OpenPoseとは?姿勢推定モデルの特徴・商用利用・活用ケース・導入方法を徹底解説!
最終更新日:2025年07月05日

- OpenPoseは複数人の身体、顔、手の動きを同時に高精度で捉えるAI技術
- 製造現場の作業分析、医療現場の転倒検知、スポーツのフォーム改善、さらには画像生成AIと連携したクリエイティブ制作まで幅広い分野で応用
- OpenPoseを効果的に活用するには、高性能なGPU環境が必須。また、ライブラリの依存関係が複雑でビルド作業には専門知識が求められます
人の「動き」を正確にデータ化する姿勢推定技術が注目されています。しかし、既存のカメラで複数人の複雑な動きをリアルタイムに捉え、ビジネスに活用するには高い技術的ハードルがありました。
この課題を解決する画像認識AIライブラリがOpenPoseです。
この記事では、OpenPoseが持つ高精度な検出機能の仕組みから、製造、医療、スポーツ、エンタメといった多様な業界での具体的な活用事例、さらには導入前に必ず知っておくべきライセンスや技術的注意点まで解説します。
AI Marketでは
画像認識・解析に強いAI開発会社をご自分で選びたい場合はこちらで特集していますので併せてご覧ください。
目次
OpenPoseとは?
OpenPoseとは、米国カーネギーメロン大学(CMU)が開発した、リアルタイムの姿勢推定を可能にするオープンソースのAIライブラリです。特別なセンサーやカメラを必要とせず、画像や映像からリアルタイムで関節の位置を高精度に推定することができ、全身のキーポイント検出を実現します。
従来の姿勢推定技術は単一人物の解析に限定されることが多かった一方、OpenPoseは「Part Affinity Fields(PAFs)」という独自手法を活用することで、複数人物の骨格を識別しながら、それぞれの関節を推定できます。
さらに、OpenPoseは全身だけでなく、顔や手の細かな動きも捉えることができ、アバター生成やモーションキャプチャなどへの応用にも適用可能です。PythonやC++に対応しており、カスタマイズ性も高いです。
近年ではCMU開発の公式CMU版に加えて、コミュニティで開発された派生版や軽量化モデルも登場しており、実用性はさらに高まっています。
OpenPoseの商用利用と料金
OpenPoseをビジネスで活用する際には、商用利用の可否とライセンス規約に注意が必要です。
オリジナルのCMU版OpenPoseはオープンソースですが、非営利目的での研究利用を前提としています。無償での商用利用は基本的に認められていません。商用利用のためにはカーネギーメロン大学(CMU)から別途ライセンスを購入する必要があります。
一方、OpenPoseをベースとした派生版の多くは、オープンソースとして無料で提供されており、MITライセンスやApache License 2.0など商用利用が可能なライセンス形態を採用しているケースもあります。商用サポートやカスタム機能を含むプランでは、個別に見積もりが必要となることが基本です。
このように、OpenPoseは選定するバージョンや利用形態によって、商用利用が可能か否かが異なります。導入にあたっては、目的に応じたライセンス選定と、規約確認を行うようにしましょう。
他の姿勢推定ライブラリとの比較
項目 | OpenPose | MediaPipe | AlphaPose |
---|---|---|---|
開発元 | カーネギーメロン大学 | 上海交通大学 | |
ライセンス | 非商用無料(商用は有償) | Apache 2.0(無料) | 非商用利用に限定 |
動作環境 | 高スペックGPUが必須 | 軽量、モバイル対応可 | 軽量 |
対応部位 | 全身、顔、手(多人数) | 全身・顔・手(単体〜複数可) | 人 |
精度 | 複数人の身体・顔・手を高精度に検出 | 実用的 軽量設計 | 高速かつ高精度な場合がある 特に混雑したシーンに強い |
OpenPose以外の姿勢推定ライブラリとして用いられるのが、「MediaPipe」や「phaPose」です。
MediaPipe(メディアパイプ)は、Googleが提供するクロスプラットフォーム対応のライブラリで、リアルタイム処理に特化している点が強みです。軽量かつ高速で動作し、モバイル端末でも安定して動くため、スマートフォンアプリやAR用途での採用例が多く見られます。
一方、AlphaPose(アルファポーズ)は、画像や動画から複数人の骨格情報を高精度に検出します。人物を先に検出してから各個人の姿勢を推定する「トップダウン方式」を採用しているのが特徴です。
OpenPoseと同等以上の精度と高速な処理、そして人物を追跡するトラッキング機能を持つのが特徴です。
