なぜ我が社はAI導入に失敗するのか?ケース別原因・対応策徹底解説!
最終更新日:2024年11月12日
AIを導入しようと考えたけれども失敗したらどうしようと悩んでいたり、AI導入プロジェクトを立ち上げたもののうまく進まなかったりしていないでしょうか。
同じ「失敗」でも、単純にプロジェクトが進まないケースから、開発途中や導入直前で断念したケース、さらには導入するも効果を実感できなかったケースなど様々な失敗ケースがあります。
AIシステムを自社で導入・開発する際の流れをこちらの記事で詳しく説明していますので併せてご覧ください。
もちろん、失敗を恐れているだけでは何も前に進みません。しかし、AI導入の際に発生し得るリスクを事前に把握し、芽を摘んでおけば不用に失敗を恐れる必要はありません。
そこで、この記事では、AI導入でよくある失敗の原因や失敗ケース、失敗しないための対応策について解説していきます。AIで社内の環境やサービスを大きく変えようとしても、失敗すれば大きな損失に繋がる可能性もあります。
是非最後まで読んでいただき、事前に失敗する原因を学んでAI導入を成功に導きましょう。
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AI導入で失敗する5つの原因とは?
AIの導入は、他社との差別化を図る上でも大きなチャンスとなり得る武器ですが、その一方で、導入に至るまでに失敗するケースも多くあります。AIに関する知識をしっかりと蓄え、以下のような失敗しやすいポイントを知っておくことが大切です。
- AIを導入することが目的となっている
- AIで何でも解決しようとする
- 費用対効果を考慮してない
- 現場との連携が取れていない
- 長期でのKPI視点の欠落
それぞれの原因について説明します。
AIを導入することが目的となっている
AIを導入する企業の中には「そもそも何にAIを使うのか」を考えていない場合があります。
他社がAIで成功した話を聞いて、自社でもAIを導入すれば良いのだと考えてしまうことは失敗の原因です。または、政府や自治体からの補助金など短期的な利得に重きを置きすぎる企業も多いようです。
AIを自社の「どの業務」で「どんな課題」を解決して導入するかを検討しましょう。「とりあえずAIを導入すれば良くなる」という考えだと計画倒れになることになります。
AIで何でも解決しようとする
「AIに何ができるのか」を把握できていないまま導入しようとする企業も少なくありません。こういった企業は「AIは何でも自動化できる」と勘違いしている傾向にあります。
当たり前ですが、AIには得意なことと不得意なことがあり、企業が抱えるすべての課題を解決できるわけではありません。AIにできることでも、実は人の方が得意なことや人が作業した方が明らかに良い(または安い)業務もあります。
しかし、AIを導入すれば、人の手がなくともなんでも自動化できると勘違いしてしまう企業が意外と多く、ヒアリングや検証段階でAIに処理させることが難しいと判断し、導入に失敗してしまう場合があります。
費用対効果を考慮してない
コスト削減のためにAIを導入する企業も多いですが、AI開発費用とランニングコストがコスト削減効果を上回る場合があります。一般的なAI導入までの流れとかかる費用の目安は以下の通りです。
内容 | 費用相場(目安) |
---|---|
ヒアリング | 0円 |
コンサルティング・要件定義 | 約40-200万円 |
AI化可能性チェック | 約40-100万円 |
プロトタイプ作成(PoC) | 約100万円-数百万円 |
AIモデル開発(本開発) | 月額80-300万円×人月 |
システム開発 | 月額60-200万円×人月 |
※尚、すべてのプロジェクトがこの通り進むわけではありません。あくまで一般的な工程となりますので、開発プロジェクト毎に必要な工程の検討が必要です。
※システムによって、人月単価にはバラつきがあります。
新たなサービス開発でも見込み収益に比べて開発費用が高く、費用の回収に時間がかかるために導入を断念する企業もあります。
