バウンディングボックスとは?活用事例・4つのメリット・4つの注意点を徹底解説!
最終更新日:2024年11月12日
バウンディングボックスは、AIを用いた物体検出技術で、検出対象を短形で検出する技術です。高速で効率的、そして様々な分野に応用可能なこの技術は、自動運転から無人店舗まで、ビジネスの多様な場面で活用されています。
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目次
バウンディングボックスとは?
バウンディングボックスとは、物体と物体を区切る四角形の最小境界のことです。AIで画像内の物体を検出する際に活用され、物体の位置特定やカテゴリ分類を行う際に役立ちます。
関連記事:「AIの物体検出とは?YOLO・CNNなど機械学習による画像認識・最新事例徹底解説!」
例えば、画像内の複数の物体を認識する際に、バウンディングボックスを用いてそれぞれの物体の位置や種類、個数(個数カウント)を特定しやすくします。犬や人を区別する簡単な画像認識タスクでも、意外にAIは物体の位置や種類まで正確に認識できないこともしばしばです。
そこで、AIでも明確に区別できるように、物体の位置情報を与えてあげるのがバウンディングボックスの役割です。また、物体検出結果の出力時にバウンディングボックスを用いることで、結果を確認する際に視覚的に理解しやすくする役割もあります。
以下では、バウンディングボックスの特徴をさらに深く理解するために、セグメンテーションとの違いや応用されたAI物体検出の手法例を紹介します。
3D画像に対するバウンディングボックス
一般的にバウンディングボックスは2次元(2D)画像(平面の画像)で活用されることが多いですが、3次元(3D)画像で活用されることもあります。例えば、Lidarを用いて取得した点群データに対して、立方体のバウンディングボックスを活用するなどです。
この場合、長方形(xy軸)ではなく、立方体(xyz軸)でのバウンディングボックスとなります。
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セグメンテーションとの違い
バウンディングボックスと並んで画像認識に使われる技術に「セグメンテーション」がありますが、大きく異なる特徴を持ちます。
バウンディングボックスは物体の「位置(例:犬が画像内のどこにいるか)」を認識する技術であるのに対して、セグメンテーションは物体の「形(例:犬が走っているか、お座りしているか)」を詳細に抽出する技術の総称です。
例えば、医療診断システムのガン検知でそれぞれを利用する場合には、バウンディングボックスはガンがどこにあるかを認識します。一方セグメンテーションはガン(腫瘍)の大きさや形状まで認識できる機能として活用可能です。
このような違いからシステムや手法のニーズに応じて、それぞれの技術を使い分けたり、組み合わせて活用されたりします。
バウンディングボックスが活かされたAI物体検出の手法例
バウンディングボックスは、さまざまなAI物体検出や画像認識で活用されています。以下の表は、バウンディングボックスが活かされたAI物体検出の手法です。
AIモデル名 | 特徴 | 適用例 |
---|---|---|
YOLO(You Only Look Once) | バウンディングボックスの設定と分析を同時に行うことで、高い処理速度 現在多くの物体検出にて活用されている | 自動運転 監視システム |
R-CNN | 画像内でバウンディングボックスを約2,000個抽出して分類 | 高精度が求められる画像解析 |
Faster R-CNN | 特徴抽出ネットワークを用いて画像全体から特徴マップを生成し、候補領域の生成とクラス分類を同時に行うことで高速化 | 自動運転 監視システム |
DCN(Deformable Convolutional Networks) | 通常の畳み込み層を拡張し、変形可能なバウンディングボックスの採用により、物体の位置や形状に柔軟に対応 | 医療画像診断 製造業の品質管理 |
DETR(DEtection TRansformer) | 機械学習モデルのTransformerをベースにすることで、ラベル付け作業を行わずに学習が可能 | 画像解析全般 |
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バウンディングボックス×物体検出の4つのメリット
バウンディングボックスを物体検出システムに活用することで、機能性やコスト面でいくつかメリットがあります。ここでは、物体検出に使われるほかのアプローチと比較しながら、バウンディングボックスのメリットを解説します。
高速な物体検出
バウンディングボックスは物体の詳細な輪郭情報を保持する必要がなく、4つの座標点のみで表現できます。それで、物体を認識する処理で複雑な計算を必要としません。計算処理が効率的で、高速な物体検出に貢献します。
一方、物体の特徴的な点を特定するキーポイント検出や画像をピクセル単位で認識するセグメンテーションは、物体の形状や特徴を細かく抽出します。そのため、より多くの計算リソースを消費し、処理速度が遅くなりがちです。
そのため、バウンディングボックスは、リアルタイムでの物体検出が求められる自動運転システムや監視カメラ、ロボティクスなどのスピードを重視したいシステムに最適なアプローチです。
小規模なシステムでも動かせる
四角形のシンプルなバウンディングボックスは、AIの学習負荷を軽減できるため、メモリ容量が限られる小規模なシステムでも動作可能です。例えば、セキュリティカメラシステムや工場内の異常検知システムなど、リソースが限られている環境でも、バウンディングボックスを使った物体検出モデルは効率的に機能します。