これらと比較してOpenPoseは、商用利用に制限があるCMU版をはじめ、派生版によっては無償で高精度な姿勢推定が可能であり、顔・手・全身を一括で扱える機能面でも優れています。PythonとC++に対応しており、研究用途から産業利用まで幅広く活用されています。
選定にあたっては、用途、動作環境、ライセンス条件を踏まえて、各ライブラリの特徴を見極めることが重要です。
▼累計1,000件以上の相談実績!お客様満足度96.8%!▼
OpenPoseの特徴・機能
OpenPoseは、他の姿勢推定ライブラリにはない独自の技術や高機能性を備えています。
複数人物の同時検出が可能
OpenPoseの特徴として、画像や映像内に存在する複数の人物を同時に検出できる点が挙げられます。
OpenPoseではPart Affinity Fields(PAFs)という手法を採用することで、各人物の関節を正確に対応付け、個別の骨格を識別します。PAFsは関節間のつながりをベクトル場として識別するアルゴリズムで、同一人物の関節を一貫して検出できるように設計されています。
これにより、人物が密集している場面でも誤検出が少なく、正確な姿勢情報を取得できます。監視カメラやイベント映像の解析や動作検知など、多人数を扱う業務環境において効果を発揮します。
また、複数人物の検出をリアルタイムで処理できることから、インタラクティブなアプリケーションやモーションキャプチャの領域でも活用が広がっています。撮影時に特別なマーカーを用意する必要がなく、自然な姿勢データの取得が可能な点もOpenPoseの実用性を高めている要素です。
顔・手・全身のキーポイントを高精度に推定
OpenPoseは、人物の全身だけでなく、顔や手のキーポイントまで高精度に推定可能です。70以上のキーポイントを捉えることが可能で、より詳細な動作解析が求められる場面にも対応します。
特に、顔では眉・目・口の動き、手では指の関節までを個別に推定できるため、ジェスチャー認識や表情分析といった高度な応用が可能になります。これにより、人の繊細な動作や感情表現を正確に捉える必要のある領域でも高精度な推定が可能です。
さらに、全身と連動してキーポイントを出力できるため、体の動きと表情・手の動作を一体で捉える総合的な動作解析も実現できます。これらの情報は、スポーツフォームの改善や作業効率の測定など、現場レベルでの活用にもつながります。
関連記事:「姿勢推定AIとは?体の動きを理解する画像認識の仕組み・活用事例・アルゴリズムを徹底解説!」
リアルタイム処理に対応
OpenPoseはGPUによって、高精度な姿勢推定を行いながらも、リアルタイム処理に対応できる設計になっています。そのため、映像入力に対してリアルタイムで姿勢推定を実行できます。
ただし、リアルタイム性能を最大限に活用するには、一定以上のGPUスペックが求められます。また、フレームレートや入力画像サイズとのバランスを調整することで、処理速度と精度の両立が可能です。
映像解析の即時性が求められる業務やインタラクティブなサービスを展開する際に、OpenPoseは業務効率化やUX向上に貢献する技術として、付加価値の高いソリューションとして活躍するでしょう。
棒人間から画像を生成できる
OpenPoseは、人物の姿勢を「棒人間」として骨格構造で視覚化できるだけでなく、画像生成AIと連携することで任意のポーズに沿った画像を生成することも可能です。特に、Stable Diffusionと連携するControlNetなどの技術を活用することで、OpenPoseの出力を画像生成の条件データとして扱えるようになります。
この手法では、OpenPoseが生成した関節情報をベースに人物のポーズや構図を指定しながら、リアルなキャラクター画像やアート作品を生成することが可能です。これにより、以下のようなビジュアル重視の分野で応用範囲が広がっています。
- アバター作成
- ゲーム開発
- 広告用ビジュアルの制作
従来の画像生成ではポーズ指定が曖昧になりがちでしたが、OpenPoseを導入することでポーズの自由度と再現性が大幅に向上します。また、表現したい構図を棒人間形式で簡潔に入力できるため、専門知識がなくても意図したビジュアルが作成しやすいのも特徴です。
このような活用は、AIによる創作支援や業務効率化の一環として注目されており、クリエイティブ業界だけでなく、商品シミュレーションやバーチャル試着など多様な業種で導入が進みつつあります。
▼累計1,000件以上の相談実績!お客様満足度96.8%!▼
OpenPoseで押さえておくべきバリエーション
OpenPoseには、用途や環境に応じて選べる複数のバリエーションが存在します。代表的な派生版や拡張モジュールは、以下の通りです。