こちらでAIの開発費用、外注依頼する際のコツについて詳しく説明しています。
現場との連携が取れていない
AIを導入し活用していくためには現場との連携が必要になります。緻密な検討なしで開発・導入したとしても、現場で活用されなければ意味がありません。
現場の声を吸い上げて、本当に自動化すべき業務を話し合って推進しなかったために、以下のように現場から判断されて導入しても活用されずに失敗することがあります。
- 現場にとって使いにくい
- 手順が複雑化してしまった
- AIを使う必要性がわかりにくい
- 初期の試行期間の必要性が周知されていない
- どんな不具合が発生し得るか周知されていない
- 不具合発生時の対応フローがない(または周知されていない)
AIを導入する目的や導入後の業務範囲を明確にし、費用対効果を確認しましょう。経営陣やシステム担当者だけでプロジェクトを進めても、現場の声を聞いていなければ反対の声や不満の声が上がります。
長期でのKPI視点の欠落
AIを導入して運用しても、すぐに予想していた効果が目に見えない場合があります。導入初期では、単純に現場での慣れやミスが発生しますし、AIが想定してないことが起こり追加で学習させなければならないことも十分にあります。
年単位などの長い期間のトータルで見なければ見えない効果も多くあります。数ヶ月や半年で効果が感じられないから失敗だと判断すると、本当は効果があったことや副次効果が発生していたことに気づくことなく終わってしまいます。
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AI導入に失敗する思考方法5例解説
「具体的な課題よりもとりあえずのAI導入を優先したい」
具体的な課題解決を考えずに、とりあえずAIを導入しようとして失敗したケースです。
AIが流行っていることを知った製造業A社の社長は「我が社もAIを導入する」と急遽プロジェクトチームを発足させました。しかし、具体的に解決したい課題やAIならどんなことができるかをわかっていないまま、どんなAIを導入すべきかを決めることができませんでした。
各部署に「AIに任せたい仕事はあるか?」と聞いてもAIで解決したい課題が見つからず、どんなAIを導入すべきかが決まることなくプロジェクトは失敗に終わりました。
このケースで失敗した原因は、経営陣が「AIを導入すれば何かしらの課題が解決できるだろう」という考えで導入しようとしたことです。
AIはどのような学習をさせるかで、解決できる課題が変わってきます。「事務作業を自動化したい」「単純だが人手が必要な仕事を少人化したい」といった具体的な課題を設定する必要があります。
「AIにどんな学習をさせて、どんな作業ができるようにするのか」を話し合わなければなりません。必ずAIで解決したい課題を決めておきましょう。
「AIなら何でもできるだろう」
AIでなんでも解決しようと、AIの業務範囲を広げすぎて失敗したケースです。
多くの営業部隊を抱えるB社は、自社の営業・接客支援にAIチャットボットシステムの導入を進めていました。当初は、チャットボットが状況などを分析して適切な自社商材を提示してくれるものを想定していました。
しかし、B社は開発の段階でチャットボットの業務範囲をどんどん拡大していってしまったため、AIの学習のためのデータの準備や学習させる手間がどんどん増えていきました。結局「これならばAIよりも人が対応をしたほうがよかった」とAI導入を断念しました。
このケースでの失敗原因は、当初の予定よりもAIの業務範囲を広げてしまったことです。一般的に、AIを開発するためには教師データによる学習が必要であり、精度を高めていくためには膨大な量の学習を行っていきます。
当然、AIの業務範囲が増えれば、学習量や手間なども増えていきます。人が対応する方が効率的な業務も多く存在します。AIで代替しようとすれば、手間やコストばかりかかったにも関わらず、人の手の方が良かったということもあり得ます。
AIの導入の前に、人がやった方が良い仕事と、AIがやることで効果が出る仕事をはっきり特別しておくことが大切です。
