DeepSeek-R1とは?OpenAI o1に迫る高性能モデルの料金・アーキテクチャの特徴、使い方、注意点を徹底解説
最終更新日:2025年03月08日

OpenAIのGPTシリーズに匹敵する性能を持つLLMでありながら、オープンソースであり、API利用料金も低く抑えられ、2025年前半の大きな話題となった「DeepSeek-R1」。
この記事では、中国発のAI企業DeepSeekが開発したDeepSeek-R1の概要から使い方、料金、アーキテクチャ、メリット、そして活用時の注意点について解説していきます。DeepSeek-R1をはじめとするLLMの事業活用に興味がある方は、ぜひ最後までお読みください。
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目次
DeepSeek-R1とは?
DeepSeek-R1とは、中国のAI企業DeepSeekが開発するDeepSeekシリーズのAIモデルで、推論能力が強化されたLLM(大規模言語モデル)です。OpenAIのGPTシリーズ(ChatGPTに搭載)と同等の性能を目指しながらも、オープンソースとして公開されている点が特徴です。
開発コストや運用コストが低く、API料金もOpenAI o1の25分の1以下とされています。
DeepSeek-R1は自然言語の理解や生成に優れており、チャットボットや検索エンジンの強化、自動文章生成、プログラミング支援など、幅広い分野での活用が可能です。商用利用を前提とした開発にも適しており、企業が独自のAIシステムを構築する際の強力なツールとして期待されています。
DeepSeek-R1を使う方法
DeepSeek-R1の使い方としては、以下が挙げられます。
- Web版
- スマホアプリ
- API
- ローカル環境
- クラウドサービス
Web版では、特別な設定なしでDeepSeek-R1にアクセスし、対話形式で利用できます。初心者でも簡単に試せる手軽な方法です。
スマホアプリからもDeepSeek-R1を利用可能です。日本語対応で検索機能も含まれています。iOSはこちら、Androidはこちら。
APIを利用する方法は、DeepSeekが提供するAPIエンドポイントにリクエストを送信するだけで、モデルの推論結果を取得できます。PythonやJavaScriptなどの一般的なプログラミング言語を用いて、チャットボットやドキュメント要約システムなどを容易に構築できます。
ローカル環境での運用を考えている場合は、DeepSeek-R1のオープンソース版をGitHubからダウンロードし、GPU環境を整える必要があります。NVIDIAのCUDA対応GPUを使用し、PyTorchなどのフレームワークを活用して実装するのが一般的です。
クラウド環境での運用については、主要なAIプラットフォームが提供するコンピューティングリソースを活用することで、手軽に大規模な推論処理を実行できます。
AWSのAmazon BedrockのモデルカタログやMicrosoft Azure AI Foundryのモデルカタログを通して利用することができるようになっています。


DeepSeek-R1の料金
DeepSeek-R1は、WebUIおよびAPIを通じて利用可能です。WebUIを利用する場合は無料で試すことができます。
APIを利用する場合、従量課金制が採用されています。入力トークン数と出力トークン数に応じた料金は以下の通りです。
トークン | 料金 |
---|---|
入力トークン | 100万トークンあたり0.55ドル~(キャッシュミス時) 100万トークンあたり0.14ドル~(キャッシュヒット時) |
出力トークン | 100万トークンあたり2.19ドル |
コンテキスト | 64K |
最大CoTトークン | 32K |
最大出力トークン | 8K |
キャッシュヒットとは、過去に同一の入力プロンプトが送信され、その結果を再利用できる状態を指します。この場合は計算処理が不要なため、料金が大幅に割引されます。
また、日本時間1:30~9:30(16:30~00:30 UTC)は最大75%オフとなります。
関連記事:「生成AIのAPIのメリットやデメリット、代表的な生成AIのAPIサービスとその特徴」
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DeepSeek-R1のアーキテクチャの特徴
DeepSeek-R1の推論性能を向上させるアーキテクチャとして、以下で構成されています。
- Mixture of Experts(MoE)
- マルチヘッド潜在アテンション
- 強化学習(RL)と教師あり微調整(SFT)
- 複数トークン予測
それぞれのアーキテクチャについて解説していきます。
Mixture of Experts(MoE)
DeepSeek-R1は、Mixture of Experts(MoE)は、大規模なニューラルネットワークを複数のエキスパートに分割し、各入力に応じて適切なエキスパートのみを動作させるアーキテクチャです。
