鉄スクラップAI解析システムのEVERSTEEL、シリコンバレーのDCMベンチャーズより2億円を資金調達
最終更新日:2023年09月28日
株式会社EVERSTEELは、2023年9月28日、米国のDCMベンチャーズより2億円の資金調達を実施したと発表した。
EVERSTEELは、鉄スクラップAI解析システムの開発に取り組む、東大発のスタートアップ企業だ。今回の資金調達に応じたDCMベンチャーズは、世界的に知られる有力ベンチャーキャピタルであり、脱炭素化とデジタル化を同時に進める点でEVERSTEELを評価している。
<本ニュースの10秒要約>
- 鉄スクラップAI解析システムの開発に取り組む東大発スタートアップ、EVERSTEEL
- 二酸化炭素量を抑える電炉法において、品質面/安全面でのリスクを画像認識AIで解消
- 調達資金は、AI/ハードウェア/アプリ開発やAIエンジニア採用などに投資予定
排出二酸化炭素量を大幅に抑えることが可能な電炉法
鉄は、世界で最も多く使用されている金属であり、そのグローバルマーケットは350兆円もの規模を誇る。その一方で鉄鋼業界は、全産業の中で最大の二酸化炭素を排出する産業でもある。この課題解消に向けて鉄鋼業界は、排出二酸化炭素量を大幅に抑えることが可能な電炉法へのシフトを進めている。
電炉法では、鉄スクラップを電気で溶かし、リサイクルによって鉄を作る。鉄のリサイクル原料である鉄スクラップには不純物/爆発物などが混入するケースがあるため、製造時にはベテランの作業員による目視での品質チェックが必要だ。このチェックにおいて生じる判定のバラツキや見逃しが、電炉法における品質面/安全面でのリスクとなっていた。
鉄スクラップの撮影画像を画像認識AIで解析
EVERSTEELは、電炉法におけるこの課題をAIの活用によって解消すべく、鉄スクラップAI解析システムを開発している。
同社は、代表取締役社長・田島圭二郎氏が東京大学における鉄鋼材リサイクルの研究およびスイス工科大学での画像解析技術の研究をもとにして、2021年3月に設立された企業だ。東京大学のアントレプレナーラボに入居する「東大発のスタートアップ」として、研究開発に注力している。
EVERSTEELの鉄スクラップAI解析システムは、鉄スクラップの撮影画像を画像認識AIで解析することにより、鉄スクラップの等級判定/ダスト量の解析/不適合品の検出などを自動で行うというものだ。既に、複数の業界大手鉄鋼メーカーと実証実験を行っており、国内10社以上で実導入の検討も進んでいる。
電炉へのシフトとAIは、EVERSTEELにとって大きな追い風
EVERSTEELが今回実施した資金調達では、米シリコンバレーに拠点を置く世界的有力ベンチャーキャピタルであるDCMベンチャーズが出資に応じた。DCMベンチャーズのパートナーである原健一郎氏は、
環境問題に対応した鉄鋼業界の高炉から電炉への急速なシフトと、AIによる技術の後押しが、
EVERSTEELにとって大きな追い風になっていると判断。また、若くして鉄鋼業界の二酸化炭素に取り組む姿勢も評価し、今回の出資に至ったという。
今回調達した2億円についてEVERSTEELは、プロダクト開発およびその実現に向けた組織拡大への投資を予定している。開発面では、現在より詳細な判定が可能なAIや、多様な工場環境に適応するためのハードウェア、現場での使い勝手を追求したアプリケーションなどの開発を推進。組織拡大では、AIエンジニアをはじめとして幅広い職種の採用を行うとしている。
参照元:PRTIMES
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