ゲームAI(人工知能)の7つの活用事例!概要や歴史も併せて解説
最終更新日:2024年09月23日
AI(人工知能)技術が急速に進展しており、ゲーム開発にも多くのAIが活用されています。人間以外のプレイヤーとしてのAIだけでなく、ゲームの面白さや開発の効率化などにもAIは大きな役割を果たしています。
本記事ではゲームAIとは何か?基礎知識と活用方法、具体的な事例を7例解説していきますので、ご参考ください。
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目次
ゲームで活用されているAIとは?ゲームAIの歴史
ゲームAIは、主にゲームを開発する際に使われる言葉です。ゲームをプレイするAIという意味と、ゲームの構成要素としてのAIという2つの意味があります。
役割が多様化しており、さまざまな場面で使われるようになりました。ここからは、年代別にゲームAIの歴史を解説します。
【1970年代】
アーケードゲームやPCゲームが誕生しました。まだ家庭用ゲーム機は発売されていません。AIはゲーム中の一つの役割として、パターン化された単純な動きをする敵キャラクターが存在するに過ぎませんでした。
【1980年代】
家庭用ゲーム機が登場し、2DシューティングやRPGゲームなどが人気となりました。ゲーム内にステージや仕掛けが増えましたが、依然として敵キャラクターがパターン化された動きのみです。
【1990年代〜2000年代】
3Dゲームへと進化していきます。ルールが複雑で記述が困難となったため、パターン化した動きから、キャラクター自身が自律的な行動を意思決定できるAI、エージェント・アーキテクチャが登場するようになりました。また、1対1での戦略ゲームで世界王者に勝てるようになります。1997年にはチェスで、2017年囲碁で達成しています。
【2010年以降】
ゲームコンテンツ中のAIに限らず、ゲーム開発やデバッグに関するAIの応用が増加。背景には、複雑化、大規模化したゲームの開発の効率化や最適化、デバッグや品質管理の自動化・効率化が挙げられます。プレイヤーとしてのAIは、多人数同士での戦略ゲームや、リアルタイムでのゲームでも人間のプレイヤーを破るAIが登場しています。
ゲームAIの種類
ゲームで活用されるAIには大きく分けて、「ゲームコンテンツ中のAI」と「ゲーム開発工程のAI」があります。
ゲームコンテンツ中のAI
ゲームコンテンツ中のゲームAIには大きく分けて3つの分野があり、「キャラクターAI」「ナビゲーションAI」「メタAI」と呼ばれます。
キャラクターAI
ゲーム内の環境を認識し、意思決定して自律的に行動するAIです。ゲームの世界の中で、飛んだり、跳ねたり、攻撃したり、さまざまな行動をします。キャラクターの頭脳に当たる部分がキャラクターAIで、ゲーム世界から情報を集めて意思決定をします。意思決定とは具体的な行動を決めることです。
ナビゲーションAI
ゲーム内の地形を認識し、経路をナビゲーションするAIのことです。ゲーム内のマップ全体の地形の特徴を解析して、経路や位置取りを計算します。人間であれば直感的に認識できるであろう地形の形状をAIによって認識します。
メタAI
メタAIはゲーム全体を統括する存在です。プレイヤーの動きから、敵キャラクターの出現やゲーム環境の変化など俯瞰的な視点でゲーム全体の状況を把握しコントロールします。ゲームデザインやバランス調整が従来は人の手によって作られていましたが、AIによって実現可能となりました。
ゲーム開発工程のAI
ゲーム開発工程で活用されるAIは、ゲーム開発環境、デバッグなど開発者を支援し作業効率を上げる役割を果たします。
ゲーム開発
大規模で複雑化したゲームの開発効率化のために作られたAIです。ゲーム全体の仕様を決定づけるパラメータを自動調整するAIや、自動でのゲームバランスを調整するAIなどがあります。
テスト自動化、品質保証
品質保証やデバッグはゲーム開発の後半では最も重要です。しかし、大規模で複雑化したゲームテストの対応にも限界がきています。
AIによる自動プレイでバグの発見やゲームバランスの不具合などを修正するものや、開発者の代わりにテストのデータを自動生成して実行するAI、強化学習によるAIがあります。
ゲーム業界以外でも活躍している強化学習の活用事例についてこちらの記事で特集していますので関心ある方はご覧ください。
