ChatGPTのセキュリティリスクとは?企業で行うべき具体的対策を徹底解説!
最終更新日:2025年05月13日

- ChatGPTの企業利用には機密情報漏洩、APIキー管理不備、ハルシネーション、著作権侵害、不正利用、RAG利用時の知識ベースへの不正アクセスといったセキュリティリスク
- OpenAIはデータ暗号化、アクセス制御、利用状況監視、不正検知、コンプライアンス対応など多層的な対策を講じていますが、それだけでは企業の個別リスクを完全にカバーできません。
- 企業側では、法人向けプランの導入、信頼性の高いプラットフォーム選定、ガイドライン策定と従業員教育、チャット履歴オフ、ローカルLLMの検討といった実践的な対策
ChatGPTの企業導入では、機密情報の取り扱いや意図しない情報流出といったセキュリティ面が懸念されています。実際、サムスン電子での機密情報流出などセキュリティ事案は国内外で現実に発生しています。
この記事では、ChatGPTの代表的なリスク、取るべき実践的な対策を徹底解説します。潜むリスクを正確に理解し、自社に合った安全なAI活用環境を構築するための具体的な指針を得られるでしょう。
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目次
ChatGPTのセキュリティリスクとは?
ChatGPTは、業務効率化や情報収集など多様なシーンで活用されている一方、企業利用においては特有のセキュリティリスクが指摘されています。以下では、企業が直面しやすい主なリスクとその背景について解説します。
機密情報漏洩のリスク
ChatGPTの最大のリスクの一つは、機密情報や個人情報の漏洩です。ユーザーがプロンプトに入力した内容はOpenAIのサーバーに一時的に保存されるため、意図せず社内の機密データや顧客情報が外部に流出する可能性があります。
特に、従業員が業務効率化のためにソースコードや会議内容、顧客データなどを入力した場合、その情報が第三者に閲覧されるリスクが生じます。また、入力データがAIモデルの学習に利用される場合、将来的に他ユーザーへの応答として再出力される懸念も指摘されています。
学習データへの利用をオプトアウトする設定も可能ですが、その設定が徹底されていない、あるいは従業員が認識していない場合、リスクは依然として残ります。
関連記事:「 ChatGPTで情報漏洩が起こる?リスクに対処するポイント」
APIキーの管理不備・漏洩リスク
ChatGPT APIを自社システムに連携する際、アクセスキーの管理不備や脆弱な連携設定により、外部から不正アクセスを受け、情報が流出する可能性があります。
APIキーは、ChatGPT APIへのアクセス認証に使用される重要な認証情報です。このAPIキーがソースコード内にハードコーディングされたり、バージョン管理システム(Gitなど)に誤ってコミットされたり、開発者間で不適切に共有されたりすることで漏洩するリスクがあります。
漏洩したAPIキーが悪意のある第三者に渡ると、不正にAPIを利用され、高額な利用料金が発生したり、API経由で機密性の高い処理(もしあれば)を実行されたりする可能性があります。また、API利用状況から企業活動が推測される間接的なリスクも考えられます。
誤情報・ハルシネーションによる業務影響
ChatGPTは大量のインターネットデータを学習しており、もっともらしい回答を返しますが、しばしば「ハルシネーション」と呼ばれる誤情報を生成することがあります。ハルシネーションは、実際には存在しない事実や誤ったデータをあたかも正しいかのように出力する現象です。
業務でAIの回答をそのまま活用した場合、誤った意思決定や顧客への誤案内など、信頼失墜や業務トラブルにつながる恐れがあります。特に法務、医療、金融など正確性が求められる分野ではAIの回答を必ず人間が検証する運用が不可欠です。
著作権侵害の問題
ChatGPTが生成する文章やコード、画像などのコンテンツは、学習元データに依存するため、既存の著作物と類似した内容を出力する場合があります。たとえば、特定の著者や作品を参考にしたプロンプトを入力すると著作権侵害に該当する可能性が高まります。
また、生成物をそのまま商用利用した場合、意図せず他者の著作権を侵害するリスクがあるため、企業では生成物の内容確認や利用範囲の明確化が求められます。
関連記事:「ChatGPTで著作権侵害の可能性は?論争の原因・注意点」
不正利用・悪用の可能性
ChatGPTは、その高い言語生成能力を悪用されるリスクも抱えています。具体的には、マルウェアやフィッシングメールの作成、偽サイトの文章生成などサイバー攻撃の準備や実行に利用される事例が報告されています。
また、ソーシャルエンジニアリング攻撃やなりすましにも悪用されやすく、企業のセキュリティ体制を脅かす要因となっています。こうしたリスクを踏まえ、従業員教育やAI利用ガイドラインの策定が重要です。
RAGの知識ベースへの不正アクセス
RAGシステムが参照する知識ベース(Vector DB、Elasticsearch、社内ドキュメントストレージなど)のアクセス制御が不適切である場合、本来アクセス権限のない情報がLLM(大規模言語モデル)に渡され、結果として権限のないユーザーにその情報が開示されてしまうリスクがあります。