CMU版
CMU版とは、OpenPoseのオリジナル版です。顔、手、足などのキーポイントを含めた全身解析が可能で複数人物の骨格を同時に検出できる点が特徴です。
CMU版ではもともとCaffeベースで構築されており、対応言語は主にC++とPythonです。その後のアップデートにより、PyTorchベースの実装も統合・サポートされています。
インストールやビルドにはCUDA環境が必要となるため、開発知識と高性能なGPUを前提とした導入が求められます。高い精度を発揮しますが、処理速度は比較的重いです。
OpenPoseの技術的基盤を理解するうえで、CMU版は最も代表的なリファレンスとして位置づけられています。
Control Net版
ControlNet版とは、画像生成AIであるStable DiffusionとOpenPoseを連携させるために開発された拡張技術です。
従来は、文章(プロンプト)だけで複雑なポーズを指示することは非常に困難でした。しかし、「ControlNet」と組み合わせることで、参照画像からポーズの骨格情報(棒人間のようなスケルトン)を抽出し、その骨格と同じポーズのキャラクターを生成できます。
また、従来のOpenPoseは姿勢情報の取得に特化していましたが、ControlNet版ではそのデータを創造的な画像生成のガイドラインとして再活用できるため、エンタメ領域やデザイン分野でも利用されます。
技術的には、ControlNetが持つ「条件制御機能」を通じて、姿勢データと画像生成モデルを統合することで、高い再現性と柔軟性を実現しています。Pythonベースで構築されており、Stable Diffusion環境で動作します。
3D Reconstruction Module
3D Reconstruction Moduleは、OpenPoseを拡張して2Dの姿勢推定結果をもとに3次元の骨格情報を復元するモジュールです。オリジナルのCMU版OpenPoseに付属しています。
複数のカメラ映像を組み合わせることで、人物の立体的な動きを高精度に再構築できるのが特徴です。
3D Reconstruction Moduleでは、複数の視点から取得した2Dキーポイントを統合し、三次元空間上での関節位置や動作を推定します。スポーツ解析やリハビリテーション、モーションキャプチャなど、動作の奥行きや回転を伴う分野で高い実用性を発揮します。
ただし、運用には複数台のカメラを同期させる環境構築が必要であり、計測空間の制御やキャリブレーションなど技術的なハードルは比較的高めです。また、リアルタイムでの3D処理には高性能なGPUや十分なメモリも求められます。
3D Reconstruction Moduleは専門性の高い用途に適した機能と言えます。活用できれば2D解析では得られない立体的なデータに基づいた高度な解析や可視化が可能です。
Lightweight OpenPose
Lightweight OpenPoseは、OpenPoseの高精度な姿勢推定性能を維持しつつ、処理の軽量化を図った派生版です。Intelの研究者などによって発表された論文と、それに基づきコミュニティによって開発されました。
モバイル端末やエッジデバイスでのリアルタイム動作を目的として開発されており、GPUリソースが限られた環境でも人物の姿勢推定を実現できるのが特徴です。
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の構造を最適化し、モデルサイズと計算量を大幅に削減しています。そのため、組込み機器や省電力環境においても安定した推論が可能であり、IoT・スマートシティ分野での応用が期待されています。
また、TensorFlowやONNX形式での変換にも対応しているため、既存のAIインフラへの統合もしやすくなっています。さらに、監視カメラの映像解析や小型ロボットへの実装など、現場レベルでの導入にも向いています。
ただし、骨格推定の精度や検出可能なキーポイント数はフルモデルよりも若干劣る場合があります。そのため、ユースケースに応じて精度と処理速度のバランスを見極めることが重要です。
MMPose
MMPoseは、OpenMMLabプロジェクトの一部として開発された姿勢推定ライブラリです。OpenPoseをはじめとする複数の姿勢推定モデルを統合的に扱えるツールキットで、研究用途から産業応用まで幅広く対応可能な柔軟性を備えています。
OpenPose相当の推定精度に加え、Transformerベースのモデルや3D姿勢推定にも対応して拡張性と汎用性に優れています。