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ゲームAIの活用事例7選
ゲームAIの活用事例を7例紹介します。ゲーム内のAI、ゲーム開発過程のAI、またゲームAIを他分野に活用した事例を解説していきますので開発を検討している方は参考にしてください。
AIによるキャラクターの声、モーション、会話内容などの生成事例
AIによってゲーム内のキャラクターの声やモーションなどを作成可能とした事例です。株式会社エーシーズは株式会社バンダイナムコ研究所と共同で、アバターなどに活用できるキャラクターの動きをAIにより生成する研究開発をしています。
バーチャルキャラクターやアバター市場の拡大で、場面に応じた自然で多様なキャラクターの動きを作成する需要が高まっています。しかしながら画一的な動作や不自然でぎこちない動きになりやすく、膨大な数のモーションデータを用意する必要がある課題がありました。
人間の動きをデータとして取得するモーションキャプチャで、動作の内容を表す「コンテンツ」と喜怒哀楽や、属性など動作のニュアンスを表す「コンテンツ」に分解して蓄積します。AIを活用したモーションスタイル変換技術によって、一方のモーションのコンテンツを維持して、もう一方のモーションのスタイルを反映した新しいモーションの作成が可能です。
キャラクターが感情に合わせた喜怒哀楽や男女などの属性に応じて柔軟な動きを表現可能とすることで、自然に振る舞えるような個性をもたらすことを目指しています。
ゲームAIを応用させた会話ジェネレーターの事例
ゲームAIの開発で培った技術を応用させ、AIソリューション開発をした事例もあります。
モリカトロン株式会社は、ゲームAIの研究開発からソリューションを開発。フリートークができるAI会話ジェネレーターで、人との雑談を実現するシステムです。
日本語の対話情報を大量に学習させ、語り合っている相手のこれまでの発言を記憶し、会話の文脈を考えた受け答えができるなど、自然な返答が自動的に生成できます。APIでTwitter、Slack、LINEなどと連携できるチャットボット用です。
メタAIによる人のモチベーションを高める研究事例
オムロン株式会社と、株式会社スクウェア・エニックスは、卓球ロボットを通じて、人のモチベーションを高めるAIの共同研究を行っています。
オムロンの強みである「人の感情と能力を読み取るセンシング技術」と、スクウェア・エニックスがゲーム開発で培ったメタAIの技術を組み合わせました。
卓球ロボットのフォルフェウスはAIやロボティクスなどの最先端技術を搭載し、高い卓球スキルと、対戦相手を深く理解し個人個人に合わせた最適な返球やアドバイスを行うことにより、人の成長を促すコーチングが可能です。
ナビゲーションAIによる石炭火力発電所の燃料運用最適化事例
株式会社ディー・エヌ・エーと関西電力株式会社は、石炭火力発電所の燃料運用の最適化を行うAIソリューションを共同開発しました。
石炭火力発電所では、石炭の種類により混載や混焼ができない制約があり、熟練技術者の長年の経験やノウハウに基づき、運用のスケジュールを作成し状況変化に応じて見直しをしています。経験の浅い技術者では運用が難しく、スケジュール作成も時間がかかるという課題がありました。
「膨大となる組み合わせの中から、最適なものを探索する」ゲームAIに用いられる技術のアルゴリズムから構築しました。熟練技術者が半日程度要する運用スケジュール作業をわずか数分程度で自動出力し、期間も4ヶ月先まで自動でスケジュール作成を可能としました。
開発工程でのテスト作業の効率化・自動化を強化学習AIで実現した事例
株式会社セガゲームスと株式会社ブレインパッドは、ゲーム開発工程におけるテスト作業の負荷を軽減させるため、強化学習AIによるテスト作業の効率化や自動化を実現しました。
ゲーム開発に欠かせないテスト作業は時間やコストが非常に多くかかりますが、ゲームの人気や収益に直結するため決して疎かにできない重要な工程です。
スマートデバイス向けの多くは、リリース後にもアップデートが頻繁に行われるため、さらにテスト作業の負荷が大きくなります。
そこで、強化学習を用いたテスト作業を導入しました。