そうなると、知識ベース内の機密情報(個人情報、企業秘密、財務情報など)が、LLMの回答を通じて意図せず漏洩する可能性があります。知識ベースに対する厳格なアクセス制御(ユーザー認証、ロールベースアクセス制御など)を実装することが重要です。
関連記事:「ChatGPTでRAGを活用する方法は?課題や実装方法」
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OpenAIが実施するChatGPTのセキュリティ対策
OpenAIは、ChatGPTを企業や組織で安全に活用できるよう、国際的なセキュリティ基準や法令に準拠した多層的なセキュリティ対策を導入しています。ここでは、企業がChatGPTを安心して利用するために知っておきたい、OpenAIの主なセキュリティ対策について解説します。
データ暗号化
OpenAIは、ユーザーや組織のデータを保護するために、通信中および保存時の両方で強力な暗号化技術を採用しています。具体的には、データ転送時にはTLS 1.2以上、保存時にはAES-256による暗号化が標準で適用されており、外部からの不正アクセスや盗聴リスクを大幅に低減しています。
アップロードされたファインチューニング用のデータセットも、保存時にAES-256で暗号化されます。
アクセス制御
アクセス制御についても、ChatGPT Enterprise / TeamではSAML SSO(シングルサインオン)による認証や、ユーザーごとの権限管理が可能です。これにより、誰がどの情報や機能にアクセスできるかを細かく設定でき、組織内での情報漏洩リスクを最小化できます。
APIキーによる認証やカスタムモデルの専有管理なども実装されており、企業ごとに柔軟な運用が可能です。
利用状況の監視
OpenAIは、ChatGPTの利用状況をリアルタイムで監視し、不正な利用やセキュリティインシデントの兆候を早期に検知する体制を整えています。
AIによる自動モデレーションシステムやキーワード検出、異常な挙動の検出アルゴリズムが組み込まれており、ハラスメントや違法行為、情報漏洩につながるやり取りを即時にフラグ付けし、必要に応じて人間のレビュワーが対応します。
不正検知
OpenAIのセキュリティチームは24時間365日体制で監視・対応を行い、外部からの攻撃や内部不正にも迅速に対処できるようになっています。また、定期的な第三者によるペネトレーションテスト(侵入テスト)やセキュリティ監査も実施し、脆弱性の早期発見と改善に努めています。
ChatGPT Enterprise / Teamでは、管理者が組織内のユーザーの利用状況(誰がいつ、どのように利用したかなど)を確認できる監査ログ機能が提供されます。
コンプライアンスとプライバシー保護
OpenAIは、GDPR (一般データ保護規則) および CCPA (カリフォルニア州消費者プライバシー法) などの主要なプライバシー法規制への対応を重視しており、企業が法令順守を果たしやすい仕組みを提供しています。ChatGPT Team、ChatGPT EnterpriseやAPIなどのビジネス向けプランでは、ユーザーデータをモデルの学習に利用しない設定がデフォルトとなっています。
そのため、顧客の明示的な同意がない限り会話内容がAIモデルの改善に使われることはありません。
また、データ処理補遺契約(DPA)の締結や、データ削除リクエストへの対応、データ保持期間のカスタマイズ、データの匿名化など企業のコンプライアンス要件に合わせた管理が可能です。さらに、SOC 2 Type 2、ISO/IEC 27001やCSA STARといった国際的なセキュリティ認証も取得しており、第三者による監査を通じて高い信頼性を証明しています。
実際の導入時には、組織ごとの運用ルールや追加の管理ツールと組み合わせることで、より高い安全性と実用性を確保することができます。
ChatGPT Enterpriseプランのセキュリティ対策(と限界)
企業向けの「ChatGPT Enterprise」プランでは、データの暗号化(AES-256/TLS1.2+)、SOC 2準拠、管理者によるアクセス制御、シングルサインオン(SSO)、ドメイン認証など業務利用を前提とした高度なセキュリティ対策が実装されています。また、Enterpriseプランでは入力データがAIモデルの再学習に利用されない設計となっており、情報漏洩リスクが大幅に低減されています。
しかし、これらの対策を導入しても、利用者が誤って機密情報を入力した場合や、外部サービスとの連携設定が不適切な場合など、完全にリスクを排除することはできません。また、オンプレミス運用やリアルタイムの脅威検知など、さらなるセキュリティ強化を求める場合は、追加のシステム構築や運用ルールの策定が必要となります。
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企業で実践できるChatGPTのセキュリティ対策は?