「とにかく人件費削りたいのでAI導入!」
AIの開発費用に対して得られる効果が見合わなかったケースです。
製造業C社は、現場から「面倒な作業をAIにやらせたい」という依頼がありAIを導入することにしました。手間のかかる作業で、複数の担当者が作業をする必要があり、省力化したいと考え、AIの開発を依頼しました。しかし、開発会社から提出された見積もりは、予想を大きく上回る金額でした。
AIで省人化して人件費を削減できても、開発費用を回収するまでに長い年月かかることが判明しました。結局、諦めてこれまでどおり人力で作業を続けることになりました。
このケースでは、AIの開発費用とAI化する仕事で得られる効果を事前に把握していなかったことが失敗の原因です。AIの開発には大きな費用が発生します。
AIを導入する前に、AI化するとどれくらいの人件費を削減できるのか、AIで新たな収益が得られるのかを検討しておかなければなりません。単に面倒な仕事をAI化しようとするのではなく、本当にAI化する価値がある仕事かどうかも考えておきましょう。
「管理部署が仕様を把握していれば大丈夫!」
現場の声を反映していない使いにくいシステムを開発してしまったケースです。
D社は、メールマーケティングを最適化するためにAIを導入を進めていました。これまでは、どの顧客にどんなメールを送るかを担当者の経験や勘に任せており、最適であるとは言えませんでした。
そこで、顧客のログデータや購買データなどをもとにどの顧客にどのメールを送るべきかAIに判断させることにしたのです。機械学習モデルを構築し、検証では高い精度であったため導入をしました。
しかし、担当者からは以下のような不満の声が上がりました。
- 同じ人にばかりメールが届いてしまって新規ユーザーのメールが送れない
- 決まった商品の情報しか送れない
顧客のログデータや購買データを学習して送り先や内容を自動決定して、購入実績の多い顧客だけに商品情報を送る仕組みになっていたため、担当者が発信したい情報を届けることができなかったのです。結局、担当者があまり効果的に活用しない結果となりました。
このケースでは、プロジェクトの情報共有はしていたものの、開発自体はプロジェクトチームだけで行っていました。そのため現場を巻き込めずに、現場が望まないシステムになってしまったのです。
AIを開発する上では、現場の要望を実現するためにどのような学習をすべきかを検討し、検証結果を現場と確認して希望に沿っているのかを判断して進めていく必要があります。
「すぐに成果が欲しい!」
AIの導入効果を長期で判断しなかったために失敗してしまったケースです。
ソフトウェア販売のE社は「クレームの件数を半年で3割減少させること」をKPI目標として、AIチャットボットを導入・運用しました。しかし、半年という短い期間で効果が現れずKPIを達成することはできませんでした。この結果に社長は「チャットボットなんてたいしたことない」と失敗の判断を下しました。
しかし、実は、問い合わせがチャットボットになったことで24時間365日対応可能となり、問い合わせ数自体が大幅に増えたことや、これまでにない顧客の声が寄せられていたのです。「クレーム数を減少させる」というKPI目標は達成できませんでしたがチャットボットによる効果は確実にあったのです。
短期的なKPIの結果だけでしか見なかったために失敗と判断したのでした。
このケースのように、AIが実際にもたらしている効果の内容と、それを測定するためのKPIがずれているケースも少なくありません。現場からみえる効果と、当初設定したKPIでの数値的な効果は必ずしも一致しているとは限りません。
また、短期的に数字に現れずとも、長期的には数字としても現れる可能性は十分にあります。AI導入は、すぐに効果を求めずに長期的な計画で様々な効果を判断していくことも大切になります。
KPI設定の段階でAIの力を借りる方法もあります。
こちらで業界別のKPI設計事例、設定ポイントを詳しく説明しています。
AI導入に失敗しないためのポイントとは?