ほとんどの機械学習手法だと大量のデータをもとにした学習が必要ですが、開発段階だと一般ユーザーがプレイしていないために学習に使えるデータがありません。ゲームの前提条件を1つでも変えると、ゼロから攻略法を学習させる必要があり多大な時間を必要としていました。
強化学習はAIが実際に行動しながら、最適戦略を見つけていく学習手法です。データが無くてもAIが行動して結果を観測できるような環境があれば学習できる点が特徴です。強化学習により、ゲームバランスの調整作業をより短時間で行えるようになり、開発効率が飛躍的に向上したということです。
ゲームの品質管理やバランス調整サポートをAIで実現した事例
株式会社アラヤでは、ゲーム開発の品質保証を効率化するAIの開発を手掛けています。機械学習や強化学習の技術を応用し、開発における膨大な作業の自動化が可能です。
強化学習技術に基づいた自律エージェントが、常に自らの状態を観測、状態に応じた最適な行動選択を可能としました。ランダム性や外乱に対する頑健性を期待できます。
ソーシャルゲームやオンラインゲームは頻繁なアップデートを必要とし、コンテンツの組み合わせが急増するためバランス調整が困難となります。自律エージェントに繰り返し自動でゲームをテストプレイさせることで、新規コンテンツのバランスや難易度が適切であるか評価が可能です。
オンラインゲームでプレイヤーの操作ログが蓄積されていた場合、その操作ログをもとに模倣学習させることで、プレイヤーを模倣するクローンが作成可能です。プレイヤーの腕前ごとにクローンを作成し、テストプレイに使用してバランス調整の参考にしたり、対戦・協力ゲームでプレイヤーが足りなくなっても補充要因としたりという活用ができます。
自動車レースゲームで人間に勝ったAIの事例
ソニーグループは、自動車レースゲームで人間のプレイヤーを破るAIを開発しました。複雑な操作が必要なレースゲームで、達人ともされる人間プレイヤーに勝ったことは、瞬時の意思決定、他プレーヤーとの巧みな駆け引きをこなす能力をAIが身につけたことを示しました。
AI同士が対戦を繰り返し試行錯誤しながら学習する強化学習モデルで、駆け引きや露骨な妨害をしないといったフェアプレーなどこれまでは明確な定義が難しく、プログラムしにくかった複雑な動きも習得できるようになりました。単にレースに勝つことだけでなく、人間らしい振る舞いをするAIとしても注目されています。
このAIはゲーム開発だけでなく、自動運転技術やロボット制御技術にも応用できるとして研究を進めています。
ゲームAIについてよくある質問まとめ
- ゲームAIの主な種類には何がありますか?
ゲームAIの主な種類は以下の通りです。
- ゲームコンテンツ中のAI
- ゲーム開発工程のAI
- ゲームAIの具体的な活用事例にはどのようなものがありますか?
ゲームAIの具体的な活用事例には以下のようなものがあります。
- キャラクターの声、モーション、会話内容の生成(エーシーズとバンダイナムコ研究所の事例)
- 会話ジェネレーターの開発(モリカトロン株式会社の事例)
- 人のモチベーションを高める卓球ロボットAI(オムロンとスクウェア・エニックスの事例)
- 発電所の燃料運用最適化(ディー・エヌ・エーと関西電力の事例)
- 強化学習AIによるゲームテスト作業の効率化(セガゲームスとブレインパッドの事例)
- ゲームの品質管理やバランス調整(アラヤの事例)
- 自動車レースゲームで人間に勝つAI(ソニーグループの事例)
- ゲーム開発におけるAI活用のメリットは何ですか?
ゲーム開発におけるAI活用の主なメリットは以下の通りです。
- 開発効率の向上
- ゲーム品質の向上
- 新しいゲーム体験の創出
- 他分野への応用
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本記事ではゲームAIの活用事例を7例紹介しました。
進歩しているAIの技術をゲーム開発に取り込むことにより、ゲームの面白さやキャラクターの多様化などユーザー体験の向上に寄与していくでしょう。また開発面でも効率化、自動化が可能となり大規模で複雑なゲームも開発しやすくなります。
ゲームAIの技術を他分野へのビジネスにも活用できる事例も紹介しました。
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