希少疾患の早期発見にAIが貢献!京大病院の電子カルテで遺伝性血管性浮腫の患者予測AIモデルの有効性を実証
最終更新日:2024年12月09日
2024年12月9日、京都大学医学部附属病院、日本IBM、遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(DISCOVERY)は、遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者予測AIモデルの検証結果を発表した。
2022年12月から開始されたこの実証実験では、京大病院の電子カルテデータを活用し、5万人に1人とされるHAE患者の早期発見を目指した。検証の結果、AIが高リスクと判定したグループでは約5人に1人の割合でHAEの確定診断または疑いの記録があり、モデルの有効性が確認された。
<本ニュースの10秒要約>
- 遺伝性血管性浮腫の早期発見を支援するAIモデルを京大病院の電子カルテデータで有効性を実証
- AIモデルが高リスクと判定したグループの約5分の1にHAEの診断または疑いの記録が存在
- 米国データで構築したAIモデルの日本の医療機関での適用可能性を初めて確認
研究の背景と目的
遺伝性血管性浮腫(HAE)は5万人に1人という希少疾患であり、適切な診断を受けずに症状に苦しむ患者が多く存在する。この課題に対応するため、DISCOVERYは2021年2月に発足し、医療従事者、患者団体、製薬企業と共に早期診断の向上を目指している。
医療データAI分析ワーキンググループは日本IBMと協力し、HAEの潜在患者を特定するためのAIモデル開発を進めてきた。当初は希少疾患という特性から、データ量の多い米国の電子カルテ・レセプトデータを用いてモデルを構築したが、日本での実用化に向けては国内データでの検証が必要だった。
検証結果と成果
京大病院の電子カルテデータを用いた検証で、AIモデルの有効性が明らかになった。特筆すべきは、AIがHAEの可能性が高いと判定したグループにおいて、約5人に1人の割合でHAEの確定診断または疑いの記録が確認されたことだ。
この結果は、これまでHAEの診断記録がない患者の中から潜在的なHAE患者を発見できる可能性を示している。京大病院血液内科の山下浩平准教授も、海外データで構築されたモデルながら、国内での適用性が確認され、潜在患者の発見に貢献し得ると評価している。
今後の展望と期待される効果
本研究の成果は、2024年9月に学術誌「JMIR Medical Informatics」で発表された。海外のデータで構築したAIモデルが日本の医療機関でも有効に機能することが実証されたことで、今後の展開に大きな期待が寄せられている。
特に、HAEのような希少疾患の診断支援において、AIモデルが医療現場で実用的なツールとなる可能性が示された。これにより、早期診断の機会を増やし、患者のQOL向上に貢献することが期待される。
AI Market の見解
本研究は、希少疾患の診断支援におけるAI活用の重要な成功事例だ。技術面では、データ量が限られる希少疾患において、海外データで構築したモデルを国内で有効活用できることを実証した点が特に重要だ。これは、希少疾患のAI診断支援における国際連携の可能性を示すものだ。
ビジネス面では、医療機関、IT企業、患者団体、製薬企業が連携したコンソーシアム方式による開発モデルの有効性が示された。特に希少疾患領域では、このような多機関連携による取り組みが重要になる。
市場への影響としては、本事例が他の希少疾患領域でのAI活用のモデルケースとなる可能性が高い。また、医療AIの開発における国際連携の重要性を示す好例として、今後の医療AI開発の方向性に影響を与えるだろう。
参照元:IBM
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