットも存在しますが、適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑えられます。以下では、FAQシステムの導入デメリットと、対策を紹介します。
定期的な更新作業が必要
FAQシステムは、より正確な回答を出力するために定期的な更新が必要です。導入範囲が広く大規模なFAQシステムの場合には、管理担当者にとって大きな負担になり得ます。
更新作業を簡略化するうえでは、管理しやすいシステムを設計を行うことが重要です。管理画面のユーザーインターフェースが複雑な場合には、マニュアルを都度確認する必要があり、更新作業のたびに時間を要します。社内全体の効率化を目指すうえでも、更新作業の手間が少ないシステムを選びましょう。
初期導入コスト
FAQシステムの導入には以下のような初期費用がかかります。
- 初期開発
- カスタマイズ
- データの移行
- トレーニング
また、システムの規模や機能によっては高額になることもあります。
ランニングコストがかかる
FAQシステムは導入後も継続的なメンテナンスが必要です。新しい質問や回答の追加、既存情報の更新、システムのアップデートなど、運用コストが発生します。特にクラウド型システムでは、保守費用などの月額コストが発生するため、運用の際には継続的に費用がかかります。
また、定期的な更新作業や機能の拡張、システムのアップデートなど管理のための人件費も必要です。
大規模な企業では、この維持管理コストが無視できないものとなります。
FAQシステム自体の運用コストを削減する場合には、オンプレミス型のFAQシステムがおすすめです。初期費用は高額になりがちですが、クラウド型に比べランニングコストを抑えられます。
導入効果の測定が難しい
FAQシステムの導入効果を正確に測定することは難しい場合があります。例えば、ユーザー満足度や問い合わせ削減効果などを定量的に評価するためには、適切な指標とデータ収集方法が必要です。
FAQシステムがAIでパワーアップ!
近年AIを搭載したFAQシステムが登場し、その機能性が飛躍的に向上しています。
AIの自然言語処理(NLP)技術が高度化したことで、日本語や文脈をより正しく分析・理解し、高度な検索力で、適切な日本語を返せるようになりつつあります。
また、急発展を遂げているLLMによるテキスト生成技術は、データベースを検索した結果、回答例がない場合でも、適切な回答を自動で生成することが可能です。
以下では、AIのFAQシステムと従来システムとの違いを詳しく紹介します。
AIを搭載したFAQシステムと従来システムとの違い
特徴 | AI搭載FAQシステム | 従来のFAQシステム |
---|---|---|
自然言語処理 | NLPを活用し、自然な言葉での質問に対応 | 固定された質問と回答に基づく静的な情報提供 |
検索精度 | ユーザーの意図を理解し、精度の高い検索結果を提供 | キーワードベースの検索で、正確なキーワードが必要 |
学習能力 | 使用データを学習し、回答の精度を向上 | 手動での更新が必要で、学習機能はなし |
柔軟性 | 曖昧な表現や表記のゆれにも対応可能 | 固定された質問に対する柔軟な対応が難しい |
更新の手間 | 自動学習により更新が容易 | 新しい質問やトピックに対応するには手動での更新が必要 |
AIを搭載したFAQシステムは、従来のシステムと比べて以下の点で優れています。
- 自然文を理解できる
- 回答例を自動生成できる
- 自動で回答内容を更新できる
- 類語登録や追加ヒアリングができる
AI搭載のFAQシステムは、日本語の自然文でも理解し、さらに機械的ではなくより人間らしい文章で回答文を作成できます。加えて、社内ナレッジを組み合わせ、回答例を自動生成することが可能です。
従来システムではシステムに登録されたワードをそのまま使わなければ、検索ヒットしないこともしばしばでした。例えば、「人工知能」が未登録の場合には、「AI」で検索ヒットする内容が表示されないことも多くありました。
一方、AIのFAQシステムでは言葉の類語を理解できるうえに、ユーザーの曖昧な質問に対しては追加でヒアリングできる機能があるため、0件検索結果の可能性が大幅に少なくなります。
また、生成AIと組み合わせることで更に可能なことは広がり、システムに登録されていない回答に対しても、社内データベースから自動で組み合わせて回答を作成することもできます。
このようにAIのFAQシステムでは回答の自動生成・更新作業が可能なため、従来のFAQシステムが抱えていた更新作業や管理コストの問題を解決できるツールとして注目を集めています。
生成AIを内蔵したFAQシステムは何が違う?