一方、画像内すべての物体にラベルを付けることを目指すインスタンスセグメンテーションやセマンティックセグメンテーションは、物体の輪郭や詳細を正確に捉えるために、より高い計算能力と大規模なインフラが必要です。
そのため、バウンディングボックスは、大規模なシステムはもちろん、小規模なシステムにも採用可能なため、ほかのアプローチに比べて幅広いシステムへの活用が期待されます。
低コストで済ませられる
バウンディングボックスは四角形で単純な形状をしているため、アノテーション作業が比較的簡単で、短時間で大量のデータに対してアノテーションを施せます。バウンディングボックスを活用する際には、システムに物体を認識させるための「アノテーション」作業が必要です。
アノテーションとは画像内にバウンディングボックスを設定し、そのボックス内に写る物体に名前を付ける作業のことです。多角形で認識するポリゴン、ピクセル単位で認識するセグメンテーションなどほかのアプローチでは画像内をより細かく認識する必要がある分、一つの画像内において大量のアノテーションが必要です。
そのため、バウンディングボックスのアノテーションを委託する際の単価は5~10円程度で済ませられる一方で、セグメンテーションは40~60円程度(難易度によっては100円なども)とバウンディングボックスの約10倍近く高額です。
実際の費用は、バウンディングボックスのラベル数、セグメンテーションの難易度などによって大きく変動しますが、総じてバウンディングボックスのほうが費用が安く済むことはほぼ間違いありません。
バウンディングボックスの場合はアノテーションにかかるコストを抑えられることから、ほかのアプローチに比べて物体検出システムの開発・導入コストを抑えられます。
汎用性が高い
バウンディングボックスは、様々なAIアルゴリズムに適用可能な汎用性の高い手法です。R-CNN、YOLO、SSDなど、多くの物体検出アルゴリズムがバウンディングボックスを基本としています。
そのため、自動運転、監視カメラ、医療画像診断、小売業の在庫管理など、様々な分野で活用されています。2D画像だけでなく、3D点群データにも拡張可能で、自動運転などの3D物体検出にも応用できます。
バウンディングボックスの主な活用分野6選
バウンディングボックスは、さまざまな分野で活用されており、特にAIの物体検出システムに対する積極的な活用が見られます。以下では、バウンディングボックスの主な活用分野を解説するとともに、企業の活用事例を簡単に紹介します。
自動運転
自動運転分野では、道路上の車両・信号機・歩行者の位置を特定する目的でバウンディングボックスが活用されています。
例えば、2016年に実施されたNTTコミュニケーションズ株式会社と日本カーソリューションズ株式会社の共同実験では、AI時系列モデルを用いてドライブレコーダーから取得したデータを解析しています。車両前に飛び出してくる自転車など危険運転車両を約85%の高精度で自動検知することに成功しました。
自動運転分野においてはバウンディングボックスの高速処理が活かされ、自動かつ安全な運転の実現に向けて活躍しています。
関連記事:「自動運転にAIが欠かせない理由とは?仕組みとメリット・デメリット徹底解説!」
製造現場の異常検知
製造現場では、作業員・製品・機械・ロボットの異常を検知するシステムでバウンディングボックスが活用されています。
例えばアラヤ株式会社は、画像認識AIを用いて作業車両と作業員の位置関係や接近距離を識別し、危険な状況を検出してアラートを通知することで、作業現場の安全性向上につながるシステムを提供しています。
このようにバウンディングボックスは異常行動をする作業員や不審者の検出のほかに、製造ラインの不良品検知や機械・ロボットの故障検知へ活用され、製造現場のスマートファクトリー化に貢献しています。
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交通流量計測
2021年9月に国土交通省から国が調査する交通量観測の人手観測を廃止し、AIを用いた観測手法へ移行する発表がありました。それ以来、バウンディングボックスを活用したAI交通量計測の開発が進められています。
例えば、株式会社フューチャースタンダードの交通量調査AIは、自動車(小型/大型)・ベビーカー・歩行者など46種類に分けて観測できるシステムです。実証実験では人手観測と比較し99.1%の精度を実現しました。また、長時間にわたる映像解析でも高精度にカウントし続けられる点が特徴です。
このように交通量計測分野では、バウンディングボックス採用のAI物体検出が人手観測に代わるツールとして期待されています。
無人コンビニ
無人コンビニを実現するうえで、顔認証や商品認識システムなど幅広いAIシステムへバウンディングボックスが活用されています。
例えば、NECは定型物と非定型物の両方を高精度で認識するシステムを開発し、商品を一つずつセンサーにかざすことなく、UNIQLOのレジにあるような一括で複数商品を認識できるPOSシステムを実現しました。
小売店のオペレーションのなかでも特にレジ業務は店員を拘束する時間が長いため、バウンディングボックス採用の画像認識AIによる無人化が期待されています。
関連記事:「無人店舗・無人コンビニ4事例を紹介!AIによる無人レジ・無人接客の意外な課題とは?仕組み・メリット徹底解説!」
小売店のマーケティング活動