モデル全体のパラメータ数を増やしながらも、実際の推論時には一部のエキスパートだけしか使用しないため、計算負荷を抑えることが可能です。例えば、通常のTransformerではすべての層が一律に計算を行うのに対し、MoEでは入力に応じて特定のエキスパートのみが有効化され、最適な処理を行います。
DeepSeek-R1では各層にエキスパートが配置され、入力ごとに最適なエキスパートが選択される仕組みとなっています。これにより、モデル全体の学習能力を向上させつつ、推論時には計算量を抑えることが可能です。
マルチヘッド潜在アテンション(MLA)
マルチヘッド潜在アテンションは、従来の自己注意メカニズムを改良したもので、モデルがより効果的に文脈を理解し、長文の処理能力を高めます。DeepSeek-R1のマルチヘッド潜在アテンションは潜在空間(Latent Space)を活用しており、推論の速度や精度が計算コストに左右されにくくなります。
また、事前に学習した潜在表現を用いて重要な情報を抽出し、アテンションを適用しています。これにより長文の理解力が向上し、より自然で一貫性のあるテキスト生成が可能になっています。
強化学習(RL)と教師あり微調整(SFT)
DeepSeek-R1は、強化学習(RL)を用いて推論能力を向上させ、教師あり微調整(SFT)を通じて言語一貫性を高めます。このアプローチにより、Chain-of-Thought推論や自己検証などの高度な推論能力が実現されています。
複数トークン予測
DeepSeek-R1では、複数トークン予測(Multi-Token Prediction)の技術が採用されています。1回の推論で複数のトークンを同時に生成できるため、応答の処理速度が大幅に向上します。
特に、リアルタイム性が求められるアプリケーションでは、従来のシステムと比較して大幅な処理時間の短縮が可能になります。また、文脈の一貫性をより高い精度で保つことができ、自然なテキスト生成が実現可能です。
技術詳細については、DeepSeek-R1に関する論文解説記事をご参考ください。
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DeepSeek-R1を活用するメリット
DeepSeek-R1を活用することで、さまざまなメリットが期待できます。
OpenAI-o1と同等の性能を誇る
DeepSeek-R1の推論精度は、OpenAI-o1モデルと同等のパフォーマンスが可能です。ベンチマークテストでは、さまざまな言語タスクにおいてOpenAI-o1と同レベルのスコアを記録しています。
ベンチマーク | DeepSeek-R1 | OpenAI o1 |
---|---|---|
数学タスク(AIME 2024) | 79.8% | 79.2% |
数学問題集(MATH-500) | 97.3% | 96.4% |
プログラミングタスク(Codeforces) | 96.3% | 96.6% |
汎用知識タスク(MMLU) | 90.8% | 91.8% |
長文の一貫性や複雑な質問への対応能にも優れた結果を示しています。
低コストで運用できる
高度な推論を得意とするDeepSeek-R1ですが、運用コストを抑えることが可能です。
これにはアーキテクチャであるMixture of Experts(MoE)、また強化学習メインで学習されたことが大きく影響しており、計算リソースを効率的に活用し、不要な処理を削減しています。特定の入力に対して適切なエキスパートのみを動作させるため、計算コストを大幅に削減することが可能です。
API料金についても、OpenAIのo1と比べて低価格に設定されており、費用負担を軽減して導入できます。企業はより少ない予算でAIの活用を実現することが可能です。
オープンソースなので商用利用も可能
DeepSeek-R1はオープンソースとして公開されているため、商用利用が可能です。オープンソースライセンスのもとで提供されているため、自社の環境に導入し、自由にカスタマイズして活用できます。
これにより、DeepSeek-R1を基盤に独自のAIモデルを開発したり、特定の業務用途に最適化したチューニングを行ったりすることが可能です。また、API利用に伴う従量課金の制約を受けずに、オンプレミス環境やクラウド上で独自に運用できます。
思考プロセスの明示
DeepSeek-R1は、Chain of Thought(CoT)推論を採用しており、チャット上に思考プロセスを表示する仕組みになっています。複雑な問題を段階的に解決するプロセスが明示されますので、中間結果の検証が可能で、信頼性の高い出力を生成します。
AIの意思決定プロセスを理解することでAIに対する信頼を高めることができ、エラーや不正な出力を迅速に検出できます。説明可能なAI(XAI)の実現に近くなります。
ただし、 CoT推論の裏側が見える透明性は、プロンプト攻撃に悪用される可能性がありますので注意が必要です。
DeepSeek-R1を使う際の注意点