ChatGPTを業務で安全に活用するためには、技術的な設定だけでなく、組織的な運用ルールや適切なサービス選定が不可欠です。ここでは、実務者が実践できる具体的なセキュリティ対策を紹介します。
ChatGPT Enterpriseの導入でセキュリティを強化する
より高いセキュリティが求められる場合は、まずは「ChatGPT Team」や「ChatGPT Enterprise」などの法人向けプランの導入が基本です。このプランでは、ユーザーの入力データや会話内容がモデルの学習に一切利用されず、データはAES-256およびTLS1.2以上で暗号化されます。
さらに、SOC2認証取得やSSO(シングルサインオン)、ドメイン認証、管理コンソールによるユーザー管理など、企業利用に必要な高度な管理機能とセキュリティ対策が提供されています。これにより、機密性の高い業務データも安心して取り扱うことが可能です。
Azure OpenAI Serviceなど信頼性の高いプラットフォームでの活用
企業がOpenAIモデルを業務利用する際には、セキュリティ、コンプライアンス、データガバナンスの観点から、信頼性の高いプラットフォームを選定・活用することが極めて重要です。これらのエンタープライズ向けサービスは、一般的に以下のようなセキュリティ強化機能や管理機能を提供しています。
- データプライバシーと分離
- 強力なデータ暗号化
- 厳格なアクセス制御
- ネットワークセキュリティ
- コンプライアンスと認証
- 詳細な利用ログや監査ログの提供
このような要件を満たす具体的なサービスとして、例えばMicrosoft社の「Azure OpenAI Service」が挙げられます。同サービスは、OpenAIのAIモデルをMicrosoft Azureの堅牢なクラウド環境で提供する法人向けサービスです。
入力データや生成結果がOpenAI本体や他の顧客と共有されず、モデルの学習にも利用されません。データは顧客のAzureテナント内に保存され、AES-256による暗号化や顧客管理キーによる追加暗号化、ロールベースアクセス制御、プライベートネットワーク構築など、エンタープライズ向けの厳格なセキュリティ・コンプライアンス要件に対応しています。
機密情報を入力しないためのガイドラインを作る
技術的な対策と並行して、従業員がChatGPTに機密情報や個人情報を入力しないよう、明確なガイドラインを策定することが重要です。AI利用ポリシーを定め、入力禁止事項や利用可能なシナリオを具体的に示すことで、ヒューマンエラーによる情報漏洩リスクを大幅に低減できます。
ルールの周知徹底や定期的な教育・監査も、実効性を高めるポイントです。
チャット履歴の記録をオフに設定する
ChatGPTでは、ユーザーが自分のチャット履歴をAIモデルの学習に利用しないようにする「オプトアウトオプション」(履歴&トレーニング機能のオフ)を提供しています。このオプトアウトオプションを有効にすると、会話内容はOpenAIのモデル改善に使われず、プライバシー保護が強化されます。
設定方法は、ChatGPTの画面左下のプロフィールアイコンから「Settings」を選び、「Data controls」内の「Chat history & training」をオフにするだけです。ただし、この設定をしても新規会話は一時的に最大30日間保存され、悪用監視のために限定的に参照される場合がある点には注意が必要です。
ローカルLLMへの移行でセキュリティリスクを軽減する
さらに高い機密性や独自要件がある場合、社内サーバーやプライベートクラウド上にLLM(大規模言語モデル)を構築・運用できる「ローカルLLM」への移行も検討できます。
ローカルLLMなら、すべてのデータ処理が自社環境内で完結し、外部への情報流出リスクを大幅に低減できます。自社のセキュリティポリシーや業界規制に合わせたカスタマイズも容易で、アクセス制御や監査ログの運用も柔軟に行えます。
まとめ