そのため、MMPoseはモジュール構成が非常に整理されており、独自モデルの組み込みや訓練済みモデルの利用が容易です。また、MMEngineとMMCVなどの共通基盤により、物体検出のMMDetectionなど他のOpenMMLab製品との連携がしやすく、マルチモーダルな処理にも対応します。
一方で、PythonおよびPyTorchの知識が求められるため、非技術者にとってはやや敷居が高い点もあります。しかし、豊富なドキュメントと活発な開発コミュニティが支援しており、実務レベルでの活用を見据えた開発が可能です。
OpenPoseの活用ケース
OpenPoseは高精度な姿勢推定技術により、さまざまな業界で実用化が進んでいます。以下では、分野別の活用例をご紹介します。
製造業:作業工程の姿勢分析と品質向上
製造業では、OpenPoseを活用した作業員の姿勢分析による工程の最適化が注目されています。
製造現場における作業ミスや品質のばらつきは人的要因として片付けられることが多く、定量的な改善が難しい側面がありました。しかし、OpenPoseによって作業中のキーポイント(関節位置や手の動きなど)をリアルタイムに取得し、動作の正確性やムダの有無を可視化できます。
作業員の無駄な動作を検出することで、標準作業とのズレを把握しやすくなります。これにより、ヒューマンエラーの削減が実現でき、暗黙知の形式知化による製品の品質向上と技術継承にもつながります。
さらに、作業者の疲労や負担が大きい姿勢を検出し、改善策を検討することも可能です。これは労働安全衛生の観点からも重要であり、職場環境の改善にも寄与します。
このように、OpenPoseは製造現場における「見えない問題」を可視化するツールとして、品質管理・人材育成・業務改善の多方面に活用できる有効な技術です。
関連記事:「製造業のAI導入・活用事例!生産性向上・工場自動化」
医療・介護:転倒リスクの検知
医療・介護の現場では、高齢者や患者の転倒事故を未然に防ぐことが課題となっています。そこでOpenPoseを活用することで利用者の姿勢や動作を常時モニタリングし、転倒リスクのある挙動をリアルタイムで検出できるようになります。
歩行時における足の接地位置や身体の傾き、立ち上がり動作の不安定さなどをOpenPoseが解析することで転倒の前兆とされる動作を即座に警告できます。これにより、介護スタッフが迅速に対応でき、事故の未然防止につながります。
また、日常的な動作の蓄積・分析によって、再発防止やリハビリ計画の最適化にも活用できます。非接触でモニタリングできる点も、プライバシーや感染対策の観点から大きなメリットです。
OpenPoseは医療・介護の現場において、安全管理と個別ケアの高度化を実現するツールとして、現場の負担軽減とサービスの質向上に貢献することが期待されます。
関連記事:「 医療業界でのAI導入事例は?ヘルスケア・看護・病院での活用 」
スポーツ:フォームチェックとパフォーマンス向上
スポーツ分野では、選手のフォーム分析がパフォーマンス向上やケガの予防に直結します。OpenPoseはトレーニング中の姿勢や関節の動きを非接触・高精度に可視化できるため、従来の目視に比べて、より客観的かつ定量的な評価が可能です。
具体的な分析としては、以下の通りです。
- ランニングにおける腕振りと足の連動
- 野球のスイング時の重心移動
- ゴルフにおけるスイング軌道
OpenPoseが出力するキーポイント情報をもとに、理想的なフォームとのズレを数値で把握できるため、選手自身がフィードバックを受けながら修正を行いやすくなります。
さらに、トレーニングセッションの比較や異なる選手間の動作比較も容易でチーム全体の育成にも活用できます。リアルタイムでの動作確認が可能なためコーチングの即時性が向上し、指導の質も高まることが期待されます。
近年では、スポーツ科学やアスリートのリカバリー支援、バイオメカニクス研究などにおいてもOpenPoseが導入されており、科学的根拠に基づくトレーニングの実現に寄与しています。
関連記事:「スポーツでのAI活用事例完全解説!企業が事業参画する際の注意点は?」
セキュリティ:不審行動の早期検知や画像解析
セキュリティ分野において、OpenPoseは不審行動の早期検知や小売店での万引き防止を可能にする技術として注目されています。映像内の人物の動きや姿勢をAIが自動で解析し、異常な動作を検出・通知することが可能です。
OpenPoseは以下のような行動を数値的に捉えることで、人の目では見逃しがちなリスクを早期に検知できます。
- 立ち入り禁止エリアでの不自然な動作
- 姿勢変化
- 通常と異なる移動パターン
これにより、商業施設や空港、公共交通機関など不特定多数が利用する空間において、精度の高い監視体制の構築に活用可能です。