AIの導入に失敗しないためのポイントをまとめると以下の通りです。
- 課題を明確にしてAI導入の目的を決める
- AIと人間の業務を明確にする
- 現場と連携しながら進める
- 短期的な数字だけで評価しない
それぞれのポイントを説明します。
課題を明確にしてAI導入の目的を決める
まずは、AIで解決する課題を明らかにしてAI化する目的を決めましょう。ここで目的を明確にしなければ、この後の業務範囲の決定の時に、何でもAIにやらせようとしてコストや手間が膨大になる可能性も出てきます。
とりあえずAIを導入すれば色々な課題を解決できるという考えは捨てて、真剣に自社の課題を見つめなおしましょう。
経済産業省は中小企業が自らAIを導入する場合において、自社の状況を踏まえて適切な導入方法を判断し、自社主導でAI導入を進められる状態を目指すために参考となる「AI導入ガイドブック」として公開していますので参考にできるでしょう。
関連記事:「経済産業省、中小企業のDXに役立つ「手引き」と「AI導入ガイドブック」を取りまとめ」
AIと人間の業務を明確にする
AIと人間の業務範囲を明確に決めることで予想外のコストや手間をかけることが防げます。思いついたことをAIに任せたくなるかもしれません。確かに最初のブレインストーミングの段階では思い付くままにアイデアを並べることも必要でしょう。
しかし、現在の業務の工程を確認して、以下をしっかりと把握しておきましょう。
- 人がやる方が効率的なことはないか
- AI以外にも追加で機器類を購入する必要はないか
- AI化することで得られる収益や費用削減効果
これにより、「思ったほどの効果が得られないからこの部分は削ろう」と考えることができ、無駄な費用や手間を抑えることができ、導入の成功に近づきます。
現場と連携しながら進める
AI化する業務工程の確認や、AI化するにあたっての希望など現場の声は必ず聞きましょう。経営陣やプロジェクトチームのみで決めるのではなく、実際に使用する現場と連携をしなければ、完成しても使われずに終わります。
しっかりと現場レベルでの課題を知り、解決するためのAIにしましょう。
短期的な数字だけで評価しない
AIは必ずしも短期間で効果が出るものではありません。導入にあたっての計画も短期間で効果を求めようとすることや費用を回収しようとするのではなく、年単位での長期間で計画しましょう。また、AIによって環境やサービスが変わることで、予想外の効果や客層の変化といった当初のKPIに現れない副次的な効果を得られる場合もあります。
単純に短期的な数字で判断せず、長期的にかつ様々な角度から評価し判断することが失敗しないポイントです。
AI導入の失敗についてよくある質問まとめ
- AI導入で失敗する原因は?
- AIを導入することが目的となっている
- AIで何でも解決しようとする
- 費用対効果を考慮してない
- 現場との連携が取れていない
- 長期でのKPI視点の欠落
- AIの導入に失敗しないための対策方法は?
AIの導入に失敗しないためのポイントをまとめると以下の通りです。
- 課題を明確にしてAI導入の目的を決める
- AIと人間の業務を明確にする
- 現場と連携しながら進める
- 短期的な数字だけで評価しない
まとめ
AIは計画段階、開発段階、導入後の様々な段階で失敗が起こってしまいます。以下を関係者全員が意識することで失敗をする可能性を減らすことができるでしょう。
- 計画段階:目的や業務範囲をしっかりと決定する。また、ここでAIに任せる業務範囲を欲張り過ぎない
- 開発段階:現場としっかりと連携して進めていく。
- 導入後:短期的な数字だけで評価せず、長期間で様々な角度から効果を検証する
AIの導入・運用に成功すれば、人手不足や働き方を変えること、新たな価値の創造といった大きな効果を享受することができます。しっかりとAIに関する基礎知識や失敗例、成功例などを学びAIで事業を変えましょう。
AI Marketでは、
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AI Marketの編集部です。AI Market編集部は、AI Marketへ寄せられた累計1,000件を超えるAI導入相談実績を活かし、AI(人工知能)、生成AIに関する技術や、製品・サービス、業界事例などの紹介記事を提供しています。AI開発、生成AI導入における会社選定にお困りの方は、ぜひご相談ください。ご相談はこちら
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