ChatGPTは業務効率化や情報整理の強力なツールですが、企業利用には情報漏洩や誤情報、著作権侵害、不正利用など多様なセキュリティリスクが潜んでいます。こうしたリスクを最小限に抑えるには、「チャット履歴の記録オフ」「機密情報の入力禁止」「利用ガイドラインの策定」「法人向けプランやDLPなどの導入」といった多層的な対策が不可欠です。
記事を参考に、今すぐ自社のAI利用ルールを見直し、従業員教育や技術的対策の強化を実践しましょう。
もし、自社における具体的なセキュリティ対策の進め方や、より高度なセキュリティ要件への対応についてご不明な点や課題をお持ちでしたらAI導入とセキュリティ対策に精通した専門家にご相談いただくことをお勧めします。
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ChatGPTのセキュリティリスクについてよくある質問まとめ
- ChatGPTを利用する際に企業が直面しやすい主なセキュリティリスクには、どのようなものがありますか?
主なリスクとして、以下のものが挙げられます。
- 機密情報や個人情報の漏洩(プロンプト経由での流出、学習データへの利用懸念)
- APIキーの管理不備・漏洩(不正アクセス、不正利用)
- 誤情報・ハルシネーションによる業務影響(誤った意思決定、信頼失墜)
- 著作権侵害(生成物が既存の著作物と類似する可能性)
- 不正利用・悪用(マルウェア作成、フィッシングメール作成などへの加担)
- RAGシステム利用時の知識ベースへの不正アクセス・情報漏洩
- 企業向けのChatGPT Enterpriseプランを導入すれば、セキュリティリスクは完全に解消されますか?
Enterpriseプランではデータの暗号化やアクセス制御、入力データがモデル学習に使われないなど高度な対策が講じられていますが、利用者の誤入力や外部連携設定の不備などによるリスクは残ります。運用ルールの策定や従業員教育と組み合わせてリスク低減を図ることが重要です。
- ChatGPTの安全な業務利用のために、企業はどのような対策を講じるべきですか?
企業が実践できる主な対策は以下の通りです。
- ChatGPT Enterprise/Teamの導入: データ非学習、高度な管理機能、強化されたセキュリティ機能を活用。
- 信頼性の高いプラットフォームでの活用: Azure OpenAI Serviceなど、データプライバシーやセキュリティ機能が充実したサービスを選定。
- ガイドライン作成と周知徹底: 機密情報の入力禁止ルールなどを明確化し、従業員教育を実施。
- チャット履歴の記録オフ設定: 個々のユーザー設定で、会話内容がモデル改善に使われないようにする。
- ローカルLLMへの移行検討: 特に機密性が高い要件がある場合、自社環境内でLLMを運用。
- OpenAIはChatGPTの安全性を高めるために、どのようなセキュリティ対策を実施していますか?
OpenAIは、以下のような多層的なセキュリティ対策を導入しています。
- データ暗号化: 通信時(TLS 1.2以上)および保存時(AES-256)のデータ暗号化。ファインチューニングデータも暗号化。
- アクセス制御: 法人向けプラン(ChatGPT Enterprise/Team)でのSAML SSO認証、ユーザーごとの権限管理、APIキー認証など。
- 利用状況の監視: リアルタイム監視、AIによる自動モデレーション、キーワード検出、異常行動検出、人間によるレビュー。
- 不正検知: 24時間365日体制の監視・対応、第三者によるペネトレーションテストやセキュリティ監査。法人向けプランでは監査ログ機能も提供。
- コンプライアンスとプライバシー保護: GDPR・CCPA対応、ビジネス向けプランでのデータ非学習デフォルト設定、DPA締結、各種セキュリティ認証(SOC 2 Type 2, ISO/IEC 27001など)取得。
- ChatGPT Enterpriseプランの対策: 上記に加え、SOC 2準拠、管理者コンソール、ドメイン認証など、より高度な対策を実装。

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