また、検知された動作データは記録として保存でき、過去の事例と照合することで行動パターンの分析や再発防止のためのフィードバックにも活用できます。防犯カメラとの連携も容易であり、既存の監視システムをアップグレードする形での導入も可能です。
関連記事:「AIは警備・セキュリティ業界をどう変える?活用方法・メリット・事例」
ヘルスケア:姿勢モニタリングによる健康管理
ヘルスケア分野では、OpenPoseによって姿勢の可視化とモニタリングが可能となり、予防的な健康管理が実現できます。デスクワークや長時間の立ち仕事などで生じやすい姿勢の乱れをリアルタイムで検知することで、慢性的な肩こり・腰痛などの不調を未然に防ぐことが可能です。
OpenPoseはカメラ映像を用いて非接触で全身のキーポイントを自動的に取得・解析できるため、ユーザーの日常的な姿勢を継続的に観察できます。これにより、以下のような個人の健康意識向上を促すサービス開発にもつながります。
- 姿勢改善アプリ
- フィットネス機器と連携したセルフケア支援
- リモート環境での姿勢指導
また、身体のゆがみ傾向や筋力のアンバランスを把握し、パーソナライズされた運動提案や健康指導を行うことも可能です。これらは企業の福利厚生の一環としても活用でき、従業員の生産性向上と医療費削減を両立させる手段として期待されています。
エンタメ:モーションキャプチャへの応用
エンターテインメント業界において、OpenPoseは非接触・マーカー不要で利用できるモーションキャプチャ技術として活用されます。1台のカメラ映像から人物の骨格情報をリアルタイムで取得できるため、コストを抑えた柔軟な表現が可能です。
VTuberやバーチャルライブ、ゲームキャラクターのアニメーション制作などにおいて、OpenPoseは自然な動作をスムーズにデジタルキャラクターへ反映させます。顔や手の細かい動きまで取得できるため、感情表現やジェスチャーを伴う演出にも対応可能です。
さらに、生成AIと組み合わせることで、OpenPoseによる棒人間をベースにイラストや映像を自動生成するアプローチも広がっており、クリエイターの作業効率を大幅に向上させる手段としても導入が進んでいます。
OpenPose導入時の注意点
OpenPoseは高機能な一方で、導入にあたっては技術的・運用的な課題もあります。
高スペックなハードウェアが必要
OpenPoseを導入する際は、高い処理能力を持つハードウェア環境が必要になります。人物の姿勢をリアルタイムで推定する処理を行うため、GPUを活用した並列処理が前提となっています。
特に、複数人を同時に検出するケースや多部位の解析を行う場合は、GPUメモリ容量と処理速度がパフォーマンスに大きく影響します。
推奨される環境としては、NVIDIA製のCUDA対応GPUを搭載したPCやワークステーションです。CPUのみでも動作はしますが、リアルタイム処理はほぼ不可能なほど速度が低下する恐れがあります。
ビルドや依存関係の構築が複雑
OpenPoseの導入において技術的な障壁となりやすいのが、ビルド作業やライブラリの依存関係の複雑さです。CUDAやcuDNNなどGPU関連のライブラリ、BoostやOpenCVといった外部依存ライブラリの適切なバージョン管理が必要です。
この構成がわずかにずれるだけでも、コンパイルエラーや実行時の不具合が発生しやすくなるため、初心者にはハードルが高い環境といえます。
さらに、CMakeによるビルド設定も複雑で、OSやGPUドライバの違いによって細かな調整を求められます。中でもWindows環境は依存ライブラリの導入が手間になるケースが多く、Linuxでの運用が推奨されることもあります。
こうした構築の煩雑さを回避する方法としては、Docker環境を用いた導入や、あらかじめビルド済みのバイナリを提供している派生版の活用が有効です。また、より簡便な運用を望む場合は、PyTorchやTensorFlowベースで開発された軽量な代替モデルの利用も検討するべきでしょう。
日本語の情報が少ない
OpenPoseは世界中で広く活用されている高性能な姿勢推定ライブラリですが、日本語による技術情報や導入事例は限られています。公式ドキュメントやコミュニティフォーラムは、現時点で英語で提供されています。
そのため、エラーメッセージの解釈やビルドエラーの対応に苦労するケースが少なくありません。CUDAやcuDNNといった関連技術も日本語での解説は限られており、ある程度の英語読解力や国際的な開発環境への対応力が求められます。
また、OpenPoseを活用した国内企業の導入事例や応用ノウハウの共有も少なく、参考となる情報源が乏しいのが現状です。これにより、導入に慎重になりすぎてしまう可能性があります。
OpenPoseについてよくある質問まとめ
- OpenPoseとは?