小売店では、店舗前の交通量分析や来客属性の推定、顧客動線の認識など幅広いマーケティング活動に対して、バウンディングボックスを用いたAI物体検出システムが活用され始めています。
例えば、株式会社ABEJAは店舗内に設置されたカメラの顔画像をAIが分析し、来店者の年代や性別などの属性を推定・測定するシステムを提供しています。それによって、顧客分析などのマーケティング効果測定を可能にしています。
バウンディングボックスを活用したAI技術は、小売業のマーケティング活動を高度化し、より効果的な集客が期待されています。
農作業
農作業においても、バウンディングボックスを活用したAI画像認識システムが開発されつつあります。
例えば、農業用ロボットが作物を収穫する際に、バウンディングボックスを用いて刃を入れる枝の位置を正確に特定する農園機器AIシステムがあります。株式会社ブライセンは、この農作業支援AIシステムのアノテーションを実施し、効率的かつ正確な収穫作業をサポートしています。
農業従事者の高齢化に伴い省力化ニーズが高まるなかで、バウンディングボックスを活用したAI画像認識システムによる農作業の自動化に期待が集まっています。
バウンディングボックスを活用する際の4つの注意点
バウンディングボックスはシンプルで効果的な物体検出技術ですが、利用にあたっては注意すべき点があります。他のアプローチであるキーポイント検出、インスタンスセグメンテーション、セマンティックセグメンテーションと比較しながら、バウンディングボックスを活用する際の注意点を説明します。
形状が複雑な物体の検出には向いていない
バウンディングボックスは四角形の境界を用いて物体を囲むため、形状が単純な物体には効果的ですが、複雑な形状を持つ物体の検出には向いていません。特に、細長い物体や不規則な形状の物体の場合、余分な背景領域を含んでしまう可能性があります。
例えば、バウンディングボックスで木の葉を囲むと、葉以外の背景部分も一緒に含まれてしまい、検出精度が低下します。複雑な形状の物体や異常物体を検出するケースでは、ピクセル単位で認識し物体の形状を正確に捉えられるセグメンテーションが適しています。
そのため、バウンディングボックスを使用して製品化する際には、物体の形状に応じてほかのアプローチとの組み合わせを検討しましょう。
重なり合う物体の検出
複数の物体が重なり合っている場合、バウンディングボックスでは個々の物体を正確に分離することが難しくなります。これは自動運転や混雑した環境での物体検出において課題となる可能性があります。
インスタンスセグメンテーションであれば、個々の物体のピクセル単位の境界を検出します。そのため、バウンディングボックスよりも正確な物体の形状を捉えられます。
クラス内での細かな分類が困難
バウンディングボックスはクラス(種類)の分類は可能ですが、その中の細かな属性や状態の分類は困難です。例えば、人物の表情を認識する場合、「喜ぶ人」「怒る人」などの細かな状態の識別は困難です。
高精度のアノテーションが必要
バウンディングボックスを活用する際には、AIの学習に必要なアノテーション作業が重要です。アノテーションの精度が高ければ、AIがより正確に学習でき、高精度な物体検出が可能となります。
一方、アノテーションの精度が低いと、誤ったデータでAIが学習することになり、検出精度が大きく低下します。特に大量のデータを扱う場合、アノテーション作業の正確さを保つことが重要です。
そのため、アノテーション作業のノウハウが乏しい場合には特に、専門のアノテーション会社に依頼することをおすすめします。また、バウンディングボックスモデルの性能を向上させるには、様々な角度、サイズ、照明条件下での物体を含む画像データセットを用意することが重要です。
信頼できるアノテーションサービス会社をこちらで特集していますので併せてご覧ください。
バウンディングボックスについてよくある質問まとめ
- バウンディングボックスとは?
バウンディングボックスとは、画像内の物体を囲むために使用される四角形の枠のことです。AIによる物体の検出や認識で、物体の位置やサイズを特定する際に利用されます。
バウンディングボックスは、シンプルな形状で高速かつ効率的に物体を認識できるため、製造ラインの異常検知や顔認証システムなど幅広い用途に活用されています。
- バウンディングボックスとセグメンテーションの違いは?
バウンディングボックスは、物体全体を四角形で囲むため、物体の大まかな位置とサイズを特定するのに適しています。
一方セグメンテーションは、物体のピクセル単位での輪郭や形状を詳細に抽出する技術で、形状の複雑な物体の検出タスクでも高精度な結果を得られます。
- バウンディングボックスを使用する際の主な課題は何ですか?
主な課題は、複雑な形状の物体や重なり合う物体の正確な検出が難しい点です。また、アノテーションの質がAIの精度に大きく影響するため、正確なデータ準備が重要です。これらの課題に対しては、他の技術との組み合わせや専門家によるアノテーション作業の実施などの対策が考えられます。
まとめ
バウンディングボックスは四角形のシンプルな形状から、さまざまなAIによる物体検出や認識において活用されています。特に、高速な処理が求められる自動運転やセキュリティシステム、交通量調査で役立てられています。
その高速性、効率性、そして幅広い応用可能性は、ビジネスにメリットをもたらします。バウンディングボックスを活用したAIソリューションが、業務効率化や安全性の向上、新しい顧客体験の創出につながる可能性があります。
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