DeepSeek-R1の運用時には、いくつかの注意点があります。一部の企業では、DeepSeekが中国の企業によって開発されたことを懸念しており、使用不可になっている現状です。
では、なぜDeepSeek-R1の使用が危険・注意すべきと見なされるのでしょうか。以下では、DeepSeek-R1を使う際の注意点について解説していきます。
データ漏洩のリスクがある
クラウド版やアプリ版を通してDeepSeek-R1を運用する際には、データ漏洩のリスクに注意が必要です。DeepSeekは中国の法律に基づいてプライバシーポリシーが策定されているため、入力した情報が中国側に開示される可能性もあります。
特に、企業情報を入力すると機密性の高い情報が漏洩するリスクが高まります。顧客情報が流出すると甚大な損失となるため、セキュリティに関しては注意しなければいけません。
DeepSeekは中国企業であり、データは中国国内のサーバーに保管されます。中国の法律に基づいてデータが取り扱われるため、日本の個人情報保護法が適用されない可能性があります。
国会でもDeepSeekの業務使用を控えるようにといった話題が出ており、企業活動における活用には懸念すべき点が多いというのが現状です。
政治的バイアスの疑惑がある
低コストが魅力のDeepSeekですが、中国企業に開発された背景から、政治的な影響を受けているという懸念があります。開発プロセスにおいて、中国に都合のいいデータで学習されたのではないか、と注目されているのです。
話題に挙がったバイアスとしては、「天安門事件」に関する問いに対して回答しなかったというものがありました。つまり、中国の社会的・政治的な価値観が反映され、バイアスがかかった回答がされるリスクがあるのです。
こうしたバイアスがあると、正確な回答が出力されないだけでなく、倫理的な問題にも発展しかねません。
プロンプト攻撃のリスク
Chain of Thought(CoT)推論は思考プロセスを明示するため、プロンプト攻撃や機密データの窃取に悪用される可能性があります。
他社データ蒸留疑惑
DeepSeek-R1は、OpenAIの技術を不正に利用した可能性があるという疑惑が持ち上がっています。「蒸留」と呼ばれる手法でOpenAIのデータを利用した疑いがあります。
OpenAIのAIモデルに質問して得られた生成結果を「合成データ」としてデータセットを作成し、これをDeepSeek-R1に学習させた疑いです。
蒸留はOpenAIの利用規約に反する可能性があります。もしこの疑惑が事実であれば、知的財産権の侵害が発生する可能性があります。特に商業利用においては法的リスクを伴うため、ライセンスの詳細を確認し、適切な利用範囲を守ることが重要です。
DeepSeek-R1についてよくある質問まとめ
- DeepSeek-R1の何がすごいの?
DeepSeek-R1は、中国のAI企業DeepSeekが開発したLLM(大規模言語モデル)です。推論能力が強化されており、OpenAIのGPT-o1と同等の性能を目指して開発されています。
オープンソースで公開されており、API利用料金が比較的安価な点が特徴です。自然言語処理能力に優れ、チャットボット、文章生成、プログラミング支援など幅広い用途での活用が期待されています。
- DeepSeek-R1はどうやって使えますか?
DeepSeek-R1は、Web版、スマホアプリ、API、ローカル環境、クラウドサービスなど、多様な方法で利用可能です。
Web版やスマホアプリは手軽に試したい場合に適しており、APIを利用することで、チャットボットや文書要約システムなど、様々なアプリケーションに組み込むことができます。
ローカル環境やクラウドサービスでの運用は、より大規模な推論処理やカスタマイズを行いたい場合に適しています。
- DeepSeek-R1の注意点は何ですか?
DeepSeek-R1を利用する際には、データ漏洩のリスク、政治的バイアスの可能性、プロンプト攻撃のリスクに注意が必要です。DeepSeekは中国企業であり、データが中国国内のサーバーに保管されるため、企業によっては情報セキュリティポリシーに抵触する可能性があります。
また、中国の政治的背景からバイアスの影響を受けている可能性も指摘されています。Chain of Thought推論は思考プロセスを可視化する一方で、プロンプト攻撃に悪用されるリスクも孕んでいます。
まとめ
最近話題に挙がるDeepSeekの最新モデルであるDeepSeek-R1。OpenAI-o1と同様の推論性能を持っている一方で、中国で開発された背景から政治的バイアスやデータ漏洩のリスクが懸念されており、安全に利用できるかは不透明と言えるでしょう。
DeepSeek-R1の導入を本格的に検討する際には、記事で解説したメリット・デメリットを踏まえ、貴社の具体的な要件やリスク許容度に合わせて、専門家への相談も視野に入れることを推奨します。
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