OpenPoseは、カーネギーメロン大学が開発した人物の姿勢を高精度に推定できるオープンソースのAIライブラリです。画像や映像から顔、手、全身などのキーポイントをリアルタイムで検出でき、複数人物の同時解析にも対応しています。
- OpenPoseは他の姿勢推定ライブラリとどう違いますか?
OpenPoseは、他の代表的なライブラリと比較して以下の特徴があります。
- MediaPipe: Google製で導入が容易。モバイル端末での動作に強く、軽量です。
- AlphaPose: 特に人物が密集したシーンでの検出精度が高いとされています。
- OpenPose: 複数人の顔・手・全身を一括で高精度に扱える点が強みですが、オリジナルのCMU版は商用利用に有料ライセンスが必要です。
- OpenPoseの主な特徴と機能は何ですか?
OpenPoseは、以下のような優れた機能を備えています。
- 複数人の同時検出: 独自の「Part Affinity Fields (PAFs)」技術により、密集した状況でも人物ごとの骨格を正確に識別します。
- 高精度なキーポイント推定: 全身の主要な関節に加え、顔の表情や指の動きといった細かい部分まで検出できます。
- リアルタイム処理: 高性能なGPUを活用することで、ライブ映像に対しても即座に姿勢を推定します。
- 画像生成への応用: ControlNetと連携し、推定した骨格情報(棒人間)を基に、指定したポーズの画像を生成できます。
- OpenPoseにはどのようなバリエーションがありますか?
用途に応じて、以下のような複数のバリエーションが存在します。
- CMU版: オリジナル版。高精度ですが、導入が複雑で商用利用は有料です。
- ControlNet版: Stable Diffusionと連携し、ポーズを指定した画像生成に特化しています。
- 3D Reconstruction Module: 複数のカメラを使い、2D情報から3Dの骨格を復元します。
- Lightweight OpenPose: 処理を軽量化した派生版で、モバイルやエッジデバイスでの動作に適しています。
- MMPose: 様々な姿勢推定モデルを統合的に扱える、より高機能なツールキットです。
- OpenPoseを導入する際に気をつけるべきことは何ですか?
導入時には、以下に特に注意が必要です。
- ハードウェア要件: リアルタイムで高精度な処理を行うには、NVIDIA製のCUDA対応GPUなど、高性能なハードウェアが必須です。
- 技術的な複雑さ: ライブラリの依存関係が複雑で、ビルド作業には専門知識が求められます。Dockerの活用や、より導入が容易な派生版・代替モデルの検討も有効です。
- 情報の少なさ: 公式ドキュメントは主に英語であり、日本語の情報が限られているため、技術的な問題解決には英語の読解力が必要になる場合があります。
まとめ
OpenPoseは、高精度な姿勢推定技術とリアルタイム処理機能を備えたAIライブラリです。複数人物の同時検出や顔・手・全身のキーポイント推定が可能で幅広い業種での活用が進んでいます。特に、モーションキャプチャや動作解析を必要とする現場では、業務効率の向上と品質改善の両立が期待できます。
導入と効果的な活用には、高性能なハードウェアの選定、複雑な開発環境の構築、そして商用利用ライセンスの正確な理解が不可欠です。特に、自社の特定の課題に合わせてシステムをカスタマイズするには、AIと画像認識に関する深い専門知識が求められます。
もし、OpenPoseの導入で具体的な成果を出したい、あるいは自社のどの課題に適用できるか専門家の意見を聞きたいとお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
AI Marketでは

AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
𝕏:@AIMarket_jp
Youtube:@aimarket_channel
TikTok:@aimarket_jp
運営会社:BizTech株式会社
弊社代表 森下𝕏:@ymorishita
掲載記事に関するご意見・ご相談はこちら:ai-market-contents@biz-t.jp