従来の自然言語処理AIに加えて、生成AIを活用したFAQシステムは、企業の顧客サポート効率を大幅に向上させ、顧客満足度を高めることができるため、2023年からの利用が大幅に拡大しています。
ChatGPTにも使われているGPTやGoogleのGeminiなどの生成AIは、ユーザーの質問に対して動的に回答を生成する能力を持っています。加えて、RAG技術と組み合わせることで、社内のデータベースを横断的に検索しながら、適切な回答を自ら探し、回答を行うことも可能となります。
そのため、企業のFAQシステムに生成AIを搭載することで以下のメリットを得ることができるでしょう。
- 回答精度の向上:企業データを元に適切な回答を自然な言葉で回答できます。
- FAQの自動生成と更新:企業の既存データから自動的にFAQを作成・更新できます。
- 自然言語処理による検索精度の向上:ユーザーの質問意図をより正確に理解し、適切な回答を提供できます。
- パーソナライズされた回答:ユーザーの過去の検索履歴や行動パターンを分析し、個々のニーズに合わせた回答を生成することができます。
- マルチモーダル対応:テキストだけでなく画像や音声など、より豊富な形式でFAQを提供することが可能になります。
生成AIにより、FAQの作成・メンテナンス時間を大幅に削減し、常に最新の情報を提供することが可能になります。
企業固有の情報を扱う場合、一般公開されている生成AIサービスではなく、企業内部のデータを学習基盤とした専用の生成AIシステム(ローカルLLM)を構築することで、セキュリティとプライバシーを確保しつつFAQシステムを強化できます。
関連記事:「生成AIとは?種類や使い方、活用事例・従来AIとの違い・注意点を徹底解説!」
AI搭載FAQシステムの活用事例3選
近年、社内FAQシステムや顧客対応システムに対して、AI搭載FAQシステムを導入する企業が増えてきています。以下では、AI搭載FAQシステムの実際の活用事例を3つ紹介します。
【エルイズビー/関電サービス】質問が多い項目のFAQ化により4割減の問い合わせ数削減
関電サービス株式会社では、総務や労務系の申請書類や処理帳票に関する問い合わせが多く、総務部門の負担軽減が課題でした。特に、総労関係の書類様式だけでも100種類以上が存在し、社員が大量の情報の中から必要な情報を探し出すのに手間を要することが、サポートセンターへの問い合わせが増加する原因でした。
そこで株式会社L is B (エルイズビー)の「AI-FAQボット」を導入し、まずは問い合わせが多い項目をFAQ化しました。申請書類の提出に必要な様式や取扱いに関する情報をAI-FAQボットが提供することで、必要な書類件名や書類様式へのリンク、記載例や詳細ルールまで確認できるようになりました。
その結果、総務系および労務系の問い合わせ件数は、導入前に比べて3~4割減少しているとのことです。
【メディアリンク/Dai】シナリオ型チャットボットから移行し約47%の問い合わせ数の減少に成功
株式会社Daiでは、利用者からの問い合わせ数を減らすためにシナリオ型チャットボットを導入し、一時的に問い合わせ数の削減に成功しましたが、全ての利用者が適切な回答にたどり着けるわけではなく、大きな効果を得るには至りませんでした。
そこで、シナリオ型チャットボットの弱点である「言葉の揺れ」に対応し、曖昧な質問にも対応できるメディアリンク株式会社のAI型チャットボットAIto FAQに移行しました。2023年12月の導入以降、問い合わせ数は減少傾向にあり、前期比で約16%の減少、ピーク時と比較して約47%の減少に成功しています。
【北日本コンピューターサービス/旭日電気工業】若手社員がいつでも疑問を解消できる仕組み
旭日電気工業株式会社では、若手社員が業務に関する質問を「忙しい上司」に対して遠慮してしまい、詳しく聞けないという問題がありました。これにより、若手社員が自己解決できる環境の整備が急務となっていました。
そこで、若手社員の疑問解消を目的に、まずアンケートを実施し、実際に聞きたい・知りたいことを把握し、その結果をもとに北日本コンピューターサービス 株式会社のAI搭載FAQシステムを導入しました。このChatGPTを活用したFAQシステムは社員目線に立ち、網羅性の高い情報提供を意識して構築され、導入後は用語辞典やOJTなどのリソースとしても広く活用されています。
FAQシステムについてよくある質問まとめ
- FAQシステムを導入するメリットは何ですか?
FAQシステムを導入することで、よくある質問に対する自動応答を提供できるため、カスタマーサポートの負担を軽減できる点がメリットです。また、24時間対応可能なため、顧客満足度の向上にもつながります。さらに、質問と回答を一元管理することで、情報の正確性を維持しやすくなります。
- AI搭載FAQシステムの主なメリットは何ですか?
AI搭載FAQシステムの主なメリットは以下の通りです:
- 自然な日本語での質問に対応可能
- 回答例を自動生成できる
- システムが学習し、回答内容を自動で更新
- 類語理解や追加ヒアリングにより、的確な回答を提供
- 更新作業や管理コストの削減
これらのメリットにより、顧客満足度の向上と社内業務の効率化を同時に実現できます。
従来の自然言語処理AIに加えて、企業のFAQシステムに生成AIを搭載することで以下のメリットを得ることができるでしょう。
- 回答精度の向上
- FAQの自動生成と更新
- 自然言語処理による検索精度の向上
- パーソナライズされた回答
- マルチモーダル対応
まとめ
本記事では、FAQシステムの基本概念からAI搭載FAQシステムの活用事例まで、包括的に解説しました。企業がFAQシステムを導入することで、サポート業務の省力化や業務の属人化解消など多くのメリットを得られます。
特に近年は高度な日本語の理解力と生成力を有するAI搭載型FAQシステムが登場し、さらに機能性を向上させています。一方で、初期導入コストやシステムの定期的な更新など、考慮すべき課題もあります。しかし、適切な計画と運用により、これらの課題は十分に克服可能です。
この機会にAI搭載FAQシステムを導入し、ビジネスを推進させましょう。
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